←前のコースへ戻る |
![]() |
PM0:10、寺島を発つ。
坂本まで、一直線の道。最初こそ民家が目立ったが、茶畑がすぐに勢力を盛り返す。途中、1つだけ自販機あり。
淡々と歩く。それにしても、暑い。左に並行して流れるのは、藁科川から分かれた坂本川。正面、道の先の一点消失点には、赤い色がポツンと見えている。
それがだんだんと大きくなる。やがて赤いシミは、人家の赤屋根へと変化する。両脇が木立となって……。
坂本到着。PM0:22。
斜面の茶畑に囲まれた集落、という光景は既に見慣れたもの。でも、集落の入り口が入り口っぽかったので、なんか到達感を感じる。
また、ここで初めて大山を捉えることが出来た。特徴に乏しくて単なる山の壁にも見える。ただ、電波塔が仲良く2台並んでいるので、大山に間違いないだろう。
そこへ向かって、この先、道は次第に傾斜を増していくようになる。ただ、車道を歩くのも飽きたので、坂本川沿いにあった遊歩道に入ってみる。と言うのは小さな水車などもあって、雰囲気が期待できたからだ。
――だけど、川の上流に向かって少し進んだだけで道は不明瞭に。蜘蛛の巣も懸かっていて整備不良、あまり「憩い」を得られるような道じゃないし、たいして涼しくも無い。坂本川のせせらぎの音だけでもまあ、良しとするか。
道も尽きた。ちょっと藪に苦労してショートカットし、車道に戻る。熱せられたアスファルト上の歩き、再開。
辛抱してアスファルトの勾配を上っていく。
途中、山側の急斜面に三角屋根の木箱がいくつも並んでいた。よく見ると、その箱に群がっているのはミツバチ。ハチミツ採りの巣箱だ。初めて見た。
上笹尾の集落を抜け、さらに進んでいく。
一色到着。坂本川遡上の最後の集落。
斜面に民家が点在する。そして、もちろん囲っているのは茶畑。
東海自然歩道は集落には入り込まず、そのまま集落を回り込むように続いていく。ようやく、道も木陰で日光を遮ることが多くなってくる。右手に川。
――と、前の方からひんやりとした空気が…。
滝! といっても堰なんだけど、この川の上空が冷気の通り道になっている! 時折、そこを流れて来る、周囲より明らかに数℃低い冷気の塊を捉まえ、涼を取る。
幸せ……。
一色の集落を見晴らしながら、道は再度大きくカーブして、遂に山間に入り込む。向こう、車止めゲート。
「関係者以外の通行を禁止」と書いてあるけど、これって車両の話だよね、と誰に確かめるでもなく納得し、ゲートを越える。
車道の状態は、さすがに悪くない。路肩注意の箇所も無く安全。砂利道が続くのかと思っていたけど、かなり舗装率が高い。
でも、暇だ。見晴らしも無く林の中を歩くだけ。時折、林が切れるものの、見えるものは山肌だけだったりと、面白くない。
何回か、道脇に沢が現れる。もちろん、水流は車道の下を潜っていくので沢らしさは無いが、それでも、飛沫を上げる水の流れに顔を近づけ、冷気に涼を取る。
――涼を取る。都会に住んでいて夏場にエアコンの風に当たって「涼を取る」、この使い方は明らかに間違っているよなあ。そんなことを、ふと思う。
なんの脈絡も無く、山側にわさび畑が現れた。ごくごく狭いところに作られていて、いかにも「清涼な沢の流れをそのまんま利用しました」といった感じ。
わさび畑は、前にも後にもこの1箇所。
高度は上がっているが見えるものはあまり変わらない。
ただ、西側を見晴らせる箇所が増えてきた。それでも、今日の天候では遠望は利かないけど、今日歩いてきた集落は小さく見えている。
上る、上る。
さらに上る、上る。
車道でぐねぐね登っていると、この大山がやけに巨大に感じてしまう。まさか「大山」って、そんな意味ぢゃ無いだろ……。
もし車道ではなく登山道が切られていれば、距離1/3、時間1/2で登れる山。
それでも、電波塔が目線の高さに。だいぶ近付いてきたぞ。
でも、もう一息! と思ってからがまた、長い、長い。
――と、突先山との分岐が現れた。突先山は標高1,022m。大山単独コースだったら突先山を目的地とするところだけど、今日は時間が無い。標高986mの大山最高点も、じつはここよりもう少しだけ北側にあるのだけど、そこに寄る気力すら無い。
最高点はともかく、道標が示す「大山」へ針路を採る。
1つ目の無線中継塔を背後に追いやると、緑の落ち葉の道の前方にもう1つの無線中継塔が現れた。今日の目的点。
PM2:42大山到着。無線施設は網で囲われ、その前は小広い広場。車を駐めるスペースなのだろう。
辺り一面、真っ白なガス。
木のテーブルが1つだけポツンとある。どうやら、ここが展望ポイントのようだ。木々は育っているが視界を隠すほどでは無い。
……だけどガスが視界を隠しまくり。晴れていれば静岡市から駿河湾を見渡せる絶好の展望地ということなのだけど。
とりあえずザックを下ろして休憩!
たゆたうガス、気温は高くないが湿度が高い。おかげで汗が乾かない。
10分ほどボーッと過ごす。この天候じゃあ下山もかったるいけど、日没は待ってはくれない。えい、と気合を入れ直して、下山開始。PM2:54。
笹で覆われた急斜面。登山道不明瞭。足元は非常に滑りやすい。葉を掻き分けながら、注意深く下っていく。
下る、下る。かなりの急斜面。
登山道は葉で隠され気味。蜘蛛の巣も頻発するが、避ける余裕がまったく無い。やがて斜度はそのままに、周囲は林に変わった。良く整備されているが、そのせいで落とされた青い葉がそのまま登山道を覆い隠している。道の判別がかなり難しい。
尻餅も付いた。何年ぶりだろうかと思い起こしていたら、さらにもう一回。今度は頭まで響いた。手厳しい!
山頂から距離0.6kmの地点にベンチと道標あり。斜面だが、ベンチは水平に据え付けられている。
口長島(口=くち?囗=くに?)への分岐が現れたけれど、直進。この地点で標高は569m。30分間で400mほど急ピッチで下った計算になる。ほんとに急斜面だよなあ。
分岐を過ぎてほどなく急下降は終わって、緩やかなアップダウンのある稜線道に変わった。正直、ホッとする。
PM3:44、水見色峠到着。水見色、というのはここから南にある地区名。
真新しいベンチ1つのみ、というのが泣ける。正面に進むと標高717mの高山だ(そう高くはないけど)。ここは左折し、再び下降を開始する。
一箇所、見晴らしの開けた場所があるが、総じて林の中。
眼下に林道が見えてくると稜線を後に左折、あっという間に林道到着。
ここは「山中のぼり口」、大山へは3.1km 130分、という標示がある。
正直、大山登山は道も良くないし途中の見晴らしも少ない。山頂からは大展望としても人工物多く、興醒め。下山はピストンを避け坂本へ抜けるにしても、最初から最後まで車道歩き。あまりハイクの対象にならない、と感じる。
ここから林道歩き。
300mほど歩くと、脈絡なく東海自然歩道案内板が立っていた。ほんと、立つ場所に脈絡無い。
まあここまで淡々としていたので何か近くに見所は無いか、と案内板を見ると「情緒豊かな茶畑を堪能できます」。
――確かにそうかもしれないけど、こちとら川根から茶畑ばかりで食傷気味。他には……「日本最大と言われる芭蕉の句碑」。谷沢からコースと逆方向に1kmの距離は、ちょっと今日は手(足?)を出せない。
けっこう長い林道。なかなか、前進感が無い。さきほど急下降で足に疲労がたまっているので、余計そう感じる。
周囲は時折、「情緒豊かな」茶畑の光景。ただ、この時間帯は光に乏しく、生彩は無い。
PM4:24、谷沢到着。
![]() |
先のコースへ進む→ |