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段戸裏谷~清流公園~大名倉~松戸橋~田口

田口へ
田口方向。「出来山登山口まで5.1km」の道標も
県道33号
県道33号線。コース案内板が立つ

段戸湖から流れ出る川の右岸沿いにコースは続いていく。PM2:47、出発。

薄暗い森の中、左手に沢を置きながら地道を進む。すぐに車道に突き当たって、橋で川を渡る。さらに県道33号とのT字路に出て、右折。

左側に建物が見える。

きららの里
豊川市野外センターきららの里
山道入口
県道から山道に入る
県道
県道。「この先落石の恐れ」

きららの里、という施設らしい。真新しいバンガローやキャンプ場、自動販売機もある。ここで、飲料を補給。

そこを過ぎると、完全に両脇は林となった。しばらく道なりに進む。

――と右手に山道の入り口が現われた。板そのままの道標があって、「田口 12km 4時間00分」と書いてある。

4時間も掛けていたら夜になってしまう!

木道
さすがにこの上は走れない……
朽ちたベンチ
愛知県には珍しく、朽ちたベンチ
林道
林道

と言うわけで、山道になって下り基調になったら、少し小走りを交えるようにする。

と言うのは、アスファルトだと足にダメージが嵩むけれど、山道だと適度に地面が柔らかいので、走るのにはうってつけだからだ。やっぱり、走るなら街の車道をジョギングするより、山でトレイル・ランニング。

と言え、実は走るのは自身、あまり好きじゃない。だって、視野が狭くなるから。


 


段差
段差のある休憩所と「段戸裏谷国有林」解説板
山腹の巻き道
山腹の巻き道に入る

下り一辺倒では無く、適度なアップダウンもある。それでも、「適度」なら走り続けることが出来る。ほどなく林道に飛び出た。

しばらく林道を歩く。3分ほどで左側に道標を捉え、再び山道に。また駆け出す。

下りていく先に、またもや休憩所のベンチが現われた。ほんと、引っ切り無しだ。その脇には字の消えかけた解説板。

苔の道
落ち着いた苔の道、と思っていると……
西日の道
たちまち、西日の照りつける明るい道に

そして、道標の下には円筒のビンが添えられてあって、その中には東海自然歩道愛知県コースのマップが封入されていた。

――これは、富士見峠でも見掛けたものだ。盗まれたりしていないことに、まず感心。やっぱり、山を歩く人にとっては、地図というものがどれだけ大事なものか分かっているのだろう。(と、思っておくことにする)

道は、山の斜面を巻きながら高度を下げていくようになる。ぐねぐねと、うねる道。沢の横断が多い。

スピードを出して駆け下る。もちろん、何かに躓いたら即、落下だ。鉄則通り、重心を常に後ろに残しながら走る。

岩
弱い日射しが岩に当たる
見上げる山稜
精英樹林

一歩二歩先の路面の状態を常にサーチし、それに応じて歩幅を変える――傍からは、リズムを刻みながら走っているように見えるかも知れない。実際は、コケた時に足をどこに置いて踏ん張るかまでシュミレーションしながら走っている。そのため、気は張り詰め、頭はフル回転。

……なので、疲れる。


 


桟道
桟道。「スベリます足元に気をつけて」
県道33号
寒狭川(かんさがわ)。県道33号とは再び並走
木橋
寒狭川右岸の道。道幅は十分

あっという間に高度が下がり、左側には寒狭川が見下ろされるようになった。

でも、かなりバテた。汗をかいて、息も弾んでいる。気温も下がってきているので、やや肌寒く感じるほど。

下り道は終わり、寒狭川から一定の距離と高度を保って同方向に進むようになる。寒狭川遊歩道、といった感じだ。あたりは精英樹林という林。

もう少し時間を縮めておきたい、というわけで懲りずに小走り。登りの脚、下りの脚が別々にあるとすれば今は平地の脚を使い始めたところ。……もちろん、そんな脚は無い。気分の問題。

林道横断
林道横断
沢を渡る
寒狭川に注ぐ沢を越える木橋

例えば、街のスポーツクラブのガラスの壁越しに、ランニング・マシンに足を打ちつけている人を見た時に感じる違和感。

――自分は、長い距離を歩き抜け切るために、仕方なく走る。でも、彼ら彼女らは、走りはするが移動したくないがために、機械の上で走る。

水槽
木立の合間から、何の水槽?
西日
10月下旬、午後4時の西日

……と言うわけで、常に視界が変化しないと飽きてしまうという子供っぽい自分にとって、この寒狭川沿いの道は、やや苦痛。同じような林間の道が果てなく続いていく。

その退屈な時間を短くせんがため、また走る。


 


宇連集落
川の向こう、宇連(うれ)集落?
水場
水場。「東海の自然歩道は日本一」
寒狭川
寒狭川。堂々とした流れになってきた

川の向こうには集落が見えるようになった。

このあたりの宇連集落までは町営バスが通じている。県道上にはバス停もある筈だ。でも、今日は使う予定は無い。なにせ、次の田口からの岩小谷山コースは既に前に歩いてしまっている。だから、今日のうちに田口に到達できないと、非常に切りが悪くなってしまうのだ。

――コースを順に歩いていないんで仕方ない。幸い、下山路を走って時間節約したお陰で、田口のバスの便には十分間に合うペースになった。あとは……出来たら暗くなる前に田口の町に着きたいところ。

寒狭川右岸にはもう日が射し込まなくなった。山あいの道なので、もう今日は光は得られないだろう。

清流公園分岐
清流公園への分岐。吊橋まで0.2km
清流公園
いったん寒狭川を渡る。対岸が清流公園

杉林の中、珍しく三方向の道標。川の方角に「清流公園吊橋」とある。

立ち寄ることにする。結構急な斜面を下りていって、寒狭川を渡る吊橋の袂に辿り着く。

吊橋の上から、初めて隔てる物無く寒狭川を眺める。その名前から来るイメージは、あまり感じない。


 


吊橋
清流公園に架かる吊橋
スズメバチの巣注意
スズメバチの巣注意、の貼り紙
木道
古びてはいるがガッシリしている

PM4:08、清流公園。

公園、と言っても川と県道33号の狭いスペースが芝生になっているくらい。それと、建物と駐車場と「清流公園前」バス停。建物には「清流公園」の札と「この施設の建物はみなさまの簡易保険…」云々の表記。誰もいない。車も無い。

吊橋を渡り返す。ところがコースに戻る手前の急勾配で難儀。なにせもう登りの脚は残っていない。ぜいぜい息を切らせながら、コースに復帰。

再び川下に向けて進み始める。途中、スズメバチの巣がある旨の警告と、道脇のブルーシート。ちらりと覗いてみたけれど何も無さそう……。

渓流
渓流
大下り
大きく下って、大きく登り返す階段
森林軌道敷跡
森林軌道敷跡。解説板もある

森林軌道敷跡の広場に出る。

名残はあまり感じられない。なにせ昭和36年に軌道が廃止された13年後に東海自然歩道が開通している。当時だったら名残はあっただろうけれど、今は東海自然歩道自体が30年以上の年月を刻んでいる。その間の風化は、生易しいものじゃない筈だ。

大名倉
大名倉のコース案内板と公衆トイレ
山里
民家が目立ち、山里の雰囲気が出てきた

日本国土は世界で最も激しく侵食を受けている地域で、平均すると毎年1mmずつ大地が削り取られていることになる――と、いうことを本で読んだ覚えがある。

だから、日本の長距離自然歩道歩きは生もの。10年も経てば別物になると言っても過言では無いかも知れない。

突然、車道に出た。ようやく大名倉だ。


 


大名倉集落
左に大名倉集落を見ながら進む
見返す
大名倉集落と段戸裏谷方面を見返す

林が切れて、上空が開ける。山の上端にはまだ日が当たっているけれど、この谷あいの集落はすっかり影の中。じきに夕闇に移行するだろう。

大名倉の集落、PM4:41に到着。

進んでいくと道は二股に分かれるけれど、指導標に従って上り坂の道に。左手に集落を見下ろし、茶畑の合間を抜けていくと――再び林間の道。

寒狭川解説板
寒狭川解説板。太公望とは……
寒狭川遊歩道休憩所
寒狭川遊歩道最後の(?)休憩所

薄暗い。さすがにもう山深さは感じないけれど、それでも、もう人の歩くような時間帯でなくなってきている。それに、だいぶ寒くなってきた。

でも走り出したりはしない。走るどころか、正直、歩くのも疲れた。もうスタミナはどこにも残っていない。

鉄橋
鉄橋を渡って見返したところ
休憩所広場
車道脇の遊歩道入口

と、前方に緑に埋もれるようにして鉄橋が現われた。歩行者専用の橋だ。下って、渡って、上り返すのはこれま渡ってきた木橋と同じだけれど……やっぱり鉄は安心感がある。木の時代から鉄の時代へ――。

渡り切ると砂利の広場に出た。その先にはアスファルトの車道。

どうやら、寒狭川遊歩道はここが終点のようだ。なんとか、ヘッドランプを出さずに済んだ。


 


採石場
採石場。山が削られていく
寒狭川右岸車道
寒狭川右岸の車道

車道を伝って歩く。左に寒狭川が並行、という構図は変わらないけれど、もう、ゴールはすぐそこだ。疲労の蓄積された足に鞭打って歩く。

クリーンセンターの前を通過。採石場を見ながら、更に進む。

松戸橋
松戸橋
松戸橋バス停
松戸橋バス停と待合所。コース案内板も

橋が見えてきた。松戸橋だろう。

PM5:15、松戸橋。渡って、県道33号に合流する。バス停があって、コース案内板も立っている。

もちろんこの時刻、バスの便は無い。この少し下流側に行ったところの山側、山道入口があって、道標がそちらを指している。ここに来て、また山道か……。

夜の山道
ほとんど闇の山道を登る
県道横断
県道33号を横断して山道は続く

灯かりを出せば良いのだけれど、ここまで来たら「明るいうちに田口に着きました」で終わらせたい。変な意地だけれど、そのまま暗がりの中に突入。

まあ、わりとニンゲンの暗視能力は優れていて、闇と思えた暗さも目が慣れるとぼんやりとモノの輪郭が見えてくるものだ。ただ、道の状態が良いからこそ成せるワザ。

町外れ
田口の町外れに出る
県道33号と別れ
県道33号を右に分け、左の道へ

上り切って、田口の町外れに出る。随分と長い付き合いのように思えるけれど実際はほとんど歩いていない県道33号を、今度はしっかりと歩いていく。

――それも直ぐにお別れ。町中の道へ入る。両脇には住宅。そして……前方には、見憶えのあるパラボラつき塔が見えてきた。設楽総合庁舎の通信塔だ。


 


国道257号
国道257号、通称伊那街道
田口屈折点
国道に付き当たる。東海自然歩道の田口屈折点

PM5:32、田口に到着。

なんか、すごい静か。国道に車通りがほとんど無いせいもあるのだろうけど、春に来た時の明るさと喧騒がイメージとして残っていたので、まるで別の町のように感じられる。

念のため――すぐ左に折り返し、福田寺への階段を上ってみる。

鹿島山と田口の町
鹿島山と田口の町

まあるい鹿島山や、ギザギザの岩小谷山を見て、この地が田口だということを確認する。視線と同じ高さには田口の街明かり。

道は繋がった。目的地到着をもって、今日の歩きは終了。








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田口~田口-(豊鉄バス)-本長篠駅=(JR飯田線)=豊橋駅…

設楽事務所前
設楽事務所前バス停
田口
国道の貫く田口の町並み

さて、帰ろう。

国道を南へ――田口バス停へ向かって歩く。

途中、右手に県道33号への分岐を見送る。ここから、あの段戸裏谷まで繋がっているんだと思うと感慨深い。

もちろん、半年前にこの地に来た時はそんな思いなど持ちようはなく。歩いてからこそ感じられる実感。

SPAR
日曜定休のSPAR田口店。今日は土曜日
コミュニティプラザ
バス停脇のコミュニティプラザしたら

途中にコンビニのSPAR。その店明かりに吸い込まれそうになったけれど、今日は何故だかストイックな気分になっていたので、そのまま通過。

5分あまりで田口バス停に到着。バスがやってくるのは、さらに20分後。

田口バス停
田口バス停。豊鉄バス、町営バスの二本
奥三河郷土館
奥三河郷土館の建物
新城病院前行きバス
豊鉄バス・新城病院前行き

――寒い。夕空は晴れ渡っており、放射冷却で急激に冷え込んできた感じだ。もしかしたら気温は5℃を切ったかも知れない。……やっぱり、SPARに寄って温かいものでも買っておくべきだったか、とちょっぴり後悔。

椅子に座って、震えながらバスを待つ。もう一人、おばちゃんがやってきて隣に座った。かたことの、当たり障りの無い会話を交わす。寒いですねえ、ということでは意見一致。

バスもやってきた。PM6:06発の本長篠駅経由・新城病院前行きだ。今日の最終便。

冷気から逃げるように乗り込む。バスは、発車時刻まで少し待ってから、発車。

 


本長篠駅バス停
本長篠駅バス停
JR本長篠駅
JR飯田線・本長篠駅

バスは闇の中、南に向かってひた走る。昔は本長篠駅から三河田口駅まで鉄道が走っていたというけれど、現代ではバスが動脈。

乗り過ごさないよう、眠るのを堪えるのにえらく苦心する。眠ったら、確実に新城病院でお目覚めだ。

40分少々で本長篠駅に到着。無事、降車する。バスターミナルから駅までは歩いて2分ほど。

京都散策
京都散策のパンフ
鳳来寺山もみじまつり
鳳来寺山もみじまつりのポスター

そして、電車が来るのに30分ほど待たないといけない。駅の自販機で買った温かいココアを飲みながら、待合室で列車を待つ。

――今日は少しだけだけど紅葉狩りが出来た。秋はこれからが本番、とりあえず1ヵ月後ぐらいに鳳来寺山コースを歩くことは予定している。あとは……京都。鞍馬から大原まで、東行コースで歩き直そうと思っている。そちらも、紅葉シーズン狙い撃ちだ。

飯田線
飯田線車両。JR豊橋駅にて

でも考えてみると、今年の秋の週末はあと5回しか無い。祝日を計算に入れても、休日出勤・悪天候なども当然あるだろうから、やっぱり出かけるチャンスは4~5回くらいか。つくづく、1年が短いと感じる。

飯田線の車内では眠った。1時間ほどが一瞬で過ぎ去る。豊橋駅で乗り換えて、また眠る。明日の鋭気を養うために……。

 

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