- 岩稜を越えゆく道-
【踏 行 日】2007年5月下旬
【撮影機材】OLYMPUS E-410, ZD14-54F2.8-3.5, ZD40-150F4-5.6, ZD50F2, CASIO EX-P505
今回は計画にかなり時間をかけた。
何と言っても、岩古谷山には良い気候/天候/時間帯に登りたい。宇連山もそうだ。なにしろ、宇連山は東海自然歩道で富士山が見えるポイント(おそらく)だからだ。田口から宇連山まで一気に進む。そして尾根を伝ってJR三河槙原駅へ下山する。これが最終決定。
早朝の新幹線に揺られながら、本当にこの計画で行けるのだろうか、と考える。270km/hで進む列車の車窓には、雲が千切れて青空がその面積を次第に増やしていく光景が映っている。
少なくとも、天候は目論見通りになりそうだ。……計画の前提条件。
JR飯田線のイメージは南アルプスと中央アルプスの間を切り裂く縦貫ライン。その大展望に憧れつつ、今まで乗車したことは無かった。だけどいつか、ゆっくりと列車の旅をしてみたいと思っていた。
――そして今回、飯田線に乗る。
とは言え、行く先の本長篠駅は100近くある駅のたかだか18個目。さらに今日中に21個目の駅、三河槙原駅に歩き抜けて終了。ちょっと残念だな、と思いつつ、JR豊橋駅のもっとも北の短いホームに立った。
二両の電車に揺られること一時間。単線のため数駅に一回、対行列車の待ち合わせが入る。車内の席はそこそこ埋まったまま、車窓も人里の風景が続く。
JR本長篠駅は、そういう意味ではまだ都市部郊外かなという印象。出口は一箇所だけど駅舎は立派で、駅前には民家が立ち並ぶ。
さてバス停は、とキョロキョロ見回す。
……が、見当たらない。ヤバい、バスが出るまであまり時間が無い、と焦りつつそのまま真っ直ぐ歩くと、ものの100mでバスターミナル。沿った国道151号線には結構な車の往来がある。
広々としたバス停車場の隅に、ポツンとバスが一台、待っている。
乗車。AM10:25にバスはゆっくりと動き出した。
伊那街道を走る。バス車内には5、6人の乗客がいる。結構使われてる路線なんだと思ったら、さもありなん、10分ほどの鳳来寺バス停で全員、降りていってしまった。残されたのは、運転手と自分のみ。
乗客を一人を乗せたバスは、さらに30分、山あいの道を右に左にと進んだ。乗ってくる人もいなければ、当然降りる人もいない。最後に上り坂を登りきると、街道の雰囲気。田口の町だ。
終点・田口バス停到着。降車。
陽が燦々と照っている。もう五月下旬という、夏至まで一ヶ月しか無い時期なので、AM10時でも太陽の位置はかなり高い。それでも、標高が460mあるため暑いという感じでは無い。涼しくも無いけれど。
いくつかある自販機で飲み物を購入。コンビニは休み。
街道を北に進む。街道、と言っても天下の国道。行楽客と思しきマイカーが多い。バイクが序列を組んで走り抜けて行ったりもする。
北に進む。設楽事務所を過ぎ、警察署を回り込むと、東海自然歩道との合流点。
いつもの指導標を探したが見当たらない。だが、すぐに道脇に案内板が見付かった。
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AM10:13。空は五月晴れ。
国道を背に、ごくごく短い福田寺参道を前にする。今日歩くのはちょっとハードな山岳コースだけど、まずはそのオードブルの丘越えというわけだ。
細い路地を足を踏み入れる。
と、すぐに福田寺到着。境内には気持ちの良い木陰があって、そこでは気温がスッと下がったかのような錯覚を覚える。実際、気温が違っているのかもしれない。
奥の方を見ると、庭園と木造「東海自然歩道 便所」がある。それと、目立つように立てられた東海自然歩道コース案内板。「東京まで405キロ、大阪まで599キロ」という標示が付いている。
――そう、ここは東海自然歩道本コースの 6:4の地点と言うわけだ。思えば遠くへ来たものだ。
……などという感傷も良いいのだけど。なにせ、今日はまだ歩き始め。
裏手の墓地に回り、武田信玄のものと言われる小さなお墓を参る。病で国に帰る途中、本寺で療養中に死去。
ただ、資料消失で真相は不明らしい。あの武田信玄公の墓がこんな地味なものと言われたら、そりゃあ、疑いたくなるのも筋だろう。
福田寺境内の端から山道に入る。いよいよ本格的な山道か……。
ところが登りはあっけなく終わって車道に出る。林間の木漏れ日の落ちる道。車の往来は無い。
歩いていくと何度か分岐があった。ただ、たいていは案内標識があるので間違えることは無かった。
上り基調で進み、いったん、西方への眺めが開けた地点に出る。標高530m、丘の最上部、という感じだ。とは言え、直ぐに木立に隠れ、あとは道は下り基調。
林間から抜け出すと再び見晴らしが良くなった。田口の町だ。学校も見える。
ここからは本当に鹿島山がきれいなドーム型に見える。実は鹿島山は大鈴山稜線の派生ピークに過ぎない、と知っているけど、それはそれ。
田口の町には戻らず、コースは左折して車道を再び緩やかに上っていく。田口ともお別れだ。
さらに左折、すこし先で指導標に従って山道に入る。
しばし、林の中の下り。やがて木々を透かして正面、国道が見えてくる。その国道に沿って北に進み、すぐに合流。
車の往来はそこそこ多い。しかも、直線路ということもあってスピードを出してくる。あまり気分の良いものではない。
とは言っても、国道歩きは150mほど。すぐに小松口バス停が見えてくる。仲良く、東海自然歩道コース案内板もある。
時刻表を見ると、一日に田口行4本、稲武行き5本。
AM10:50、小松口。田口より2.2kmの地点。
思っていたよりペースが遅い。もう少し頑張って歩かないと今日のコース踏破も心許なくなる。
国道と別れ、右の小松集落へ上っていく車道に入る。商店があって、自販機もある。暑くなりそうなので、ここで飲料を一本追加購入。
曲がりくねりながら上る。道脇には民家が散在し、道端には色とりどりの花が零れ落ちている。まさに春だ。
周囲は茶畑が目に付くようになり、開放的な道となる。正面には鹿島山の丸い山頂部があって、この山の山腹を登っているのだということが実感できる。
そして、背後に奥三河の山々がせり上がってきた。どれものっぺりしていて鋭鋒は無いけれど……あれが寧比曽岳だろうか。
さらに高度を上げていく。
AM11:03。三叉路に突き当たった。中熊バス停がある。
標高529mの地点。東海自然歩道のコース案内板もある。大道寺はこの上。
案内板には「右手方向の岩古谷山・鞍掛山・塩津温泉までは800m級の尾根歩きで、展望は良いが大変険しいコース」とあって、否応無く期待が高まる。と、その前に…
厳しい傾斜を上って、大道寺に立ち寄る。途中、振り返ると奥三河の素晴らしい大展望が目に入った。
引き返して、車道を南方向に歩く。すぐ分かれ道があって、左。カーブを描いて山肌を上がっていくが、道標が茶畑の脇を上っていく小道を指し示しているところで車道と別れる。
山道。きつい上りに、今日初めて休止をとる。
そして、ヒーヒ言いながら登っていると、デカいレンズ付けた一眼カメラ手にした一行が下りてきた。一体、こんなところで何を撮るの? と、思う間も無く林道。
鹿島山のお中道とでも言うべき道を南へ進む
さらに分かれ道を左。砂利道となる。展望など望むべくも無い深い林の中を進む。ただ、アップダウンはほとんどなく、落ち着いて歩ける道。
左手に鳥居が見えて、守護神社到着。標高710mほど、そして東京まで、ちょうど400km。
もし今日が田口-和市歩きの計画であったら、鹿島山(912m)、そしてその先の大鈴山(1,012m)まで足を伸ばすことだろう。しかし、今日は時間が無いのだ……時間が無くなるような計画を立てるのが悪いのだけど。
林道脇に道標。下降点だ。
山道を急下降していると、下方に休憩ベンチとともに "何か" が現れる。
水場だ。清流が苔むした木の樋を伝って、流れ落ちている。
手で掬って、喉に潤いを補充――うまい。水場の水の美味さは、そのシチュエーションに依るところが大きいと知っていつつも、うまい。
5分ほど休んで、再び急斜面に付けられたジグザグの山道を下り始める。
200mほどの高さを一気に下るのだから、勿体無いったらありゃしない。林道を越えながら、ひたすら下る。
ようやく展望が開けたと思ったら、そこはもう和市登山口。田口より5.9km。
駐車場は満車だ。そしてその岩古谷山も見える。岩峰、と思い込んでいたけど、実際は緑が濃い。
指導標は左折を示し、車道には下りずに山裾を巻く方向を指している。
久々の展望を味わいながら歩いていくと、すぐに緑に囲まれ展望は閉ざされる。
駐車場から伸びてきた道と合流。
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