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峠道入口
県道76号と分かれ、峠道へ入る
峠
菅井集落の峠。ここを右折して西へ

菅井は高度400mあまりの峠に広がる集落。そして、かつては絹織物を運いぶ交易路になっていたということだけど、今では峠越えの県道を時折、車が走っていくのみ。

その県道のトンネル手前で右に道が逸れた。峠越えの旧道だろう。道標には「青野 4.8km」という標示。

坂道を一生懸命上がり始める。薄暗い道は左にカーブして――

峠に到達。南斜面に家々が散在している。どうやら菅井の中心部のようだ。

稜線道入口
さらに右折。道標がやや見付けにくい…
裏丹沢
焼山(1,060m)、黍殻山(1,273m)、袖平山(1,432m)。稜線を東海自然歩道本線が通る
緑のトンネル
明るい緑のトンネル
峰山分岐
峰山分岐。峰山へは2kmが示される

峠で右折、さらに上っていく。――突如、視界が開けた。山斜面には畑が広がっている。

でも道はその先で行き止まる。山稜線は遙か上の方。引き返すと、途中に分岐と道標があった。電信柱の陰で見逃していたようだ。このロスは痛い……。

今度は正しく稜線へ向かう道。当然、上り坂だ。やがて展望は閉ざされ、道はダートとなり、そして平坦になった。小走りに進んでいく。

ツツジ
ツツジの咲く季節
やせ尾根
やせ尾根を渡る。道の状態は良い

峰山分岐通過。

――思ったよりもアップダウンが少なく、快調にペースを作っていける。伏馬田城址へ立ち寄ったことでバスは諦めたたけど、このペースならひょっとして間に合う??

道は細くなり、普通の山道となった。でも整備は良く歩くのに支障はない。日も傾いてきたものの、周囲の雑木林の雰囲気は良い。もっとゆっくり歩きたかったよなあ、と思う。


 


植林帯
かつて大川原から上野原の市へ絹織物を運んだ道?
登り
緩やかに上る。高度は再び500mを越える
下り
下り始めたので走る――

でも、足に疲労が募ってきた。ショートコースだからと長距離アプローチ仕掛けたのがここで効いてきたようだ。だからと言って足は止められない。ガンガンと進む。

――もちろん、青野にある東野バス停のバスに間に合わせるのは到底無理。ただ、その幾つか手前の大川原入口バス停なら未だ可能性が僅かに残っている。天神峠まで達すれば後は林道の下りになるのでペースは一気に上げられるからだ……なんて考えてはみるものの。

峠のような鞍部に出て、そこから登りが始まった。緩やかだけれど走る体力は残っていない。これはもう、ちょっと無理。

ピークは巻いて下りになった。再び走り出すものの、ほとんど惰性。

そして林道に当たった。天神峠だ。コース案内板があって、道標に示された青野までの距離は2.7km。PM4:03。

林道合流
林道に合流。道標は「菅井2.3km 青根2.7km」
天神峠
天神峠。高度は490mほど。道志側に越える

林道を駆け下り始める。同時に、頭の中で手早く計算。おそらく大川原入口バス停までの距離は2kmほど。それを15分でクリアすればバスに間に合う筈。

林道は山の中腹を西へ横断しながら下って行く。時折、濃い木々の葉の間から白い鉄橋が眺められる。あの橋のたもとに目指すバス停がある――

やっぱり間に合わないと結論を出す。道志川まで下りて、そこから国道のある高さまで上っている途中でバスが通過するだろう。

林道の駆け下り
林道を駆け下る。見晴らしはほとんどない
上野田大橋
国道413号の上野田大橋。左に東野の集落。奥は黍殻山~袖平山の稜線

 


車両止めゲート
車両止めゲート
大川原集落
大川原集落。正面に大室山(1,588m)

車止めゲートを通過。勾配は緩やかになってきた。それでも走り続ける。もう走る理由は無いのだけど。

ようやく大川原の集落へ入ったようだ。斜面に畑が広がっている。道志川沿いの集落。既に国道の位置より低い。

――下り坂はまだ続く。家々の合間を抜けていく、と。

大川原橋。渡りながら道志川を見下ろす。河岸にたむろうキャンパー。寛いでいる様子。

大川原橋
大川原橋を渡る
道志川
道志川。賑わうこのまさわキャンプ場
国道のぼり口
車道を離れ、ここから上り階段
交差
国道413号・道志みちを潜る
階段
階段は続くよどこまでも

橋を渡った先、道の脇に階段が付いていた。昇り切ると国道413号の脇に出る、ということは既に知っている。いちおう現在時刻を確認する。……バスは未だ通過していない。残された時間は2、3分ほどだけど。

階段を昇る。1つが終わっても次の階段が現れる。もちろん、元気なうちだったら駆け上がることも可能だったろう。でも、今は山を駆け下った代償を支払っている。一段、一段踏みしめるように上がっていくのがやっと。

舗装路になった。緩やかに上り、国道の真下を潜る。そして最後の階段。

――上る。

大川原入口
国道413号上の大川原入口。青根へ
大川原入口バス停
大川原入口バス停。東野集落の西端に立つ

国道413号の脇に出た。目の前に、ずっと目的地の目印にしていた上野田大橋。車がスピードを上げて突っ込んでいく。

この地点までは青根コースを歩いた時に一度来ている。従って、これで東海自然歩道の神奈川県の全コース踏破。……なんか、あまり達成感ないのだけど。

国道へは進まず右に折れ、直ぐに道志みちの旧道にぶつかる。左を見ると立っていたのが大川原入口バス停。


 


1日2本
平日・休日とも1日2本
長昌寺
長昌寺

バスの通過時刻を確認する。三ヶ木行バス、土日はAM7:53とPM4:18の2本。つまり3分前に最終バスが行ってしまったということだ。

――たった3分!

ただ、この3分のハードルは高かった。マラソンTV中継のゴールシーンなど見て「あと3分ぐらいなんとか縮められただろう!」などと思うことはあるけれど、立場が引っ繰り返ると「よくたった3分遅れでゴール出来たものだ」と納得している自分がいる。少なくとも前向きに倒れたのだから良し。

……なんて敗北感に言い訳しつつ東へ向かって歩き出す。本コース終点はまだ先。

上野田バス停
上野田バス停
玉利屋商店
玉利屋商店

長昌寺を通過。

――上野田バス停を通過。そういえば平日だったら東野バス停始発のバスがもう1本あったっけ、と思い出す。今日のコースは平日に歩くべきだったかも知れない、と後悔先に立たず。

だんだんと建物が目に入るようになってきた。東野の集落に入ったのだ。見覚えがある。前回、この道を歩いてからそう年月は経っていないので、まだ記憶が残っている。

津久井青根簡易郵便局
津久井青根簡易郵便局
東野
東野

玉利屋商店の前の自販機で飲み物を購入。この先、長いのだから水分補給は十分にしておかないと。

ピンクの津久井青根簡易郵便局。この脇にもバス停が立っている。

……で、歩きながら帰り方を色々と検討していたのだけど。決定、ベタに三ヶ木まで歩くことにした。一度歩いてみたいと思っていたから(ウソ。ここ歩く羽目にはなりたくないなあ、と思っていた)

東野
東野バス停。三ヶ木行きは平日6本、休日2本
コース起点
お隣、青根コース・長者舎コースのコース起点

道は大きく左にカーブ、西日に照らされた東野の集落中心部が見えてきた。

――懐かしさは未だ無い。あの2つの商店の間の道から丹沢山稜へ上がり、長者舎を回って戻って来たのは2年前。

……それでも2年か。時間の流れの速さは容赦ない。山歩きなどしていると、その速さが良く分かる。

東野バス停に到着。PM4:35。

東野バス停~西野々バス停~三ヶ木バス停-(神奈中バス)-橋本駅=(JR横浜線)…

道志みち
国道413号・道志みちへ
山間区間
中央ラインは現れたり消えたり

口で言うほど簡単でない東野~三ヶ木歩き。なにしろバスでも34分かかる区間。歩いたら……3時間?4時間?

青根交差点で10秒ほど考え、国道を選ぶ。県道の方が安全だけれど、夕方のこの時間、やっぱり高いところを歩きたい。

坂道を一直線に上がっていく。その後、道はうねり始め、道志みちの「山道区間」に。

横山トンネル
横山トンネル。高度450mほど
平丸橋
正面に伏馬田城址のある尾崎原山(536m)でその左の稜線に菅井がある
歩道終点
「歩道終点のため現道へ迂回ねがいます」
行楽帰り
行楽帰りのマイカーやバイクが走っていく

横山トンネル、平丸トンネルを潜ると道は一直線に下り始めた。正面に見えるのは――地図で確認――伏馬田城址のある尾崎原山らしい。先ほど歩いてきた稜線を眺めながら平丸集落へ下って行く。

……このあたりはフラットで歩き易い。歩道が車道と分離されているし。ただ、記憶ではこの先が難所だった。

その通り、歩道分離が無くなり道はうねり始めた。見通しは一気に悪くなる。山道区間ふたたび。

石老山
石老山(702m)。東海自然歩道が通る
青野原西野々交差点
青野原西野々交差点。右折して旧道へ

道志から東京へと向かう行楽帰りの車が多い。車列が途切れないので突っ立って待つことも。もちろん、車の運転手は人が歩いているなんて想像していない。そういう前提で行動するしかない。

歩道は現れたり、消えたり。時には車道のセンターラインが消えることも。辛抱して歩き続けると、開けた山あいに出た。ようやく青野原だ。

そして西野々交差点だ。右折して旧道に入る。静かな道を進んでいくと――

本線コースへ進む→

石砂山コース入口
東海自然歩道本線と合流。「石砂山3.4km」
東海自然歩道本線
東海自然歩道本線を行く――

左から道が合流してきた。角に道標も立っている。東海自然歩道の指導標――

そう、ここで本線に合流するのだ。今日の東海自然歩道歩きの第二パート……というわけではなく、長い長い帰り道にたまたま横切るだけ。

――しかも本線を歩いたのは16年前。もう、あまり憶えていない。何も変わっていないようにも感じるけど。

西野々バス停が見えた。その脇にしっかり自販機も立っている。

西野々バス停
西野々バス停
自販機
因縁(?)の自販機。コカ・コーラは180円に
西野々自治会館
西野々自治会館の休憩舎。公衆トイレもあり
焼山入口
東海自然歩道・焼山コース入口

16年前も最後、時間が足りなくなって焼山からここまで駆け下って来た。その時は三ヶ木行きバスにギリギリ間に合った。

――今日は三ヶ木行きバスに間に合わなかった。これが若さの違いというやつか、と少しシミジミしてしまう。

とりあえず自販機でコカ・コーラを購入。前回もここにあった自販機で同じものを購入したけれど、バスが来るか来るかと焦っていたので取り出すのを忘れてバスに乗ってしまった。

……今日は落ち着き払って、しっかり取り出した。これが成熟するということ。(なんだそれ)

勝手にリベンジした気になった後、三ヶ木に向かって再び歩き出す。右手に東海自然歩道・焼山コースへの入口。

――この小社と仏像は憶えている。変わっていない。ただ、道標が金属プレート製になっていた。昔はボロボロの木板だったような。

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焼山登山道入口
焼山登山道入口
諏訪神社
諏訪神社

日没が近づいて来た。景色が暖色に染まっていく。やっぱり、この時間帯の山里の景色はいい。気は焦るけど。

焼山登山口を通過。……次第に周囲に建物が増えてきた。青野原の台地はけっこう広い。ここでもかつて絹織物が生産され、菅井の峠を越えて運ばれていったのだろうか?

日没を迎える。日の長い季節であっても、山間部の日没は早い。

日没
今日の日が沈む。山頂が割れたように見えるのは石砂山
シャガ
シャガ
焼山
焼山。この尾根を東海自然歩道が通る
東開戸付近
東開戸付近。このあたりは比較的開けている

国道は少し離れたところを並行して走っているけれど、交通量は多そうだ。

こちらの道はとても静か。散歩をしている人の姿も見掛けない。そういえばコミュニティバスのバス停も見掛けるかと思ったけど全く見ない。もちろん、タクシーなど一度も見掛けていないのでアプリで呼び出すことも出来ないだろう。

……もっとも、「OSが古い」とタクシーアプリにインストール拒否されるスマホなので、確かめることは出来ない。

ガビチョウ
囀るガビチョウ。「眉」で区別できる特定外来種
青野原
青野原を行く

民家が密集している。このあたりが青野原の中心地か。とりあえず三ヶ木バス停のバスの時刻を確認し、これまで歩いて来たペースと残りの距離から目標とするバス便を決定する。……少しペースを上げないと。

と、道が久しぶりに坂になった。カーブしながら下って行く。ここに青野原関所の碑。

その先で遂に国道413号に行き当たる。右折。


 


青野原関所跡
青野原関所跡
クロネコ
こっちを見るクロネコ
県道64号分岐
宮ケ瀬湖へ通じる県道64号を右に分ける
橋野沢バス停
橋野沢バス停を通過
坂
最後の坂道。車は渋滞中

この先はもう国道歩きしかない。交通量が多くて騒がしい道。牝馬峠へ向かう道を左に分け、宮ヶ瀬湖へ向かう道を右に分けると、後は何も見るべきものが無くなる。ひたすら道を手繰るだけ。

それに薄暗くなってきた。平地を歩く分、足に疲労が溜まっていても歩けなくなるということは無いけれど、退屈。

渋滞してノロノロの車列を追い越しながら足早に歩いていく。

三ヶ木交差点
三ヶ木交差点
三ヶ木バス停
三ヶ木バス停と橋本駅行きバス

T字路に当たった。左右に渡るのは国道412号。ここが渋滞発生元か。

左折。暗くて良く分からないけど、だいぶ町中に入ってきたようだ。建物が立ち並んでいる。……ただ、歩くペースは緩められない。次のバスを逃したら20分待ち、って大したこと無いけど。

三ヶ木交差点を右折、三ヶ木バスターミナルに到着した。PM7:18――橋本駅行きバスの発車する2分前であった。

橋本駅
橋本駅
さがみはらリニアひろば
リニア駅建設中……

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