- 風車がまわる高原 -
【踏 行 日】2008年11月下旬
【撮影機材】OLYMPUS E-410, ZD14-54F2.8-3.5, ZD50-200F2.8-3.5, ZD9-18F4.0-5.6, CASIO EX-P505
早朝の西青山駅に下り立った。
空気がひんやりしている。自動扉が閉まり、列車がゆっくりと動き出した。次第にスピードが上がって、そのまま新青山トンネルへと吸い込まれていく。
――ホームに残された人影は1つ。そう、自分だけ。
屋根の無い階段を下り、ホームを潜って反対側の無人の改札口から外へ出る。ここには……
青山高原ハイキングコースの案内が立っていた。それと、長い風月に晒されて朽ち掛けた「コース入口まで1.5km」の東海自然歩道コース入口案内板。
――それだけしか無い。辺りには商店どころか建造物も一切合切無い。ただ、ただ、脇の国道を車が速い速度で走り抜けていくばかり。
昔はこの駅から青山高原に登っていくファミリーハイカーたちが大勢いたのだろう。そんな時代の名残が感じられる。現代にあっては紅葉シーズンの週末の朝だというのに人影は皆無。
……時間が早過ぎるだけかも知れない。「青山高原←」の標示に従い、細い階段を上っていく。
ここは近鉄青山トンネル開通前に線路が敷設されていたところ。廃線跡だ。いまは草の生えた地道が一直線に伸びていくばかり。……と、その道の先から朝日が昇ってきた。期待が高まったものの、太陽はすぐに雲間に没してしまう。天気予報的には今日は悪くは無かった筈だけど……。
車道を越して、なおも廃線跡を進むと右側が駐車場になった。そして乗馬クラブに行き当たった。左折して橋を渡り、国道165号に合流。
ここに特に道案内の標示は無し。前回は日が沈んでしまい、この廃線跡を見付けることが出来なかったけれど、これでは仕方ない。
国道脇の歩道を歩いていく。前方に緑色の歩道橋が見えてきた。青山歩道橋だ。
歩道橋に上る。そして東海自然歩道・青山コース入口に下りていく。
――本線コースは10ヶ月前に歩き終わった。支線・恵那コースは先週、そして今日、支線・山辺コースがフィニッシュになる。つまり、自分にとっての東海自然歩道歩きは今日が区切り。
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AM7:54、青山コース入口。目の前には東海自然歩道コース案内板が立っている。それは平成4年度改定前バージョンで、総距離1,376kmとある。
――今日でその1,376km踏破ということになるのかなあ。別に、いつもと違いはないけれど。
最初はフラットな林道。ちらほら紅葉が見られるけれど色は冴えない。今日はこの曇天に青空が覗くのを期待する日になりそうだ。
緩い上りとなる。見えてきたのは――廃屋? 看板に辛うじて「ハイキングコース」の文字。窓ガラスは割れ、室内は荒れ放題。東海自然歩道で良く出会う昭和の残滓の1つかも知れない。
さらに先へ進む。道が細くなってきた。
県道を潜る。階段を上がると、別の車道に合流。さらに奥に進んでいくと――
開けた広場。ここって道標で示されていた近鉄青山高原ロッジ……の跡地?
それでも東海自然歩道の指導標は立っている。そして「サニーヴィラ別荘地」の石碑の脇に「当別荘地内道路は私道」の立入禁止標示が。これって進んじゃダメなやつ? それとも別荘地迂回の山道があるのかも、とキョロキョロ。――そんなものは無い。とりあえず車道を行くか。
曲がりながら下っていく。そこに東海自然歩道の道標が立っていた。いちおう通れる道らしい。
その先で別荘地の中心部に出た。広々として開放的な空間。公園にプールまであるけど……ひと気はない。住宅地ではなく別荘地だからか、などと思いながら、そそくさと通過。
再び建物が見当たらなくなった。脇の林を覗くと緑に埋もれるように別荘の建物。と、道標が現れた。
指示された階段を上る。尽きると、また別の階段。そんなことが続くばかりに。……運動量的には全き登山だ。しかも直登なのでキツい。息が切れる。
木々の間に眺望が得られるような箇所も現れた。思ったより高く登っているようだ。ここまで、あまりハイクコースらしくはなかったものの。
アスファルトの車道になった。どうやら稜線に出るようだ――
と、思ったらその前に右折。稜線に並行する山道となる。――右手には大展望が開けた。曇天ながら、空気がわりと澄んでいるのは晩秋だから。
また広場だ。県道512号脇の広場。この先は……県道を歩くしかないようだ。
と、いうわけで県道に付いた歩道歩きとなる。うーん、やっぱりハイクコースっぽくはない。まあ、でも長距離自然歩道なんてこんなもの。
やや上り坂となった。背後にも大展望がせり上がってくる。歩道が右に曲がり、階段を上る。と、また広場に出た。ここは……
ふるさと公園、という案内が立ってる。見ると、東海自然歩道はこの先、青山高原の稜線の西側をなぞっていることが分かる。それで三角点は……この上か。階段を上る。
今度の広場は全方位遮るものが何もなかった。中央には三角点が囲われている。これは山頂だろう、と思ったけれど山名板はない。青山高原の僅かな盛り上がりの1つだ。AM9:03。
陽射しが無いのは残念だ。でも、眺望は確保されている。下界にはところどころ陽射しが落ちているところもあって、歩いていくうちその晴れ間も通過することがあるだろう。
――ちょっと寒くなってきた。登りでほてっていた身体が冷えてきたようだ。階段に戻る。
再び先ほどのふるさと公園案内でコースを確認。県道の方へと進み、公衆トイレの先の跨道橋で県道を渡る。そこにまたコース案内の立つ休憩広場。
――探勝路が気になる。片道1.2kmの枝道か。今日は(も?)ロングコースで寄り道の余裕などありはしない。でも少しだけ偵察しておくかと探勝路へ。
森の中を伸びていくフラットな小道。そこに立っていた道標は「東海自然歩道」のもの。これは進むっきゃない。
小走りに進む。最初は平坦だった道も、暫く進むと大きく下り始めた。あまり下り過ぎないでくれ、と願いつつ下っていくと――
現れたのは赤い社。奥山愛宕神社だ。こんな山奥まで参拝しに来る人なんて、と、思ったけど、たぶん人里側に参道があるのだろう。今は誰もおらず、ひっそりと佇んでいる。
……さあ速攻戻るか、と来た道を急ぎ戻る。広場に戻ったのは25分後。
早くも時間の余裕がなくなってしまった。でもまあ、この後は高原歩きなので捗るだろう、と、思いながら県道に沿った山道を行く。
すぐに青山山荘の前に出る。広い駐車場――道標が無い。駐車場は木々に囲まれている。ひょっとして道間違えた?
当てずっぽに森に突っ込み、小道を探り当てた。細いけど、たぶんこれだろう。進んでいくと東海自然歩道の道標が現れホッとする。
緩くアップダウンを繰り返す縦走登山道、といった感じの道になる。自然林が多いけれど見通しは悪い。こんな道が続くのかなあ、なんて思っていたら。
電波塔を過ぎて雰囲気が少し変わった。なんというか、高原っぽくなった。美ヶ原のように開けっぴろげの草原ではないものの、高地の丘陵地帯を歩いているという感覚……と、言っても高度は750~800m程度だけど。
――前方に並び立つ風車群、だいぶ近い。この青山高原は日本最大級の風力発電施設のある地だけれど、もちろん東海自然歩道が開設された34年前には影も形も無かった。先にここにあったのが東海自然歩道。
この道も時間が経つにつれ増えていく風車に侵食され、道が付け変わったりするのだろうか? 「自然」を体感するための歩道であるけれど、その自然を守るための発電施設に道を譲るのは――
ありかも知れない。でも今はまだ、その脇を通らせて貰うことにしよう。
陽射しが降って来た。空を仰ぐと雲はまだ多。でも、日光はあたりの雰囲気を一変する。
――白銀に輝く風車。気付けば、草むらの向こう風車が何台も回っていた。グォーという作動音があたりを満たしている。
いま、風力発電銀座のど真ん中にいる。
先ほどは「道を譲る」なんて思ったけど。
全然共存できるじゃん! むしろ、風車群の合間を縫うように進むハイクコースで売り出せばいいと思ったり。ちょっとスリルはあるけれど。
県道を潜って反対側に出る。
――だいぶ開けた草原となった。前方に見えてきたのは駐車場。その入り口の車道を渡り、やすらぎの丘という標示を見て小さな丘に上がる。
そこはベンチのある広場となっていた。青山高原の小さなピークの1つだ。ここで少し休むかと思ったけど。
「榊原自然歩道」の道標が気になった。……これも枝線ではないよな?
で、少しだけそちらに進んでみる。すぐに眼前に風車の回る大迫力の光景。風の通り道である青山高原――。
広場まで引き返す。AM11:03、もう寄り道している時間は無い。
再びコースを辿り始める。森と林の狭間の緑道。県道をまた潜ると、しばらく穏やかな道となった。歩く人がほとんどいなさそうな、森の中の平和な道。
下り始めた。
水気が多い、という印象。沢も現れ、木の根元ばかりか道も苔むしていたりする。……三重県らしい、と思う。本線コースを歩いていた時も、三重県に入るとこんなだった。自然歩道らしい自然歩道――。
どんどん下っていく。一帯は植林に変わる。こんなに下るとは予想していなかった、と思っていると路面が落ち葉の山道からコンクリへと変わった。傾斜も緩む。さらに砂利道と変わり、ついに舗装道に当たった。
左折して林道歩きになる、と思ったら右に三方向道標。直進……は馬野渓とある。そっちじゃない。右折して馬野川を渡る。
林道歩きは続く。ただし、一転して緩い上り坂。沢を見ながらの薄暗い谷道だ。
そしてテーブルとベンチのある笠取山登山口に辿り着いた。まだ登るのか……。
気合を入れて階段を上り始める。……長いし、単調だしで、すぐに疲れてしまう。休み休み上っていく。
階段が終わった。目の前に林道。右折で笠取山山頂だけど道標は左折指示。時刻を確認――AM11:46。
諦めて左折。布引山地主峰の笠取山は是非立ち寄っておきたかったけど仕方ない。
砂利道の槙野林道。ずんずん下っていく。最初は見晴らしの覗くところもあったけれど、大きく曲がりながら高度を下げていくと眺望もなくなる。やがて路面は簡易舗装になり、植林に没して沢沿いの道に。
再び日が照るようになった。今日は曇り時々晴れのようだ。この先、晴れ間が出来るだけ多からんことを。
……などと思いつつ食べ歩き。道は平坦なので歩行ペースは落とさない。
人里が近くなってきた雰囲気。ガードレールが道に沿うようになる。
と、橋が現れて槙野川を渡る。――そこに別の橋。その向こうは空間が開けている。林を抜け、人里に出たのだ。
服部川を槙野橋で渡る。道標を見て右折、川沿いの車道歩きに。人里に出たと言っても静けさは変わらない。考えてみれば今日初めての人里歩きだ。西青山駅からこちら、別荘地はあっても集落は無かったので。
葉の落ちた桜並木から分かれ、道は左にカーブしていく。
と、二車線の道にぶつかった。少ないながら車の往来もある。国道163号・伊賀街道。
ええっと、道標は……棒状のものが角に立っていた。これ、分かりにくいんだよなあ。右折。
すぐに服部川を渡る橋。その先に見えるのは東海自然歩道コース入口案内板。あれ? 道間違えた?
近寄ると普通のコース案内板だった。新大仏寺1.6kmとある。紛らわしい……。振り返ると川沿いにあずま屋があった。
とりあえず、ここで一休みだ。PM0:58。
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