- 富士山麓に接近 -
【踏 行 日】2007年10月中旬
【撮影機材】OLYMPUS E-410, ZD14-54F2.8-3.5, CASIO EX-P505
今回も30kmを超えるロングコース。かつ、標高1,000mも突破する。
……ただ、ルートは地味。峠越えなので「山頂からの見晴らし」は無いし、秋の彩りも期待薄。そもそも、今年の紅葉は2週間遅れているという話だし。
もっとも、六地蔵あたりから富士山が見えるという。それに、これほど富士山に近いのだから、他に富士眺望のある箇所だってある筈。そこに、ちょっとだけ期待している。
ところが、現地に向かっているうちに天候の下降を示す雲が上空を覆っていった。
静岡駅で東海道線に乗り換えて興津駅に着いた頃には、上空は完全なる曇り空となった。やっぱダメかなあ……。
興津駅から出て周囲をキョロキョロと見回す。ここは東海自然歩道静岡新ルート上。案内板のようなものが立っていないかと思ったけど、見当たらず。
AM8:50。駅前、静鉄バス停から但沼車庫前行きに乗車。
バスの乗客は3~4人。興津川に並行してバスは走り、ものの20分弱で終点に到着、AM9:09。
ここで静岡市の自主運営バスに乗り換え。AM9:14を過ぎて発車。乗客は……自分ひとりだ。
バスは、蛇行する興津川に沿って山あいの道をひた走る。時折、1車線の狭い道となるも交通量は少ない。そして――上空の雲が途切れ、日の光が照り付けてきた。
AM9:50、終点の大平に到着。
青空。
見事。
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AM9:51、大平バス停から出発。この地点で海抜は約200mほどだ。まずは“スタート・ゲート”をくぐる。
大平地区には興津川にそっていくつかの集落が連なっている。県道196号を北方に歩き出してまず現れたのは根石の集落。ここで民家の飼い犬の盛大な挨拶を受けて、せっかくの静かな秋の朝にひびが入る。まったくもう。
一方、空の青さは目に沁みるようだ。昨日夕方発表の天気分布予報通り。そう、この地区はポッカリと穴の開いたように晴天の予報が出ていたのだ。曇りがちの東海地方の中で、ここを歩こうと決めたのは、そ の予報を見たから。
もっとも、その分布予報ではこの天候は昼までしかもたない、とも出ていた。勝負は短時間!
中島集落を通過。右手の山の斜面に張り付くように見えるのは中村集落だろうか? 周囲には茶畑が多い。そして、前方遠く、左右から迫り来る稜線のぶつかるところに見える凹み……あれが田代峠だろうか?
北へ向かって一直線。単純明快。
山あいと言っても、けっこう開放感がある。汗ばむほど気温は高くなく、体力消費するほどの勾配も無い。気持ちよく歩ける。
「田代峠まで6.6km・240分」と書かれた道標を過ぎる。右に一面の茶畑があったと思えば、次は左斜面に一面の茶畑。
標高がようやく300mを越えてくる。
AM10:13、大平キャンプ場到着。
と言っても大平キャンプ場「跡」っぽい。建物は荒廃して、長いこと利用が止まっていることを感じさせている。
傍らに東海自然歩道のコース案内板もあって、こっちは真新しい。田代峠は5.7km先だ。
さらに進む。勾配はきつくなり、同時に蛇行を始める。少しだけ茶畑が続いた後、遂に人家がまったく見当たらなくなる。
上空を見ると、ポッカリと開いていた青空に、雲の群れが侵入開始。急がねば!
右手前方に興津川。このあたり、カワセミが生息するという。川に堰が現れると、ほどなく林間の道となった。視界は狭くなったけれど、道に落ちる木漏れ日が気持ちよい。なんだかんだ言っても、やっぱり秋だ。
……と、大きな岩と案内の立て札。軍艦岩だ。
もっとも、どこが「軍艦」なのだかイマイチ分からない。しかも樹林に飲み込まれそうな風体。木の根もしっかりと張り付いていて、別の意味で威厳があるように思う。
軍艦岩を後に、さらに進む。完全に山あいの林道になった。ただ、時々、樹林帯から出るので狭っ苦しさは無い。
路傍にはアジサイやムラサキ系の花が目立つ。気候が良いので、楽に歩いていける。良いウォーキング日和――今のところは。
沢の近くでは数十匹の小さな蝶が花の間を乱舞していた。シジミチョウだけど、光沢のある薄紫の翅を持つものとそうでないものがいる。雌雄の違い?
ここでしばし時間を潰れる……なかなかチョウが翅を開いてくれない、という理由で。
徳間峠分岐にAM10:49到着。道標には徳間峠までは1.0kmとある。東向きの峠ということで、富士山が眺められるポイントかどうかが気になる。
しかし今日は(と言うか今日も)まったくもって時間が無いのだ。先へ進む。
林間の坂道を上っていく。前方に、突如として丸木の建物が立ち現れた。バンガロー村だ。もっとも、オフシーズンなのでひと気は無い。
道は村を回り込むように大きく蛇行し、さらに高度を上げていく。――これがハイクであったとしたら、ずいぶんと長いアプローチだ。1時間以上歩いて、まだ登山口に着かないのだから。
「山火事用心」の横断幕。遂に林道も車止めゲートまで到達した。
そこに立っている看板は「工事関係者以外立ち入り禁止」。と同時に、「大平保安林管理道 通行には十分注意して下さい」と書かれた看板もある。
東海自然歩道の指導標は、ゲートの先を指し示している。
――それでは、十分注意して歩くとしよう。ゲートを越える。
ここまで急勾配が無いので、まだ足に疲れは感じない。
2つ前の大山コースも長い上り勾配林道があったけれど、雰囲気はこちらの方がずっと良いように感じる。山の深部に足を踏み入れていくんだという、何と言うか、ワクワク感(?)がある。
だけど、そろそろ山道も歩きたくなってきた。出来ることなら、もう消え入りそうな日差しが本当に消えてしまう前に山に入っていきたい……。
林道が大きくカーブしていくところ、待望の山道への入り口を発見。このまま林道を終点まで歩かされるのじゃないか、と心配していたけれど、静岡県にも良心は残っていたようだ(ってなんて偉そうに!)
入り込む。
――整備された、気持ちよい山道が続いていく。しかも斜面が草付きとなっているので、なんとなく安心感がある。やっぱり自然歩道はこうでなくちゃ、面白くない。
20分ほど歩いただろうか……唐突に林道に飛び出す。
ここから先は林道歩きのようだ。空を見上げると、どんよりとした、灰色の厚い雲が空全面を覆っている。もう、日差しは望むべくも無い。予報通りとは言え、残年。
砂利の道を歩いていくと、前方にベンチが見えてきた。その傍に、側面と底面をがっちりと石で固められてしまった沢と、逆台形の堰。そしてコンクリートで塗り固められた山肌。とても人工的な光景。
指導標は無い。ただ、標示が地面に落ちていて、沢沿いのヤブを示す。?。
標示を信じ、沢の脇のかすかな踏み跡を辿る。藪道を25mほど進んで山側を見上げると、丈高い草むらの向こう、指導標が立っているのが見えた。
ヤブを漕いでその地点に上がる。――林道だった。なんのことは無い、蛇行した林道を山道でショートカットしただけ。これならもう、素直に林道を回った方が良かった。
林道を跨いでもう1つ指導標。山道に再び入る。
本格的な山道だ。整備状況は悪くは無い。若干、道不明瞭の箇所もあったけれど、それも大したことはない。
峠目指して、ガンガン登っていく。
PM0:12、田代峠到着。見込んでいた時刻より12分遅れ。
スギの立ち並ぶ、段差のあるスペースにいくつかベンチが設置されている。見晴らしは静岡方面に僅かにあるけれど、山間しか見えない。当然、他の山が見えるような眺望は皆無。そして、お地蔵さんが1つ。
雰囲気は悪く無いけど、地味すぎて今日のコースの主役は張れないだろうと感じたのは確かだけれど、それでも今日の最高地点。それに、何と言っても静岡と山梨の県境。
10分ほど休憩した後、いよいよ山梨県へと足を踏み入れる。
下りの道は、沢に絡み付くようなコース取り。
やや整備不足を感じる……と言うか、最初は本当に東海自然歩道の道を辿っているか不安になるほどの道の細さ。逆に言うと、自然多き道。路面が苔や草で覆われかけ、不明瞭であるような状態をそう言って良いならば。
個人的には嫌いじゃない。緑は濃く、沢にはサワガニも見られる。木橋もしっかり架かっていて、気を付けて歩けば問題ないレベル。
――「賽の河原」というのはどこなのだろう? それらしき場所が見つけられないまま、下っていく。
と言うか、山梨県側に入ったとたん、案内が不親切になったような気がする。いや、それも相対的な印象なのだけど。
指導標というものは少なすぎると困るけど、多すぎてもウザったい。このまま進んで大丈夫なのか、とちょっと不安になってきたタイミングれ現われるような指導標配置が絶妙と思うけど……
一般には、分岐毎に指導標が立ってくれていた方がありがたいだろう。なかなか難しいとこだ。
ほぼ20分で林道の始点に出た。脇には東海自然歩道の案内板。
――田代峠で見た、静岡県の情報量の多い新式案内板に対抗するかのような、山梨県のアバウトなそれ。単に置き換えが行われていないだけなのだけど、県の印象はそんなもので変わる。
あまりきつくない、下り勾配の林道を進む。
ほどなく別の林道と合流。路面状態から見て、車(工事車両?)通りがありそうだ。
右折してグネグネと曲がる車道を下っていく。周囲にあまり見るべき様なものは無い。まあ、それならそれで時間短縮のしどころだ。駆け下る。
勾配が緩んだところで、走るのは止め。沢沿いの道を歩いていく。
10月半ば、この高度ならは紅葉時期に掛かっていそうなものだけれど、2週間遅れのことがあるのだろう、色付きはまだ先のよう。
加えて、この曇天。退屈極まりない。せっかく周囲には自然林があるというのに……。
細島観察所を通過。観察、というのは野鳥のことだろうか。草むらに没していたけれど、機能しているのだろうか。
ダンプが1台だけ通過していった。軽装のオジさんオバさんともすれ違う。どこに行くのだろう? そして、樹間に奥山温泉の建物が見えてきた。
奥山温泉、PM1:13到着。見込みより13分遅延。
道のこちら側には2m四方ほどの四角い湯船。パイプからぬるいお湯が流れ込んでいる――脇に「犬」温泉の立て札。って、足湯じゃないの?
奥山温泉に立ち寄ってみることを夢想してみる。30分ほどの時間消費と引き換えに“極楽気分”が手に入る。
――それは分かっている。でも、今日の目的地まで歩き切らないうちに、そういう気分にはなりたくない。そう考えてしまうのは、ちょっとストイック過ぎるだろうか?
奥山温泉を後にする。
三叉路に当たる。ここは標高571m地点。道標に従い右折、「グリーンロッジ」とあるキャンプ場を通り抜け、トイレの建屋と管理棟も過ぎ、「奥山ふれあいの森」の看板を後に残してずんずんと進む。山から山里へと向かう道。
福士川沿いの車道となる。民家のような「七ツ釜荘」を過ぎたところ、車道脇に現れた小さな滝が良い雰囲気。名はなんと言うのだろう?
もう、変哲の無いフラットな車道だ。でも、この付近には見所がある。
左手、七ツ釜の滝入口。ガードレール下に「七ツ釜の滝入口」と書かれた木板が立て掛けてある。ただ、その字は消えかかっていて、一度は見過ごして通り過ぎた程だ。
ちなみに、この滝を見るには結構な寄り道が必要そうだったので、寄るかどうかは現地判断することにしていた。
その現地でも入口がこれだけ不案内と言う事は、人を呼べるほどのものは無いのだろう……でも、“知る人ぞ知る隠れた秘瀑”である可能性もあるぞ……などという倒錯思考を経て、そのガードレールの隙間へ突入。単純な話、その地味さに惹かれただけ。
ところが道はいきなりの急下降。手摺はあるけれど、道幅は細い。雨の日などはちょっと危険かも知れない。
目の前に現われたのは真っ赤な吊橋。
――渡る。渓谷に架かっており、その高度感は満点。遠くに滝が見えるけれど、あれだろうか? いや、まだ滝遊歩道には先がある。さらに進む。
下り過ぎるほどの下りを下っていく。これほどの高度を失ってしまうと帰りが不安だ。
対面に滝が見えてきた。細いが、大きい。あれが「七ツ釜の滝」だろうか。
滝が見えてからさらに下る。まだ下るのか、という感じだ。結局、一番下まで下りてしまう。
見上げる。滝は、水量は大したことは無いけれど、空から降ってくる感じだ。ただ、この位置からだと滝の全容は見えない。
――滝遊歩道はここまでのようだ。どうせなら徳間まで遊歩道が続いて欲しいけれど、それは無理というものだろう、覚悟を決めて遊歩道を上り返す。
車道に舞い戻った時には完全に息が上がってしまった。厳しい! それに、超特急で往復したものの25分の消費。日暮れの早いこの時期には結構な代償だ。
それでも、変化の少ないコースにあってはこのような場所は存在していて欲しいと思う。
再び緩い車道歩き。退屈。福士川から高度差があり過ぎて、川沿い歩きの雰囲気もない。山梨県のコース案内板によると、田代峠~井出は『福士川渓谷コース』と名付けられているけれど、その福士川がなかなか目に出来ない。やっぱり、先ほどの滝遊歩道がポイントだったのだろうか。
ともかく――小走りで駆け抜ける。
ようやく、左側眼下に徳間の集落を捉えられた。
だけれど、すぐに到着というわけにはいかないらしい。Uターンを2回ほどして、道はゆっくりと集落に近付いていく。
……もどかしい。
山水徳間の里、という休憩施設を過ぎて――
PM2:37、徳間到着。
見込んだ予定より37分遅れているけれど、予定外の七ツ釜の滝往復を含んでいるため仕方がないといったところか。
ところで、コースの先はどっちだろう?
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