- 関西の軽井沢!? -
【踏 行 日】2007年3月下旬
【撮影機材】OLYMPUS E-1, ZD14-54F2.8-3.5, ZD50-200F2.8-3.5, CASIO EX-P505
京都府も南端にほど近い、加茂町。京都盆地ではなく奈良盆地に属していて、奈良駅から数えて3駅目。奈良盆地も外れにあり、関西本線もこの駅以東は非電化単線区間となる。
ところが、下り立った加茂駅は結構モダンな駅舎でびっくり。お隣の木津駅がわりと古風な感じだったので、ちょっと意外な感じ。
駅北口のバス停で待っていると、和束町小杉行き奈良交通バスがやって来た。乗り込むと、すでに乗客が数人。――じつはこのバスは木津駅発・加茂駅経由だ。だから隣の木津駅からこのバスに乗っても良かったのだけど。木津駅舎は前回見た。今回は、加茂駅舎を外から見たかっただけ。……モダンな駅舎より古風のがいいな、と思うのは外来者の我が侭。
バスは木津川を渡って国道163号に合流。すぐ左折し、府道5号に入ると山あいの景色に変わった。針路は北東。
山間部を抜ける――と、山あいに開けた里の光景になる。交差点のローソンを見て、4ヶ月前を思い出す。そう、前回はここまで歩いた。あの時は夕暮れ時、寒かった。
バスはひた走る。和束の茶畑は、今日は明るい朝の陽射しにまどろんでいる。
原山バス停に到着。やっぱり、バスだとあっという間だ。一人、下りる。
身を突き刺すような冷気は……無い。天気も良いし、春が一足早くやってきたような感じだ。冬枯れの時期であることには変わり無いのだけど。
府道から田園地帯に下りて和束川を渡る。前回、最後に歩いた道筋を辿り、門前の集落へ。そして――今日歩くコースの始点に着いた。
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AM9:14、和束町は門前から、東に向かって出発。
天気はすこぶる良い。気候も穏やかで、絶好のウォーキング日和だ。これは気合が入る。よし、今日も頑張って歩くぞ、と思ったら……。
いきなり「3km先 童仙房方面通行止め」の標示! しかも三キロ先とは……。今日は引き返して出直した方がよいだろうか? と思案を始める。
ところが、標示をよく見ると、工事期間はH19/3/15まで、と書いてある。今日は3/21。と言うことは、もう6日前に工事は終わっている筈……。
もしかしたら工事が延びているのかも知れないけれど。とりあず、進もう。
和束川流域の田園地帯を後に残し、薄暗い林の中の坂を上って行く。
すぐに視界は開けた。と言っても、見えるのは茶畑ばかり。ただ、その配置は見事なものだ。――和束の茶は有名だけれど、その産地を歩いているんだということを実感する。
緩やかに上っていく。今日午前中に通過する童仙房は関西の軽井沢と言われているところで、標高450~500m程度ある。門前が150mほどだから序盤は一方的な登り。
とは言え、門前の茶畑が結構奥深くまで入り込んでいる。おかげで、展望が良いところも結構あって、退屈せずに気分よく歩ける。
でも、地味っちゃ地味ではある。じつは前回、宇治~和束を歩いた後に奈良・山之辺の道を歩いている。今日はその間にあるこのコースを埋めに来た形。だから、東海自然歩道の南回りコースを歩くのは、今日が3回目。
で、その山之辺の道と比べてしまうと落差は激しい。あっちは神社仏閣にこと欠かず、コースを歩いている人も大勢いたのだけど……。こっちは、歩いている人はおろか人の姿も滅多に見かけない。茶畑で農作業をしている人を2、3人見たっきり。
それとも、やっぱりこの先で通行止めになっているのだろうか。そんなオチは嫌だなあ。
林の中に入っていって、もうあとは峠に向かうだけかと思ったら、また上空が開けて茶畑地帯に出た。本当に茶尽くしだ。道はその間を縫うように上がっていく。
そして、道が左右に分かれるところに通行止め看板。でもそれは道の端に寄せられている。
判断に迷う。
先に進む。
工事は終わっていて、あとは片付けなのだろう、と都合の良い解釈。
と、また茶畑だ。山の上にまでこうとは、本当に茶栽培の盛んな土地なんだなと思う。農作業をしている人もいて――車で入ってくるために通行止め看板が除けられていたのかも、なんて思う。
峠らしきところを越える。その先では道は車の通れない細さになる。その道を、一気に下っていく。
5分ほどで下り切って、車道に当たった。童仙房の各集落を貫く三国越林道だ。そして、「童仙房一本松」の標示。
林道を歩き始める。もうここは標高500m弱の高台、童仙房地区だ。茶畑に加え、田園風景も見られる……いたって普通の山里。
“関西のマッターホルン”高見山が微妙なのと同様、ここもホンモノの軽井沢と比べるのは意味が無い。そもそも観光地ですらない……と思う。それっぽい施設は、三番にあった民宿「童仙房山荘」ぐらい。
と、その先で「休憩所←」の標示が現われた。そちらを見ると「ないおん寺」の前にあずま屋。近くには簡易トイレも。よし、一休みだ。AM10:45。
と言っても、まだ疲れているわけでは無い。お昼になるまでもまだ時間がある。と言うわけで形だけ休むとすぐに出発する。
五番には、思いがけず白い校舎。野殿・童仙房小学校だ。校庭では、数人の子どもが野球をして遊んでいる。
そして、辺りに民家も見当たらなくなった。車道をゆるゆると上ってゆく。道脇にはフキノトウ。
峠を越えて、下り坂。と、車がやってきて横に止まった。運転手に話しかけられる。この先にある高麗寺の住職さんだそうだ。道をただ歩いているのだと話すと、その人は童仙房の歴史やお寺の由緒など話をしてくれた。話好きな方で……止まらない。
そう、童仙房には入植の歴史がある。苦労して切り開かれた新天地なのだろう。入植順に1番から9番まであって、東海自然歩道はその中の幾つかを――ただ通っている。
お礼を言って、先を急ぐ。
ずんずん下っていくと、また山あいの小広い空間に出た。民家が並んでいる。野殿の集落。……番付けでは無いけれど、ここは入植地では無いのだろうか?
突き当たって、コースは右折となる。でも、時間が少しあるので左折、少し寄り道をしてみることに。
高麗寺のある八番は遠い。少しそちらに進んだけれど、諦めて引き返す。
東へ向かう三国越林道と分かれ、南下を続ける。田園地帯も引き絞られてやがて消え、完全に林の中の道になる。と同時に、グネグネと曲がり始めた。
そして、大きく下り始める。
――童仙房の高地ともこれでお別れだ。いつか、このひっそりとした隠れ里のような土地を再訪する日はあるのだろうか?
山を下るのに、車のために勾配が緩めてあるのでまどろっこしい。人にとっては遠回りさせられるばかり。ここはタッタと駆け下る。
途中、林が切れて展望が開けるところがある。そういうところでは立ち止まって景色を眺める。――倶留尊山あたりがやっぱりポコポコしている。一年前、高見山に登って確認した通り。
倶留尊山には東海自然歩道が通っている。この南回りコース全部を歩き通す気は無いけれど、そこだけは歩いてみたいなと思っている。
で、暫く駆け下ってみたものの、なにせ距離が長い。途中で飽きて、ギブアップ。パンなどを齧り付きながらゆっくり下ることに。
――ずいぶんと高度を下げた。もう、国道163号を走る車も良く見えている。
道の右手に梅の木が並んでいる。白い花がまだ残っている。道の左に東海自然歩道のコース案内板、環境庁1,350kmバージョン。かなり古くて壊れかけており、地図部は欠落。そして正面には国道163号。車がビュンビュン渡っている。時刻は――PM0:38。
そして、「レストランおしはら」の広い駐車場。自販機も2台見えるけれど、今のところ飲み物は充足している。
左折し、国道脇の歩道を歩き出す。
登坂車線の上り。0.25kmほどでそれは終わり、前方に集落が見えてきた。押原だ。ただ、国道の反対側に東海自然歩道の道標が立っているのが見えた。コースは、引き戻るような形で国道の傍道を上っていくようだ。
車が来ないのを見計らって国道を渡り、その傍道に取り付く。
少し進むと砂利道となり、山あいの光景が戻った。溜池に茶畑、葉を落として灰色の森――静かだ。梅は咲いたとは言え、季節としてはまだ冬。それでも3月下旬のお昼時、陽射しは結構高いところから降ってくる。
それを青々とした茶の葉が反射する。春の、一歩手前の季節。
……ワンワン、キャンキャンと犬が一斉に吠え立て始めた。なんか――道脇に犬を集めた施設があるらしい。急いで歩き抜けるものの、吠え声は暫く追ってきた。
静寂が戻ると、ほどなく舗装道に合流。「マインベーレ←」標示があるけれど、先ほどの犬の施設の名だろうか?
鋭角に左に曲がって、東――月ヶ瀬口駅の方向へ歩き出す。地図によると、すでにJR関西線のトンネルの上を通過して南側に出ているらしい。
右に畑。上り坂となり、浄水場の前を通過。道はうねって、ヒノキの木立、竹の林を抜けると再び開放的な光景。
茶畑の丘の道を進む。
午後に入って気候はますます穏やか。丘陵地帯ののどかな光景が続く。アップダウンも適度。
――あまりにも平和なので、欠伸が出そうになる。ただ、ちょっと道標が乏しい。細かいところで少し迷ったりする。
でも京都府は、最近、東海自然歩道の道標の置き換えを行っている筈だ。オレンジの字の凝った字体のやつだ。それが、この京都府南端の地には届いていないのだろうか? それとも単純に、置き換えを行うのは京都府内でも一部とか。……どちらかは分からないけれど、とりあえずあと1日ほど歩けばその京都府からも脱出となる。
丘から下り切ると、再び視界が狭くなった。そして、道脇に民家が立ち並ぶようになる。駅は近そうだ。
斜面途中の狭い空間進んで行く。と、右から別の車道が合流してきた。「月ヶ瀬梅林→」の標示とともに東海自然歩道の道標が立っている。ここが、コースの転回点だ。右折が本コース。
ただ、月ヶ瀬口駅も見ておきたい。従って、コースを離れ直進。
すぐに東海自然歩道のコース案内板があって、これも環境庁・1,350kmバージョン。その粗い地図によると、この先、高山ダムから大河原まで複線で描かれている。「東海自然歩道」の文字が振られているのはそのうち高尾経由の方。うーん、本当か?
案内板の立つ地点からは、月ヶ瀬口駅の長いホームが見えた。2分で駅に到着、PM1:30。
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