前回、ライン大橋通行止めの憂き目に遭い、迂回路を通らされた挙句、犬山城にも寄れない、という悲しい出来事があった。犬山コースと言いながら、その最重要スポットをすっ飛ばしてしまったのだ。
その日、家に帰ってから早速調べた。
「ライン大橋補修工事 通行止め期間 平成18年10月2日~平成19年3月29日」
「ただし、歩行者・自転車は11月から平成19年2月中旬まで通行可」
な、なんと歩行者の通行止めは2月下旬から3月いっぱいの僅か1ヶ月少々の間。自分は、その期間をまさに狙い澄ましたかのように歩きに行ってしまったという訳だ。なんたる不運!
――そして季節は進んでサクラの季節。再びこの地に歩き直しにやってきた。
ところが名鉄名古屋駅で乗る電車に迷って逡巡。この名鉄地下駅は、初心者には本当にハードルが高い。いつも迷ってしまう。
そんなこともあって、鵜沼宿駅に着いたのはAM8:20。やや出だしが遅れたけれど、仕方ない。
駅から出る。このまま線路に沿って東に向かえば、東海自然歩道とは垂直にぶつかる筈、とトコトコと歩き出す――
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大安寺川の土手の遊歩道に到着。時刻はAM8:29。
ここから東海自然歩道歩き再開だ。もちろん、ライン大橋補修工事がもう終っていることは確認済み。前回渡れなかったライン大橋も、問題なく渡れる筈。だから、今日はリベンジという位置づけ。
天気は絶好。桜の咲く時期に青空というのは、とてもありがたい。現に、大安寺川河岸に並んだ桜の満開の花が、青空をバックに良く映えている。つい一ヶ月前には枯れ木並木のようであったのに、つくづく春の力は凄いと思う。
そんな大安寺川の春景色を見ながら、下流へ向かって歩いていく。と――
またもや歩道工事中。一ヶ月前から状況は変わっておらず、同じ迂回を強いられた。人間の力は大したこと無いなあ……。
木曽川に当たった。当たり前だけど、犬山城も逃げずにちゃんとそこにある。
それを確認して、河岸にある休憩所で早くも休憩。なにしろ前回来た時とは雰囲気が一変している。木曽川も、今は春の陽射しにまどろむかのよう。
――こうなると、一瞬で通り抜けてしまうのが勿体無くなる。
とは言え、滞留はNGだ。川下側にあるライン大橋へ進む。
歩行者用通路はまだ整備中で通行止めであった。だけど、車道は歩けるようだ。現に歩いている人も何人か見える。当然、車も通っていくけれど……。
ライン大橋を渡り始める。因縁の、ライン大橋。
――木曽川は広い。渡り切るのに5分掛かる。その間、見える角度を変えていく犬山城。
渡り切った。これで、岐阜県を脱し、愛知県犬山市に入ったことになる。と言っても、この県には前回、迂回路を通って到達していたので、とりたてて感慨のようなものは無い。
左折して、木曽川に沿って戻るように進む。迎帆楼前の道へ――と、雰囲気がまた変わる。白い迎帆楼の建物と、淡いピンクの桜並木の列。きっと、今が一年のうちで一番良い時なのだろう。
ただ、無常にも道標はその前で右折を指示している。眼前の光景を振り切って、そちらへ。紅橋が上を渡っている。その手前、石段を上がる。
――出たところが犬山城の入口であった。「国宝・犬山城」の大きな石碑。大勢の人出、城の前には出店が並んでいる。完全に観光地の雰囲気……というか、こうなるともう、ほとんどお祭り状態だ。
天守閣の方向へ進む。常緑樹の森の木陰の道をどんどん上っていく。考えてみると今日最初の上りだ。標高88mの三光寺山登山。
と、料金所が現われた。一般は¥500。向こうには鉄門が見えている。……桜も咲いている。たぶん、今日は城内は最高の雰囲気になっているだろう。
でも――ここまでで引き返す。
別に入場料が惜しいわけじゃない。東海自然歩道歩きのついでに寄って一瞬で出てきてしまうのは、あまりに勿体無いと思ったからだ。どうせなら、ちゃんとこの城を見る目的でまた来たい――と、今日は自分の中にマーキングしたのみ。
でも、そんな"マーキング"ばかり、随分と溜まってきたような気もするけど……。
下りていく途中、針綱神社に寄る。
再び城の外に出る。
……なんか、また一段と人出が増えたような気がする。城前の車道は車両通行止めになっていて、歩行者天国状態だ。
城と反対側の犬山神社、城内の三光稲荷神社、猿田彦神社と、回る。でも、寺社の境内にはあまり人がいない。そう言えば、犬山城天守閣自体、盛況という感じではなかった。なんか、無駄に人出が多いような気がするけれど……。
と、思っていたら道の向こうから何かがやって来た。
山車だ。それも、1つ2つじゃない。威勢よく練り歩いてくる。祭りのような雰囲気どころか、今日はホンモノの祭りの日――犬山祭り開催日であったのだ。そんなことはまったく、思いもよらなかった。
これまでの東海自然歩道歩きに地元のお祭りが絡んできことは無かった。というのは、うまく遭遇機会を持とうと努力をしても、どうせ一瞬で歩き抜けてしまうのであまり意味が無いから。
なので、今日のは、ちょっと意表を付かれた。コースの一部を歩きに来た、ということしか頭に無かったので、この祭りの雰囲気がストンと胸に入ってこない。目の前で繰り広げられている光景が、なにかテレビで流れている映像を見ているような錯覚を感じてしまう。
何台かの山車が転回して離れて行った。それでも山車は次々とやってくる。
――でも、今日は東海自然歩道を歩きに来たのだ。こちらも、そろそろこの地から離れよう。
郷瀬川沿い、犬山城周縁の桜並木の道を抜けていく。相変わらず、雰囲気が素晴らしい。やっぱり、この犬山コースは東海自然歩道中盤の花形コースだと確信する。
木曽川に当たる。そのまま道なりに進むと車道と歩道が分離される。立ち並ぶのは満開の桜の樹。木曽川沿いの遊歩道、犬山橋を目指して歩いていく。
歩道には人出が増えていく一方。犬山遊園駅方面から犬山城に向かう人の流れがかなり強い。犬山祭りを目指す人達だ。
ただ、陽射しも弱まってきた。見上げると、青かった空が急速に雲で白み始めている。やっぱり今日は花曇なのか……。
逆に考えてみよう。この天候不順な季節でも、犬山城区間を歩く間だけ、空は絶好の青空を見せてくれたんじゃないかと。
さらに、同じように考えてみる。前回、数十年の内に40日ほどしか無いライン大橋通行止め期間を引き当て、自分はとんでもなく不運だと思っていたけれど……それは今日、この素晴らしい日に犬山城区間を歩かせるための布石だったのでは無いかと。仮に前回、ライン大橋を無事渡れていれば、この桜と祭りの犬山城を、自分はきっと、一生知らないままであったのだろうと。
――AM10:09、迂回路との合流点、犬山橋に到着。これでやっと道が繋がった。ここから先は既に歩いた道。
最後、犬山城を一瞥。春爛漫の犬山城。
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急ぎ足で、名鉄・犬山遊園駅へ向かう。
――なにしろ、今日は(じつは)まだ始まっていない。何故なら、これから別の場所に飛んで、東海自然歩道の1コースを新たに歩くからだ。
そう、犬山城歩きは今日、かなり強引に組み込んだスケジュール。ちょっとした朝の寄り道に過ぎない。
――それにしてはもう午前10時を過ぎてしまっているのだけど。計画では鵜沼宿~犬山遊園は1時間以内に歩けることになっていたのだけどなあ。色々と引っ掛かる物が多過ぎた。まあ、道中、充実していたと言うことなのだけど……。
もっとも、その本チャンの東海自然歩道歩きも(じつは)まだ始まらない。その前にもう一箇所だけ、寄り道する場所があるのだ。だって、桜の時期にわざわざ高い交通費を払って遠征してきて、一箇所だけ桜見物して帰るなんてそんな贅沢はとても出来ない。回れるだけ回ってやろう、という魂胆。
サクラはもっと、平穏な気持ちで見やるものでは?と自分に突っ込みつつ――犬山遊園駅の改札を潜る。やって来た名鉄列車に乗り込んで、次の桜の咲く地へと。
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