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予定では、この三宮神社から0.6km地点にあるJR下切駅に寄り道するつもりだった。東海自然歩道のアプローチで使える駅は一応、全てチェックしておきたかったのだ。
――無理。想定と現実は違う。確かに今日の行程は余裕があるし、コースの終了地点も駅なので時間をそれほど気にしなくて良い。でも、茹だるような熱気の中、15分歩いて寄り道するなんて身体が拒否。時間消費よりも体力――炎天下の下で歩き続けるのには相当な体力が要ると、まさに思い知っているところ。
……なんて、木陰のベンチに座りながら自分に言い訳していた。とりあえずカロリー補給。食欲はあまり無いけれど。
PM0:10、陽射しの下に再び出る覚悟を決めて、三宮神社からコース後半戦スタート。
車道を北へ。郊外の雰囲気は続く。残念ながら、後半戦も車道ばかりのルート。ただし、最後に「山道」が控えている。そこまでは我慢の歩き。
と、道標があって、横断歩道を渡る。次、的場橋で姫川を渡る。そしてJR太多線。運行本数は少ない筈なのに、ちょうど遮断機が下りて列車が走り抜けていった。2両編成か。
踏切を渡る。
現れたのは歩道橋。東海自然歩道でコース途上に歩道橋があるのは珍しい。
――渡る。その上から車道を見下ろすと「多治見市」という標示が目に入った。と、いうことは今まで多治見市内を歩いていたということか。気付かなかった、どこからだろう?
歩道橋を下りると再び可児市。長い上り坂が始まった。勾配は大したことは無いけどアスファルトがホット過ぎて……。
長い坂道を上がっていく。太陽は真上で日影は無い。
坂は左、右にとカーブを切って、ようやく峠。そして今度は左に曲がりながら下りていく坂。
「旭小学校入口」の標示を過ぎて少し進んだところで、ようやく木陰――ヘタり込む。小休憩だ。夏場のウォーキングは日陰を飛び島のように渡る旅。
「旭小学校」の道から2台の自転車が飛び出してきた。小学生は元気。
再び日なたの大海原に乗り出す。……と、左手に「大森城跡地」の解説板。振り向くと、こんもりした森があった。それだけ。
畑や田に混じって民家が散在するようになった。このあたりが大森なのだろう。そして信号機のある交差点の角、今度は「大森皿屋敷古墳」の解説板が田んぼに向かって立っていた。横穴墓群? どこ?
交差点を直進、大森川を渡る。
上空の雲は密度を増し、ついに陽光をシャットアウトするようになった。
――この分だと、たぶん今日はこのまま曇りそうだ。ありがたい、と思いつつ気温は高いままなので蒸し暑い。なんでこんなにも風が無いのか。やっぱり、盆地だから?
また盆地の1つの襞に入っていく。右側にビニールハウス地帯。JA可児の大きな建物を過ぎると建物は無くなった。
前方に見えてきたのは小さなトンネル。
トンネルの中――少し、ひんやりしている。
抜ける。左側は小高い住宅地になっているようだ。その壁面に沿って道が伸びていく。
また小盆地の中に出たようだ。今日、いったいいくつ目だろう? ただ、ここは田畑より民家が目立つ。町の郊外の雰囲気。
そして視界が開け、田園地帯が広がった。手前に橋。流れるのは久々利川。
橋を渡った角に右折の道標。「柿下1.9km 30分」とある。とすると、ここが二野なのか。盆地の底という感じで周囲は広々としているけど――何もない。PM1:04。
右折。久々利川沿いの道を進む。青々とした葉の桜の木が連なっている。
並木は途切れ、川との間には何も無くなった。それでも蒸し暑さは変わらない。まだ午後に入ったばかり、気温はまだ上がるに違いない。ザックに飲料のストックは十分にあるけれど、すべて生温くなってしまった。夏山に登る時のように凍らした飲み物を持って来るのだったな、と後悔。夏場ウォーキングの経験値が、まだまだ足りない。
久々利川沿いの道、なかなか終わらない。道標を見逃したのではないかと心配になってきた。
――あった。右折の筈なので川の方ばかりを気にして、見逃すところだった。道標は左側にあって、橋を渡れと指し示している。
二野橋を渡る。少し進むと左折の道標。ここにも台座型の解説板がある。「二野鍋煎古墳」だけれど、例によってどこにそれがあるのかは分からず。このあたりにありますよ、ではなく自然歩道なら1つぐらい実物見せてよ、と思う。ひょっとして支線だから予算が少ない?
左折。相変わらず久々利川に沿った道だけれど、川は見えなくなった。
緩い上り坂になる。視界は狭い。
上がり切って、緩く下ると田園光景が戻った。と、右手にまたもや台座型解説板。ただ、もう文字がほとんど消えてしまって、いったい何が書いてあるのだか。
二車線に変わった車道を歩いていく。道は真っすぐ、左右には田園。今日は本当に同じような光景ばかりだ。自然歩道らしくなるのは、まだもうちょっと先。
遠く、信号のある交差点が見えてきた。
柿下交差点。道標は……右側の角に。曲がる方向と逆に設置されていることが多いので気を付けないと。
鋭角に左折。こちらも二車線の道で交通量もそこそこある。左に田園、右にこんもりした丘を見ながら進んでいくと右折を示す道標があった。右折し、すぐに久々利川を渡る。
また田園地帯の真っすぐな道。けれど正面、ようやく今日越えるべき山並みが見えた。あの向こう側が御嵩か。
左側から来た車道と合流し、久々利の集落に入っていく。ひと気が無いのは、もちろん暑さを避けてのことだろう。
集落の中、石灯篭のある十字路。道標を見て「大萱」方面に右折。あ、自販機だ! 田中商店に設置された2台の飲料自販機。ホント助かった!と冷たい飲み物購入。
――しかも、お誂え向きに道角にベンチまで設置されている。そういえばベンチを見るのも久しぶりだ。自然歩道なのに。では、と座ってゴクゴクと喉を潤す。生き返る……。
PM1:51、泳宮に到着。入り口には立派な屋根瓦付き東海自然歩道コース案内。コース終点まで8.9km、3時間半の「みたけの森をめぐるみち」、その始点。
広場に入る。誰もいない。深い木立に、史跡の回りには水が巡っている。それだけのことが、とてもありがたい。大して涼しいわけでは無いけれど……。
体の熱を取るべく7分ほど休憩。そして出発。畑仕事姿のおばちゃん2人が入ってきて、腰かけて談笑を始めた。
可児市郷土館をパスし、久々利城址登り口を見て谷筋の集落に入っていく。
……ようやく「らしく」なって来た。恵那コース分岐から泳宮までは連絡路で、泳宮から御嵩までが自然歩道コース――確かにそう言われても違和感は無い。如何ともしがたい蒸し暑さは変わっていないけど。
集落を抜けて県道に上がった。ここにきて、また県道ベタ歩きか。上り坂となって、右手、久々利川がだんだん下になっていく。
草葉の合間からダムが見えた。箕面川ダムを思い起こさせるロックフィルダム。ただ、だいぶ緑に侵食されている。時代掛かっていそう。
そのダムを眺められるポイントもほとんど無く、ダムの堰堤の高さに到達。堰堤の上を通る遊歩道が東海自然歩道のコースだったら良いのに、と残念に思いつつ、県道をそのまま歩いていく。
右手に小渕溜池の水面が広がった。今日は川や水田を含めて随分と水を目にしてきたけど、その集大成かも知れない。涼しいコース、とは口が裂けても言えないけど。
県道には何もない。駐車場ぐらい。一方、対岸には遊歩道が見えている。
東海環状自動車道の高架をくぐると早くも対岸が近づいてきた。湖でなく溜池なのだから、こんなものだろう。もちろん入鹿池みたいに湖みたいな溜池もあるけれど。
対岸に吊り橋が見えた。メロディー橋、と先ほどのコース案内図で紹介されていた橋だろう。こちらも別の橋を渡って最奥部の駐車場に到達。
見ると、奥に東海自然歩道の案内が。逆方向に歩いていたら、そのまま対岸遊歩道を歩いていたかも知れない。
県道を突き進む。すでに谷は十分に狭くなっていて、両脇は山だ。車の往来もほとんどない。
少し谷が広がった。田園地帯と幾つかの民家。ここが大萱だろうか? 道標があった。県道を離れる。
すっかり山里の雰囲気。気温も下がってきたように感じるのは山の空気のせいか、単に昼下がりだからか、と、左折の道標。その脇には、いつもの台座型解説板。ただ文字は判別できないので、ただの台座。
――周囲を見回す。何も見えない。何だったのだろう?
道標に従い左折し、谷筋の1つに入っていく。ようやく山へのアプローチといった感じになってきた。山と言っても高度300mも無いけれど。
周囲は木々に埋もれ、見通しが悪くなった。右に折れると唐突に小さな溜池。草花に蝶が舞っている。
堰の上を渡る。足裏の土の感触が心地よい。
林道に突き当たって左折。再びアスファルトだ。スギと雑木林の道。道路上に堂々と蜘蛛の巣が張られたりして、人通りも車通りも無いことが分かる。
林道を谷奥へ向かって詰めていく。そしてようやく右折を示す道標が現れた。見ると、休憩ベンチがあって長い階段が上へ向かって伸びている。待望の山道、と思っていたのだけど丸木階段か。ここから高低差100m程度の登りだけれど……これは気合入れ直さないと登れない。PM2:58。
辛い丸木階段の登り。これまで辛い丸木階段は幾つも経験して来たけれど、暑さで体力を削ぎ落されたコース終盤での丸木階段は辛い。しかも深い森の中で空気も動かず、蒸し暑さは尋常で無いときた。何度も階段途中で座り込み、ゼーゼーと息をつく。
ようやく階段が尽きる。普通の山道になる。
たぶん展望台なのだろう、ベンチが二つ並んでいた。見晴らしは――あるけど大して良くない、と。
それはさておき、汗が酷い。で、新しいTシャツをザックから出して着替える。本当は歩き終えてから着替えるつもりで用意していたのたけど、もう限界。
ベンチを後に比較的フラットな山道を進む。このような道が続いて欲しかったなあ、と思っていると車道に出された。僅か20分ほどの山道区間終了。
左折して林道を歩きだす。高所をぐねぐねと曲がりながら辿っていく道で、もちろん人も車も見当たらない。一方で見晴らしもほとんど得られない。7月半ばともなれば道脇の草葉がぼうぼう。空も白いし、同じような景色の退屈な道。
上り坂となる。その先、鉄塔の足元で景色が開けた。「みたけの森案内図」も立っている。みたけの森最上部に到達したらしい。その地図には東海自然歩道の記載もあって、このまま丸山林道をベタに山麓まで下るらしい。何本もある遊歩道はすべてパスか。仕方が無い。
しばし展望を楽しむ。あの山影は御嶽山だろうか。2年前の秋に登ったばかり……。
緩やかに上っていく。と、坂が下りに変わった。その先に立派な公衆トイレ。これはみたけの森の施設だろう。それにしても公園区域に入った筈なのに人っ子ひとり見掛けない。雑木林が多いので、春の新緑や秋の紅葉時季には気持ちいいだろうな、と思いつつ、ひたすら濃い緑の道を進む。
左に分岐。スルーして直進すると正面に休憩所。その手前で道は右に90°折れている。ようやく山麓へと下りていく道。
左側の木々が薄くなった。下に見えている平地が高原湿原か? 寄っておきたいけど下り口はどこだろう?
そんなものは見当たらず、やがて完全に下りとなった。雑木林の中、ひたすら下り。今日のコースの目玉はこの公園というのに、このまま一気に突き抜けてしまったら勿体ない……。
そう思いながら、だいぶ下ってしまった。と、左から「くれないの径」が合流してきた。ここを登れば湿原に行けるだろうか? もちろんそんな時間も体力も無い。
その先で芝生の斜面が広がった。どうやら公園の最下部みたいだ。駐車場――車が数台しか駐まっていない。静かなわけだ。その反対側には水車……水車! そちらへ下りていく。
――水車の水飛沫。あまり冷たくは無いけれど、心地いい。
溜池まで進むも、その先は登り。引き返す。時間があったら少し散策しよう、と思っていたのは午前まで。暑さに打ちのめされ、今やそんな気力は残っていない。
再び車道を下り、みたけの森入口に到達。PM3:56。
すぐに三叉路。公園はここでお仕舞い。「御嵩駅」と示された方に進む。しばらく森の中の道。足が重い。
……と、前方が少し開けた。平地に出たようだ。コースは、っと。直進だろう。真っすぐ進み、国道28号を横断。
左右に田園が広がった。今日、何度も目にしてきた風景。ただ、午後4時を回って気温的には幾らか凌げるようになっている。
――川に当たった。
東海自然歩道のものでは無い道標。ルート間違えたか?と思ったら柱にプレートが付いていて「東海自然歩道」と書いてあった。どうも、みたけの森からこちら道標が乏しい。
右折。ともかく、あと少しだ。川沿いに進む。この川は――可児川。
1つ目の橋をスルー、2つ目の門前橋で左折。可児川を渡るのは今日3度目。
ようやく今日のゴールが見えて来た。
それにしても赤の原色がこれほど目立つものだとは。きっと、ずっと緑色の風景を目にしてきたせいだろう。
と、いうわけで見えてきたのは名鉄の列車と広見線始発駅だ。自然歩道のコース終点に辿り着くと列車が待っている、というのは安心感がある。思い出したのは京阪石山駅、あの時も途中で日が暮れてしまって苦しんだっけ……。
PM4:13、御嵩駅に到着。
……夏場の歩き、想像以上にしんどかった。せっかく着替えたTシャツも、すっかり汗で濡れてしまっていた。
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……とまれ、熱中症を回避する術も習得しつつあるかも知れない。とにかく身体の変調の兆しを覚えたら即、休憩。水分を十分に摂る。今日も道端の木陰に何度へばり込んだことか。
当たり前だけど駅舎内には冷房など無かった。次の列車までじっと待っているのも辛いので、次回の偵察とばかり御嵩の町へとフラフラと歩き出す。
願興寺。そして御嵩宿。宿場町の雰囲気が少し感じられる町並み。ただ、本番は次のコースを歩く時。
駅に戻る。列車がやってきた。2両編成の車両に乗り込む。エアコンで良く冷えた車内。人工的な冷気なのだけど、これが溜まらなく心地良いと感じてしまうのも、また人間。
発車。列車は多治見盆地を走り抜けていく。新可児駅で乗り換え。善師野の丘陵地帯を抜け、木曽川沿いの犬山に。
――このあたりも随分と馴染みになってきたような気がする。ただ「歩いた」というだけなのに……。