←前のコースへ戻る |
![]() |
いよいよ今日の歩きの後半戦――鷲峰山へ向かう道だ。PM0:25という午後からの山登りになるけれど、前半がアップダウンの少ない道であったので体力は温存出来ているハズ。
府道62号を南へ向かって歩く。二車線道、両脇には民家やアパートが多い。途中、大きなアポロ像があってギョっとする。
幸いなことに、日差しはここ暫く戻ってきている。冬はやっぱり、日光の温かさがあるとありがたい。
このまま府道ベタ歩きかと思っていたら、道標があって、コースが府道の右に逸れた。完全に住宅地の中に突入。左右には民家がぎっちりと立ち並んでいる。
とりあえず直進だろう。コースを外れていないか心配になってきたころに、「南城田」と表示されたカーブミラーに東海自然歩道のマップ標示板を発見。ここを左折だ。
東に方角を変えると、いつのまにか府道62号の標識のある道を歩いていた。どうも左から来た府道と合流していたようだ。
周囲に民家が続くものの、その密度はやや低くなってきた。方角が南に変わり、公園の先で左から犬打川が合流。
その犬打川も離れていった。ここで、ようやく前方の景色が開けてきた。
目の前に広がったのは田にキャベツ畑、そして青々とした茶畑――。歩いていくと、次第に茶畑が優勢になっていく。
御栗栖神社を通過。その前には、まだ新しい休憩所があった。あずま屋に公衆トイレ、そして付近のコース案内図が立っている。……せっかくなので少しだけ休憩だ。PM0:51。
さらに進むと、とりたてて何も無くなる。2車線の府道歩きが淡々と続いていく。左は御林山の斜面。こういう時には、とコンビニのオニギリやパンを取り出し、カロリー補給。今日は時間の余裕がある筈が、なぜか無くなってしまったので歩きながら摂るという行動食に。
と、突然、左手の山壁に“ひしゃく”が掛かっていた。『御倫山の水』(?)と書いている。確かにこの向こうは「御林山」だけれど……。
煮沸無しで飲めたものかどうかは分からない。それほど、まだ山中というわけでは無い。ようやく勾配が出てきたところ。
ただ、右手に広がる棚田は、どんどんその横幅を狭めている。谷筋を上り詰めていっているのが実感される。
水場を過ぎてさらに進む。そして左に1つカーブを切ると棚田も尽き、完全に山あいの狭っ苦しい道となり変わった。
犬打川だけが、やや勢いを増しながら右側に伴走を続けている。左側は山の急斜面。道は細くなり、ところどころにすれ違いようのスペースが設けられるようになっている。
蛇行する見通しの悪い道を暫く進む。と、T字路があった。道標は左折を示している。――地福谷林道の開始点だ。ここで、長い付き合いであった府道とも遂にお別れ。
鷲峰山までに示された距離は4.8km――山登りの4.8kmは、結構な距離。
序盤に自然林があったので、一瞬“地福谷”の紅葉に期待を抱かせた。ところが、すぐに単調な植樹帯が道を囲うようになる。
……こういうところは、日射しが無いと物凄く地味だ。加えて、緩やかながらも上り一辺倒になる。我慢の歩きが続く。
やがて前方にベンチが現われ、「ふるさとの森」分岐点に到着。ここには鷲峰山ハイキングコースの案内図も立っていた。時刻はPM1:29。
ここは直進、密集した林の暗がりの下、地福谷林道を突き進む。――本当に暗い。まだ昼下がりなのに。
林道は細かくうねるものの、カーブらしいカーブも無く沢に沿って真っ直ぐ進む。従って勾配はゆるやか。ゆるゆると上がる。
まどろっこしい! ハイクコースなら山頂まで一直線の山道を切って欲しいものだ。
じつは、だいぶ足に疲労が蓄積されてきた。さもありなん、既に7時間近く歩いているのだから。そして疲れると同じ勾配であっても、角度が増したように感じられるから不思議なもの。
沢を見送り、ヘアピンをパスすると、さらに勾配がきつくなるのが感じられた。高度も500mを越え、上空を覆っていた木々の葉がやや薄くなってきた。その合間からは鉄塔が見えた。鷲峰山の山稜線に連なる鉄塔群の1つだろうか?
林を抜けると道が広くなり、休憩所に到着。いきなり道が平らだ。……いや、ここまでとても長かった。
この先は稜線上の道だけれど、相変わらず車道。参拝客用の道だろう、比較的状態も良いようだ。
と、言ってもそこを歩くのは退屈。勾配もゆるく、とても山へハイキングに来ているとは思えない。実際、ハイカーらしき人は一人も見掛けなかい……というか誰もいない。
そんな文句を言いつつも、これ幸いと足の疲労回復に努めている。山頂までの高度差は、まだ260mほど残している。
やっぱり、朝焼けた日は天候が悪いと言う通り、日射しがあったのは午前中くらいだった。紅葉の季節は週末になると天気が悪くなるような気がするのは気のせいだろうか……。
林道分岐を左に見て、さらに進む。ちなみに、コース上に道標は多過ぎるくらいに多い。ただし、コース案内板が悉くのっぺらぼう。京都府が案内板の更新をしているのは良いとしても、せめて新しい標示に切り替わるまで、古い標示は残しておいて欲しいものだ。
左に細い斜道。ここが金胎寺への上り口のようだ。上っていくとイチョウの落葉が道を埋める道へ。そこに金胎寺分岐。
東海自然歩道の道標は、ここを最高点に、山から下っていく道を示している。けれど、もちろん金胎寺への寄り道一択だ。なにしろ、今日の歩きの目的としていた場所なのだから。
歩いていくと、すぐに総門が現われた。その前には車が駐まっていた……。
PM2:33、金胎寺に到着。
行場めぐりに興味があったのだけれど、その4km 2時間のコースに挑んでいたら帰りのバスの時間に間に合わない。今日は朝方、宇治周遊をすると決めた時点で金胎寺行場めぐりはパスと決まっていた。後ろ髪を引かれるけれど、仕方が無い。
もっとも、この行者めぐりコースは相当の難コースとも聞く。「登山道のクサリ場はわりと好物です」レベルの自分では、ちょっと厳しいかも知れない。
とりあえず、門をいったん出て斜路をさらに上に向かう。鷲峰山の山頂を極めておくために。
次の広場に現われたのは、本堂彌勒殿と多宝塔。ただ、まだ山頂では無いようだ。もっと高いところがありそう。
さらに山道を登る。笹道となって、踏み跡が隠されがち。とは言え、これが今日初めての山道らしい山道とも思う。どうせ距離は無いので、一気に上がっていく。
――鷲峰山山頂に到着。小広い広場で木立に囲まれ、見晴らしは辛うじて北方に窮屈にあるのみ。
ただ、その樹間から遠く、琵琶湖が眺められた。位置的には、琵琶湖の真南となる。東海自然歩道の比叡山コースから琵琶湖を眺めていた頃が懐かしい。
総門のところまで戻る。そして東海自然歩道に復帰。ちょうど日が照ってきて、イチョウの黄葉が日に映えて輝いていた。いかにも秋っぽい風景。
――金胎寺は、短時間で文字通り駆け抜けてしまった。もう少しゆっくりしていたかったのだけれど、日没まであまり時間が無いこの季節。そうのんびり観光してもいられない。
下山コースに入る。植樹帯のただ中へ。足元は土の道、ハイクコースは、こうでなくちゃいけない。鷲峰山への登山コースは本来こっちなのだろう。
林の中なので見るべきものも無く、自然に足は早くなる。……というか、道の状態が良いのでテンポ良く下っていけるのだ。アスファルトの道よりも土の道の方が、着地時の足裏への負担も少ない。
トレイルランニングさながら20分ほど下ると、突然、林から抜け出した。目の前には茶畑――それが見える限りずっと下の方まで続いている。ここは茶畑地帯の最上部らしい。
京都のもうひとつの茶の産地・和束。さすが茶所だ、と至極真っ当な感想を抱く。
実際、すこぶる見晴らしが良い。
整然と、かつなめらかに山肌に張り付いた緑の茶畑――言うなれば茶の山だけれど、その上に散らしたような紅葉の色付きが添えられている。
――その様は、何かの芸術作品のようにも。棚田も整然性の美しい二次自然風景だけれど、茶畑も、それとはまた違った意味で美しいと感じた。ピーカンの晴れでも無いことが幸いして、光の加減も微妙に抑えられて、ちょうど良い具合。
宇治からこの方、地味な風景ばかり続いたのだけれど、ここで一気に挽回できた気分。
眼下の茶畑に身を投げ出すよう下っていく、ダイナミックな道。……今日はずっと地面に張り付くような道ばかりであったので、その落下していくような感覚に、ちょっとした恐怖すら覚えるほど。
やがて勾配は落ち着くと、道は、先ほどまで見下ろしていた茶畑の中を通っていくようになる。――結局、山道区間は30分ほどの短さであった。少し、早く下り過ぎたかも知れない。
民家の立ち並ぶ原山の集落に入った。すると、道がやたら細かくなり、どこが東海自然歩道なのか分からなくなる。ただ、下りる方角は決まっているので、適当に道を選んで下って行く。正しい道筋に拘ることは無い。
やがて道は一本に収束し、さらに下っていくと府道5号に合流した。二車線の立派な道路だ。しかも、目の前に原山バス停が立っているのが見えた。今日は、ここからバスに乗って帰る予定にしていた。
時刻を確認する。――PM3:53。思いがけず、まだ十分時間が残っている。せっかくなので、もう少し粘ろう。夕日の照らす極上の時間帯をバスの中で、なんて勿体無さすぎるのだし……。
コースのさらに先に進むことに。原山バス停の前で府道を横断し、和束川の流れる田園地帯へと下りる。すると、久し振りに眼前に広々とした空間が開けた。気持ちいい――。
曲がりくねる田の間の道を進んでいく。もちろん田にはこの時期、何も植えられていないけど、緑が無いわけでは無い。そして、茶畑は、その棚田のすぐ間際まで迫っていた。
いくらか寄り道をしながら、コースを進んでいく。あまり急がないよう気をつけながら……。
今日は、昼間のうちは曇っていたけれど、朝と夕方は良く晴れてくれた。ラッキーだったと思う。
そして、この和束の茶畑には西日が良く似合う。もう少し散策したいと感じる。
振り仰ぐと、つい先ほど登ってきた鷲峰山が見えていた。
なのに、門前から童仙房へ向かうコースのとば口に着いてしまう。PM4:06。
さすがに、この先へは向かえない。この道は童仙坊へ一直線の道だ。ゆえに、今日の東海自然歩道歩きはここで区切ることにする――いつもより、ちょっと時間が早かったりするけれど。
![]() |
先のコースへ進む→ |
くつわ池あたりの車道歩きは辛かった。地福谷林道歩きも辛かった。――その辛さは退屈から来るものなんだけれど。長距離自然歩道歩きは人生に似て(いるかどうかは知らないけれど)良いところと悪いところで平均すると中庸になるように思える。
今日も、宇治と和束が素晴らしかったせいで中盤の辛さは相殺されて、コース全体評価としては「まあまあ」となる。そんな感じ。
そして、せっかくの斜陽の時間帯。コースでは無いところを、もう少しだけ歩くことにする。
和束川を渡り返し、西へ!
中集落の路地に入っていく。途中、「仲辻スーパァ」という看板が掲げられたスーパーがあった。特に意味は無い……。
再び府道に合流。以降、和束川に沿った府道歩きとなる。これであれば、もう歩くことも無い。日没も、そろそろだ。
PM5:09、和束山の家バス停に到着。
地図を見る限りここから先は山間の隘路で、日没後に歩くような道ではなさそう、と言うことで。
今日の歩きは切り上げ。本日の歩行時間は9時間半ほど。
奈良交通バスは、5分後にやって来た。
バスは途中、加茂駅にも立ち寄ったけれど、せっかくなので終点の木津駅まで乗った。近代的な加茂駅よりも、味のある駅舎の木津駅の方が好きだ。
バスを降りて振り返ると、西の空がオレンジ色に染まっていた。
――雲の多い朝焼けで始まり、雲1つ無い夕焼けで終わった今日の一日。