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PM0:33、上高尾から今日の後半戦がスタート。
……って、ここに到着したのは15分前なのだけど。じつは右折の分岐を探りながら県道を突き進み、民家が増えてきて流石におかしいと気付いてこの貯水施設前まで引き返して来た。
それもこれも、と、分岐に立つ指導標の裏をひょいと確認。……示されているのは「尼ヶ岳」。
県道を「尼ヶ岳」方面へ辿り始める
上り坂。左に曲がっていく。……やっぱり「桜峠経由尼ヶ岳」だったか。なかなか分かりにくい。
周囲は丈高いスギ林。車の往来は無い。
桜峠は交差点になっていた。前方、伊勢八知駅方面は工事で通行止めのようだ。右は尼ヶ岳方面。
左折して県道755号に入る。道は緩やかな上り。単調な林間の歩きが続く。
――陽射しが落ちてきた。濃い木々を通してそのことが分かる。天気は回復すると予報されていたけれど、ようやくか。
でもこの深い林の中では。尼ヶ岳あたりで晴れて欲しかったなあ、と思いつつ淡々と道を手繰っていく。
先ほど15分ロスしたので遅れを取り戻さねば、と食べ歩き。こういう時に勾配が緩いのは助かる。もっとも、今日は迂回路を除けばずっとこんな感じかも知れない。
それでも右方、林が切れるところもあって、青空を確認することも出来た。窮屈に、だけれど。
「伊賀市」の標示。それを見て、本線コースを歩いていた時に甲賀市から伊賀市に入った時のことを思い出す。あれは伊賀市の北端で、今はほぼ南端。山辺コースも終わりが近づいて来たか。
下り勾配となるものの大したことはない。ほどなく林を脱した。
――田園地帯。黄色の稲穂が山あいの空間を彩っている。久しぶりに艶やかな光景を目にして少しホッとする。
市杵島神社を通過。
民家が尽きても田は続く。細長い空間だ。その先に分かれ道。道標は左折を示している。そちらへ。
右に見えているのはゴルフ場のようだ。青山高原も近いということだろうか、などと思っていたら再び薄暗い林の中に突入した。視界が閉ざされる。
沢沿いの道。道も湿っていて水溜まりも多く、そこに沢蟹が闊歩している。
木立にコテージの立ち並ぶ空間――やっぱり、これまでとは少し雰囲気が違ってきた。もっとも、人の姿が皆無であることは変わらないけど。
さらに進むと林を抜けて、次の田園地帯に。今度は民家は見当たらないものの、よく陽射しが降り注いでいて明るい。
別の道に突き当たった。3方向の道標。左が「バス停霧生上出 4.3K」で右が「青山高原三角点19.4K」
右折、二車線の車道を東へ。それにしてもバス停まで1時間とか、エスケープルートにしても随分と遠いこと。
歩いていくとメナード青山の案内表示が現れた。いよいよか。
左に芝生の広場。その奥には白い4階建ての建物――ホテル? その先で道は大きく左に曲がっていった。上り坂だ。
「霧生温泉 香楽の湯P」とあった分かれ道を過ぎてメナード青山リゾート総合案内所に到着。何台も車が停まっている。
ひと休憩入れたかったけど、予定より遅れているのでそのまま通り過ぎる。と、上り坂が終わって「布引峠」の標示が現れた。あまり峠っぽくは無いところだこと。PM2:06。
――海が見えた。伊勢湾だ。東海自然歩道は内陸部を通るので、なかなか海は目に出来ない。静岡新コースは知らないけど。
ただし、このまま伊勢に下りていくわけでは無い。二股分岐で左折、県道755号に入る。またもや林間の道。
――再び視覚変化の無い道。しかもアップダウンもほとんどない。単調で、眠くなりそうだ。
と、防火帯があって、また一瞬伊勢湾が見えた。でも、その後は再びスギやヒノキの林立光景。もちろん、車の往来などあろう筈もなく。
大洞山からこちら、布引山地をずっと北に向かって辿っている。それは本線合流まで続くことになるのだけど、視界が閉ざされ、ぐるぐると方向が変わる巻き道を辿っていると本当に北へ向かって進んでるのか、と不安を感じそうになる。山辺道を南下していた時とは大違いだ。
――でもまあ、それもバランスかも知れない。
道標が現れる。青山高原までの距離が確実に減っていることを確認。
やや下りになり、そして目の前に現れたのは三叉路。久しぶりの分岐だ。左方、見ると「これより先、航空自衛隊」とあって通行止め。……あまりマジマジと見ていると捕まりそう、なんて思いながら右の道に。
そして、さらに左に分かれたダートの坂道を上っていく。道標の角度が示しているのはこちらの道。高度を出来るだけ落とさないコース採り。
川沿いに下って行く県道を下方に見送り、再び林間に突入。……なんか、先ほどの区間を時間を巻き戻して歩いているみたいだ。よりワイルドになり、そして日がさらに傾いてセピアな雰囲気。
――より自然歩道らしい、と言っても良いだろう。同じ植林帯だけれど人工的な感じがしない。ただ、時間も押しているので歩行ペースは落とせない既に午後3時半を過ぎている。
たまに現れる道標も矢印のみ。
陽光にオレンジ成分が増えてきた。
……またもや日没と競争か。桔梗平~倉骨峠が迂回路になったことで今日も時間ギリギリの歩きに。もっとも、通行止めが事前に分かっていても歩きに来るのは延期しなかっただろうけど。
通行止めのあるたびに延期していたら終わらないのが長距離自然歩道歩き。自然相手はそういうもの。
木立が薄れ、幹の合間からまた伊勢湾が見えた。そちらも夕陽に染まりつつあるようだ。
そしてようやく舗装道に突き当たった。道標が立っていて右折を指示。覗き込むと「西青山駅7.3K」の文字があった。今はPM4:16――やっぱり日没ギリギリになりそうだ。
右折。舗装道を東へ。すると、またもや「津市」の標示。……どうもここまで、伊賀市と津市の境を歩き続けているようだ。この先もそうだろう。
そして、ここにも3方向道標。直進すると6.6km先に城立バス停があるという。相変わらずバス停が遠い。左折し、青山高原へ向かう。
――上り坂。今日最後の上りの筈だ。朝から歩き続けて足の疲労は濃い。でも、身体に鞭打って上る。
暫くすると右手に眺望が覗くようになった。ずっとではないとしても、南東の山並みや伊勢湾を見ながら歩いていけるのは有難い。しかも周囲は雑木林になっていて、これまでとは明らかに雰囲気が違う。肌に心地良く感じられる風。
ただ、影は随分と長くなった。ここが踏ん張りどころ。
上り坂がやや緩やかになった。高度600-650mの高原の地へ。風が吹き道脇のススキが大きく揺れている。布引山地は風の通り道だと聞いたことを思い出す。
そのススキの先には特徴的な尼ヶ岳と大洞山のシルエットを見つける。――1日でずいぶん遠くまで歩いて来たものだ。北に向かって一直線に……にしてはウネリまくる道ばかりだったけど。
それにしても保養地に向かう道なのに建物がほとんど見当たらない。メインロードでは無いのだろうと思うけど、少し寂しい。そしてまた少し上り坂になる。と、左側に一瞬、展望が開けた。久しぶりの西方の展望だ。見えるのは……上野盆地? 大和高原? 夕陽の光に霞んでいた。
道はほぼ平坦になった。久しぶりに分岐が現れ、道標を見て左に。……と、左側に風車の立ち並ぶ山の稜線が見えた。あそこが次の目的地、青山高原だけれど今日はまだ向かえない。
右側に別荘らしき建物が次々と現れるようになった。保健休養地の領域に入ったのだろう。さらに「←R165 2.2km」の標識が現れ、2車線車道に合流。街路樹が整然と立ち並んでいる。明らかにメインロードだ。
――別荘地越しに見える伊勢湾と伊勢平野。行き交う船に知多半島も見えている。……でも今日はこれで最後。早く下り口を見つけて山を下りなきゃいけない。
なので、いま恐れることは道標を見落として突き進んでしまうこと。これまで幾度となく、そんなミスを繰り返してきた。
左側、オートキャンプ場の手前の道に指導標。まだ直進か、と思ったら三方向の道標で、直進は青山峠を示している。そっちはコースではない。危なかった。
左折して「西青山駅3.7KM」の方角へ進む。愛知県の三方向道標ではコースを示す矢印が緑に塗られたりしていたけど、三重県はそこまではしていない。行先を良く把握していることが必須。
坂を上がる。ここも別荘地のようだ。下り口は……と、また迷う。
山道入口の階段の上に分かりにくく指導標を見付け、ようやく下山道に入る。少々焦った。
いたって普通の山道。几帳面な植林帯だ。太陽はかなり傾いていて、正面に透けて見えている。日没はもうすぐのようだ。もちろん、ヘッドランプは持参しているけれど、ライトで照らした足元しか見えないのは、山登りの下山では許せても自然歩道歩きではよろしくない。
下って行くと太陽は山陰に隠れ陽射しも届かなくなった。暗い林の中、足早に下って行く。
やがて沢が現れた。
傾斜は緩くなったものの、暗い。わりと道幅があるので辿れるけど、分岐が多いような道だったら怖い。実際、もう枝道に迷い込んでいる可能性もあるけれど……。
道幅が維持されていることを頼りに突き進んでいく。と、車の走る音が近くに聞こえ、ホッとする。もう少し進むと、目の前にぬっと歩道橋が現れた。山道に接続する歩道橋って……。
橋体に「東海自然歩道青山歩道橋」。
橋の上からは2車線の車道が見下ろせた。国道165号だ。時折、車が速いスピードで走り抜けていく。
渡り切って、一番奥の階段から下りる。そこはちょっとした広場になっていて、小屋とコース案内図が設置されている。1,376kmの環境庁バージョン。
今日はここまでだ。PM5:50。
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ここの道標には「西青山駅2.5K 20分」と書いてある。……時速7.5km/hじゃん。昔の人は足が速かったのだなあ、と感心しながら再び歩道橋に上がる。今度選択したのは真ん中の階段。
下り立ったのは国道165号の南側の歩道。ここから西青山駅までは一本道、迷う筈はない。
歩き出す。林から出て幾らか明るくなったものの夕暮れ時、山間はあっという間に暗くなる。下りになると駆けだして距離を稼ぐ。
ところが歩道と車道を分離するガードレールが消失。この暗さで走ってくる車と対向するのは怖い。川の向こうに乗馬クラブ。その手前の橋を……
渡らず国道を進む。幸い交通量は少ない。すれ違い時にへばりつけばなんとか。
ヒヤヒヤしながら進み、左に分岐を見付けて、そちらへ入ると国道と並行するダート道があった。これは有難い。もっとも街灯は無い。
ほとんど暗闇で、空だけが赤く見えている道。進んでいくと煌々と照らされた照明。
PM6:13、西青山駅に到着。もちろん、無人駅だ。駅員どころか列車待ちの乗客の姿もない。ホームの東端から見えるのは新青山トンネル。
――そのトンネルから轟音が聞こえ、列車が飛び出してきた。
今日の歩き旅はここまで。そして次にこの駅を訪れる日こそに東海自然歩道・山辺支線を踏破するだろう。冬になる前にやってこよう……。