- 木曽川の道 -
【踏 行 日】2007年3月中旬、4月上旬(犬山)
【撮影機材】OLYMPUS E-1, ZD14-54F2.8-3.5, ZD50-200F2.8-3.5, CASIO EX-P505
今日はいよいよ岐阜県を脱出して、愛知県に入る。見所はズバリ、犬山城だ。
――ただ、どうも天候が芳しくない。3月中旬という、あまり天候の安定しない季節なので仕方ないといえば仕方ないのだけど。
JR岐阜駅の前は工事中だった。空中歩道を通って北東、名鉄岐阜方面へ進む。
地上に降りて、名鉄バスターミナル。岐阜バス・せき東山行きに乗り込む。名鉄美濃町線は廃線となったけど、名鉄と並行して走る国道156号には1時間当たり3~4本のバスの便があり、アプローチは比較的楽。
バスの客も街中らしく乗降も多い。交差点も信号も多く、本当に時間通りに着くのかなあ、と心配していたところ、北東へ延びる国道156号に入るとバスは快調に飛ばし始めた。周囲はたちまち郊外の風景へと変わった。
下芥見バス停に到着、下車する。
前回、夜道で下芥見手前でコースをすっ飛ばしたので、今回はその地点まで戻って歩き直しをすることにする。時間を多少ロスするけど、今日は余裕があるので大丈夫だろう。
というわけで、国道を渡る東海自然歩道の歩道橋を尻目に、コースを逆行。……やっぱり、夜と昼では印象が違う。今のここは、変哲の無い郊外住宅地。
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AM8:10、下芥見住宅地のT字路でスタートラインを切る。そんな線、どこにもありゃしないけど、気分、気分。
もう少し晴れてくれそうな天候なら良いのに、と思いながら、左折して北東に走る国道の裏道(旧道?)に。
2つ目のY字路で右折、ほとんど戻るように南下すると、すぐに先ほどのバスを降りた国道。以上で歩き直し終了。
国道と平行に旧・名鉄美濃町線のレールが走っている。
――二度と列車が走ることの無い線路というのは物悲しい。役目を終えて横たわる線路。自分は廃線マニアではないので、出来ればあまり目にしたくない類の光景。取っ払われて土地再利用されるならまだしも、放置され、錆ゆくばかりというのは退廃の象徴に思えてしまう。
と、言いつつそこに草などがイイ感じに生えてきたりすると、それはそれで「よい」と言ってしまったりする無責任な自分もいる。所詮、一時のパッセンジャー、目に入るのはその土地に滔々と流れている“時”の一瞬でしかない。
国道の歩道橋を渡る。真新しいグリーンの橋体で、廃線レールと国道を一気に二つ、飛び越える。
歩道橋の上から周囲を見渡すと、ポコポコと小山の立つ光景。前の区間もそうだったけれど、濃尾平野北部のこの特徴的な地勢はお気に入り。
さて、歩道橋を渡り終わったところから今日の歩きは本番だ。まずはそこにある指導標に従い、細い道へ進んでいく。さらにもう一度、指導標を捉えて、今度は鋭角に左折。
暫く山際を歩いて十字路に達する。そこからは引き離した筈の国道がまた見えている。この辺り、鋭角に曲がってばかりなのでどうも歩行効率が悪いらしい。
十字路は右折。田畑が広がり見通しが利くようになる。街路樹付きの立派な歩道を少しの歩いたところでコースは左に逸れる。
さらに細かく左、右と曲がって、自動車学校へ向かう。正面には、木々が疎らな権現山。
右に老洞トンネルを見ながら進んでゆく。
この時間、自動車学校もまだ始まっていない。静かで、ただ無駄に広い空間。教習コースのアスファルトが黒光りしている。
左折して、さらに右折――道が細かいのはここまで。あとは東へ向かう一本道の筈だ。ずっと手に持っていた地図を、ようやくザックに仕舞う。
右手は再び住宅地。
少し進むと、東海自然歩道のコース案内板があった。岐阜県らしい――と言ったら良いのか――アバウトなコースマップ。名鉄美濃町線もしっかりと載っている。
「東海女子短期大学付属・東海第一幼稚園」と長い名前の幼稚園を右に見ながら、さらに進む。
相変わらず、どっちつかずの天気。この後、晴れるのか曇るのか……。一本道は楽ではあるけど、変化が無くてつまらないのでそんなことばかり思うようになる。
……と、道脇に立て札。「山火事跡地再生活動現場 どんぐり山」とある。「平成14年に約410haもの山林を焼き尽くした大火災があった山」
道理で。
焼け焦げた山を見るのは忍びない。ボランティアの活動で再生しつつあるということなので、じきに緑濃い山に戻ることだろう。
――クリーンセンターが見えてきた。建物の色が寒色系で、冬の冷たい印象が増している。ただ実際は、昨夜の雨でほどほどに湿度が高く、肌寒さはそう感じない。
峠道に入るところ、「当面の間、落石の恐れがあるため車両通行止め」との標示。
一方、「東海自然歩道は通行できます」ともある。東海自然歩道の歩行者には落石の恐れは無いのか、なんていう疑問も浮かぶものの、ともかくロープを越える。
ガードレール端には木の杖が何本か立て掛けてあって、実際、人の通行があるような雰囲気。
まあ車の通行による振動は落石を誘発するけれど、人の歩きは動物の歩き。そうそう山を怒らすようなことは無い。
……とはいえ雨がしこたま降った後だったりするとやっぱり怖い。道に石が散らばっていないことを判断基準としているけど、その点では問題なし。
勾配を緩く上っていった先に老洞峠はあった。到着はAM8:57。
この地点の標高は170mほど。下芥見からの高低差は140mぐらい。標高300m少々の権現山と北山との鞍部にあて、両山への登山道もこの峠から延びている。
岐阜市に別れを告げ、各務原市へ下る。
相変わらずの車道が続く。途中、再びロープを跨ぐ。一度、道がおおきくうねったものの、あとは東へ向かって真っ直ぐゆるゆると下る。
突き当たって、左に集合住宅を見ながら、右折。住宅の道を進んで須衛町の交差点に至る。星状の交差点で信号機もあり、渡るのに少し待たされる。
ふと見ると、山の端に日が当たっている。相変わらず上空に雲は多いけど、これは晴れて来るかも……。
指導標が三ツ池を指し示す道に入る。こちらも二車線道で、車の往来は多そうだ。
晴れた。
日が照ると世界が一変するのを実感。三ツ池の水面もキラキラと翠色に煌めいている。どうかこのままずっと晴れていてと願うものの……空に雲が多いのは相変わらず。
ちなみに、三ツ池はただの溜池。でも、公園風に整備されていて、散歩にはちょうど良い感じ。チラホラと人も繰り出している。陽射しに誘われたのだろうか?
右に池を見ながら進む。
3月。心なしか陽射しが暖かく感じる。春の先触れ――前はこういうのを小春日和、と言うのかと思っていたけど、じつは "小春日和"は秋の用語らしい。もっとも、日本においては気象用語の誤用は茶飯事というわけで、そのうち定義の方が修正されるかも知れない。
――長い長い年月をかけて意味を変えていく言葉も、相互作用のやたら多い現代ではあっという間。公共放送での誤用、若者言葉での意図的な意味挿げ替え。
三ツ池の2つ目を通過。ここには、ベンチつきの休憩所がある。「三ツ池公園」の立て札。
三ツ池の3つ目は木々の枝が邪魔でよく見えない。左には配水場。それ以外は深い林――標高128mの峠へ向けて緩やかに上っていく。車道脇にきちんと歩道が付いているので、車が結構なスピードで走ってくるものの危険は感じない。
歩道脇の林にピンク色の花が咲いている。ショウジョウバカマ?
山では雪融け後に良く見る花だけど、こんな人里でも咲くものなのか……。
峠らしき地点を通過。下り道に。
……また曇った。空は寒空、「小春日和」は返上。
林を抜け、最初に現れたのが各務原市北清掃センター。この建物も岐阜市東部のそれと同じく、綺麗で真新しい。
次に現れたのは「古代窯跡」の解説板。山の斜面を利用した窯跡、とのこと。
次は「シデコブシの丘」。福祉施設に併設された野外公園……というか、やたら福祉施設が多い。
T字路に突き当たって、右折。タマゴ直売所を過ぎて、鋭角に左折。
すぐに天狗谷遺跡。民家かと見まがうような建物の中が空洞になっていて、そこに剥き出しの窯跡が保存されている。建屋の横には、やっぱり民家の玄関のような扉。鍵が掛かっていて入れない。
柵に囲まれた庭(?)にも窯跡の遺構がある。解説板も立っている。
誰もいない天狗谷遺跡を離れ、階段を上って右折、用水池の前を進んで御坊山の懐へ飛び込む。――ここでやっと山道だ。枯葉落ち葉の道、ひとしきりの上り。やっぱり自然の道は落ち着く。
道脇にはツツジ。ベンチのある休憩所も現れた。ようやく東海自然歩道らしい光景になってきたぞ……などと思っていたら、道は早くも下り始めた。
やがて「駐車場へ300m」の標示なども現れる。
AM10:12、寒洞池に到着。
御坊山、北山、そして各務原ゴルフ場に挟まれた池で、標高88mの地点にある。それほど大きい池ではない。
池の北面を歩く。右手、網に隔たれた先は黄土色の絨毯のようなゴルフ場のコース。「ナイショー!」って、さすが休日の午前中。
ゴルフ場から離れると、前方からツアー客みたいな一団が現われた。手にしているものを見ると、どうやら野鳥探索の御一行らしい。
やがて道は幅のあるダート道に変わった。その先で「水辺の道」と書かれた道標を見つける。東海自然歩道のコースからは外れるけど、なんか律儀に指導標を追っているだけの歩きにも飽きてきた。というわけで、コースを左に外れ、そちら――水辺の道――に入ってみる。
これが "当たり"。湿地の上を渡る木道を歩いて、ようやく全方位の自然に囲まれた感じがした。落葉樹に葉は無いけれど、その代わり明るくて安らぐ小径。
――なんで東海自然歩道がこうなってないのだろう?
と言っても、道はそれほど長くは続かない。「自転車オフロードコース」の立て札が現れ、ゴルフ場車道が現れ、そして視界が広がって広場に飛び出た。
山に臨んでいる開けた空間。地面の芝生は枯れて白茶け、陽光を反射して眩しいくらい。あずま屋もあるけど、屋根の上が "茶枯れた草むら" と化している。
――各務野自然遺産の森、その北端にある「くもの丘」と言うところらしい。
さて、東海自然歩道に合流しないといけない。方角は分かっている。南だ。
幅広い道を南下し始めたものの……途中、つい魔が差して左手の林間の散策コースに入ってしまう。
緑の道。アップダウンもあって、変化がある。一瞬、竹林にさえなる。さらに、MTBコースが何度も横切る。
そして、再び広々とした空間に出る。左側、少し離れて藁葺きの建物、さらに向こうには駐車場。
とにかく東海自然歩道に合流しなくちゃと思い、ひすいの池に向かって進んでいくと……「東海自然歩道」の道標が出現。
――と言うことは実はもう、コースに合流していたということか。じゃあ、あとはこのまま進むだけだな、と気が楽になる。
ただ、歩くにつれ針路が右に逸れていく。おかしい…。コンパスで方角確認。正面は果たして、北西だった。
きっとこのまま進んじゃダメだろう。道を間違えた?
左折して向かう方角を南に直す。さらに歩くとバス停。
……にしても、道標は相変わらず見付からない。もっとも、手持ちのマップにはそもそも、かかみ野の森なんて影形も無い。まだ新しい公園らしい。
となると、東海自然歩道のコースも付け変わったと考えるのが当然。最後に道標を確認した地点まで戻るか、このまま車道を伝って日の出不動へ向かうか――現在地は把握できているので、眼前の車道を進めば左からコースが合流してくるのは明白――どちらを採ろうか。
後者を選択。各務原パークウェーの車道を歩く。
10分で、予想通りコースが合流。そちらに下りてみる。
林道を0.5kmほど下っていくとゲート(木の柵)があって、かかみ野の森の東端に出た。正面、駐車場が見える。
――ここでようやく、東海自然歩道はひすい池から管理棟・駐車場を抜けてここに至っているということを理解。さっきいったんコースに乗った時は、じつは逆行していたわけだ。おかげで30分ほどの時間ロス。まったく!
道を引き返す。上り切って、迫間不動への三叉路。逆方向へ。
各務原パークウェーを南へ下る。
すぐに左側にのぼりが立ち並ぶお寺が現われた。不動明王寺とある。さらに下ると、右側に駐車場と「岐阜県立各務原公園→」の標示。入ってみる。
門をくぐると中央広場。噴水と展望広場、交通広場にゴーカート。各務野の森を見た後だとそれほど広くは感じられない。なにより、休日の11時だというのに公園で遊ぶ子供の姿が見られない。まあ、確かにまだ寒さの厳しい季節だけど……。
公園を出てさらに下ると、再びのぼりの立ち並ぶ光景が見えて来た。日の出不動だ。ここは一転して、参拝客の姿が絶えない。
もっとも、年齢層は高め。――公園に子供の姿が無く、寺社に高齢者の姿が目立つのは、日本の行く末を暗示しているかのよう。
もう少し下ると車折神社。鳥居をくぐり、石段を上って少し奥まったところにある本社にお参り。こちらは学問の徳があるということで、家族連れも目立つ。
ちなみにこのあたり、しし料理の料亭が多い。やはり、様々なのぼりを(ここは "のぼりロード" か?)はためかせている。ただ、「早い!安い!うまい」は明らかに某牛丼屋のパクリなのだけど……。
そう言えば、子供のころにしし料理を一度食ったことがあった。でも味は覚えていない。腹も減ってきたので、フラフラとお店に入ってしまいたい気もする。
けれど、自分のこの歩きはそういう「点の旅」ではない「線の旅」。店には滞留しないことにしている。変な枷だけど。
勾配はようやく緩やかになった。道脇には桜の木が立ち並んでいる。ただ、つぼみは固い。一ヵ月後、ここはピンク色に染まった参道に化けるのだろうか?
それにしても山の中からなかなか脱出しないなあ、と思いながら歩いていると、突如、目の前が開けて広い池が現われた。新池だ。右手には階段。大安寺へ上る階段だ。
階段を上る。立派な山門が現われる。山門を潜る。石畳を歩き、もうひとつ門を潜る。そう広くはないけれど、整った境内、きれいな本堂。大安寺――デザインされたお寺、というイメージ。建物も新しい。
コースへ戻り、池際を歩く。バス停があり、三叉路がある。道標もあって、木曽川まで2.3kmを示している。
示された側、左へと曲がる。
左に林、右に住宅団地となる道を進む。
と、見通しが開けた。濃尾平野だ。これまで濃尾平野周縁の山や山里ばかりの区間であったけど、この先、暫らく平野部の歩きとなる。
そして、この坂も下り切る。
弘法堂のあるY字路を右折、大安寺川の右岸の車道歩きとなる。すっかり周囲は住宅地。そして、旧中山道に突き当たった。
交通が激しい。ちょっと歩道を踏み外したらたちまち車にクラクションを鳴らされた。中京圏を実感……偏見だろうか?
柳のしな垂れ掛かる大安寺橋が江戸時代の風情。一方、鵜沼宿跡は解説板ばかり目立つ。
大安寺川に沿う道に戻る。平らな道をさらに南下。
すぐに国道21号、いわゆる中山道が現われた。さきほど横切ったのは旧道。今度も横切るのかと思ったら、意外なことに潜った。
その先では田畑が広がった。開放感があり、空も広く感じる。川沿いには葉が落ちて涼しげな桜並木。今の季節、田畑に緑は無いけれど、大安寺川は緑の絨毯で覆われている。平地歩きと言っても、これなら許せる。
進行方向遠く、左右にゆっくりと赤い電車が横切っていく。
3月の昼時の陽射しが心地良い。何も考えず、ぼけーとそちらに向かって歩いていく。
大安寺川と共に、JRと名鉄の線路を横断。
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別の日に歩く→ |
右岸遊歩道が突然、通行止めとなった。工事中だ。川から離れる方向に迂回する。迂回距離は大した事は無い。
再び河岸に復帰。さらに進んでいく。ただ、周囲の光景には建物が多くなり、見通しは川の進む前方のみになっている。
その前方、青い水面が広がっているのが見えてきた。間違いない、あれが木曽川だろう。
そして、ついにその木曽川に突き当たった。
――雄大な光景にしばし時を忘れて見入る。上流に架かっているのが犬山橋で、下流すぐそこに架かっているのがライン大橋か。いや待て、それじゃあ犬山城は……?
暫く気付かなかったけれど、犬山城は対岸の小山の上にしっかり建っていた。木曽川が大きすぎて目に入らなかったのだ。
駐車場の脇にオマケのように東海自然歩道のベンチとコース案内板がある。そして、「飛騨木曽川国定公園」の標示。
そこのベンチに腰掛けながら、今日の区間は東海自然歩道中盤の花形コースかも知れない、なんてことを思う。サクラの咲く時期であったらもっと感動的であっただろうけど、仕方ない。
気合入れて再び歩き出したものの……ライン大橋の袂で行き止った。なんと、橋が工事中で全面通行止め! これでは対岸に見える犬山城に近づけない……。
平和で順調な歩きが一転。只今の時刻、PM0:29。
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