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谷沢~相沢~油山峠~油山温泉~曙橋

美和街道
県道205号、通称・美和街道
美和街道を進む
県道を進む。あの山の向こうは安部川だ

この谷沢から油山峠を越える区間は警戒していた区間。なので、出来るだけ条件が良い時に歩きたいと思っていた。

ところが現況は芳しくない。もう夕闇が迫ろうという時間帯、疲弊した身体――万全、という状態からは、ほど遠い。先ほどのバスに乗って帰ってしまうのが正解であったかも知れない。

とりあえず、南へ向かって二車線の県道を歩き出す。横に流れるのは足久保川。

栗島バス停
コースから少し外れた位置の栗島バス停
栗島の道標
栗島の道標。ここで川を渡る

県道を淡々と歩いていく。振り返ると大きな山影がおぼろげに見えた。大山だろうか?

暫く歩いて、栗島の集落の手前の相沢橋で道標を見つける。相沢までの距離は1.8km。その先の距離は示されていない。

ここで左折だけれど、コースを外れてさらに県道の先へ進んだ。すぐに栗島のバス停、PM4:37。

そして、引き返す。自販機でも無いかと思ったのだけど、無駄足であった。相沢橋で右折、足久保川を渡って相沢へ向かう。

苔の花
コンクリート製の橋。赤錆っぽい色は苔
相沢へ
相沢へ向かう道は再び山深い方向
地蔵
地蔵

車道をひた進む。針路は北。9月上旬という時期、まだ日が沈むまでには時間がある。ダメでも引き返して来れるだろう。

左側は山の急斜面で、右手は足久保川の支流となる相沢川が流れる谷。時折、狭い空間に茶畑が現れる。一方、車道はぐねぐねと曲がりながら北へ伸びていく。車の往来はほとんど無い。

……本当に単調だ。途中、道が膨らんだところに花壇があって、「花壇コンクール優秀賞」と掲げられていたけれど――変化はそれくらい。

橋を渡って相沢川は左側になった。やや登り勾配となり、斜面には茶畑が目に付くようになってきた。地蔵の並ぶ地点を過ぎると、道が大きく膨らんで、道標が立っていた。さらに上方には相沢の民家が見えたけれど、コースはここで転回して上っていくようだ。PM4:46。


 


相沢転回点
相沢。ここで転回する
林道
山肌を巻くように付いた道を進む

相沢の集落に立ち寄っても、この雰囲気だと自販機など無いだろう。幸い、夕刻になって暑さは引いているけれど、飲み物不足は不安材料の1つ。

180°のターンを行い、高度をどんどん上げ始める。道標によると、油山温泉まで3.0km、90分の距離だ。日没前には油山温泉の手前までは行き着けているだろう。そう、願う。

茶畑が眼下に見下ろされるようになる。しかし、もう日が山影に隠れているので、そこは濃い緑色のわだかまりに見える。

リゾートホテル鈴桃
リゾートホテル鈴桃。りんとう、と読む
ホテル前の案内板
ホテル真ん前の自然歩道案内板

左手、山側に茶畑の斜面を見ながら、ほぼ平坦になった道を進んでいく。谷側の並木は桜だろうか? 葉がずいぶん乏しいように見えるけど。

やがて、道は瀟洒な白い建物に導く。リゾートホテル鈴桃だ。東海自然歩道のコース案内図も立っていたので、覗き込む。この先は点線、山道区間であることを示していた。

その前にある道標は、確かに直進を示している。でも、そんな道はどこにも無さそうに見えるのだけれど……。

橋
山道に入った。「橋は二人まで」の標示
ホテル駐車場
ホテル駐車場を越えて振り返る

ホテル客用の駐車スペース&屋根付き送迎バス駐車場。一見、行き止まり。

こっちだろう、とそこを突っ切って進む。決して怪しいものでは御座いません……。

正解だ。山道の入り口に道標が立っている。油山温泉まで2.1km――平坦な道なら30分で踏破できる距離。

林の中へ突入。暗い沢沿いの道。比較的、整備されていると感じる。暗くてよく分からないけれど、時折、小さな滝などが現れたりして、気候と時間帯が良ければそれなりに楽しめそう。


 


細い道
トラロープが補助になってない、危険!
夕刻の稜線
稜線に上がって一安心。下りが不安…

警戒し過ぎたかな?と思っていたのも束の間、道が沢を離れて急上昇を始めると、道がたまらなく細くなる。足の踏み外しが怖い上に、道自体の踏み固めも不十分だ。雨の日は歩けないなと感じる。ロープもあったりと、一応の処置は取られているようだけど……。

暗いせいもあるだろう、苦労しながら稜線まで上がる。ぜいぜいと、息も上がっている。でもまあ、注意すれば歩けない道では無い。道標も立っていた。油山温泉まで1.3km。

後は比較的まともな山道が続いて――

油山峠
昼なお暗し、といった感の油山峠。夕刻は輪をかけて……
「油山峠」
地面に落ちた「油山峠」

PM5:35、油山峠に到着。

標高は390mほどのこの峠に、見晴らしは無い。風も無い。寺島からこの方、自販機にもありつけなかったので冷たい飲み物も無い。日没までの時間も無い。

ないない尽くしだけど、もっとも無いのが「この先、油山温泉まで道が通じているという保証」。この峠に至る道の状況を見た限りでは、その保証は「努力目標」程度のレベルのように感じられる。

――東海自然歩道を歩いていてこれほどヤバげな状況に陥ったのは、三重の川原越~養老の山腹巻きコース以来だ。あっちも道の状況が悪かったし、さらに夕刻の歩きだったのも同じ。でも、その時だって、道を見定め切った筈。

籔漕ぎ
藪に埋もれた登山道。沢音が聞こえる
沢筋の道
沢筋に辿りつく。ようやく道標が出現

意を決して、下り始める。

――ふつうのヤブ漕ぎ。丹沢などでもっと酷いヤブ漕ぎの経験は何度かあるけど、環境省整備の一級トレッキングコース(嘘)、東海自然歩道でこの有様は惨い。特に、ジグザグに沢に降りて行く場面。そもそも「ジグザグに降りて行く道筋」なんて草に覆われ視認不可能なんだけど、勘と経験で嗅ぎ分けた程。さらに途中、葉の盛大に付いた倒木に通せんぼされるも、身を無理に捩りながらクリア。

……ったく!


 


草原
うんざりしながら薄暗い草原を漕ぎ進む
渡渉
渡渉は水量が多い日は多少辛いかも

かつて道だったであろう草叢を踏みつけつつ、沢に沿った道を進む。午後6時を過ぎ、そろそろライトが必要な暗さだ。――でもまだ出さない。ライトの明かりは逆に周囲の状況を把握させにくくする。

蜘蛛の巣避け用に枝を拾って、前方を振り払いながら進む。もっとも、ここまで藪漕ぎの急下降で両手が空かなかった都合で、すでに体中、蜘蛛の巣まみれになっているけれど。

林から出ると丈高い草原を突っ切る。朝でなくて良かった。朝露で濡れ鼠は嫌だ。そして……

籔漕ぎの終わり
遂に油山コースの入り口へと抜け出た
油山温泉へ向かう
油山温泉へ向かう。再び周囲は茶畑

橋だ。そして驚いた。

――いや、草薮漕ぎが突如終了したことに驚いたのでは無い。橋のこちら側に立たったのは……真新しい、東海自然歩道のコース案内板。

静岡県は蔵田~長者岳の東海自然歩道本コースを諦め、海岸沿い新ルートに注力するつもりじゃないかと疑っていた。それはそれで構いはしない。だけど、入口に立派な案内板を立てて人を誘う以上、整備はきちんとやってもらわにゃあかん! そう思ったわけ。

油山苑
油山温泉・油山苑
元湯館
油山温泉・元湯館

PM6:06、もうここは油山温泉だ。元湯館を通過。

――油山苑を通過。いつか東海自然歩道を歩き返すことがあったら、どちらかの旅館に泊まってゆっくりと寛ぎたいものだ。

……と思い、写真を撮っておこうとファインダーを覗く。あれ、なんかシミがあるぞ?

なんのことは無い、カメラの花形レンズフードに蜘蛛の巣が張られていた。クモが一匹、その真ん中に収まっている。

油山温泉入り口
油山温泉入口。ここから油山の集落に入る
竜爪山
油山の集落から正面に見る竜爪山

とりあえずクモには御退場願った。そろそろ人の領域。

そして、前方に現われたのは油山の集落。その中をゆっくりと歩く。急げばバス1本、先着出来そうだったけど、今日は歩きに幾ばくかの余韻が必要と思ったので、スピードは出さない。

周囲は田園風景。夕闇から夜闇へと変わりつつある。そして正面には、次のコースの竜爪山の山影が大きく見えてきた。誘うのか、威圧するのか――。


 


油山交差点
県道29号と27号の油山交差点。向こうは曙橋
スーパーイシハラ
「酒」の文字が目立つスーパー・イシハラ

突如、目の前に赤くデカデカと書かれた「酒」の文字が現われた。ここまで、自販機1つ無かったくせに、いきなりスーパー御登場かい!

その名、“スーパーイシハラ”という。店内は――当たり前過ぎる事だけど――明るい。店の前には立ち並ぶ飲料自販機。喉から手が出そう……。だけど、ここは敢えて見送り。

そして油山の集落も尽き、大きな道路に出た。県道29号だ。その向こうには曙橋が見えている。

信号を待って交差点を渡る。そして曙橋へ。

曙橋を渡る
安倍川に架かる曙橋を渡る。水量多し
曙橋
曙橋を渡りきって、見返す

橋の長さは0.4kmほど。それを歩き切れば今日の歩きはオシマイだ。惜しむように、ゆっくり渡る。

――川面は闇の中でほとんど見えない。ただ、昨日の台風のせいか、水量は多いような気がする。安倍川はそんな水量ない川だと思っていたけれど、川幅は大きい。

PM6:48、牛妻坂下到着。ここにもまた、東海自然歩道案内板が立っていた。


先のコースへ進む→

曙橋~牛妻坂下-(静鉄バス)-静岡駅…

竜爪山コース入口
竜爪山コース入り口の道標

まあバスが来るまでの時間もあるし、ちょっと次のコースの偵察をしておこう、と道をバス停と反対側の北へ向かう。

すぐに竜爪山コースの入口。ただそこには特に何も無く、指導標が1つ、山に向かう車道を指し示していただけ。その先は上り道。

踵を返して曙橋へ戻る。さらに1分ほど南下したところに牛妻坂下(うしづまさかした)のバス停。便数は結構多い。次のバスを逃しても、まだPM8:09の最終便がある。

ところで、「安倍ごころ」って何だ? 安倍と言えば、安倍川餅、安倍首相、安倍なつみ・あさみ姉妹……。

牛妻坂下バス停
「牛妻坂下(安倍ごころ前)」バス停
静岡駅
夜の静岡駅

新静岡行きPM7:16のバスはしかし、5分遅れてやってきた。あれれ、静鉄バスは5分遅れがデフォルトなのか?

バスは安倍川に沿って静岡まで一本道を走る。ざっと25分の距離。時間帯が時間帯だけに静岡市街に入ると乗客は一気に増え、最後には座れない人が出るほどの混み様だった。

 

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