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AM10:26、宇治川を遂に後にする。これで本当にお別れ。
上り勾配の車道を進むと白川集落が見えてきた。……と言っても、ついさっき歩いて来たばかりなのだけれど。設定上は、宇治川を離れて初めに現われた集落。
棚田を見ながら住宅地に入る。一大観光地・宇治のすぐ近くにある集落だけれど、そんなことは感じさせない落ち着いた雰囲気。
左に曲がる箇所は電信柱に案内板があって見逃しやすい。さらに紅葉谷へ向かう道を左に分ける。ここもつい20分前に居た場所だけれど……。
それにしても、道を繋ぐ、という行為にはどのような意味があるのだろう?
“点”の観光地巡りではなく“線”の歩き旅。純粋に数学的な意味で、1つ次元が違う、ということになるのだろうか。離散的なデジタルデータと、連続性を持つ実数……。
公園がある。ベンチにブランコ。紅葉が光に輝いている。
その先、石鳥居に石橋がある。石階段の上に建つのは白山神社。――どこにでもある白山神社は、この宇治の地にもある。
車道へ戻る。道は、白川集落を後に、そのまま林の中へと続いていく。
隘路となった。蛇行をしながら沢と一緒に進む道。……清涼な空気が感じられる。沢の水のせいかもと思うけれど、朝の空気が残っているようにも感じられる。時間はちょっと遅いけれど、12月という日の低い季節ゆえ。
――ようやく気分が自然歩道歩きモードになってきたようだ。さあ、今日は宇治から鷲峰山を目指す歩き旅。これからが本番。
じつは、もみじ谷に寄ったせいで早速30分ほど進捗が遅れているのだけれど。あまり道を急ぐ気にもなれない。
T字路に当たって、左。引き続き沢とともに林間の車道を歩いていく。車道と言っても、車がやって来る様な雰囲気は無い。
林を抜けて、開けた空間に出た。田と茶畑が広がる山あいの集落。
この茶が宇治茶として売られるのだろうか?――何にせよ、日射しがあるのはありがたい。早朝は寒くて震えていたけど、今は小春日和。日光がこの山あいの地にも降り注いでいる。どうやら今日の天気は良さそうだ。
あまり見どころが無いような道でも、こういう気候の時は気分良く歩ける。ちょっとした光の加減での翳のつき方、日射しとの角度によって変わる煌めき――何の変哲のない物体たちの始める自己出張。
……と、言ってみたところで、今日のコース前半にあまり見所が無いの事実は変わらない。だからこそ、最初に宇治周遊と組み合わせた。それも終わり、今は京都山城地方へ向かう長い長いアプローチの道。
やがて左手から車道が近づいてきて、ほどなく合流
……いやいや、手許のガイド本にはこんな道、無いのだけれど。新道だろうか? いずれにしても、そこには東海自然歩道の道標が立っていて、二車線道を歩くよう示している。疑うことは無い。
二車線道を淡々と歩く。車には走りやすいのだろう、時折、車もスピードを出して走ってくる。
――箕面からこの長距離自然歩道を歩き始めた時は、自然歩道と言いつつ、車道歩きの多さに閉口した。今でもやっぱり、アスファルトの上を歩くのは好きになれない。
ただ、この道もそうだと思うのだけど、開通当時から比べ車道の侵食が激しいのは確かだろう。ガイド本の地図はそれほど昔のものとは思えないのだけれど、結構道が付け替わっているようなところが多い気がする。
ガイド本では山道の点線である区間を歩いていく。開発の進行、利便度のアップ――それはこの自然歩道にとっては不幸な事なのだろうな、と思う。
……そんなことを考えながら歩いていると、突然、T字路に出た。いったいここはどこだ?
ガイド本ではくつわ池まで真っ直ぐであったのだけど、そっちはもう、当てに出来ない。こういう時はGPSが欲しい、と思いつつ、代わりにコンパスをザックから取り出す。
山歩きと変わらず、コンパスは歩き旅の必需品。方向を同定する――結論は左折。たぶん、この車道はコースから西に逸れている。
やや不安を感じつつ、相変わらず立派な二車線車道を歩いていく。方角は東だけれど、カーブが多い。見通しが悪いので、走ってくる車が怖い。
と、見慣れた道標が左手に現われた。「白川-くつわ池」と書いてある。白川方向は、山に入っていく細い路地。
しまった、山道がまだ残っていたとは……。このまま車道直進でくつわ池に到達することは分かった。でも――。
白川と示される方角の小道に突入。ちゃんと確かめておかないと気が済まない。道はやがて林間の山道へと変わり、そこを小走りで駆け抜けると、先ほどの車道にぶつかった。
指導標はちゃんとそこにあった。見事、見逃していた。
たぶん、元々は東海自然歩道があって、その上に車道が引かれたのだろうと思う。車道は右にカーブを切ったものの、自然歩道は直進のまま。そんなところだろうか。
それを確認して、再び林の中へ引き戻る――歩き直しだ。沢沿いの、自然歩道らしい道。建屋が一軒あったものの他には何も無く、やがて林を抜け出した。
セイタカアワダアチソウの穂の揺れる草叢で、道が見えないほどになる――もちろん、つい先ほど潜り抜けたばかりの道。道標は新しくなっても、道の整備は追いついていないのかも知れない。
それを突破すると、アスファルトの小道へと変わる。そして直ぐに先ほどの二車線車道に突き当たった。結局、時間のロスは22分。
――道を繋ぐ、なぜそれにそれほど拘るのか。前はもっとアバウトに考えていたと思うのに、何故か今は過剰に縛られているような気がする。日本に網目のように張り巡らされている道。その中の特定のルート、赤く示されたその道を忠実に辿ってみるという行為。
その意味はまだ分からない。……もっとも、本当のところは「今日の貴重な山道区間、むざむざパスしてしまうのは勿体無い!」
さて、とりたてて何も無い車道歩きの再開だ。養鶏場があったことぐらいが景観の変化。
――そこにあった卵の自販機には、ちょっと金を投入してみたくなったけれど。さすがに、これから山に登るのにザックの重量を増やしたくはない。
AM11:47、くつわ池の入口に到着。
車道から少し奥に入ると、あずま屋のある休憩所があった。
ここには、ちょっと珍しいフォーマットの東海自然歩道コース案内図も立っている。トイレは300m先とのこと。そちらの方向へ進むと料金場の建屋に当たった。入園料は300円、駐車料金も300円。そして「無断入園絶対禁止」の看板。
――無断入園がどれくらい蔓延っているか分からないけれど。とりあえず入園は止すことにする。
本当は一休みして昼飯でも食う予定にしていたけれど。先ほどのコース間違いのおかげで、時間的余裕も無くなってきたし、と言い訳しつつ、退屈な車道歩きを続行。
見通しが開け、前方に遠く、これから向かう山稜線が見えてきた。ところが、間の悪いことに上空が雲で覆われ、日射しも失われてしまう。今日早朝に見た壮絶な朝焼けは、やっぱり曇るという前兆だったのか……。
左手に道標を捉えて、長く付き合ってきた二車線車道と別れて、左のやや細い道へ入り込む。車の往来が減り、ようやくあたりは静かになった。同じ車道歩きでも、車の通行量が少なくなれば多少は落ち着ける。
少し上り坂。左右は林。緩い峠を越え、曲がりくねった下り坂へと変わる。
田村資料館を過ぎ――結局、田村コレクションが何のコレクションなのか、良く分からなかったけれど――郷之口の町へ下りてゆく。
坂を下り切ると、府道62号に当たった。道標に従い、右折すると、そこはもう国道307号。さすがにもう、町中の光景。
道標の示す通り、横断歩道を渡る。国道を東に向かって100mちょい歩いた後、右に曲がる。とたんに静かになる。
三社御旅所の鳥居の脇に滑り台、ブランコ、そして東海自然歩道休憩所。左に宇治田原製茶工場の建物を見ながら、住宅地の中を道なりに進む。
やがて前方にこんもりとした森が見えた。そこが齋田神社。奥に色づいたカエデが見える。
……フラフラと境内へ。すると、久しぶりに日が降り注いできた。仕方が無い、しばし休憩だ。
コースへ戻ると、田原小学校の角で府道62号に突き当たった。道標が言う「郷之口」というポイントはここを指しているのだろうか? 時刻は、PM0:25。
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