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西笠取~炭山~仏徳山~宇治神社

京滋バイパス方面お帰り道
右の「京滋バイパス方面お帰り道」へ
笠取小
笠取小を見返す

AM11:42、府道782号のY字路。

この府道の通称は醍醐大津線。このまま進むと峠を越えて醍醐に下りることが出来る。一日のコースとしては、この府道を進んで黒出から山道に入り、醍醐山を越えて醍醐寺に下りるのは良いプランと思う。

――特に4月上旬。なにしろ醍醐寺は日本の桜100選の地だ。

西笠取
案内板の立つ三叉路。ここから谷山林道に入る
アクトパル宇治
宇治市総合野外活動センター アクトパル宇治

だけど、東海自然歩道はY字路を急峻に左折、南の宇治へ向かっていく。そちらに進む。

京都府宇治市。とは言え、茶と歴史の雰囲気は無く、良い山里。アクトパル宇治の大きく綺麗な建物が目立つ西笠取付近。逆側には宇治市名木百選のかきのき。冬なのに青々と葉が付いているので落葉樹の"柿の木"ではない。

右折して、谷山林道に入る。

西笠取川
西笠取川。やがて瀬田川に注ぐ
天体観測
アクトパル宇治の天体観測施設
谷山林道の道標
炭山でなく仏徳山が示される

木々に囲まれ、見晴らしは無くなった。さあて、このひと峠越えるのが長いんだよな……。

路肩に雪の残っている車道を上がっていく。勾配はさほどでもない。

やがて、ドパーン!と耳朶を打つ乾いた音――銃声が聞こえてくる。


 


広場の前の案内図
広場の前の案内図。前に車が停車…
京都笠取国際射撃場
京都笠取国際射撃場の前を通過
谷山林道
谷山林道の緩い勾配を上っていく
雪の林道
雪の車道。ところによっては、蹴り足が滑る
濡れた林道
濡れた路面は光を反射して明るい

ちなみに山歩き中にこのような音が聞こえたら足早に立ち去るようにしている。狩猟者に獣と間違えられたらたまったものではない。

ただ、ここのそれは射撃場からのもの。だから何の心配も無い――と頭では分かっていても、銃声の響く度に身は竦む。条件反射。

射撃音を後に残してさらに進む。前方に車の駐車の列。脇に平らで広い更地があって、何人かの人がたむろしている。

通過際、一台の車の開きっぱなしのハッチ内に「ラジコンヘリ」が吊り下がっているのが見えた。しかも二機。

谷山林道最高点付近
谷山林道の最高点付近
岩間山
笠取山・岩間山方面の窮屈な展望

通過して進む。と、背後でけたたましいエンジン音が沸き起こる。昼食タイムが終わったらしい。

さらに進む。中学生とおぼしき野球着姿の少年たちがバタバタと駆け下って来た。ところどころ雪の付いた路面があるので、足を滑らさないか見ていてヒヤヒヤ。

――それにしてもこの林道って、こんなに騒がしかったっけ?


 


ヘアピン
ヘアピンカーブ
谷山林道後半
谷山林道の下りでは濃い林が続く

林道の最高点は結構長く続く。もっとも、標高は大したことはないので、眺望も大したことはない。

すぐに林間に没入する。ここからは一切見晴らしは無い。まだ何人かの野球部員が歩いて来る。先頭グループは走っていたのに。

樹間
林の樹間に覗くもの

カーブミラー
カーブミラーに映るもの

陰影
雪の側溝

雪があると、変化の無い林道歩きも多少楽しめる。そもそもこのコースを雪がある日に歩きたい、と思ったのは、まあ裏を返せば西笠取~仏徳山の10kmの道のりをいかに楽しく歩くか、を考えてのこと。

――その作戦は大いに成功している。なによりも、雪だけじゃなくて「陽射し」があることが作戦成功の必須条件。今の陽射しが翳る様子は無い。

強烈なコントラストが視覚を突き刺す。ブラックとホワイト、陰と陽、暗がりと輝き――。


 


渦巻く
渦を巻くみち



 


谷山林道終点
谷山林道終点の十字路。ここを左折
陶遊館
陶芸教室 陶遊館
雪だるま
こ、この雪だるまは…
葉っぱ
たんなる葉っぱ
伏見桃山城は遠い
「伏見桃山城 7.0km」
崩土あり
「崩土あり 8℃」

ぐねぐねと長く下って来たけれど、左に沢が現われて一緒に進むようになったら、林道ももうすぐ終点。

林を抜け、十字路に出た。炭山だ。PM0:59。

この十字路のは確か東海自然歩道のコース案内板が……と思ったら真ん前に車が駐車していた。角のテニスコート客の車らしい。どうも今日はそんなのばかり。

ちなみに、ここには飲み物の自販機が二台並ぶ。季節によっては重宝する。

嘉峰陶苑
府道脇にある炭山陶芸。自販機も
府道242号
府道242号と志津川。コース案内板も立つ

左折して集落を抜ける道に入る。京焼きの里、炭山。陶芸教室などもある。四方山に囲まれているので、京都や宇治の騒然さとは一線を画している。

いったん、二車線の府道242号に出る。そこの道標には“伏見桃山城”と書いてあるのに気付き、あれ?近いんだ、と思う。ただ、良く見ると距離が7.0km。そりゃそうだ、一山越えなきゃならんし。


 


京焼の里
京焼の里を後ろに見送る
コケの壁面
コケの壁面
志津川
志津川

二車線道を跨ぎ、再び集落の路地に入る。家の屋根瓦には雪。良い雰囲気だ。

前方に見えてきたのは「協同組合 炭山陶芸」の看板。店内には焼き物が並んでいる。誰もいないようだけど、営業しているのだろうか?

志津川を渡って、先ほどの二車線道に合流する。ただし、東海自然歩道はすぐに府道から離れ、志津川の左岸沿いの道に入り込む。

稲妻
冬の陽射しがしっかりと到達する
輝く路面
この下を京滋バイパスのトンネルが貫いている

この区間も見るべきものは何も無い。右には常に志津川、左は崖で落石注意。車も滅多に通らない。

谷あいの道は日陰であることが多いけど、南に向かうこの道、お昼時でもあって日が良く照らす。前に歩いた時は雨の道、それだけで印象はガラリと変わる。

加えて、今日は路肩や川べりに白い雪。アスファルトの路面さえ今は輝き、ところによっては湯気を立てている。

「見るべきものが無いなら作ってしまえ」作戦の成果。

鮫肌
山側は、けっこうガレている
湯気
アスファルトから湯気が沸き立つ

そう――前回、この道を傘を差して歩いていた時、走っていた車が停まって「乗りませんか?」と声を掛けられたことがあったのを思い出した。

そのような経験はちょくちょくある。でも大概、山登りを終えて駅やバス停まで戻るべく林道を歩いている時だ。コースの只中で声を掛けられたことは無いかも。

どう言って断ったのだっけ……思い出せない。「ここ東海自然歩道なので」「どこが自然歩道やねん!」


 


市道
冬の午後の木漏れ日
日輪
上空には薄雲が広がる
採石場前
採石場前にもコース案内板が立っている

――さすがに、そんな遣り取りでなかった事は確かだ。なのできっと、曖昧に言葉を濁して訝しがられたに違いない。車道ばかりの東海自然歩道を人に説明するのは、なかなか難しい。

もっとも今日は車通り自体が無い。路面の着雪を恐れて細い道は避けられているのだろうと思う。ウォーカーにとっては逆にそれが車道歩きの狙い目であるのだけど。

ともかく、あくびでも出そうなのどかな歩きになってきた。ただ、ちょっと陽射しが弱まってきたかなあ、と感じたら空に薄雲がかかり始めていた。

転回
ここで進路が180°転回
東組
東組の集落
採石場
ダンプが出入りする採石場

採石場通過。砂山が雪のヴェール1枚纏って、雪山になっていた。

そこからもまだ長い。採石場に止まっていたダンプカーに追い越された。そしてようやく山間を抜け、眼下には住宅地が広がった。

この住宅地を真っ直ぐ突っ切れば仏徳山入り口は近いと分かっているのだけど、そこは我慢。三重に折り畳まれた正規コースを進む。


 


野鳥
野鳥。ジョウビタキ?
電柱基地
電柱の集積場のような場所
Π字路
十字路、というか二重T字路。π字路?

ようやくπ字路。なぜ「π字路」かと言うと、そのものズバリの形だから勝手に命名させてもらっている。

三室戸寺参道
三室戸寺参道
三室戸寺へ
コースを外れ、三室戸寺へ向かう

右折しここでコース離脱、PM2:02。

そう、今日は時間に余裕がある。ゆえに多少コースから外れた位置にある三室戸寺へ向かうことにしたのだ。

林間の車道を上っていく。

軽い峠を越え、林間の車道を下っていく。特に見るべきものは無い。――見たくないものなら見れる。視線を道脇の林床へ投げると不法投棄されたゴミ。年代物もある。

枯山水
枯山水
三室戸寺の階段
三室戸寺の階段
宇治市の案内図
「宇治市菟道滋賀谷」とある、宇治市案内板

西国三十三所第十番札所・三室戸寺。拝観料¥500を支払って、入場。

宇治の花の寺。5月はツツジ、6月はアジサイ、7月はハス、11月は紅葉――ただ、今はそのどれからも外れている。

従って境内は閑散としている。見所のある季節だと人はドッと繰り出すけれど、そうでない時は観光客は本当にやってこない、というのは日本人の特有の習性なのだろうか?


 


三室戸寺三重塔
三室戸寺三重塔
三室戸寺本堂
三室戸寺本堂
龍
花?
花?
地蔵
二月半ばの厳冬期。毛糸の帽子が温かそう

自分にとっては、花が満開である事よりも光があることの方がありがたい。空が青いこと、陽射しが当たって、モノに陰影が付いていること。夕方の赤みを帯びた斜光などは垂涎もの。そういう意味で今日は悪くない。せっかくなら、雪がもう少し残っていてくれれば嬉しかったのだけど……。

枯山水の庭などぐるりと回った後は、階段を上って、三室戸寺本堂の境内に到着。

ここにはパラパラと参拝客がいる。ただ、本堂前に並ぶハスも根だけしかないのはさすがに寂しい、というか侘しい。見通しが良い、っちゃ良いのだけど。

境内の外れには、三重塔が凜と建っている。


 


貯水施設
貯水施設
Π字路ふたたび
π字路に戻ってきた。コースは左→右

三室戸寺に留まっていたのは結局30分間だけだった。そう考えると拝観料は高いように思えるけど、これは仕方ない。

さらに、π字路に戻ったのはPM3:01。ざっと1時間の寄り道だったけど、寄る価値は十分にあったと思う。

仏徳山へ
また180°のターン。まどろっこしい
志津の集落
志津の集落の手前で…

πの二画目の線を進んで仏徳山入り口に向かう。

次の集落に出る直前で、鋭角に右折。久し振りの山道に入る。

山道
今日二度目の……山道
竹
シダ
シダ

元来、標高200mに満たない超低山に急勾配などありようがない。公園の散策路レベル。道幅も広い。


 


仏徳山南斜面
仏徳山南西斜面は明るい自然林
仏徳山鞍部
直進すると興聖寺に下りることも出来る
道標
仏徳山(132m)の南斜面を巻く道に入る
仏徳山公衆トイレ
仏徳山公衆トイレ
道標にマップ
宇治市の道標にマップが付いた!

山頂は巻く。

雰囲気の良い木立を進んでいくと、とつぜん前方が開ける。そこにあるのは公衆トイレと、その少し向こう――

宇治市街
見晴台から、宇治川と宇治市街
見晴台
仏徳山見晴台

展望台。宇治市街が一望。


 


メジロ
餌付けされたメジロ。目の周りが白いのでメジロ
仏徳山を下る
仏徳山の下りは遊歩道となっている
椎の木
宇治市名木百選の椎の木

しばし時間を潰す。前回ここに来たときと違い、今日は時間に余裕があり過ぎる。

20分くらいして、ようやく腰を上げる。ジグザグの遊歩道を下る。夕方の散歩に来ている人が沢山。

下り切ると、さわらびの道。


 


宇治上神社
世界遺産・宇治上神社
宇治神社拝殿
宇治神社の拝殿
宇治神社の鳥居
宇治神社の鳥居の向こう、夕陽が射す

宇治上神社の前を通って、もう少し進むと宇治神社。ここに道標は見当たらないのだけれど、次のコースを歩いた時に調査は済ませてある。ここは、宇治神社境内を抜け、鳥居から外に出るのが正解。

目の前には宇治川が広がった。赤い欄干の朝霧橋が、中州にある中ノ島・橘島に向かって伸びていく。その橋の上を、多くの人が歩いている。

PM4:13、今日の東海自然歩道歩きをここで止める。

先のコースへ進む→

宇治神社~平等院~宇治駅…

朝霧橋
朝霧橋と源氏物語モニュメント
仏徳山
仏徳山を見返す。大吉山とも言われる
宇治川
宇治川上流方面。右は中ノ島
橘橋
木製の橘橋。対岸は宇治川左岸
ボケとツッコミ
ダイサギが喧嘩している…

地図上の東海自然歩道のコースは、この宇治川を取り囲むような周回コースとなっている。従って、朝霧橋から中ノ島(宇治公園)はコースでは無いのだけど……。

宇治市の気持ち的には、コースが囲む領域はすべて東海自然歩道だと言いたいことだろう。賛成である。

その宇治公園で、しばし放心。


そしてダンス
というか、ダンスをしているかのよう――


 


宿木
ヤドリギ?
橘橋
橘橋と宇治公園

橘橋を渡って対岸へ。宇治平等院が目の前にある。

すこし迷う。修学旅行で一度見た切り。ずいぶん昔の話だ。もう一度十円玉に描かれている光景――鳳凰堂を見てみたい。

でも境内見取り図を見て、今の時間、鳳凰堂は逆光になるということが分かる。ならば次の機会にこそ……。

宇治平等院
世界遺産・宇治平等院の入り口
宇治茶
宇治茶の店

宇治平等院の表参道を歩く。日本のかおり風景百選の道。宇治茶の店が並ぶ。それはまるで嵌まり込んだ絵のよう。

残念ながら、表参道はそれほど長い道ではない。そして、帰宅の途というのが悲しい。

かおり風景100選の碑
かおり風景100選の碑「茶のかおり」
宇治橋
宇治橋

宇治橋の南詰交差点に出る。今日は宇治橋は渡らない。

橋の上は相変わらず車で混み合っていて、風情のカケラも無い。そんな宇治橋に夕照が当たる――

源氏物語
宇治橋通商店街アーケード飾り
JR宇治駅
JR宇治駅に到着

連絡路、という紹介のされ方もされる今回のコース。でも考えてみれば、ちょっとの寄り道で西国三十三所の石山寺・岩間寺・三室戸寺、日本の道100選の瀬田唐橋、かおり風景100選の平等院表参道、世界遺産の寺社、それに日本三古橋のうち実に2つ、唐橋・宇治橋を繋いでいる。そう考えると、決して単なる連絡路ではないことが分かる。だからこそ良い時期に歩きたい、と思っていた。

――そして良い時期に歩けた。満足だ。

PM4:54、JR宇治駅到着。……あれ、そういえば体調が悪かったんだっけ??

 

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