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小塩~杉谷~金蔵寺~大原野~沓掛~桂坂公園~苔寺~嵐山公園

十輪寺
小塩の十輪寺。拝観停止中だった
蕎麦屋
路傍の蕎麦屋。抹茶餅なるものも売る

小塩。なにはともあれ十輪寺に上ってみた。ところが拝観停止の貼り紙。ひょいと覗くと、なにやら工事をしている。

と、なるともうここには用が無い。さあ、杉谷まで350mほどの標高差を上り返すのだ。けっこう、と言うか、かなりかったるいぞ……。

チラと小塩バス停の運行表を見る。向日町駅まで1時間に1本。15:41と16:41の便がある。その後は無い。一瞬、バスに乗って帰ってしまおうか、とも思う。

柿と月
京都洛西の柿と月。そう思うと情緒も
竹林と山
これからあの山の上に戻ることに……

でも、そういうわけにもいかない。覚悟を決めて、東海自然歩道の小塩-杉谷ルートを戻り始める。

途中、先ほど追い抜いてきた人たちと正面からすれ違うことになり、微妙に恥ずかしい。そうです、ちょいと忘れ物があったんで取りに戻るのです!

道脇には蕎麦屋。京っぽくて佇まいがいい。ああ、本日がもうお仕舞いであるならば……。

恐竜
路傍に、火を吐く恐竜たち
善峰寺駐車場
善峰寺(よしみねでら)駐車場

善峰寺駐車場まで戻ってくる。この時間でもけっこう駐車は多い。で、先ほど見つけておいたトイレを拝借。

駐車場前の善峰寺参道入り口で地図見ていたら、親切なオジさんが「善峰寺はその道上がっていけば良いですよ」と教えてくれる。

……まあ、問題はこの参道か車道かどっちが東海自然歩道なのかということなのだけど。せっかく声を掛けて貰ったので、参道を上る事にする。


 


善峰寺
巨大な善峰寺山門。善峰寺は西国三十三ヶ所の第二十番札所
杉谷へ
九十九折の細い車道に変わる

PM3:25、善峰寺到着。

当然のように、拝観料が必要。そして、自分には拝観している時間が無い……。

車道に出て、そこから上り方向に進み始める。道は一気に細くなり、折り返しがやたらめったら多い。勾配きつく、足の腱が痛くなってきた。

永遠とも思える時間が過ぎ去り――実際は15分ほどなのだけど――元の歩いて来た道に合流。

そこからも、まだ上る。正直、上りはもう、うんざりだ。いったいこれは、何の試練?

山上の田園
今日、最後の陽が射す中、北へ進む
杉谷ふたたび
杉谷の集落に舞い戻ってきた

勾配が緩んで、前方に杉谷の民家が見えてきた。ようやく戻って来た!

杉谷の三叉路をPM3:50に通過。――結局、小塩往復に掛かった時間は1時間23分。時間だけでなく、足の疲労もかなり蓄積させてしまった。目的地までの残りの距離を考えると、これはヤバイかも。もっとも、杉谷から先はフラットな道。これは助かる。

左手には山上の田園があって、狭い空間を占拠している。陽も気まぐれに射し込んでくれるものの、最後にひと照りした後、山陰の向うに隠れていってしまった。

気温も落ちてきた。先ほどの無理な登りでかいた汗が冷えて、ちょっと寒い。


 


府道733号
府道733号のT字路。ここで右折する
府道から山道へ
雪面の府道。ここで左折、山道に入る
金蔵寺へ
雪の山道を金蔵寺へ向かって下りる
墓石
大量の墓石やら石灯篭やら

林に入り、雪が道の上にも現れるようになってきた。

杉谷から1.2kmほど歩いたところで府道にぶつかる。右折して府道に入り、少し進んで今度は左折。――指導標が多いので助かる。

小さな石灯篭?のようなものが並ぶ空間を過ぎて、本格的な山道に入る。

日が翳った後の、雪の山道。しかも山の東面の斜面。これは難度高い。滑って転ぶようなことがあると、目も当てられない。

少し緊張して歩いていたけれど、九十九折の急下降になると雪は消えた。急斜面、というより高度が下がったからだと判断。

逃げる猫
「えい、逃げるな!」
あ、ネコ発見
「ネコ発見!」

ここから先、もう雪を見ることは無いだろう。昼間の雪道は良いけれど、夜の雪道はちょっと遠慮したいんで、正直、ほっとする。

そして、目指す金蔵寺はすぐ左手の斜面にあるみたいだ。でも、参道はどこだろう? よく分からないけど、とりあえず寺のある方角に向かって車道を進むことにする。

あ……


 


金蔵寺山門
金蔵寺(こんぞうじ)の朱塗りの山門
金蔵寺境内
金蔵寺境内。天台宗の古刹とのこと

PM4:18、金蔵寺に到着。黄金、というよりほんわかと夕日色に染まっている。

山門には志納金の箱。ええい、と払い込む。そして、けっこう急勾配の階段を上って本堂へ。

その場所からは見晴らしが開けていた。主に京都伏見の街が見えるけれど――ただ三鈷寺のものはない。左右から山の尾根が迫っているため見え方が窮屈だし、それにそのせいで京の町が遠くに感じる。

金蔵寺の見晴らし
金蔵寺から南方の見晴らし
金蔵寺本堂
金蔵寺本堂

京の景色も見納めたことだし、もう戻ろう。金蔵寺の階段を下りていく。

――時間帯が遅いだけに、境内には誰もいない。杉谷で見たコース案内板には「石垣と石段の間に堂宇が建ち並ぶ」「12mの高さの産(さん)の滝がある」など金蔵寺の紹介があったけれど、今日はそれらの探索は一切無しだ。

階段を下り切って駐車場に出る。参道を東へ進んで、府道733号に再合流。あとは車道を下る一方。

金蔵寺参道入り口
金蔵寺参道を下り詰めて府道へ出る
入亀山霊園
入亀山霊園は真新しい開放的な霊園

タタタっと駆け出す。

――もうすっかり日は翳ってしまって、薄暗くさえなってきた。冬至から半月しか過ぎていないこの時期では仕方の無いことだけど、こうなるのだったら釈迦岳とか寄るんじゃなかった、と今更の後悔。

大きくヘアピンする道を駆け下っていく。と、左手に霊園。その向こう、良い感じの色の空。おかげでまた景色に見入ってしまう……。


 


夕日の京都盆地
京都盆地。左端は音羽山稜線で東海自然歩道の滋賀県側下降点がある。その右、大きく千頭岳、さらに平らな醍醐山。右端は宇治
伏見桃山城
京都は伏見への眺望。見える天守閣は伏見桃山城。立派だけど昭和時代の復興となる
坂本を下る
薄暗い坂本の棚田地帯を駆け下る
夕日
今日の夕暮れの空

二つ目のヘアピンを抉って、さらに進むと右から小道合流……もしかして、じつは歩行者用のショートカットがあったということ?

そのようだ。うーん、急がば回ってしまっていた。ここに至って、ようやく「大阪適当 京都府几帳面」なコース整備状況を理解する。

今度こそは歩行者用階段を見つけ、3つめ4つめのヘアピンは通らずにクリア。集落に下りていく。

日を改め歩き直す→

 


大原野入り口
ここで左折、京都西山山麓の北上開始
淳和天皇陵の道標
淳和天皇陵は高度差530mの山登りが必要

坂本の集落を抜けて再び駆け出す。右には折り重なるような棚田。

気が付くと忍び寄る冬の冷気……さて、日没近いこの状況でこの先どうしよう? もちろん、今日はポンポン山登山が目的。東海自然歩道に最後まで付き合う義理は無い。

再び集落に入る。現われたのは三叉路と久し振りの道標――よし、大原野へ向かおう。なんか悔しいから、今日は行けるところまで行く。そう決めた。

正法寺
大原野神社に相対する正法寺。別名「石の寺」
大原野道
大原野道。電波塔を多数擁す小塩山が近い

民家が消え、暗い竹林に入っていくと、早速、決心が揺らぐ。まだ日の入り前だけど薄明状態。逃げるように林の道を駆け抜ける。

再び集落に出る。石道標のある三叉路を右折、さらに樫本神社のある三叉路を左折、大原野道に入る。

大原野神社の鳥居の前まで来る。ただ、本社は参道のずいぶん奥にあるようで、見ることは叶わない。諦めて車道に引き返す。

勝持寺参道
勝持寺参道の入り口。山門が見える
勝持寺
「花の寺」こと勝持寺。拝観受付はPM4:30迄

車道から分かれて山門を潜り、コンクリート製の細道に入る。上り勾配、周囲は竹林。先ほどより一段と暗さの増した薄暮状態だ。

最後に右折、石階段となって勝持寺到着、PM5:00ジャスト。

――固く門は閉まっている。その前で東の方角に折れ、僅かに進むと幅広の車道。バス停を過ぎると府道141号と合流する。やっぱり竹が目立つものの、ほどなく林を抜けて郊外の景色に。


 


府道10号
府道10号・丹波街道は京都西山山麓を貫く
五差路
この五差路を左折、再度北へ向かう道に

五差路を曲がって再び北へ向かう。と、思ったら、また北、東。田畑越しに京都の団地や住宅が見える開放的な道を進む。……と思ったらまた右折の指示。こう曲がり角が多いと、道を失いそうで落ち着かない。

府道にぶつかった。道標の指示は府道歩き。その府道は一車線しかないのに交通量が多い。日没を過ぎたこの黄昏時に歩くのは、ちょっと危険だと感じる。

それでも行かないわけにはいかない。

農園直売所
農園の直売所。秋は柿、春はタケノコなど
沓掛コース案内板
沓掛(くつかけ)交差点のコース案内板

府道10号を北上。夜の到来に、街灯の灯りが輝きを増す。

途中、民家の密度が濃くなる地点では農園の直売所が立ち並んでいた。意外にも、まだ営業中。車で乗り付けたお客さんもいて、白熱電球の灯りの下で品が売買されている。

さらに進む。とりたてて興味の引くものも無くなり、退屈になる。

――そして大きな交差点に当たる。天下の1桁国道、国道9号と交差する沓掛交差点だ。車の量は府道なんかとは桁が違う。

デイリーカナート
オアシスに見えたデイリーカナート・イズミヤ
沓掛交差点
国道9号・山陰道の沓掛交差点。すぐ先にI.C.

沓掛交差点を横切る。少し行くと府道142号に当たる。別名、旧山陰道。

右折して東に向かう。左に貯水池の見えるところで、そちらに進む。貯水池の先で右に曲がって――

迷う。周囲は密集した住宅地で、シゼンホドウの欠片も無い。とりあえず北へ向かってみるものの、一向にコースらしき道に当たらない。

と、目の前にロータリー交差点。これは珍しい……。


 


桂坂公園の高台より
桂坂公園の高台より洛西の町を見晴らす。洛西ニュータウンが大きい

ロータリーを見下ろすスーパー、デイリーカナート。寒さが身に滲みていたので、店内で20分滞留、温かい豚焼き購入。

一般人のふりを終了し、スーパーを出る。ロータリーの向こう、桂坂公園へ。コースはここに、きっとある筈。

真新しく立体的な公園。薄暗いベンチで豚焼きを食す。

竹林を抜ける
竹林を抜ける。竹林の闇は問答無用の怖さ
車道
御陵峰ヶ堂の車道を横断。車1台も通らない

桂坂公園の緑地帯を進む。新興住宅地のグリーンベルト。道標が現われ、知らぬ間にコース復帰していたのに気付く。

緑地帯が尽きる。その先、細い道が木立の暗がりに消えてゆくのみ。

――道標は無し。意を決し、ヘッドランプ片手にその暗がりに突入。

竹林、真の闇。僅かな明かりを頼りに1本道を進む。時折、コンパスをチェック。途中、進路が北から東に変わった時には安堵した。間違ってなかったらしい。

バス停
苔寺バス停。コースは直進、苔寺は左折
苔寺
「苔寺」こと西芳寺。予約無しの拝観不可

竹林の山道を抜けた! 車止めゲートを抜けて変哲の無い車道に出たけれど、それがいかにありがたく見えたことか!

ほどなく完全な住宅地歩きになる。……つまらない。人間の感情なんていい加減なものだ。

コース不明のまま、とにかく北上。階段を下りていくと道標があって、苔寺バス停の広場に出る。苔寺はわりと近くだ。コースをいったん外し、西芳寺川沿いを西へ。


 


月読神社
月読(ツキヨミ)神社。松尾大社の摂社
嵐山→
嵐山→(コースはたぶん外れている)

苔寺、PM7:36。なんぴとたりとも通さんぞ、と言わんばかりにピッタリと閉じられた門。引き返す。

華厳寺橋を渡り鈴虫寺階段下を曲がり……そこでコースを再び失う。なにしろ夜の住宅地。細かい路地に入り込むと方向感覚さえ失われる。

今の時間、各家庭では夕食の団欒だろうか? とにかく、迷路の左手法よろしく山際の道を選んで進む。首尾よく、月読神社通過。

松尾大社
松尾大社。公衆トイレあり
松尾駅前
嵐山駅の隣、松尾駅から人が吐き出だされる

北に進む道が一本に収束してくれた。これはありがたい。寒さを振り切るように、ずんずん歩く。

左手に駐車場が出現。その向こうに社。松尾大社だ。もう少し進むと大きな朱の鳥居。その向こう、立派な山門。潜り抜ける。PM7:59。

すっかり闇の中の境内にまで到達する。ここは拝観料は無いのだろうか――どちらにせよ、境内を散策するような時間帯じゃない。

先のコースへ進む→


松尾橋
桂川を渡る松尾橋。四条通りが東に伸びる
松尾踏切
阪急嵐山線の松尾駅。昼間は観光客で溢れる

そして、いよいよ嵐山へと向かう最後の区間だ。鳥居の前から東に進み、突き当たって左。また巨大な鳥居。そして、府道29号の松尾大社交差点を渡る。そこには阪急松尾駅があった。

線路を越える。コンビニの明りが灯台の灯りのよう。目の前には松尾大橋。桂川。

橋は渡らず、手前で左折。桂川沿いの遊歩道に入る。

阪急嵐山駅
人気の無い阪急嵐山駅。昼間の喧騒とかけ離れている

暗いし誰もいない。逆に誰かいたら怖い。川べりなので、寒い。身が凍える。それなのに、道はだんだんと川面に近付いていっているように思える。夜の桂川は漆黒の器でしかない。それにつけても、寒い。

前進感が無い。川の対岸までも結構距離があり、ポツポツ見える明かりもあまり動かない。かと言って反対側は闇。どうも公園があるらしい……暗くて見えないけど。

車道に合流。でも、川沿いの道もまだ先に続いている。もう少しだろうか? もう少し進む。辺りは木立になり、右に橋。そう、中ノ島に渡る橋だ。いつのまにか嵐山公園に着いていた。気付かなかった。

車道側に出る。向こう、駅の明かりが見える。阪急嵐山駅だ。

到着、PM8:32――今日はここまで。参った!

先のコースへ進む→

嵐山公園~阪急嵐山駅=(阪急電鉄)…

阪急嵐山駅構内
嵐山駅で震えながら電車を待つ
MALT'S
とまれ京都西山水系のビールで乾杯

今日の反省。

とにかく朝寝坊は良くない。ロングコースなのに朝10時から歩き始めとは、気合が足りないとしか言いようがない……とは言え、仕事で夜遅くまで頑張っていると、翌朝の目覚ましが心地よい夢のメロディーに聞こえてしまうんだよー。こればっかは、どうにも。

そして、事前のコース調査不足。杉谷-小塩はまったくの予想外。その区間往復1時間半という遅延のみならず、標高差350mを登り返すという精神的な辛さ。また、本来のコース消滅後、新しく定まった沓掛付近のコースも道標頼りで行けるだろうと踏んでいて、実際は夜闇に迷いまくる。結果、せっかくの洛西の寺社群も闇の中。

――早朝から歩き始めて午前のうちに山を下り、斜陽の洛西をのんびり歩いて日の入りに嵐山。前日の、そんな夢想と落差激しい今日の旅でありました。

 


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