- 辛い車道・辛い藪道 -
【踏 行 日】2007年9月上旬
【撮影機材】OLYMPUS E-410, ZD14-54F2.8-3.5, CASIO EX-P505
さて秋だ。
今年の夏は猛暑だった。日本各地の最高気温記録も更新された。ゆえに日本中の誰もが「秋」という安らぎの季節を待ち焦がれていた。
しかし、夏が暑けりゃ秋も暑い。地球温暖化セール・出血大サービス30%増量中、ってな感じで9月上旬はまだまだ夏だ。この分だと9月いっぱい「夏」にカテゴライズされそうな勢い。ただ、日はどんどん短くなる。
気象庁の天気分布予報によると、今日は静岡中部は1日中、晴れ。これは行くしかない。行くしかないが、だがしかし。
じつは今回のコース、あまり気乗りしない。前から「行きたくないなあ~」と周囲にこぼしていた程。距離はあるけど歩くだけ、という予感がプンプンしているからだ。油山峠付近の道の状態も気になる――悪い、という情報もあるからだ。ただ、静岡県も新しいコース案内板を乱立させる予算があったのだから、当然、道の整備だってしてくれているだろう……。
そう思いながら静岡駅の新幹線ホームに降り立つ。
静岡駅北口は工事中だけれど、バス停はすぐ駅前にある。朝の日が駅前のビル群に当たっている――と思う間もなく陰る。空を見ても雲の隙間が見えない。今日はどうやら天候も味方してくれそうも無い。
気分が乗らないまま、駅前のコンビニで昼飯や飲み物を購入。
駅前のバス停に戻る。静岡駅AM9:02発のバスは、しかし5分遅れてきた。乗り込む客も比較的多く、座席が半分以上埋まる。
5分遅れの発車。静岡市街を抜けると、安倍川沿いをまっしぐら。客も漸次減っていく。安倍川が二股に分かれ、バスは一方の藁科川沿いを辿り始める。
静岡リハビリ病院を過ぎると、乗客は自分ひとりに。
AM9:48、終点の八幡到着。やはり5分遅れだ。バスはぐぐっと転回し商店横のスペースに収まる。ありゃ、このバス、外装にマンガチックな女蜂が描かれたラッピングバスじゃん、と今頃気付く。
さらに「東海自然歩道静岡鳥獣保護区区域図」なる看板を見つける。でも、まだここは東海自然歩道じゃない。久能尾から始まる東海自然歩道に向かって歩くのだ。
ちなみに八幡から久能尾までにあるバス停は7つ。それを拾っていく形。もちろん、本当ならバスで通過したかったところ。でも、頃良い時間のバスの便が無かっただけ。
AM9:51、歩き始める。
結局、現地についても曇天は変わらなかった。気象庁の天気分布予想は結構信用できるのだけど、朝5時の発表を確認してから家を出られないのが辛いところだ。
ちなみに、その1つ前の発表は前日の午後5時。12時間も空けば天気なんてくるくる変わる。まったく、お役所仕事と言うしかない。
昼居渡通過。
――不満はとりあえず気象庁にぶつけつつ、ただ歩く。
藁科川から分かれた黒俣川の左岸沿いの国道。車通りはほとんど無いけれど、来る時は来る時で結構なスピードで突っ込んでくるのが鬱陶しい。もっと余裕持とうよ、と言いたいけれど、やや焦り気味なのは自分の方。
下相俣通過。
静岡市葵区、の標示がある。そう、ここはれっきとした政令指定都市。ただ、この光景は「都市」じゃないよなとも思う。
諦めていた陽射しが少し戻っている。山肌と川の水面にも光が当たって色気が出る。なんか、気分も安らいでくるのを感じる。
県道210号を左に分け、さらに進む。
日射しが思いのほか強くなってきた。一方的に背に当たる。背負っているのがザックでは無く、熱の物体ように思えてくる。考えてみると、もう朝も10時半近くで結構日が高い。
上相俣でタバコ屋前通過。「TABACCO」と書いているからタバコ屋なのだろう。店前にタバコの自販機もあるけどねえ……。
ほどなく車道からは中央線が消え、両側から山がさらに押し込んで来たような感じになる。斜面には茶畑。
尾沢渡通過。寺島から数えて6つ目のバス停。いよいよ次が7つ目、久能尾だ。
見覚えのある交叉点が前方に出現。久能尾だ。
久しぶり! いやあ、全然変わっていないねえ、と言っても前に来てから3ヶ月しか経ってない。当たり前。
それでも、このページの「アイコン」に使わせてもらっていたキノコを探したけど、生えていた場所には影形無かった。きっと、誰かの胃袋に納まってしまったのだろう。ここにも時間の流れはある、と。
氷川に架かる久能尾橋を渡って、到着。というか接続、いやむしろ連結。AM10:28。
←前のコースへ戻る |
![]() |
久能尾と書いてきゅうのおと読む。
国道362号の曲がり角にあって、狭いところにガソリンスタンドと土産物屋、さらに幾つもの自販機が立ち並ぶ。東海自然歩道の案内板もあって、新静岡行きのバスもここを始点として運行している(便は少ないものの)。ある意味、要所。
でも、どうもトイレが無さげなんだけど……。たぶん、土産物屋にある or 借りられるとは思うけど良く分からない。と言うのは、前回、この店のイヌに吼えまくられたという嫌な経験があるので近づき難いということ……。
と逡巡していると、停車していたバスが交差点を大きく切り返して、発車していった。乗客は誰もいない模様。
久能尾出発、AM10:35。
久能尾橋を渡り返してもうちょっとだけ戻ると、山側に指導標が立っており、細い登り道を指し示している。
もちろん、前のコースを歩いた時に場所を確認しておいたのだ。ここから登る。
階段の上にはドコモだかauだか携帯電話のアンテナ塔が立っている。最近、ほんと良く目にする光景になった。
さらに自然林の中を進む。一瞬、東方への眺めが開けるが、すぐに消える。
墓地が現れた。と、今度は西方が開けた。
絶好の見晴らし! 眼下には茶畑に囲まれた久能尾の集落。さまざまな種類の「緑」に染まる。
ここの木陰に座り込んでしばらく眺めていたいけれど、そうも言ってはいられない。まだまだ序盤。進むべし。
――だけど、見晴らしが閉ざされてから続くものは、急登、急登、また急登。
登りが嫌になった頃にベンチ登場。すがり付く。
まったく、登山用の速乾性シャツが汗で使い物にならなくなっている。絞れば結構、滴りそうだ。気温が高い上、風が無い。辛いなあ。
5分ばかり休憩したけれど、あまりヒート・ダウンしない。渋々、出発。
さらに急登をこなした後、やや平坦になるもののそれも束の間、再び上昇。鉄塔が現れ、ピークが近くなると道標が現れて右折を指示。山腹を巻け、と。
ただ、草に埋もれる道標が示す先は、やっぱり草薮。
――と言うわけで斜面の藪道歩き。藪の高さは足首~腰レベル。道が細いので山側の草を気にすると谷側に足を踏み外して転げ落ちかねない。蜘蛛の巣も多い。
途中、蝶の写真など撮っていると山側の草薮から「ガサガサガサ」となにか動物的な草摺り音。まさかクマでもないだろ、とこちらもわざと大きな音を立てる。……知らぬが仏か?
道は下り基調。
蜘蛛の巣に何度も捉われ、顔に付いた糸を引っぺがしたりなどしながら歩いていると、突如茶畑に飛び出た。
出たのは良いが、進むべき道が分からん。とりあえず高度を保って茶の合間を直進。上空、遮るものがないので、またぞろ汗が噴く出してきた。途中、木陰にベンチ発見!
ただ、ベンチの先で完全にルートが分からなくなった。畑の畦をかなり適当に進む。と、茶畑の末端に道標を発見、ふたたび樹林帯の山道に入り込む。
片手に木の枝を持って前方に掲げ、蜘蛛の巣避けしながらしばらく下る。道の状態もマシに。
と、峠らしきところに到着、ここで左折。手入れされた林の中を10分ほど下降すると、眼前にいきなり寺島の光景が開けた。こちら側も茶畑に囲われた集落。
歩く先が見えているので、なぜかすごく安心できる。でも、日の照り付ける中を歩かないといけないのは嫌だなあ。
左右に茶畑を見ながら、車道を進む。途中、180°のターンをして見えている吊橋に向かって下っていく。暑い。
吊橋は人専用というわけではなさそうだ。軽トラが渡れそうな幅はある……と言っても流石に重量オーバーか。
この川は八幡で分かれた藁科川だ。ただ、川は護岸されており面白くない。
県道60号線に飛び出る。
そう、また車道歩き再開だ。今日の天候は晴れたり曇ったりだけど、良い絵を撮るためには日の光が欲しい、でも暑いのは勘弁、てな感じで気持ちも分裂気味。とりあえず、意外に交通量が多い県道を車に気を付けながら北進。
東海自然歩道の案内板が車道の脇にでーんと立っていた。いったい、誰に見せたいのだろう?
PM0:05、寺島到着。待望の自販機があった。2本追加購入したが、そのうち1本は瞬く間に半減。
バスの便は新静岡行きが1日8本もある。これは多い。どうせなら、朝早くにここにバスで着いて大山登山を始めたいところだ。今日のような正午過ぎから登山なんて気が滅入る。と思ってバスの到着時刻を見ると、AM7:46着の便の次はPM0:28。こりゃ、使えん。
ちなみに、県道60号は今朝の出発点の昼居渡(八幡)から始まり、南アルプスの玄関口、畑薙第一ダムまでを結ぶ道だ。別名、南アルプス公園線。ああ、憧れの南アルプス南部の山々……。
![]() |
先のコースへ進む→ |