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玉露の里。なにはともあれ自販機に突撃!
……で、ペットボトル飲料を購入、よく冷えた炭酸飲料をガブガブ飲んで、生き返った心地。真夏の自然歩道歩きにおいて、自販機は貴重なライフポイント回復地点。
一息ついた後、ようやく周囲を見回す。長屋門を潜ると日本庭園っぽい光景が眼前に広がった。几帳面に配置・整備されている。この端正さ――岡部の大旅籠柏屋を思い出した。
オジサンが瓢箪池の鯉に餌を撒いていた。その池の対岸に見える建物が瓢月亭。茶室だ。玉露の茶が振舞われるのだろう。
池を一周して、だいたい雰囲気は分かった。大勢の観光客を集めるような施設ではないけれど憩えるスポット。
PM2:20、玉露の里を後にする。コース歩き再開だ。正確に言うと、ここから先は「玉露の里モデルコース」。岡部宿から向こう半分は2ヶ月前に歩いたので、今日歩くのは半コース分。
再び朝比奈川の右岸遊歩道を行く。見えて来た吊橋はちゃっきり橋。この名前も特徴的。
――ちゃっきり橋を渡る。川面を見下ろすと、水深はごく浅く川底が透けて見えるような感じだった。水量が少ない時期なのかも知れない。梅雨明けは2日前だったので、元々この川は水量が少ないのかも知れない。
橋を渡り切ったらすぐ右折。今度は左岸遊歩道を行く。
昼下がりの陽射しに晒されながら歩くのか、と思っていたけれど、川沿いの桜並木が結構な日除けを作ってくれている。有難い。
左手には開放感のある水田が広がり、暑さを心理的に減じてくれている。もっとも、風はほとんど無い。
歩道は大きく左に曲がりながら伸びていく。途中、道脇にカバーの掛けられた展望塔のような構造物が立っていたのだけど、何だったのだろう?
暫く同じ構図の光景が続く。車通りの多い県道からは離れているので静か。こういう道を散歩出来る地元の人が羨ましくもある。田園の区画に沿ってのぼりがはためいているのは――米酒?
と、道脇に自転車が並んで止められていたので、何かと思ったら川遊びしている人たちのものだった。川面で歓声が湧いている。そういえばこの川では時折、川遊びしている人たちを見掛ける。流れが穏やかだからだろう。
地蔵を通過。
その先で遊歩道が付き、県道209号にぶつかった。合流して殿橋で朝比奈川を渡る。
この先は……県道歩きか。アスファルトの輻射熱との戦いだ。降り注ぐ陽射しを避けるものは何もない。
気合を入れて歩き始める。車の往来は多いものの歩道が付いているので危険はない。危険なのは熱中症。今日は湿度も高い。
暑さに耐えながら歩いていく。と、目の前をチョウが舞って横切った。アサギマダラ?
……いや、そんなヒラヒラした飛び方ではなかった。あれはまさか――
朝比奈川右岸の堤まで追いかける。道は無く草地。留まったチョウの翅の模様を見てアカボシゴマダラであることを確認。以前、神奈川中部で2度ほど目にしたけど、こんな西方にまで進出していたとは。
樹間から川を見下ろすと、一組のレジャー客が川遊びに興じていた。その近くの堤の上でチョウを追いかけバタバタと動き回っていたら不審者と思われるかも知れない。これはマズい、と、退散。県道歩きに戻る。
羽佐間橋バス停を通過し、羽佐間橋を渡る。やっぱり暑い……。
と、橋詰に側道。道標も立っている。そちらへ。
再び朝比奈川左岸の歩き。
――ただ、川は見えない。それでも緑多く日影もある小道。県道歩きよりはずっと良い。
それに午後も深まって、なんとなく陽射しも強烈さを減じたような気もする。本日後半の歩きはずっと山間の平地歩きなので、陽射しが届かなくなる時間帯も早い筈。
……なんて考えているのは飲み物が乏しくなってきたため。玉露の里からこちら、自販機に1つも出会えないのは計算外だった。県道上にはあるだろうけど、そんな寄り道したくない。
緑が左右から迫るようになった。やや焦り気味の気分を和らげてくれる。
右手に再び朝比奈川が見えるようになった。ほどなく県道にも合流。
――ただ、そこに立つ道標に迷わされる。示しているのは直進――川面に下りる方向。橋を潜るの?
逡巡し、そして川面に下りてみる。川の水に手を浸してみると……思ったより生温かった。
結局、橋の向こうまで河原の道は続いていないようだった。やっぱり県道合流が正解か。引き返す。
県道を進む。ただし、溝口橋を渡らず手前の側道に入る。道標は無かったけれど、たぶんこっち。
珍しく畑風景が続く。それが尽きると再び右手に朝比奈川の流れが現れた。――どれだけ歩いてもこの川からは逃れられない、というイメージ。単に、そういうコース設定だからなのだけど。
藤枝キャンプ場を通過。
その先、道の脇の空き地にモンキアゲハが舞っているのを発見。この大きなチョウは同じところをグルグルと回る習性がある、というわけで暫し追い掛けっこ。いや、川を見ながら歩くだけというのもいい加減飽きたので……。
再び歩き出す。山に1つ登って、下山したけどバス停が麓にないので最寄りバス停まで長々と歩いているような気分になっている。玉露の里からこちら、全然見所が無い。あえて言うなら、この朝比奈川が見所という位置づけだろう。
その川面ではまたもや家族連れが水遊びに興じていた。――どこまでいっても穏やかな流れの朝比奈川。渓谷部がまるでない。
津島神社を過ぎて溝口橋手前で県道209号と再合流。橋は渡らず直進。
前方に見えているのは巨大な架橋――新東名高速の高架だ。
――そちらに向かって歩いていくものの、なかなか近づいてこない。ガソリンスタンドが現れ「新東名 藤枝岡部→」の標示もあった。インターがあるのか。
その交差点で右折。右側に現れたのは桂島公園。久しぶりの見所だけれど……地域の公園だった。ゲートボール場で試合が開催中。それ以外には公衆トイレとあずま屋と、朝比奈川の河岸に開けた広場。PM3:26。
とりあえず休憩。滔々とした川の流れを眺めながら残り少なくなった飲み物を飲む。この公園に自販機があって欲しかったのだけど、その期待は外れた。この17年で長距離自然歩道のインフラで大きく変わったことと言えば、アクセス手段が限られるようになったこと以外では、コース上の自販機設置台数が減ったことがあるかも知れない。以前は集落に1つくらい自販機があって、取扱商品も個性的であったように思うけど……。
桂島公園を後にする。引き続き県道209号歩き。
新東名高速の巨大な高架を潜る。そういえば、この新東名も静岡バイパスコースが設定された当時には存在していなかったものか、なんて思いながら。
カーブを1つ曲がると、離れたと思った新東名高速がまた接近してきた。暫く並進する形。それにしても巨大だ。鉄道やバスの廃線が続く一方、高速道路は未だに日本に伸び続けている――。
だいぶ上空が開けてきた。山間部もそろそろ尽きてきたようだ。青空は残っているけれど、太陽は雲間に隠れている。夕暮れのような雰囲気も出て来た。
県道の歩道を淡々と歩いていく。今日は低山を1つ超えただけなので足の疲労はあまり無い。暑さもだいぶ和らいできたけれど湿度が上がってきたような気がする。依然として、自販機は現れない。
右に大きくカーブしながら緩やかに上っていく。その先にあったのが村良橋。
――渡る。朝比奈川を渡るのも何度目になるだろう。
下流方向には平地と丘が散在しているのが見えた。もはや山間部ではなく志太平野の北端だ。蔵田から5時間かけて平地に戻って来た。
村良橋を渡ったところの道標を見て左折、右岸遊歩道歩きとなる。
河岸に並ぶ桜並木は青葉。薄暗くて、どことなく物寂しい夕方の雰囲気。
それにしても――喉が渇いた。右側には畑の目立つ村良集落が見えている。自販機のありそうなところは悉く迂回というコース採り、自然歩道としては正解だけれど……。
淡々と歩いていく。これだけの大きな集落なら散歩している人がいても良さそうなのに、と思ったけれど、良く考えたらまだ3時台。感覚的には夕方なのに。
河岸には野花。カワラナデシコが点々と咲いている。
前方に橋が見えて来た。その袂まで到達する。村良下橋。コースは……左折か。
橋を渡って朝比奈川から一時的に離れる。一時的、ということは最後に再び合流することを知っているから。2ヶ月前にそこを歩きの始点にしている。この左側に見える緑のこんもりした盛り上がりを回り込んだところにそれはある。
浅間神社の鳥居の前を通過。
郊外の住宅地といった光景になる。車の往来もあって、自分の家の近所を歩いているような感覚にも。
道が左に分かれた。そちらへ。このあたりが子持坂だろうか。上っていくと古い民家も現れた。右側に現れたのが大松のお地蔵さん。そして、その反対側に長屋門入口の標示。
示された方角へ。細い路地を上がっていく。そういえば玉露の里にも長屋門があったっけな……。
PM3:54、茅葺の長屋門。
……外から見上げるだけ。その奥は車が止まっていて普通に民家っぽかったので。門の前に解説板が立っていて、その歴史が記されている。
子持坂に戻る。そのまま道なりに進んでいくと、先ほど分かれた県道81号と合流した。その向こうには朝比奈川の河岸並木も見えている。
県道はその河岸並木との合流コース。
接近して、そして県道からひょいと朝比奈川左岸遊歩道に入る。下流方向、少し先に橋が架かっているのが見える。あれは……。
最後の河岸歩道歩き。橋の袂に辿り着く。ここから朝比奈川上流を眺めて、次はあちらから歩いてくるのかと思ったのが2ヶ月前。そう、道が繋がったのだ。
橋は渡らず左に折れる。ここにあるのは岡部若宮八幡宮。
信号を渡って、到着。PM4:05。
もちろん、階段を上がって参拝を済ませる。今日のお賽銭はここで。いちおう拝殿を回り込んで本殿も見ておく。――何も変わっていない。当たり前。
とにかく、静岡バイパスコース3本目の歩きも終了した。蔵田から順に歩いていくつもりが、何故かこのコースが3番目になるというのは想定外。結局のところ、昔、季節順番出鱈目に歩いた東海自然歩道の続きだから、ということになるのだろう。その意味で少し懐かしさを感じた。だからって真夏に歩くものでもないのだけど……。
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今日は歩き始めてから500mlペットボトルを既に5本消費した。最後の1本も残り一口しかない。まさかこの区間で最後まで自販機皆無とは思わなかった。
とにかくバス停に向かうか、と、岡部川左岸の遊歩道を北上。相変わらず水量が少ない川だ、と思いながら途中で右折。
路地を抜けると直ぐに五智如来公園。岡部宿観光の起点となるところだ。バス停は国道208号を挟んで対岸。
――横断歩道を渡って、岡部支所バス停にPM4:13に到着。バスは……残念、13分前に行ってしまったか。まあいい、飲み物を買おう、と、自販機の前に進み、さあ選ぶぞと指を上げたら。
バスがやって来て目の前で止まった。藤枝駅行きだ。慌てて乗り込む。もしかして運行大幅に遅れてた?
席に座って、ペットボトルの生ぬるい最後の一口を飲み込む。飢えが解消するのは駅に着いてからになりそう。
それにしても……と思う。前回は新幹線が遅れて間に合わず、今回はバスが遅れて間に合った。なかなかの帳尻合わせだ。
もっとも、長距離自然歩道ではこのような帳尻合わせばかり。綿密に計画立てても、現地の生の状況で計画は容易に崩れる。必要なのは臨機応変な調整力。
PM4:41、JR藤枝駅に到着。
駅の階段を上がると乗車券売り場は長蛇の列。通路を完全に塞いでいるほど。なにごと?と思ったら、どうやら近くで花火大会があるようだ。なので、新幹線券売機に列は無し。
静岡行き列車は混雑していた。しかも静岡駅に近づくにつれ混雑は増した。開催されるのは安倍川花火大会とのこと。この夏に良く聞く、コロナ5類移行して4年ぶりの完全開催――