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富士ビジターセンターは静かだった。
――館内には、ほとんど人がいない。駐車場に停めてある車の少なさを見れば、十分予想出来るけれど。たぶん、この地に富士登山客が溢れる夏場には盛況なのだろう。でも、今はオフシーズン、富士山は眺めて楽しむ季節。
とは言え、2階の展望台からは富士山は見えなかった。雲はますます濃くなる一方のよう。仕方ない、とPM1:09に出発。
正門から出ると国道139号。右折して歩道を進む。中央高速道と交差する地点はそのまま潜る。
左手に富士急ハイランドが現われた。複数のジェットコースターがウリの遊園地。確かに、コースターの軌道が幾重にも重なって伸びている。ガーッ、というコースターの走行音、沸き起こる乗客の歓声――。
暫く国道歩きとなった。富士五湖のコースは東海自然歩道のモデルコースと聞くけれど、このような連絡路っぽいところも残しているところが、少し残念。
道脇にはコンビニは当然として、ガストやすき屋、かっぱ寿司、洋服の青山などが立ち代わり現れる。1.5kmほど歩いて、ようやく右折の道標が現われた。それは歩道橋の下にあった。
国道から離脱。と、また道標があって左折、国道と1ブロック隔てた道を歩く。右方には畑も広がる静かな道だ。本当に富士山を見放題のコースだな、と思う。今日は無理だけど。
突き当たって右折、左に鉄塔を見て、もう一度道標を捕らえて左折。住宅地を脱して、再び緑が多くなってくる。
じつは、国道離脱後の冨士浅間神社までの道筋が良く分かっていない。現地の道標頼りなので、道標が無い分岐では、ある程度勘で道を決めている。
――今のところ、それは上手くいっているようだ。歩行計画より大きく遅れているので、道を間違えて遅延したくない、という事情もある。
林に入った。ヒノキが揃って立ち並んでいる。神社の領域に入ったのだろう。小川の清流を越え、木漏れ日の落ちる気持ちの良い林間の道を進む。途中に交差点があったけれど、道標もしっかりとあった。指示通りに道を選ぶ。
と――。
PM1:38、冨士浅間神社に到着。
左には長い参道が延びている。その逆方向、鳥居を潜って境内に入る。杉の大木が何本も立っている。参拝客はチラホラといった程度。ここも、やはり夏がシーズンなのだろうか?
拝殿にお参り。さて、次は東海自然歩道のコースの先探しだ。
首尾よく、境内の東側の広場に東海自然歩道のコースマップを発見。
――車の中から何度も見ていた浅間神社、実際にその地に自分が立ったのはこの東海自然歩道のおかげ。何故かここには、鹿舎やウサギ小屋も一緒にあるけれど。
マップを見る。相変わらずのイラストで詳細は分からない。ただ、この先の「忍野コース」は浅間神社から用水沿いに真っ直ぐ東へ進むのが見て取れた。じゃあ、用水沿いに進もう……としたけれど川を越える橋が無い。
境内の木立をしばらくウロウロする。うーん、これは国道へ迂回するしか無いか、と判断して北へ向かう。燈籠の並ぶ長い参道――歩き抜けると国道139号に出た。
ここは国道の合流点なので良く渋滞する。ノロノロ進む車の中から、浅間神社の薄暗い参道を目にしていた頃がちょっと懐かしい。
今日は徒歩で国道を東へ。
川を渡ってすぐに右折、浅間神社のある位置まで戻ると、ここに道標。やっぱり国道迂回で正解だったようだ。イラストマップ、信用ならない……。
福地用水路の脇の道に入る。すぐに舗装が途切れて、畦道に変わる。北方に開放的な道。道脇にはススキが多い。
いったん車道に戻ると山神社。
砂利道に変わる。左手は田園地帯。相変わらず良く晴れている。富士山側は雲の取れる気配が一向に無いのに。
のんびりと歩いていたい道だけれども、せかせかと歩く。11月の日差しは、午後2時を過ぎて結構斜めになっている。色づいた木々の葉にその陽射しが当たると、ちょっと夕方めいた雰囲気になる。それを見ると、錯覚と分かっていても気が焦る。まあ、確かに日没まで3時間少々しか無いのだけれど。
用水路の道は大きくカーブして国道138号に突き当たった。
キョロキョロと見回す。道標は……無い。でも、先ほどの浅間神社のコースマップでは国道を横断して鐘山の滝へ向かっていた。それに倣って、国道を僅かに進んだらすぐに左手の側道に入った。
住宅街を進む。道標は無い。鐘山通りに当たった。道標は無い。
……どうやらコースから外れた模様。ただ、現在位置把握は出来ているので、右折して鐘山の滝へ向かう。
国道へ復帰する手前、車道の脇から階段を下りて桂川の河岸に出る。休憩舎があって、その向こうに小ぶりな滝が見えた。これが鐘山の滝。PM2:31。
さて、問題はこの先。
とりあえず国道に出てみる。道標は、やっぱり見当たらない。おかしいなあ。浅間神社のマップでは、確かに桂川左岸に赤い線が引かれていたのに。
国道を少し進んで左折、鐘山配水場のある小道に入ってみる。と、足元に「東海自然歩道」の標示板が落ちていた。
これは一体、何を意味するのだろう? ひょっとして、この道で合っている? それとも、廃線となった道を歩いているだけ? どちらにしても進むしかない。道はカーブを描いて国道に舞い戻った。すぐ先が「忍野入口」だ。
左折して忍野へ向かう。周囲は深い林。鐘山橋が見えてきた。と、その手前に――。
東海自然歩道の指導標!さらに鐘山橋の向こうには桂川沿いの道に東海自然歩道のコース案内板が立っているのが見えた。コースはどうやら桂川の左岸(南側)でなく右岸を通っていたらしい。
さらに、そのコース案内板を見ると福地用水沿いの道あたりは複線コースになっていた。この区間、なかなか手強い……。
とまれ、この先はオンコース。
山道をずんずん進む。陽射しが失われてしまったので、落ち葉の舞う山道でも見た目は地味なものとなっている。忍野高原ホテルを通過し、富士学園の建物を横目に突き進むと、道が突き当たった。
左折し、桂川を渡ると信号のある交差点。忍野八海まで0.3kmの標示があるけれど寄り道はしない。忍野八海は、もっと良い条件の時に訪れたいと思っているので。
車道を東へ進む。分かれ道を道標に従って左折。筧公園を通過。
やがて畑が多いけど、住宅も多く目に付くあまり面白みの無い道になった。曇ったせいで、風景も寒々としている。
――実際のところ、肌寒さを感じる。高度1,000m近い場所なのだから、当たり前。
浅池を通過。そして、ハリモミ林の領域の端っこに着いた。……ここに立つ道標、方角が一見、林の中を指しているように見える。
もしかして林の中を歩く道があるのかも、と思い道を探る。3分後、そんなものは無かったと結論付け。車道をべたに歩き、やがて県道717号との合流点。
右折し、山中湖へと針路を正す。
ハリモミ純林とは言え、街路樹には落葉樹が目立っている。まっすぐな道で散歩やジョギングをしている人の姿も。
ただ、やっぱり林の中も歩きたかったなあ、と思う。
暫く歩いていると、林が切れて眼前の光景が一気に開けた。山中湖畔の平地に出たのだ。大きな富士山が現れる……筈の地点。
そのまま南下して、花の都公園の領域に入る。と、言ってもこの季節、花は見られない。
だだっぴろい光景の中を歩いていく。道標を捕らえて左折、ほうとうの店の横を通過する。山際まで進んでもう一度左折、さらに道標を捕らえて登山道に入る。
――そう、「大平山コース」突入だ。午後4時を過ぎてからの入山。日の長い夏場であるのなら問題ないけれど、今の季節、あり得ないほどの時間の遅さ。これから夜道覚悟の山歩きだ。
一度も歩いたことの無い道を夜歩くというのは、やっぱり怖いものがある。なんでこんなに余裕の無い計画を立てるのか、と言いたいのだけど、立てたのは自分。ぶっちゃけ、時間とお金の都合。
というわけで、山道をせっせ、せっせと登る。予想していた通り、勾配はきつくないので道は捗る。だんだん薄暗くなってくるのが気に障るけれど。
さらに、上り階段ばかり続くと音を上げたくなってくる。疲弊した足を宥めすかしながら、とにかく前へ、前へ。そんな風に森の中を頑張って登っていると、少し上空が開けてきた。やがて周囲は雑草とカヤトに。道標が立っていて、その真ん中に小さく「長池山」と書いてある。どうやら山頂らしい。PM4:29。
山中湖から200mほど高い位置にあるピークだけれど、展望はいまいち。結局、今日は夕方になっても雲は晴れ上がってくれなかった。もうおしまい、という雰囲気。冷たい風が吹き渡っている。
石割山稜線をさらに東へ進む。カヤトで開けた稜線であるのは良いのだけど、その代わり風がモロに当たるので寒い。身体を温めるためにも走る。幸い、アップダウンは緩やか。道標にあった「大出山」も知らないうちに通過していた。
飯盛山も通過。ベンチがあるだけのシンプルな山頂。前方には大平山が見え始めた。高度差は100mほど。
林道に入って、高度を上げていく。……きつい。脹脛が張った状態のまま、大平山山頂に到着。PM4:53。
こちらは広い赤土の広場。山中湖を見下ろす大展望地だ。もちろん、富士山方向にも隔てるものは無し。あずま屋もあって、昼間はハイカーで賑わうことだろう。
もちろん、今は誰もいない……いるわきゃない。
山頂から下る。吹流しがところどころあるのは強風警戒のためか?
今日のところは風はあるものの強くは無い。寒いだけだ。吹き曝しの稜線は、身が凍える前に走って通過。
――と、人工の明かりに出会う。見ると、草むらの向こうに家の屋根が見える。別荘地だ。こんな稜線近くまで上ってきているとは。
その別荘地も後になる。
登りが続くようになってペースが落ちる。闇が深くなって、道の判別も怪しくなってきた。そろそろヘッドランプを出すか。
平尾山に到着。遠く忍野・内野の町明かりが見えた。随分歩いて来たものだ。その先にある分岐点から下山開始、PM5:23。
山中湖方面へ下っていく。高度差320mなので大したことは無いのだけど、それが山の闇の中となると話は別。道迷いが一番怖いので、とにかくヘッドランプで道筋を照らし出してから進む。なので、時間がかかる。
下山道は分かりやすかった。それでも、2度ほど間違った道に入りかけた。ようやく登山道が終わって舗装道に出ると、国道に当たった。PM5:50。
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無事下山でき、安堵の息を付く。あと心配なのはバスに間に合うかどうかだけだ。
それでも、最終便まで1時間以上ある。平野から旭日丘まで歩いたことはあるけれど、1時間もかからなかった。というわけでコースをもう少し先まで進み、県道に突き当たった地点でコースを離脱。
平野到着はPM6:10。
国道413号を南へ歩く。足は重いけれど、早足をキープ。
国道と言えど、さすがにこの時間帯には交通量はめっきりと減る。それでも歩行者のいることを明示するべくランプを手に進む。
方角が南から西へと変わり始める。山中湖南岸の道だ。暫く歩いていると、紅葉が闇におぼろげに浮かび上がっているのが見えた。
山中湖の紅葉まつり――とは言っても静かなもの。人の姿はパラパラという程度だし、出店もささやか。ただ、ライトアップされた紅葉に思い切り引っかかって、湖岸遊歩道をじっくりと巡ってしまった。まさか、こんなところで時間を奪われるとは……。
気づいたら、バスが来るまで20分を切っていた。これはヤバい。最終便、乗り遅れたら悲惨!
急いで旭日丘交差点へ。思ったより近くて、また安堵。どうやら5分ほど余裕がありそう。
旭日丘交差点で左折、国道138号に入るとすぐに旭日丘バス停……ふぅ。PM6:59。
バスを待つ――というほど待たずにバスがやってきた。乗り込む。バスは闇の中、篭坂峠を越え、須走を抜けて御殿場駅へと向かっていく。