ブーメランを立てたような形をした大阪府――その上端付近から外側の淵の円弧をトレースして、下の先端に到達する自然歩道。大阪府が他府県と接する山稜線を出来得る限りなぞっていく道です。ほとんど山岳区間で、一部、里区間と町区間があります。
距離は約300km。細分化されておらず、すべてが1本の線で繋がっています。少々混乱を来たすのが、本コースには区間分割されたコース名が無く、代わりに近畿自然歩道の各コースと共有されていることでしょう。大阪府には元々、奈良県に接する「生駒縦走歩道」「金剛葛城自然歩道(ダイトレ)」があり、それをベースに兵庫県・京都府に接する区間「北摂自然歩道」と和歌山県と接する区間を策定して「環状自然歩道」とする計画であったようですが、和歌山県沿いのコースが完成する前に全国区の長距離自然歩道「近畿自然歩道」に置き換えられたようです。結果、環状自然歩道の道標には、近畿自然歩道であることを示す“トンボマーク”が後付けで貼り付けられるようになった……というのは私の推測ですが。
ここでは、本自然歩道の概略を紹介。勝手ながら4つの区間+1連絡路に分けています。詳細は近畿自然歩道のページを参照。
長谷の棚田の最上部。背景は三草山(564m)
環状自然歩道・北の起点。現存せず…
北の起点は大阪湾からやや内陸に入った府民牧場……であったのですが。その府民牧場がH24に閉場したため、起点は定かで無くなっています。(いちおう片山口バス停ということになるのでしょうか)
それはともかく。
本区間では大阪府の北端・能勢地方をぐるりと巡った後、箕面まで南下して、東海自然歩道に合流して大阪府の北境をなぞります。妙見山が“節目”になっています。
府民に人気の山・剣尾山(784m)の山頂
コスモスとキアゲハ
山里の田園光景が本区間の特徴です。雰囲気のある山里を幾つも繋げていきますが、特に長谷の棚田は見事(能勢地方の踏行紀はこちら)。東海自然歩道に合流した後は、今度は都市と山との干渉地帯。同じ山里でも雰囲気が少し異なるのが面白いところ。
なお、(東海自然歩道区間を除くと)現地の道標を追うだけでは迷うかも知れません。あらかじめ大まかなルートは把握しておくべきでしょう。迷いどころは天台山。コースの舗装道から片道20分ほどの寄り道となります。青貝山方面へ突き進んではいけません(そちらは旧コース)。後は、尺代で川を渡った小山の巻道に入るところも迷いやすいです。
能勢妙見山の隣の山、光明山(639m)の山頂
高山の棚田風景。高度400mほどの山あいに広がる
箕面のサルたち。人を怖がらない
ポンポン山(679m)山頂。京都盆地が見える
箕面ビジターセンター。東海自然歩道との合流点
府民牧場~枚方大橋区間。下止々呂美経由から川尻・高山経由に変更された。箕面ビジターセンターからポンポン山が東海自然歩道との重複区間
枚方大橋で淀川を越える
この区間、おおさか環状自然歩道の道標は一切、見掛けませんでした。粗いコース地図から分かることは、島本町役場で方角を南に変えたら地蔵院の先で線路を潜って本澄寺へ進み、淀川の川岸に出たら、あとはひたすら下流に向かって歩くということです。枚方大橋を回り込んだら牧野まで戻り返し、あとは穂谷川沿いをひたすら遡上する、という「ひたすら川岸」の経路のようです。
この区間、主に町や住宅地の間を歩くので、あまり自然歩道という雰囲気はありません。ただ「環状自然歩道」と言い切るためには本区間を設定しないわけにはいかなかったのでしょう……と言うわけで、勝手に「連絡区間」にしちゃいました。そんな区間でも出来るだけ緑を辿って歩く、というマニアックな楽しみ方は可能で、特に京阪牧野駅~山田池公園~JR藤阪駅の間にはお誂え向きに高圧電線下の緑地帯を利用した“創造の道”が存在しています。それぞれの緑地帯は結構な距離で隔たっているので、「次の飛び石」に進むには周囲探索と勘が必要です。辿っていくのも一興。(まあ、鉄塔を追っていけばだいたいOK)
創造の道の「しまうま緑道」
同じく「ひつじ緑道」
「ぱんだ緑道」
「りす緑道」
…の野鳥。何鳥?
山田池公園
国見山山頂。大阪平野北部へ好展望
くろんど園地・八ツ橋。呼吸根を持つ落羽松が自生
ほしだ園地・星のブランコ。都市部がすぐ近くとは思えない山深さ
むろいけ園地・湿生花園。カキツバタなどが咲く
本区間は、生駒山地を北から南へ一直線に突っ切る生駒縦走コース。府の中部農と緑の総合事務所のページに「環状自然歩道を歩こう」という紹介ページがあります。また、有料ですが公式マップも入手できるようです。
そして、本区間は大阪平野東面の山地稜線にあるので、自然歩道としての整備は十分です。コース上に府民の森が入れ替わり立ち代り現れ、休憩や水分補充などは簡単に出来るようになっています。応じて人の多さも相当なものですが……。道標の数も多くてかえって迷うこともあると思いますが、生駒縦走路を捉えて進んでいけばOK。環状自然歩道の道標は相対的に少なめです。
生駒山頂は遊園地。と、同時に大阪平野への大展望が得られる地です。
日本の道百選・暗峠(くらがりとうげ)
標高642mの生駒山山頂には電波塔が立ち並ぶ
近鉄上ノ太子駅。竹内街道が通う
十三峠。近畿自然歩道の道標が立つ
ただし、生駒縦走路は遊園地区域を避けるように山稜線のやや西側下を通っています。生駒山山頂を経由した場合は、摂河泉展望コースを使って高度を落として縦走路へ合流します。
なるかわ園地で左折、「ぼくらの広場」を通って再び山稜線に上がります。あとは、信貴生駒スカイラインに付かず離れず。
枚方大橋~二上山区間。生駒山地を南北に縦断する
ダイトレ起点・屯鶴峯
二上山のモチツツジ
ダイヤモンドトレイル(以下、ダイトレ)を利用します。ダイトレは屯鶴峯から槙尾山までの45kmに及ぶ本格縦走コース。金剛山で標高1,000mを越えます。よって、それなりのハイク装備が必要。
竹之内峠を越えると自然歩道らしく緑に埋もれます。歩いている人は見かけますが、総じて静かな道。明るく騒がしい雰囲気のあった生駒山稜と良い対比です。
大阪府最高峰・大和葛城山山頂。5月にはツツジに埋もれる
金剛山山頂部にあるちはや園地。ケーブル駅も見える。展望台から
葛城山と金剛山ではブナを見ることができる
金剛山頂下の大阪府最高地点・標高1,053m
中葛城山付近では南方に眺望が開ける
紀見峠。車道が通う。紀見峠駅まで1.8kmの距離
尾根の南側は、もう和歌山県
――ただそれも葛城山まで。葛城山山頂部はロープウェイで上がってきた観光客に占拠されています。奈良盆地と大阪平野への展望がすこぶる良いという人気の地ですので仕方ありません。水越峠まで下り、大きく登り返して到着した金剛山の山頂も、また人で溢れ返っています。
その先は静かになります。同時に環状自然歩道は方角を南から西へと転じます。林間の道がほとんどですが、中葛城山付近では遂に和歌山県側への眺望が得られます。感慨もひとしおでしょう。
到着した紀見峠には、車道が通って駅もほど近いので、アクセスポイントとして使えます。
その先は杉林の中の歩きが続きます。南葛城山分岐で道を左に取るのが正解です。ダイトレは右。
施福寺にあるダイトレ起点標
岩湧山の山頂は草原。西方には和泉山脈が伸びていく
――ダイトレへ進むと岩湧山で一気に見晴らしが開けます。大阪平野を南位置から眺められる大展望。新・日本百名山にも選ばれている人気の山。滝畑まで下りて、登り返せばダイトレ終点・施福寺へ到着です。
一方、府県境の林間の道を進んでいくと和泉山脈最高峰の南葛城山に着きます。見晴らし無く、地味な山頂。
“ダイヤモンド・トレイル”こと金剛葛城自然歩道のコース高低図。左から槇尾山、岩湧山、金剛山、葛城山、岩橋山、二上山
国道480号の通う鍋谷峠
和泉葛城山のブナ林は国の天然記念物
和泉葛城山の展望塔
中央構造線に沿って東西に伸びる和泉山脈。次第に高度を落しながら大阪湾に至ります。ダイトレ後の「おおさか環状自然歩道」は近畿自然歩道の複数のコースを束ねる形。自然大好きクラブNATSで確認できます。(詳細マップは和歌山県情報館から取得可能)
この区間はさらに3つに分けます。1つ目は岩湧山から和泉葛城山を経て犬鳴山温泉に下りる区間。和泉葛城山の展望とブナ林、ハイランドパーク粉河、行者滝、犬鳴川の渓谷美など見所もあります。道標完備で、ハイカーの姿も多く見掛けます。
2つ目は犬鳴温泉から山中渓までの区間――ここが色々と難路です。まず、二瀬川から上がったところで生草橋まで進むように示されますが、実際は車道を引き戻って林道に取り付きます。
犬鳴川の渓谷。上流には行者の滝が落ちる
二瀬川河岸の道は、増水時は通行不可に
城ヶ峰の登山道も途中から細く不明瞭になります。さらに、堀河ダムからそのまま府道63号に出ると、車の往来の激しい車道を歩くことになって危険です。ダム南面の道へ迂回すべきでしょう。
楠畑から槌ノ子峠も整備悪く道迷い必至。道標も乏しく、ルートファインディングが必要。加えて、わんぱく公園は午後4時半以降は通り抜け出来ません。間に合わなかったら沢伝いに府道64号に下ります。
堀河ダム
槌ノ子峠。十字路になっている
JR阪和線・山中渓駅。サクラの季節――
俎石山(420m)山頂。一等三角点がある
関西空港を遠望。銀の峰コースパノラマ台より
3つ目は、山中渓から大阪湾に至る最後の区間。踏切を渡り、「銀の峰ハイキングコース」のゲートを潜って出発です。こちらは、整備の良い山道が続きます。アップダウンも適度で道標も十分、高さこそないですが穴場的な道。展望ポイントも多くあり、大阪湾や関西空港、淡路島などを間近に眺められます。
札立山から西の区間は未踏。また、孝子駅から西は“未整備区間”とのこと。おおさか環状自然歩道の完成はもう少し先でしょうか。。
近畿自然歩道・泉州地区マップ。赤いコースが近畿自然歩道だが、その府県境部分がおおさか環状自然歩道を兼ねている