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AM11:34、プレジャーフォレスト前を出発する。
――目指す先は石老山。日の短い季節のハイクで正午近くの出発は遅いのだけれど、石老山は低山なので十分。
それに、今日の目的は東海自然歩道のサブコースである大明神回りで山頂に到達すること。以前、山頂から顕鏡寺経由で下りてくるという本線コースは歩いているので、今日はその補完。
まあ、今日は両方使うのでごく普通の周回ハイクに過ぎない。コースタイムは3時間45分ほど。
県道517号を西に向かって歩く。すぐに鼠坂からの嵐山コースが右から合流。その先のT字路、篠原の標示を確認してさらに直進。
道が左にカーブを切り始めるところ、渡し舟の入口の看板発見。確かに石老山から下りてきた後、この地点から舟に乗って相模湖公園に渡ってしまうのも良さそうだ。ただ、本日は運休――季節運行だろうか?
というか、以前、4月に歩いた時にこんな渡し舟の案内、あったっけ??
車道は石老山へ向かって一直線の上り坂となる。周囲は畑で、背後には嵐山方面の展望がせり上がってくる。
ただ、東海自然歩道の道標が見当たらないのが気になってきた。今日は登りは顕鏡寺経由、下りは大明神経由を予定している。なので、一度反対向きに歩いている筈の道なのだけど……。
左に逸れていく脇道が幾つか。ただ、道標が無いのでパス。やっぱり道を間違えたか。
関川橋を渡ると林間の道。今日はじつは登山地図を持ってきていないので、道標頼りなのだけど。
ただ、方角を考えるとこちらは少なくとも大明神経由のコースであるだろう。予定とは逆になってしまうけれどサブコースから先に歩くことにしよう、と判断。それにしてもいったい、どの分岐を見逃がしたのか?
道はカーブを描き始めた。上り坂となって高度を上げていく。
救急車のサイレン。近くなってきたと思ったら後ろから救急車が現れ、追い越していった。そして、再び周囲は静寂。
右手、枝が多いながらも見晴らしが開け、嵐山山頂が見えていた。その横にはプレジャーフォレストの「お山のかんらんしゃ」――観覧車の方が僅かに高い。実際も観覧車の方が10mほど高くに到達するらしい。
と、三叉路に着いた。左の道に車止めゲートと、待望の東海自然歩道の道標。
ここが蓑石橋らしい。大明神まで1.4km、石老山まで3.0kmの地点。AM11:50。
ゲートの脇を抜ける。相模湖休養村のバンガローを見ながら勾配のある坂道を上る。途中、自販機もあった。登山道方面はあちこちに親切に示されている。
もう1つ車止めゲート。登山口はこの林道の途中にあるという掲示も一緒。
ゲートを抜けて林道を進む。右には関川公衆便所。やたら派手に示されている。
ほどなく登山口に到達。道標が立っているだけだけれど……なんか、登山道が不明瞭かも。まあ、沢沿いの道ならこんなものか。
登山道を登る。周囲は植樹林。正午を過ぎたけれど、北斜面なので陽射しは時々しか届かない。石積の道はやはり不明瞭で、時々ビミョウに道を外す。
――ただ、この前に嵐山に登っておいたせいか、歩き方を山向けに調整出来ている。躓くようなことも無い。粛々と登っていく。
沢筋を離れ、尾根筋に移動した時は少しほっとした。山道は比較的歩きやすくなった。途中には「危険 通行注意」の立札の立つところもあったけれど……崩落危険、の「崩落」の文字がテープで隠されているので、復旧しているということだろう。
そして、もう1つ沢を小さな橋で渡る。下りてくるハイカーとすれ違う。そして丸木階段の道。
――丸木階段は馴染。最後に東海自然歩道を歩いたのは9年前だけれど、その後に別の自然歩道を歩いていなかったわけじゃない。むしろ、ずっと歩き続けている。
ただ、東海自然歩道本線区間を完踏し、神奈川県のサブコースは後で幾つか拾っていくと言っておきながら、それが9年も後のことになるとは自身、思ってもいなかった。時間は油断していると本当にあっという間に流れ去る。やりたいことは、やりたいときに行なってしまうのが一番、とつくづく思う。
周囲の樹相が変わった。植樹林から雑木林へ。葉の落ちた広葉樹が道脇に並んでいる。冬は、こうなると明るい稜線道となる。
サブコースとは言え、本線コースとは何の違いも無い。東海自然歩道のトレードマークのある道標が立ち、要所要所ではコース案内図が立っている。そして案内図には、この長距離自然歩道の総距離1,697kmが示される。
――いま、自分はその1,500km近辺を歩いている筈。短いコースを歩いていながら、より長大なコースの一部を歩いているんだという感覚は、長距離自然歩道歩きの醍醐味でもあるだろうと思う。
もっとも、今日はその踏破距離に積み上げるのは4kmあまり。あまり進捗が進むわけじゃない。
明るい森を抜けていくと正面に展望台とコース案内図が現れた。ここが大明神展望台に違いない。PM0:21到着。
さあ、展望はどうだ。展望台――展望テラスと言った方が良いけれど――から見晴らすものの、周囲の木立が結構邪魔。山の展望台の例に漏れず、ここも木々の成長によって見晴らしが失われていくパターンなのか。
でも、本当にそうなるのは数十年後のこと。今は未だ、ギリギリ周囲360度の展望がある。多少、背伸びが必要かも知れないにしても。
意外だったのは相模湖への展望が一部しか無いこと。相模湖公園・相模ダムは良く見えているのだけれど、それぐらい。
その向こう、陣馬山~堂所山~景信山~城山の稜線は良く見えている。でも、高尾山あたりは木立に隠されがちだし、南アルプス方面などは、ほぼ木立に完全に邪魔立てされている。
西丹沢と富士山への眺望は確保。東丹沢も木立を越えて何とか見えるレベル。すっきりと見える方角は少ない。
その富士山だけれど、山頂部に雲が掛かってイマイチであった。
……のだけれど。待っているうちに雲が取れてきた。今日は珍しく、午後になると見えてくるパターンであったらしい。嵐山での雪辱を晴らせてホッとする。
大明神展望台では15分ほど滞留。なにせ、石老山山頂の展望はあまり良くないのは知っている。
ただ、ここに留まっているわけにもいかない。展望台を後に石老山への縦走路へと入る。高低差は150mほどだけど、朝に相模湖の町から見たよう途中にポコポコと小ピークがあるのが分かっている。累積の標高差はもう少しあるだろう。
少し下って平坦な道。少しだけ登ると小社のあるピーク。やや下って――そこからは、ほぼ登り一辺倒となった。
確かに下るところもあるけれど、緩やかな登りの多い稜線道。薄暗いヒノキの林の箇所もある一方で、落葉樹林帯も多い。それに東西方向に伸びる稜線道なので明るい。まさに木漏れ日ハイク。
実際、下りてくる十数人ものハイカーとすれ違った。ファミリーも多い。どうも、この道は下山利用が多そうだ。駅の案内にあったよう、石老山登山口バス停から顕鏡寺経由で登り、大明神経由で下りてプレジャーフォレスト前バス停へ、というコースだろうか。
――足が疲れてきた。ごく軽量装備なのに、情けない。そこに追い打ちを掛けるかのように長大な丸木階段が現れた。まあ、「山登り」なのだから仕方が無いのだけれど、いつまで経っても試練。
深い林の中、ふくらはぎが攣らないよう加減しながら丸木階段を登っていく。山頂はこの階段の終わりにある筈。だから最後の登り、と自分に言い聞かせながら。
階段を登り切って、そこに三方向道標。篠原分岐だ。ここは既に石老山の広い山頂部の一角。
濃い林の中なのは変わらないけれど、平坦になった道を快適に進む。三等三角点を過ぎ、その向こうにベンチ群が現れた。明るい陽射しの下、ハイカー数人が寛いでいる。
PM1:04、石老山山頂に到着。前回の登頂は白いガスの中であったので印象がガラリと違っている。
そして問題は富士展望。山名板のあるところから南、木立にぽっかり空いた空間から期待を込めて見やる。――見事、丹沢の山々の向こうに富士山がキレイに現れていた。雲も取れてスッキリ。
ともかく、これで9年越しの宿題を果たした感。そして、東海自然歩道の大明神サブコースも完踏。
山頂滞留は15分。PM1:19に下山開始。
――蛇足、というか何と言うか。この道は既に歩いている。なにしろ東海自然歩道の本線区間だ。以前とは季節と天候が違うとは言え、植樹林帯では風景もあまり変わり映えしない。でも、山に登ったのだから下りなきゃいけない。当たり前。
序盤は緩い勾配。自然にスピードが上がるものの、早歩きレベルに留める。以前のように早駆けしたりはしない。
まだ昼下がりであるので、この時間でも登って来る人が何組かいる。ファミリーの他、ペット登山も。
途中、相模湖西部を見下ろせる場所もあったけれど、そこ以外は林の中。日が随分傾いたような錯覚さえ感じる。冬の低山ハイクは出来れば南向きの登山道を使いたいもの。
と、下りの途中に左手に「融合平見晴台」の標柱。その奥にベンチが並ぶ。もちろん、そちらへ。
おそらく、石老山の登山道の中で相模湖への展望が一番良いのがこの融合平。相模湖展望コースのシメとして外せないポイントだ。
――その風景を目に焼き付ける。4分の滞留の後、PM1:38に下山再開。
さて、石老山からの下山はここからが本番。針路が東へと変わり勾配も急になる。なので、本当はこちらを登山で使いたかったのだけど……鼠坂でいきなり道を間違えてしまたのだから仕方ない。
尾根が東向きになり、再び林が明るくなった。陽射しは右手から射し込んで来る。山頂から1.5kmの地点で左に「桜道」を分けた後、すぐに八方岩。PM1:42。
――こちらは八方、とまではいかないものの、三方ぐらいの見晴らしはある。見えるのは津久井湖や相模平野、多摩丘陵。さらに遠く、新宿の高層ビル群も見えている。
そしてこの場所から下、石老山の本領発揮。なにせ鼠坂からの石老山周遊コースは「奇岩怪石のみち 」。
試岩、擁護岩、吉野岩、という巨石が解説板とともに次々と現れ始めた。
……よくもまあ、これだけ変哲の無い岩々に名前を付けたなあ、と感心するくらい。以前に歩いた時も同じことを思ったので、年齢を経ても信心深くなったりはしないらしい。
その一方で、地質学的興味は少しだけ持てるようになった。たとえばこの巨石群は太平洋の海底深くで作られた“礫岩”ということで、石老山は道志川の北にあるけれど丹沢山地に含めて良いよなあ、だとか。
下山道はさくら道ハイキングコースと合流して、なおも下へ下りていく。蓮華岩、大天狗岩を過ぎて、ようやく顕鏡寺の境内が見えた。
PM2:00、顕鏡寺に到着。ここにはトイレ、自販機、コース案内図がある。また、山の中腹にあって北方への展望も開けている。見ると、この時間帯になっても空にあまり雲は湧いていない。今日は午後から雲が多くなるという予報であったけれど、ホント一日、良く晴れてくれた。
境内に立つ神奈川県・名木百選のイチョウには葉は無し。一方、巨大な岩を屋根にしている岩窟は、コケも減って以前より自然に埋没しかけているようにも見えた。ただ、冬という季節だからそう感じるのかも知れない。相変わらず、静かで穏やかな場所なのは変わらない。
さて、もうひと下り頑張るか、と鼠坂を示す道標を捉え、さらに山道を下り始める。奇岩怪石が続く道。
PM0:39、サンビレッジ曽爾に到着。オートキャンプ場だけれども、バンガローやコテージが並んでいる。さらにはテニスコートさえ。
力試岩、文殊岩――そして巨大な駒立岩。このあたりが最も岩が密集?した地点かも知れない。
さらに下ると山道に水が流れだした。そういえば丹沢では最近、増えすぎたシカのせいでヤマビル被害が酷い、と聞くけれど、冬なら問題ない。湿ったところでも気にせず歩いていける。
仁王岩を過ぎ、屏風岩の狭間を抜ける。その先に滝不動――確かこれで最後だった筈。
勾配も緩まって、一瞬、石畳となる。そして、「石老山の岩の歴史」「石老山周辺に咲く草花」のパネルを見てダートの車道に飛び出す。フェンスの先は相模湖病院の建物。
右折し、広小路と言われる道を歩く。前回この道を歩いたのは4月で、地面をサクラの花びらが埋めていたような気もするけれど、今は何も無い。
階段を下りて舗装道に出る。石老山表参道入口、の標示がある。
右手の小川と一緒に坂道を下りていく。正面に奥高尾の稜線が見えるけれど、城山にほとんど隠されかけている。代わりに、プレジャーフォレストの遊具施設が見えてきた。
と、三方向道標。直進すると石老山入口バス停とあるけれど――
距離が入っているのは「ねん坂」の方向。というわけで、以前と同じように左折して鼠坂を目指す。残り距離1.5kmだ。
右手には緩斜面に畑地帯が広がっている。なんとなく山里っぽい風景。
――ゆったりと歩いていく。15:00ジャストのバスを狙っているので急ぐ必要は無い……と、左手に車止めゲートのある林道。
道標は、林道の方をコースとして指し示している。変わっていない、少し懐かしい。
少し上って、あとは平坦。ダートの道が曲がりくねりながら続いている。陽射しも当たらず地味な風景。
10分ほど歩くと林道から離れるよう示す道標。
――もちろん、示された方向へ。やや荒れ気味の草地を突っ切る細道。赤いリボンが道の先々を示している。
林道に当たる。横断して、さらに山道。
――東海自然歩道の良いところは、出来るだけ車道を歩かせないようにしようとするところ。各地の自然歩道を歩いた後では、それを実感する。
印象に残っている鉄塔地帯。背が低く、手を伸ばせば届いてしまいそう、というのは大袈裟だけど。
そして鼠坂の畑地帯に飛び出した。景色が開け、正面には西日を浴びたプレジャーフォレスト。光線にオレンジ成分が多いけれど、まだ午後2時台だ。冬至から10日しか経っていないので日が短いだけ。
梅林を回り込んで車道に下りる。もう後は一直線。今日最後のコース案内図を見て鼠坂の集落に入っていく。
T字路に突き当たる。県道517号だ。見覚えのあるミラー……やっぱり、ここだったか。「顕鏡寺2.2km」の標示があるのに見逃がしていた。カーブミラー下の道標で篠原が示されていたので、てっきり石老山を越えて篠原に下りる道かと勘違いして進んでしまった。確かに変と思ったけれど、思い込みは怖い。
まあ、結果オーライ。右折して、すぐに左折。隘路を抜けて国道412号に当たる。ねんざか歩道橋の前。ここが鼠坂。PM2:53。
歩道橋を渡る。休日の午後、国道の交通量は多く、騒がしい。
そして嵐山へと向かう東海自然歩道に別れを告げ、国道沿いの歩道を東へ進む。すぐに、プレジャーフォレスト前。
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交差点の向こう、プレジャーフォレスト前バス停。横断歩道を渡る。
バス停の列の最後尾に並んで15:00のバスを待つ。これを逃したら次の便は40分後。見ると、自分以外にもハイカーが数組。やっぱり、石老山から大明神経由で下りてきたハイカーたちだろうか。他は、プレジャーフォレストの客か。
時刻通りに神奈中バスがやってきた。ICカードをタッチして乗り込む。
――思えば、自分が東海自然歩道を歩いていた頃はバスでICカードは使えず、小銭を用意するのにいつも苦労していた。時代はきちんと前に進んでいるのかも知れない。
ただ、東海自然歩道は変わっていなかった。それは良いことなのか悪いことなのか、分からないけれど。
バスは素晴らしいスピードで走る。左に相模湖、右は嵐山。やがてJR相模湖駅に到着。さて、家路につくとしよう。