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小塩~杉谷~金蔵寺~大原野~沓掛~桂坂公園~苔寺~嵐山公園

十輪寺
小塩の十輪寺。拝観停止中だった
蕎麦屋
路傍の蕎麦屋。抹茶餅が気になる
柿と月
京都洛西の柿と月。そう思うと情緒も

小塩。なにはともあれ十輪寺に上ってみた。そこにあったのは「拝観停止」の貼り紙。なにやら工事をしている。

と、なるともうここには用が無い。さあ、杉谷まで上り返すか。350mという高低差――けっこう、と言うか、かなりかったるいぞ……。

チラと小塩バス停の運行表を見る。向日町駅に出るバスが40分後にある。もうバスに乗って帰ってしまうおうか、などと思うものの、そういうわけにもいかない。覚悟を決めて道を戻り始める。

道脇には蕎麦屋。京っぽい佇まい。本日がもうお仕舞いであるならば……。

恐竜
路傍に、火を吐く恐竜たち
竹林と山
これからあの山の上に戻ることに……

途中、先ほど追い抜いてきた人たちと正面からすれ違うことになる。これはこれで微妙に恥ずかしいという。

……そうです、ちょいと忘れ物があったんで取りに戻るのです!

善峰寺参道
善峰寺境内
善峰寺駐車場
善峰寺(よしみねでら)駐車場

善峰寺駐車場まで戻ってくる。この時間でも停まっている車が結構多い。公衆トイレもある。

そこにあった善峰寺参道入り口で地図見ているとオジさんに声を掛けられた。「善峰寺はその道上がっていけば良いですよ」と親切に教えてくれる。

……まあ、参道と車道のどちらが東海自然歩道なのか迷っていたのだけど。お礼を言って、参道を上り始める。


 


善峰寺
善峰寺山門。西国三十三ヶ所の第二十番札所
杉谷へ
九十九折の細い車道に変わる

PM3:25、善峰寺到着。

当然のように拝観料が必要。そして、自分には拝観している時間が無い、となると、ここにはやっぱり用はない。

車道に出て、そこから上り方向に進み始める。道は一気に細くなり、折り返しがやたらめったら多くなる。勾配のキツさで足の腱が痛くなってきた。

永遠とも思える時間が過ぎ去り――実際は15分ほどなのだけど――見覚えのある道に合流。

そこからも、まだ上る。正直、上るのはうんざりだ。いったいこれは何の試練?

府道733号
府道733号のT字路。ここで右折
山上の田園
今日の最後の陽が射す
杉谷ふたたび
杉谷の集落に舞い戻ってきた

勾配が緩んだ。ほどなく前方に杉谷の民家が見えてきた。やっと戻って来れた!

杉谷三叉路をPM3:50に通過。結局、小塩往復に掛かった時間は1時間23分。足の疲労もかなり溜まっているのでフラットな路面は有難い。

左には田園があって狭い空間を占拠している。陽も気まぐれに射し込んでくるものの、最後にひと照りして山陰の向うに隠れてしまった。

府道733号
府道733号の左折地点
金蔵寺へ
金蔵寺への急坂が始まる
金蔵寺有縁無縁供養塔
金蔵寺有縁無縁供養塔

だいぶ気温が落ちてきた。汗が冷えて寒い。林に入って雪が道の上にも現れるようにも。

府道733号にぶつかった。右折。府道と言っても細く、林道と変わらない。少し進むと道標は左折を示し、府道からも離脱。

小さな石灯篭のようなものが並ぶ空間を過ぎ、本格的な山道となった。日が翳った後の雪の山道――しかも山の東面の斜面。これは難度高い。滑って転ぶようなことがあると目も当てられない。緊張感を持って下っていく。


 


逃げる猫
「えい、逃げるな!」
あ、ネコ発見
「ネコ発見!」

幸い、九十九折の急下降になると雪は消えた。今日はもう雪を見ることは無いだろう。昼間の雪道は良いけれど、夜の雪道はちょっと遠慮したいんで、正直ホッとする。

そして金蔵寺は左手斜面にあるみたいだ。でも参道はどこだろう? よく分からないけど、とりあえず寺のある方角に向かって車道を進むことにする。

あ……

金蔵寺山門
金蔵寺(こんぞうじ)の朱塗りの山門
金蔵寺境内
金蔵寺境内。天台宗の古刹とのこと

PM4:18、金蔵寺に到着。黄金というより、ほんわかと夕日色に染まっている。

山門には志納金の箱。ええい、と払い込む。そして、けっこう急勾配の階段を上って本堂へ。

その場所から見晴らしが開けていた。主に京都伏見の街が見えるけれど――ただ三鈷寺ほどのものはない。左右から山の尾根が迫って見え方が窮屈。そのせいか京の町が遠く感じる。

金蔵寺の見晴らし
金蔵寺から南方の見晴らし
金蔵寺本堂
金蔵寺本堂

時間帯が遅いだけに、境内には誰もいない。杉谷で見たコース案内板には「石垣と石段の間に堂宇が建ち並ぶ」「12mの高さの産(さん)の滝がある」などの金蔵寺の紹介があったけれど、今日はそれらの探索は一切無しだ。なにしろ時間が無い。

階段を下り切って駐車場に出る。参道を東へ進んで府道733号に再合流。

あとは車道を下る一方に。

金蔵寺参道入り口
府道733号に再合流
入亀山霊園
今日の夕暮れの空

もうすっかり日は翳ってしまって、薄暗くさえなってきた。冬至から半月しか過ぎていないこの時期い行動可能時間が短くなるのは仕方の無いこと。だけど、釈迦岳とか小塩とか今日は寄り道が多過ぎた、と今更ながらの後悔。

ヘアピンカーブを切る車道をタタタッと駆け下っていく。ところが正面に良い感じの色の空が広がって、またもや景色に見入ってしまう……。


 


夕日の京都盆地
京都盆地。左端は音羽山稜線で東海自然歩道の滋賀県側下降点がある。その右、大きく千頭岳、さらに平らな醍醐山
伏見桃山
京都は伏見への眺望。見える天守は伏見桃山城
外畑集落
外畑集落の車道のショートカット口
坂本
坂本の棚田地帯

二つ目のヘアピンを抉って、さらに進むと右から小道合流……もしかして、じつは歩行者用のショートカットがあったということ?

そのようだ。うーん、急がば回ってしまっていた。ここに至って、ようやく「大阪適当 京都府几帳面」なコース整備状況を理解する。

今度こそは歩行者用階段を見つけ、3つめ4つめのヘアピンは通らずにクリア。集落に下りていく。

日を改め歩き直す→

 


大原野入り口
左折して京都西山山麓の北上開始
淳和天皇陵の道標
淳和天皇陵分岐。小塩山登山口でも

坂本の棚田を横目に駆け進む。忍び寄る冬の冷気……さて、日没近いこの状況でこの先どうしよう? もちろん、今日はポンポン山登山が目的。東海自然歩道に最後まで付き合う義理は無い。

再び集落に入る。現われたのは三叉路と久し振りの東海自然歩道指導標――よし、大原野へ向かおう。なんか悔しいから今日は行けるところまで行く。そう決めた。

正法寺
正法寺。別名「石の寺」
大原野道
大原野道。正面に小塩山(642m)

民家が消え、暗い竹林に入っていくと早くも決心が揺らぎだす。闇に没しつつある竹林を逃げるように駆け抜ける。

再び集落。石道標のある三叉路を右折、樫本神社のある三叉路は左折して大原野道に入る。

――着いた。目の前に大原野神社の鳥居。でも、かなり奥まっている。諦めて先に進む。

勝持寺参道
勝持寺参道の入り口。山門が見える
勝持寺
「花の寺」こと勝持寺。拝観時間は終わっている迄

車道から分かれて勝持寺の仁王門を潜り、コンクリ製の細道を進む。上り勾配で周囲は竹林――先ほどより一段と暗さが増した。

最後に右折、石階段となって勝持寺南門――固く閉ざされていた。……まあ、そうだろう。時刻はPM5:00に。

東に折れると直ぐに幅広の車道になる。バス停を過ぎて府道141号に合流。周囲には竹林が目立つものの、ほどなく郊外の景色に変わる。

府道10号
府道10号・丹波街道
五差路
この五差路を左折、再度北へ向かう道に

五差路で左折。ぶつかって、また左折。田畑越しに京都の団地や住宅が見える開放的な道を北上していく。暫く進むと今度は右折の指示。暗いので指導標を見逃さないかとヒヤヒヤだ。ここはコース案内板も一緒にあったので気付くことが出来たけれど。

府道10号にぶつかった。道標の指示は府道。一車線なのに交通量が多く、黄昏時に歩くのはちょっと危険だ。

それでも行かないわけにはいかない。


 


農園直売所
清原農園直売所。秋は柿、春はタケノコなど
沓掛コース案内板
沓掛(くつかけ)交差点のコース案内板

府道を北上していく。夕闇が濃さを増し、街灯が輝きを増す。

道脇に農園の直売所が幾つも立ち現れた。まだ営業中だ。白熱電球の灯りの下、車で乗り付けたお客さんとやり取り。

さらに進む。……とりたてて興味の引くものも無くなった。退屈。

デイリーカナート
デイリーカナート・イズミヤ
沓掛交差点
沓掛交差点から国道9号・山陰道を返す

大きな交差点に当たった。沓掛交差点だ。車が大量に往来している。

横断して、さらに北上すると府道142号に当たった。右折して方向は東に。貯水池のあるところで左折、貯水池にそって進み、突き当たって右折。

道標が見付からなくなった。周囲は密集した住宅地で、シゼンホドウの欠片も無い。とりあえず左折して北へ向かうとロータリー交差点に当たる。これは珍しい……。

桂坂公園の高台より
桂坂公園の高台より洛西の町を見晴らす。洛西ニュータウンが大きい

寒さが身に滲みていたので交差点脇のスーパー、デイリーカナートに避難。休憩がてら20分ほど滞留して身体を温める。温かい豚焼きも購入。

店を出ると隣の桂坂公園へ。コースはここに、きっとある筈。

真新しく立体的な公園。薄暗いベンチで豚焼きを食す。まだ先は長いのでエネルギー補給。それにしても昼食との落差よ……。

竹林を抜ける
竹林を抜ける。竹林の闇は問答無用の怖さ
車道
御陵峰ヶ堂の車道を横断

桂坂公園の緑地帯を進む。新興住宅地のグリーンベルト。道標が現われ、コース復帰していることに気付く。

緑地帯が尽きる。その先、細い道が木立の暗がりに消えてゆくのみ。

――道標は見当たらず。意を決し、ヘッドランプ片手にその暗がりに突入。

竹林、真の闇。僅かな明かりを頼りに1本道を進む。時折、コンパスをチェック。途中、進路が北から東に変わった時には安堵した。間違ってなかったらしい。


 


バス停
苔寺バス停。コースは直進、苔寺は左折
苔寺
「苔寺」こと西芳寺。予約無しの拝観不可

竹林の山道を抜けた! 車止めゲートを抜けて変哲の無い車道に出たけれど、それがいかに有難く見えたことか。

ほどなく完全な住宅地歩きになる。……つまらない。人間の感情なんていい加減なものだ。

コース不明のまま、とにかく北上。階段を下りていくと道標があって、苔寺バス停の広場に出る。苔寺はわりと近くだ。コースをいったん外し、西芳寺川沿いを西へ。

月読神社
月読(ツキヨミ)神社。松尾大社の摂社
嵐山→
「嵐山→」(コースは外れている)

苔寺、PM7:36。なんぴとたりとも通さんぞ、と言わんばかりにピッタリと閉じられた門。引き返す。

華厳寺橋を渡り鈴虫寺階段下を曲がり……そこでコースを再び失う。なにしろ夜の住宅地。細かい路地に入り込むと方向感覚さえ失われる。

今の時間、各家庭では夕食の団欒だろうか? とにかく、迷路の左手法よろしく山際の道を選んで進む。首尾よく、月読神社通過。

松尾大社
松尾大社。公衆トイレあり
松尾駅前
松尾駅前。パラパラと人が吐き出だされる

北に進む道が一本に収束してくれた。これはありがたい。寒さを振り切るように、ずんずん歩く。

左手に駐車場が出現。その向こうに社。松尾大社だ。もう少し進むと大きな朱の鳥居。その向こう、立派な山門。――潜り抜ける。PM7:59。

境内は病みに沈んでいた。ここは拝観料は無いのだろうか。どちらにせよ、今は境内を散策するような時間帯ではない。

先のコースへ進む→


 


松尾踏切
阪急嵐山線・松尾駅
松尾橋
桂川を渡る松尾橋の手前で右岸道へ

そして、いよいよ嵐山へと向かう最後の区間となった。もう、意地で歩いているようなものだ。鳥居から東に進み、突き当たって左に折れると、また巨大な鳥居。そして、府道29号の松尾大社交差点を渡ったところ、阪急松尾駅があった。

線路を越える。コンビニの明りが灯台の灯りのよう。目の前には松尾大橋。桂川。

橋は渡らず、手前で左折。桂川沿いの遊歩道に入る。

黒
夜の松尾公園を突き進む(イメージです)
漆黒
松尾公園から見る桂川(イメージです…)

暗いし誰もいない。逆に誰かいたら怖い。川べりなので、寒い。身が凍える。それなのに、道はだんだんと川面に近付いていっているように思える。夜の桂川は漆黒の器でしかない。それにつけても、寒い。

前進感が無い。川の対岸までも結構距離があり、ポツポツ見える明かりもほとんど動かない。かと言って反対側は闇。どうも公園があるらしい……暗くて見えないけど。

阪急嵐山駅
阪急嵐山駅。昼間とは別物の表情

車道に合流。でも、川沿いの道もまだ先に続いている。もう少しだろうか? もう少し進む。辺りは木立になり、右に橋。そう、中ノ島に渡る橋だ。いつのまにか嵐山公園に着いていた。気付かなかった。

車道側に出る。向こう、駅の明かりが見える。阪急嵐山駅だ。

到着、PM8:32――今日はここまで。参った!


先のコースへ進む→

嵐山公園~阪急嵐山駅=(阪急電鉄)…

阪急嵐山駅構内
嵐山駅で震えながら電車を待つ
MALT'S
とまれ京都西山水系のビールで乾杯

今日の反省。

とにかく朝寝坊は良くない。ロングコースなのに朝10時から歩き始めとは、気合が足りないとしか言いようがない……とは言え、仕事で夜遅くまで頑張っていると、翌朝の目覚ましが心地よい夢のメロディーに聞こえてしまうんだよー。こればっかは、どうにも。

そして、事前のコース調査不足。杉谷-小塩はまったくの予想外。その区間往復1時間半という遅延のみならず、高低差350mを登り返すという精神的な辛さ。また、本来のコース消滅後、新しく定まった沓掛付近のコースも道標頼りで行けるだろうと踏んでいて、実際は夜闇に迷いまくる。結果、せっかくの洛西の寺社群も闇の中。

――早朝から歩き始めて午前のうちに山を下り、斜陽の洛西をのんびり歩いて日の入りに嵐山。前日の、そんな構想と落差激しい今日の旅であった。

 


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