- 三河高原の懐へ -
【踏 行 日】2007年10月下旬
【撮影機材】OLYMPUS E-410, ZD14-54F2.8-3.5, ZD50-200F2.8-3.5, CASIO EX-P505
――秋。
秋と言ったら紅葉。だけど最近は紅葉時期が遅くなって、10月下旬ぐらいでは低山でも色付いているか怪しい。
今日は標高1,121mの寧比曽岳。今年の春に一度登ったから、今日は二回目。高山の無い愛知県の中では結構上位の高さの山だけど、それでも紅葉は怪しい。あと10日ほど後が狙い目かと思っているのだけど……。
後には予定が詰まっている。とにかく、今日往くべし。
秋も深まると、新幹線始発の時刻はまだ薄暗い。列車が動き出し、巡航速度に達すると東の空が橙色になって朝日が昇ってきた。眠いけれど寝過ごすのが怖いので、ずっとその移りゆく東の空を眺める。
やがて、すっかり朝となり、名古屋駅に到着。ホームに下り立つ。
……眠い。中央線に乗り換え。
ニュータウンで有名な高蔵寺駅で下車。愛知環状鉄道に乗り換え。
この鉄道は前から一度、乗ってみたいと思っていた。足助に行くには別に名鉄猿投駅からでも良いのだけれど、今日は敢えて愛環鉄道で北から回り込む。
結構、乗客が多いので驚いた。座席に座れないくらいだ。ただ、車窓に移ろう光景は田畑の目立つ都市郊外のそれ。開放的で、のどかな光景。
高架区間が多いので見晴らしが利く。やがて、左手には猿投山も見えてきた。今年の春に登った山だ。近過ぎると良く分からないけれど、遠くから見ると本当になだらかな山だ。
そして、天気にも問題は無い。秋晴れ、絶好のハイク日和。
四郷駅に到着。AM8:20。
駅前は広々としている。稲穂は黄金色。田園地帯の向こうには猿投山。
さなげ足助バスがやってきた。小柄だけど、綺麗な車両。乗り込む。
乗客は自分含めて二名。もう一人は運転手と面識があるらしく、雑談を交わしている。なんでも今日、このバスにTV取材があるのだとか、なんだとか。
バスが出発。
東濃尾を快調に走る。途中に立ち寄る猿投駅、広瀬、力石などはまだリアルな記憶として残っている。やがてバスは巴川沿いに走り始めた。対岸の竹藪の中に、かつて歩いた東海自然歩道を探る。
ただ、バスは一瞬で走り抜け、早くも足助の町が見えてきた。対岸に渡って、足助病院に到着。ここで降車。
あまり待たずに、足助病院バス停にもう一台バスがやってきた。今度は大型だ。稲武行き稲武バス。乗り込む。
AM9:25に発車。バスは足助の町を走り抜け、国道153号を山奥へ向かって走る。今度の運転手さんも話し好きの人らしく、乗客と世間話をしながら運転している。都会のバスではあまり見られない光景だけど、悪くは無い。
伊勢神バス停に到着、AM9:53。降りる。
「東海自然歩道まで1.4km」と書かれたコース案内図を見て旧道に入る。足助から寧比曽岳まで歩いた時に使った下山路だ。今は登りに使っている。
車道は大きくうねって、高度を上げていく。暫く聞こえていた国道の騒音も消えた。
やがて、左側に細い道の分岐が現われる。旧道はこのまま旧伊勢神トンネルを潜って稲武側に抜けるけれど、トンネルを使わず峠を越える道も残っているのだ。
そちらには、東海自然歩道の標示もある。国道、旧道、峠越え道という三段打ち上げロケットの最終段。
峠道。なんとか車一台通れる幅はあるけれど、かなりの勾配だ。周囲は濃い人工林。
息を切らせて上って行く。距離は大した事無い、と分かっているので休まずに一気。
道標が現われた。三方を指し、そのうち二方向の矢印が緑に塗り潰されている――愛知県の、東海自然歩道指導標の特徴。
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AM10:18、今日の起点、伊勢神峠に到着。杉の木立の中、お地蔵さんが並ぶ雰囲気の良い峠。
それにしても、バス二本乗り継いだ上、峠まで歩いて上ったのだから随分と長いアプローチに感じた。というか本当に寧比曽岳へのハイキングに来たかのような錯覚がある――いや、実際にそうなのだけれど。
でも自然歩道歩きとしては、この地点が出発点。これから山稜線を辿って、東海自然歩道の本線と合流することが最大の目的だ。そして、田口の町まで下りれば半年前に歩いた道に接続する……要するに、東海自然歩道本線を歩き通すために、今日はちょこっと支線コースの途中から歩き始めて本線に合流というカタチ。時間的には結構厳しいのだけれど、日帰りするためのほとんど唯一の解なのだから、仕方ない。
峠から少し引き戻って、先ほど上って来た方向と反対側に進む。
舗装された道を1分ほど上ると、平坦な場所に出た。伊勢神宮遥拝所のある広場だ。伊勢神宮を遥かに拝むくらいだから展望は絶好の、と言いたいのだけれどそうでもなかった。その上、朝方は天気が良かった筈なのに、この山上には雲が懸かっている。ゆえに見晴らしが利かない。
そして、予想通り紅葉は未だのようだ。これから高度を上げていくので、どこかの高度で紅葉前線を捕まえたいところだけれど、果たして……。
広場を後にする。ここから先はまっとうな山道。
森の中をガシガシ登って行く。まさにハイクだ。
……と思ったら、道がほとんど平坦になってしまう。まあ、伊勢神峠から寧比曽岳まで高度差350mしかないのだから、こんなものだろう。山岳コースなら山岳コースらしく、もっとガッツリと登って行きたいところではあるけれど。
「コアジサイ」「ギンリョウソウ」などの説明板が道脇に現われる。いこいの村愛知の区画に入ったのだ。湿地の説明板と、その湿地を渡る木道。ここから先は、半年前にも歩いたので見知っている。
ちなみに、10月という季節では湿地に何かを求めるのは酷。木道を歩いても、特に目に付くものは見当たらない――もともと、この湿地はやや乾燥しかけなのだけど。
じつは前回来た時は時間が無く、ただ通り抜けただけの感があった。よし、次に来た時はじっくり歩こう――と、思っていたのは確かだけれど。
残念ながら今日も時間が不足。時期的にも見所なく、また日もちょうど陰ってしまった。ゆえに今回もただ通り抜けただけ。なんか、約束を守れなかったような感じがして申し訳ない気になる。
車道に出てみる。駐車場に車の影は無し。人の影も無い。
コースに戻る。
雰囲気の良いフラットな道。小走りで駆け抜ける。
――と、ずっと木立の中を通っていた道が明るくなった。林を抜けて進んでいくと、何のことは無い、車道脇の、少し高い場所に設置された歩道。
それでも、近辺の山並みが見える。ここまで展望には恵まれなかったので少し息をつける。
あそこに見えるのは寧比曽岳だろうか……。山頂部は三角形だけれど、あまり急峻な山ではない。すぐにも着いてしまいそうだ。
ただ、現時刻は午前11時。アプローチに時間がかかった分、余裕の無い山歩きになっている。
道脇には秋の野花。それに、ここに来て木々の葉の色付きもチラ、ホラと見られるようになる。
コースはいったん車道へ降りる。
その時、一瞬だけ日が辺りを照らし出して――直ぐ陰った。どうも、今日はここまで期待はずれの天候だ。天気予報は良かったのだけど、山の天候だから仕方ないか……。
車道のヘアピンカーブを見て、再び山道に入る。
それは車道のショートカットに過ぎず、すぐに尽きる。出た場所は峠――大多賀峠だ。県道が貫いている、特に変哲の無い峠。時刻はAM11:02。
前回来た時と印象はまるで変わらない。季節は真逆なんだけれど、まったく同じ光景に見える。峠から大多賀集落への展望も変わらず。
そして、この峠には山に入り込んでいく階段がある。さしずめ寧比曽岳登山口、と言ったところだろうか。東海自然歩道の指導標が指す方角もそっち。
残念ながらこの先は山頂まで植樹帯ばかりということが分かってしまっている。紅葉もあまり期待できない。多少、期待をしていた伊勢神高原でペケだったので、いくぶん諦め気味。
階段を登る。すぐに木階段に変わり、深い林に飲み込まれる。相変わらず日は陰ってしまっている。地味な風景が続く。
0.5kmほど登山道を辿って行ったところに現れたのが“亀の甲石”。
――東海自然歩道・恵那コースの最後を飾るのが、このひび割れた2つの石だ。ある意味、恵那コースらしい……と言いたいところだけれど、じつのところ恵那コースを歩くのは今日で2回目。1回目は善師野~御嵩という最初の区間、そして今日が最終区間。番組のオープニングとエンディングだけ見て、内容を推測するようなもの。
本線コースすらまだまだ歩き残している状態なので、この恵那コースの「間」の部分を将来歩くかどうかは、全くの白紙だ。少なくとも今日、自分的な恵那コース終着点は伊勢神峠と定まったのは確かだけれど。
――にしても高度が一向に上がらない。見晴らしの無い林の中を、緩く上ったり、下ったり。先は長いので足早に進む。
気候は快適。10月半ばの低山歩き、日本のどこの山であってもベストシーズンだと思っている。今、歩いている道もよく整備されていて、都会の傍にある低山のハイクコースと言われれば信じることも可能かもしれない。
ただ、一点――鉄塔や高架電線が現れないことが、この場所の山深さを感じさせる。……いや、実際、日本の山には鉄塔が多過ぎる。
道はようやく登る一方になった。そろそろ標高1,000m越えだ。
木階段を喘ぎながら上る。なにしろ、今日のコースは前半で登りは終えてしまう予定。よって、「ここで登りの脚は全部使っておくぜ!」ぐらいの勢いで登っていく。
山頂に近付き、人工林から脱した。まだ葉の付いた落葉樹が立ち並んでいる。なんとなく黄色っぽくなった葉もあるけれど……ダメか。ちょっとまだ、早い。
最後の木階段を上る。ところが急ぎ過ぎて疲れ、足は止まりがち……。
AM11:49、寧比曽岳山頂に到着。
恵那コースの終点。そして、東海自然歩道本線との合流地点という要所。
ハイカーが10人ほど。お昼時なので、休憩舎のテーブルを囲んで食事などをしている。濃尾平野方面を眺めている人も。ハイキング日和、のどかな、秋の山上の光景。
――ただ、期待していた見晴らしは今日はイマイチ。矢筈山を始め、三河の山々が見えるけれど、その先の濃尾平野は淡く霞んでいる。
そして、計算上、東海自然歩道でもっとも遠くから富士山が見えるポイントがココなのだけど……。
東方は雲。そちらには木立も多く、本当に富士山の望める見晴らしがあるのかどうかも確認できなかった。
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