- 長良川の道 -
【踏 行 日】2007年1月中旬
【撮影機材】OLYMPUS E-1, ZD14-54F2.8-3.5, ZD50-200F2.8-3.5, CASIO EX-P505
冬。
岐阜の冬は雪、というイメージがあった。白川郷とか高山とか、主に飛騨のイメージから来ていたもの。
――濃尾地方はそうでもない、ということを最近知った。なにせ特別快速で名古屋から岐阜まで19分。もはや太平洋岸湾岸都市の1つだ。
今日歩くのは、そんな岐阜の自然歩道。濃尾平野から一段、山の中へ入るとは言え、どうも平地ばかりらしい。果たして、岐阜の雪に出会えるだろうか?
大垣駅に到着。この東端に樽見鉄道の発車するホームがある。切符売り場で切符を買って、そちらに進む。
西には伊吹山の白い峰が見えている。
一両編成のワンマン列車。上部にパンダグラフなど付いていない――要するにディーゼル車。耳障りなエンジン音を出して発車する。
濃尾平野北部を突っ走る――という軽快感は無いけれど、田園地帯の多い風景をゴトゴトと列車は走る。けっこう日本の原風景に近いかもしれない。それと、意外なことに乗客が多い。席が埋まるほどではないけれど。
“モレラ岐阜”、樽見鉄道には似つかわしくないそんな名前の駅に到着。申し合わせたように乗客がどっと下車する。いったい何があるんだ、と視線を巡らすと大きな建物。ショッピングモールの類だろうか。
樽見行きに乗ったはずなのに、途中の本巣駅で車両を交代するから乗換えしろと案内される。
水色の車両からピンクの車両に乗り換える。乗客はチラ、ホラのレベル。結構待たされた後、北方へ向かって再出発。
濃尾平野も尽き、車窓は山間部の光景に。左に見えた根尾川が右に移ると、ほどなく神海駅。
駅を出ると国道157号が左右に走っていた。それに、駅前だからと言って、特に何があるわけでもなし。
国道を引き戻る方向で、神海集落を目指して歩き始める。
外山郵便局で国道を右に逸れ、旧道と思われる道を伝って神海集落の中に入っていく。
AM10:05、神海公民館前に到着。今日の出発点はここ。
少し行き過ぎてみると、根尾川を渡る神海橋が見えた。
――まだ、あちらのコースも歩いていない。今日のところはここ、本巣市神海から岐阜市への旅。あまり山に深く攻め入ることが無いのは分かっている。イメージは、冬の日溜りウォーキング。
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AM10:06、神海公民館前を出発。田を渡って国道に出て、そのまま南へと向かう。
右手には神海集落が見えている。もうここは、濃尾平野を北に数キロ入った山の中だ。揖斐川の支流、根尾川の周縁に拓かれた小広い空間。
神海集落の向こうには雪を被った山々。見るからに寒い。
――実際も寒い。厳冬期なので当たり前。空には残念ながら雲が多い。日射しも消え入りそうで、陽だまりウォーキングの目論見が、早くも崩れそうになる。寒空ウォーキングはあまり楽しくないぞ……。
明谷の道を歩いていく。身体を温めるため、急ぎ足。手には手袋。
ポケットには使い捨てカイロ――ただ、ウォーキングではカイロのようなものはあまり意味は無い。局所的過ぎるし、なにより、身体を動かしていると収まりが悪い。
そして、道脇に雪を見かける。どうせなら、雪道になってくれないものか。
と、期待をしていたのに雪は消え、林を抜け切ると枯れ草色の風景が広がった。
AM10:47、湯ノ古公園。
ちょっと唐突な公園だ。あずま屋の他、水車小屋まである。「本巣市では次の動植物保護に努めています……源氏ほたる ササユリ ハリヨ」
この池にハリヨという魚がいるらしい。階段で池の観察窓に下りられるようになっている。窓を覗いてみると……何もいない緑の水。時期が悪いのかも知れない。
公園を離れる。集落の方へいったん向かうものの手前で右折。そのまま田の間を歩いていくと……支線コースとの分岐点だ。
支線の方は山へ向かっている。だけれど、本線は右。濃尾平野へ戻る方向。
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支線コースへ進む→ |
湯ノ古公園で一度横断した県道79号に合流、そのまま県道を歩く。山際には桜並木があって、春には綺麗に咲きそうだ。
ともかく、今は鹿穴峠を目指す車道歩き。勾配は大したこと無いけれど上り道……ふと、気付く。右にも並行して道が走っている。果たして、東海自然歩道はそっちだった。
坂を下りて歩き直し。途中からは林間の山道になって、ようやく自然歩道っぽくなる。
ところが、あっというまに峠に出てしまった。また車道歩きだ。また脇道が無いかと探したけれど、残念ながら指導標が車道に立っている。ここで本巣市から岐阜市へ。
車道を下る。狭い空間が開けたところで道標を捉え、左折。林間の車道歩きに。右手、木々の切れ目から伊洞の棚田が覗く。
やがて、正面に伊洞の家々が見えてきた。ほどなく、伊洞集落。
静かで落ち着いた雰囲気のある集落だ。山の斜面には果樹園――ただ木々に葉が無いので何かは分からない。
集落を抜けていくと再び県道に合流した。
山あいの細長い空間を進む。左に立派な老人ホームが建つところで右に曲がり、山際の細道に入る。
細長い空間はまだ続いている。なんとなく、こういう場所は落ち着かない。田んぼにはアオサギが佇んでいる。
山神社を通過。山斜面に嵌まり込んだ、小ぶりの社。
やや空間が開けた。民家も多く目に付くようになる。
瑞光園、という立派な老人ホームの建物前を通過。ここには岐阜バスのバス停もある。そして、左右に民家が立ち並ぶようになった。
龍峰寺の前を過ぎると道は左に90°曲がる。そのまま真っ直ぐ進むと二車線車道に出た。
下雛倉、PM0:02。
県道を歩く。しかも一直線に南下。もうこのまま、濃尾平野まで出されてしまいそうな勢いだ。道脇にはコンビニも立っている。
――どうも、自然歩道の途上でコンビニが現われると少し身構えてしまう。確かに街のコンビニは普段気さくに利用している。でも、頭のスイッチが切り替わった自然歩道歩きでは、途中に現われるコンビニは「敵」のイメージ……いや、当のコンビニに全くもって罪はないのだけど。
じゃあ飲物の自販機なら良いのか? 良いのだ。わけは自分でも分からない。
梅園の前で県道から右に逸れる道に入る。
現れたのは早川屋。ここの自販機で飲み物購入。
西秋沢では道が真っ直ぐになった。田と住宅の混じる集落。
……なんか、どんより空のせいか風景に生彩が無い。こうなると、コースをただ手繰るのみになってくる。ちょっと退屈だ。
左折すると再び板屋川に突き当たった。橋を渡ると、左岸の堤防道にコースは続いていく。
ちなみに、このあたりの指導標には行く先に注釈が付いていることが多い。たとえば「下雛倉(橋渡り堤防道の次の道を右折)」っていうような感じ。
河岸の道を進む。
――吹き曝しなので寒い。いったい、どこまでこの道は続くのだろうか?
見当を付けて指導標の無い箇所で左折し、県道に出る。首尾よく、則松のバス停と指導標が立っていた。どうもいま1つ、道標が足りないような気が。
再び南――濃尾平野へ向かう道へ。
西方への見晴らしがよい。伊吹山地の山稜や池田山が見えている……と、言うことは。
じつはもう、濃尾平野の端っこにいる。こうなると、市街化の進む本コースの迂回路として四国山支線が出来たのじゃないか、と勘ぐりたくもなる。やっぱり、緑があっての自然歩道だと思うから。
岐阜刑務所に突き当たる。濃尾平野へ向かっての進軍はここで阻まれる。――平野部に出そうで出ない、寸止めのコース採り。
左折して、小さな峠へ向かう道へ。宇田坂トンネルの手前では、さらに左の旧道に入る。
高度を少しだけ得て、濃尾平野北西部への見晴らしが良い。手前にある、岐阜刑務所のクリーム色の建物群も眺め下ろせる――監視塔も含めて。
峠自体には見晴らしは無いものの、越えるとすぐに明るくなった。三方が小山で囲まれる空間。村山だ。PM1:04。
山里の雰囲気が復活――川内、伊洞あたりの空気感が戻ってきた。日本三大平野部、1つだけ山壁を隔てた空間に過ぎないとしても。
思い起こしてみれば、東海自然歩道で最初に歩いた北摂コースも、大阪平野から1つの山に隔てられただけだったのに、同じような雰囲気を持っていたことを思い出す。
重要なのは街とのキョリじゃなくて、空間の密閉度かも知れない――なんて考えて、じつは自分には“広所恐怖症”の気があるんじゃないか、と疑ってみたり。
村山は盆地に田園の広がる地域。最初は山際を歩くものの、そのうち田園部のど真ん中をコースは切り裂いていく。
県道91号を回る込むように越えると、伊自良川右岸を進む道となる。時折、日が差し込むようになって、ようやくこの冬の日にも暖かみが感じられるようになってきた……と、言いつつやっぱり川沿いの道は寒い。桜並木のようなものもなく、川の左右には、ただ田が広がるのみ。
やがて伊自良川を橋で渡る。
石谷集落を左に見ながら、光団地を目指す。ちなみに石谷の背後の山は岩肌が目立っている。名前の由来はこれかも、なんて思う。
光団地はふつうの住宅地。光団地公民館を右に進み、奥へ向かって進むと上り坂がきつくなってきた。考えてみればちゃんとした上り坂も久し振り。
そして、車道が尽きた。その先にあるのは山道――今日2つ目の山道だ。
標高120mほどの峠越え。ここは楽しんで歩く。ハイクコースというほどのものでは無いけれど、それでも静かで気持ち良い道。落ち葉を踏み締めながら歩く。
さすがに距離は短い。10分少々で山の反対側に下り立った。少し進むと椿洞の集落。
峠のこちら側は、周囲に小山がポコポコと立ち上がっている。これはこれで、良いかも知れない。小川沿いの道を進んでいくと、やがて二車線の車道に突き当たった。
さて、ここまでの道のりで最大の見せ場と言ってよい畜産センターが、ここから1kmほど北にあるのだけど……。
寄り道は止めておく。じつは今日は平地だからとロングコースを組んでいる。その捗りが悪いせい。
眉山の山裾を抜ける、打越の路地を歩いていく。東へ進む道。やや上り坂。
白山神社が現われた。参拝する。
国道256号を信号のある横断歩道で渡って――
針路が北に変わる。国道256号を今度は潜って越える。右に鳥羽川。
今まで歩いていた車道が、右に鳥羽川河岸遊歩道を分ける。道標は無い。さて、コースはどっちだ?
右に進む。ススキの河岸遊歩道。前方に見えてきた妙な形の建物は……かぐや幼稚園、らしい。鳥羽川を渡る橋も見えてきた。
PM2:42、その月野橋に到着。
川内で分かれた四国山支線が鳥羽川の上流の方から合流してきている。ただ、合流地点自体に指導標は無い。ちょっと西に引き戻ったところに道標はある……と言うか、鳥羽川河岸の道はコースじゃなかったらしい。
まあ、いいさ。それより四国山支線、いつか歩く日が来るだろうか?
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