←前のコースへ戻る |
![]() |
PM0:53、犬山橋。
正確には犬山橋南の橋桁の下。犬山城は背後だ。すでに愛知県内、この先で木曽川からも離れ、南へ向かって一気に距離を稼ぐ道となる。
県道185号に上がって、日本ライン下りの案内所(休憩所)を見ながら木曽川の左岸車道を進む。途中、藪に埋もれるように「犬山うかい」の解説板。
右折、川から離れる。
さらに左折すると犬山遊園の敷地内だ。ジェットコースターが頭上を通っていたりする。東海自然歩道にあってこの雰囲気というのは、なかなか貴重だ。退屈さが減じる。
もう少し進むと日本モンキーパーク入り口もある。イベント案内には「ポケモン」。確かに「モン」は被っているけど……。
ちなみに、犬山遊園と日本モンキーパークの関係が良く分かっていない。付近にある名鉄の駅が「犬山遊園」だし、遊園というと公園地一帯の、少し広い意味になるのかな、なんて思う。
そして、その遊園の東側の車道に突き抜けた。道の向こうには駐車場。
ここを左折して、再び木曽川の方角へ向かう。ただし、木曽川に当たる直前で、コースは鋭角に右折していく。
雑木林の小路を歩いて行くと、すぐに犬山国際ユースホテル。
なんと、ユースホテルの解説板があって「だれでも気軽に利用できる」とある。東海自然歩道ウォーカーの憩いの宿にもなるのだろうか?
坂を下ると別の車道に合流。車の往来は無い。そこに立っていた指導標には、ユースホテルが“リバーサイド犬山”という赤のデザイン文字で示されていた。こんな宣伝じみた東海自然歩道の道標も珍しい……。
それほど推すなら泊まってみたくなるなあ、なんて思いながら森の中の車道を進んでいくと、朱色の橋が現われた。その先、コース入口案内板と寂光院参道入口が見える。
――そしてここにはコース迂回路の貼り紙もあった。反対側には見掛けなかったものだ。もっとも、自分の歩いて来た道筋は示された迂回路と同じものだった。そりゃそうか、橋は二本しかないわけだし。
歩行者のライン大橋通行止め期間はええっと……H18.11.1~H19.2半ばと書いてある。今は……3月。ひょっとして通れた!? いや……確かにライン大橋は歩行者用通路もバリケードされていた。どっちかがウソを付いている。これは家に帰ったら調べないと。
それだけ記憶して、寂光院の階段を上がり始める。
階段の長さは大したことは無く、すぐに広場に出た。
ここには茶屋もあって、休憩には良さそうだ。
境内案内図でコースを確認。この案内図では東海自然歩道が通っていることを全面に押し出している。これも珍しい。遙か遠く、滋賀は石山寺の参道にも東海自然歩道の標示があったことを、ふと思い出す。
階段を上り始める。
今度は、長い。白いのぼりがはためき、厳かな雰囲気があるものの、視線はどうしても足元になってしまう。まあ、ここまで大した上りもなかったので、良い運動だ。
高度差も50mはあるだろうか。ちょっとした山登りだ――息を切らしながら上り切って、寂光院の本堂のある広場に着いた。
人の姿はほとんど無い。シーズンを外れているからだろうか。
そして、仏像の立っている円形の広場に気を惹かれる……あれはひょっとして、展望台だろうか?
確かに、展望広場だった。見晴らすと、犬山遊園がまず手前にあって、その向こうは木曽川、さらに犬山の扇状大地、岐阜~名古屋の都市郡。
――もう少し高度が欲しいところ。
東海自然歩道は本堂の裏側から続く。幾つか建物を見て、山道に入る。
ようやく山に登っているぞ感。道は良く、木々越しの見晴らしもある。
途中、日本ラインの解説板。「前方に見えるのは…」という書き出しになっているのに、その木曽川は木立の間。
最後、やや急勾配になったものの、すぐに継鹿尾山頂に到着。PM1:55。
件の三角点がある。それと「東海自然歩道」自身の解説板。しっかり1,697kmと表記されている。
ベンチとコース案内図、あずま屋もあって、木立に囲まれた山頂でそちらの展望だけが開けている。
素晴らしい展望だ。伊勢湾と名古屋の都市群、木曽川を隔てて岐阜の街、金華山、伊吹山、そして東海自然歩道が続く養老山地。空気が澄めば鈴鹿山地も見えることだろう。中京圏がまるで箱庭のよう――。
ただ、けっこう風が強い。木々がざわつく。さあ、下山だ。
最初こそ急階段だけど、すぐにアップダウンの多い稜線上の道になった。鼻歌混じりで歩ける、爽快な道。……ただ、空がどんよりと曇ってしまった。青空が見えないわけじゃないけど、雲の絶対量が多い今日の空。
すぐに次の休憩所。解説板もある。気のせいだろうか、木曽川を渡って愛知県に入ったとたん、解説板をやたら目にするようになった。いつもの楽譜台のような木製解説板だけでなく、「ききなし」「森林を守る野鳥たち」というステンレス製のものもある。
で、早速頭の中で“愛知県は説明好き”というキャラが付く。
低山の稜線をさらに東へ進む。北東側には美濃加茂・可児の町が広がっているのが見えて、東海自然歩道のコースはその合間の緑を手繰るように引かれていることが一望される。
「沿線の自然は法律によって保護されて、都市化から自然の防波堤の役割も…」
高度経済成長期、“緑の防波堤”として東海自然歩道を造成しようとしたことが良く理解できる。
小気味良いアップダウンの山道が続く。丸太階段が多いけど、勾配は大した事ないので軽快。
恵那コース分岐点はこの先だ。でもまあ、東海自然歩道の要所って地味だから変哲無いのだろうな、と予防線を張っておく。
山道から林道に出た。林道と言っても車の入った気配は無い。もう少し進むと樹林の中の十字路。果たして……。
![]() |
恵那コースへ進む→ |
恵那コース分岐点。PM2:22。
地味だ! 指導標が4つばかし統一性無く立っているだけ。コース案内図も"支線分岐点"標示も無く、申し訳程度にベンチがあるのみ。まあ逆に東海自然歩道「らしい」ってことで……。
右折して本線を進む。樹林の間をゆるく下る、林道というには細すぎる道を進んでいくと先が開けた。公衆便所の先に――大洞池だ。
ここにも解説板があるけど文字は消えかけ。池の北面に沿って進む。
ダートの林道から竹林の舗装道、そして左手に立ち並ぶ墓地を見ながら進むと前方の空間が開けた。眼下には白梅林、その向こうには幾つか民家が建つ――人里に戻ってきた。
この道は近い将来、恵那コースを歩く時にまた通るだろうな、と思いながら歩く。陽徳禅寺を回りこむとコース案内板の立つ交差点。
そのまま、熊野神社に上がる階段の入り口にもなっている。そして、その脇にはまたしても東海財団のステンレス製解説板。
今度のお題は「このあたりの地層」。よくもまあ、ネタを探し出してくるものだと感心する。
熊野神社の真っ直ぐな階段に惹かれつつ、反対方向の善師野へ向かう。
民家の間の舗装道を進んでいくと、突然、「迂回路」の道標。すぐ向こうに名鉄の線路が見えているのに、何を迂回するのだろう?
指示に従って左折、迂回路へ。もう一度道標を捉えて右折、名鉄線路脇の道を東へ。左手にこんもりと見える森に白山神社。
――その裏は新興住宅地らしい。森が切り開かれて住宅地に変わる。「法律によって保護された」緑地帯、東海自然歩道の脇でちょくちょく見る光景。
踏み切りを渡り、両脇に田を見ながら民家の間の道へ。
すぐ地道に変わる。平屋池を過ぎてすぐに車道を潜るコンクリートのトンネル。4車線の名濃バイパスだ。やがて完全に樹林の道となってアップダウンも出てくる。と、こんどは歩道橋。その下は尾張パークウェイが走っている。
せいぜい標高160mほどの"丘"だけど、それにしては気持ちの良い山道が続く。
どうしても午前中に歩いた岐阜県側と比べてしまうのだけど……愛知県コースでは、東海自然歩道の雰囲気をしっかり残していこう、という意思を感じる。そんな、ハッキリした感覚では無いけれど。
見晴らしのある地点に出た。北東方向、視野は広くないけれど雪を被った山々が遠望される。3月の自然歩道歩き、雪を目にすると一気に季節感が出るから不思議なもの。冬枯れ・日溜りハイキングも決して悪くないけれど、雪道も久し振りに歩きたいなあ、なんて思う。
――と、車道に飛び出た。ひかり学園まで200m、とあるけれど、本線はその逆方向。
再び、尾張パークウェイに行き当たった。それに沿って進み、今井料金所手前のインターチェンジの車道を潜る、長いトンネルを潜る。
そこを抜けると右手に今井料金所が見えた。ちなみに尾張パークウェイは犬山遊園付近から入鹿池手前まで延びている有料道路。従って、今日のお付き合いはもう少し続くことになる。
その先は丸山池。そして、県道461号にぶつかる。今井丸山だ。PM3:25。
名鉄バスと岐阜バスコミュニティの今井丸山バス停がある。リトルワールド路線。
パークウェイに沿って進むけど、いかんせん山間の狭い空間、すぐ山際にぶつかって、左折。パークウェイの高架を潜る。
と、その直後に右折、墓石と竹林の見える道に入っていく。ここからまた暫くパークウェイとお付き合いだ。
墓石群の脇に、東海自然歩道のコース案内板。
ダート道を進む。背後からは西日が射す。もう、午後もかなり深い。右手には、付かず離れず尾張パークウェイ。直接は見えないけれど、時折、車の走る音が聞こえる。
広い休憩所が現れた。歩道橋があるのでそちらに立ち寄って、パークウェイを見る。相変わらず交通量が少ない……。採算取れているのだろうか、と人事ながら心配になる。
緩やかに上っていくと、やがて現れたのは鮮やかな緑の――牧草だろうか、脇に公衆トイレと「県営パイロット」の標示。ここで林道から離れ、南下の開始だ。
山道。森の密度が濃くなり、細かいアップダウンが現れて山深さも出てきた。日も傾いて来たので、自然に早足になる。
いったん車道に下り立つが、コースは車道を跨いでさらに南に続いていく。車道を少し東に少し寄り道してみると、開けた空間に農場の建物が点々と見えた。
コースへ戻り、山道を進む。道は蛇行し、アップダウンも多い。
――とにかく植樹林帯で無いのが良い。丈高い人工林の下の歩きは、長時間続くと辛くなってくるので。
と、「クマに注意しましょう」の貼り紙。「今年は例年になく、豊田市・設楽町において目撃情報が…」
「今年」って、いつやねん!
コースは標高200m前後で続き、あまり変わらない。山じゃなく、丘陵地帯と言うべきだろう。それでも、細かい昇降は体力を奪っていく。
それに、南下に入ってから帰りのバスの時間を意識して歩を早めている。もちろん長時間歩行の疲労も嵩んでいて、結果、けっこうバテ気味。入鹿池が遠い……。
林道に出て、舗装道に出て、また「開拓パイロット」の標示板。開拓パイロット区間はここで終わり、という意味だろうか?
再び山道。少し寒くなってきたかも知れない。また、車道。とにかく、細かい分かれ道が多い。指導標完備なので迷うことは無いけれど、やや忙しない。
南へ進む。日は西、右手横から照りつける。百度石(?)を過ぎると木造公衆トイレがあって、その先、すぐに鞍馬教会。
と言っても長い階段の上にあるらしい。時間が無いのでパス。東海自然歩道と教会の取り合わせも珍しかったのだけど。
京都鞍馬寺との関連も気になる。鞍馬天狗らしき石像……。
ダートの車道を大きく下る。日は翳る。駆け足。
道が平坦になると、右側に県道49号が合流してくるのが見えた。
そこにコース案内板。「展望のすばらしい鞍馬教会」云々の文字を見て忸怩たる思い。やっぱり寄っておけば……。
とは言え、バスに乗り遅れて「寄らなければ良かった」と言うオチになりかねないほど、時間、ギリギリ。
PM4:47、入鹿池到着。
日本で2番目に大きな人造池。さすが、見た目はまんま湖。黄昏ていてどこか物悲しい雰囲気。
眼前、赤い入鹿大橋が大きい。車がうなりを上げて走り抜けていく。その橋の手前、東海自然歩道は東に曲がっていく。
そちらに進むのはまた次の機会。今日はここでおしまい。
![]() |
先のコースへ進む→ |
おしまい、だけれど歩きは未終了。むしろ本番かも知れない。
なにしろ、ここから対岸にある明治村のバス停まで歩くというミッションが残っている。日本で2番目に大きな人造池の肩書きのある池、回り込むのも一苦労に違いない。しかも、距離的には1時間欲しかったところなのに、バスの発車時刻まで、もう残り50分しかない。
そんなわけで、時々小走りも交えながら歩く。池の東側……この一辺で走る体力は尽きた。南側……なぜか野犬が道を塞いで吠え掛かってくるものの、強行突破。西側……もう脚が限界、吊りそう!
――入鹿池に素晴らしい夕景が訪れていた。その光景に勇気付けられながら、必死に足を運んでいく。
ようやく明治村手前まで来る。なんとか間に合いそうだ。そう思い、夕陽の当たる入鹿池を見収める。
――今日は日中、雲が日を隠すことも多かったけれど、結果として晴れてくれたと言える。目的地まで歩き終えた後、帰りの道を夕陽の赤い光で飾ってくれるのは、何にも変え難いご褒美だ。犬山城こそ寄れなかったけれど結果オーライ、また次に来ればいいさ。
最後に景色の閉ざされた車道を上っていくと、広い駐車場スペースに飛び出した。その奥にある洒落た門が明治村入口だろう。到着はPM5:32。
当然ながら今日はもう閉園している。バス停に停まっている犬山駅行きバスも発車間近。とにかく、間に合って良かった!
バスに乗り込む。
バスは走る。郊外から市街地へ。
20分ほどで名鉄犬山駅に到着。ここからは名古屋にも岐阜にも出れるけれど……岐阜行き列車を選択。帰りは出来る限り安く上げたい。どうせ、車内では寝てしまうことだろうし。
――もちろん、その通りとなった。