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平松峠。もしこの地点で日が暮れかけていたら、この県道を伝って家山に下りるエスケープを予定してたけれど。
そっちは距離は10kmほどあって、あまり短縮にはならない。車道でスピードは出せるとは言え、家山駅まで2時間ぐらいかかると予め計算していた。
かたや、金剛院に寄る正規のルートだと距離14km。残り時間は3時間10分――最低4.5km/hの速度が必要、か。
東海自然歩道の案内板を眺めながら、しばし思案。もちろん、この条件なら本線突き進んでいくことは決まっている。でも、速度計算、間違っていないよな……。
うん、間違い無い筈だ。大日山へ向かおう。さあ、もうひと山越えるぞ!と気合を入れて山道を歩き始めたものの――
すぐに車道に戻されてしまった。どうやら、このままマイカー参拝客が通るのと同じ車道を歩かされるらしい。
もちろん、「金剛院」という名から質実剛健な山道を勝手に期待していた自分が悪い。
緩やかに上って行く。山の右斜面を巻いているなあと思ったら、次には稜線上そのままの道となっていった。
でも、林のせいで左右の見晴らしはほとんど無いのが残念。確かに、勾配と同じように穏やかな道なのだけれど……。
せっせ、せっせと上るだけ。
なにせ、この高度差200m弱の上りをいかに早くクリア出来るかが鍵。そういう意味では、緩やかな車道の上り坂であることはありがたい。確かに、ここにきての上りはキツいけれど――これならなんとか4.5km/hで歩き続けることが出来そうだ。
幸いと言って良いものか、周囲に見るべきものも少ない。歩を進めていくのに集中できる。林には、西日が差し込んだり、差し込まなかったり。
前方、金剛院の山門が見えてきた。大光寺に続いて、ここが今日2つ目の目的地。
山門を潜る。
これまでと同じような林間の車道が続いているのを目にする。……あれ? まだ先があるのか。早く着いて欲しいのに、もどかしい!
と、目の前に広がったのは茶畑のある集落風景。ちょっとした広場と……公衆トイレ? あれれ、金剛院ってもしかして通り過ぎちゃった?
トイレの脇には東海自然歩道のコース案内板が立っていた。確認する。えっと、金剛院は……まさにココらしい。えっ?どこ? 見当たらないのだけど。
車道をもう少し進んでみる。と、ちょい先に金剛院はあった。……なんだい、心配させるなよ。山門から結構ふつうの道が続いていたので、ちょっと焦った。AM4:14。
大日山金剛院。参拝客はいない、というかそもそも、ひと気が無い。
――むかしは、東海自然歩道を歩いている人のために宿坊に泊めてくれた、なんてこともあったようだけど。もう、あまりそういう時代では無いかも知れない。山上の静かなお寺、っと。
境内の脇にテーブルとベンチがある。そちらへ。傍に立っている解説板は何かと思ったら……またもや「東海自然歩道森町コース」の紹介だった。「大光寺から金剛院」という、えらいアプローチに苦労しそうな区間が指定されている。ちなみに、森町とはこの山の稜線の西側、周智郡森町のことだ。東海自然歩道に理解のある自治体なのかな?
一方、稜線東側は榛原郡川根町で、そこの家山が今日の最終目的地。
さあ、あまりゆっくりもしていられない。金剛院を後にダート道に突入!
杉林の道を突き進む。道はほとんどフラット。……でも、足は再び棒のようになってきた。この道が、緩やかな上り勾配になっているせい。それでも我慢してペースを維持。
はっきり分からなかったけれど、この区間のピークを通過したらしい。やや下りになってきたかも知れない。でも、まだギア・チェンジは出来ない。もう少し下り勾配がついてくれないと。
……ところで大日山って、どこよ? 地図を確認すると、その山はあさっての方向にあった。
走り出す。さすがに、そろそろ走らないとヤバいだろう、と思って。
途中、コースは林道から逸れて山道へ入った。――下り勾配がだんだんときつくなってきた。ようやく下山道、って感じだ。ちょっと薄暗いけれど、走るのには問題無かろう!
軽快に下っていたのに、ほどなく車道に戻されてしまった。車道だと、一直線に下れないんだよなー、迂回ばかりで。
それでも、ちょこまかと走る。茶畑に出て、また林。茶畑に出て……今度は茶に埋もれるように民家が見えてきた。市井平の集落だ。で、あまり平らじゃないじゃん!と突っ込んでしまう。PM5:09。
でもこれが、有名な川根町の茶畑風景なんだよな……。
集落を後にすると、道が林に没した。薄暗い林間の道――午後5時を過ぎたので、実際に暗くなってきたのかも。今日の陽射しは金剛院手前で失われてしまっていて、それ以降、目にする風景はかなり地味だ。
タッタ、タッタと駆け下る。一定速度で、っていうより、けっこうなスピードで走って、疲れたら歩いて、というのの繰り返し。そういう走り方しか出来無い。
にしても、この道の回りくどいことと言ったら! 直下降すれば僅か0.3kmのキョリが、車道に付き合うと2kmの大回り。
……こういうところには山道のショートカット、欲しいよなあ。でも、静岡県はこれまで見てきたところ、道標や案内図は作っても、コースの造成自体はあまりやってくれない県っぽいし。
と、真新しい指導標が。「野守の池 4.72km」と、10m単位までの距離表記?! しかも、池の絵マークまで付いている。金剛院は、5.95kmで「卍」の絵マーク。
――静岡県のキャラだよなあ、表記だけは細かいってところが。外国人にも(いるのか?)優しいかも知れない。
でも、野守の池まで105分なんてとんでもない!60分で行く予定。
道標は良いとしても、見えるものは市井平からここまで、何も変わらない。走って、歩いて、その繰り返しも変わらない。ああ、暇だ!
最後のヘアピンをクリアすると林から出て上空が開けた。茶畑も見える。ようやく風景が変化してくれた。
ついで、川を渡る。家山川の支流かな?そのまま、右岸の車道。
県道63号にぶち当たる。
……あそこに見えるのは八垂の滝じゃないか? 想像よりずっと小さいけど。そうだ、うん、そうに違いないそう決めた。
八垂の滝、PM5:45。――家山駅に列車がやってくるまで、あと70分。だけど、残りの距離も4km弱。ふう、なんとか間に合いそうだ。下りで頑張って走ったおかげ。
県道を南下。右手には家山川。山あいの道に、車の往来はほとんど無し。景色もあんまり代わり映えしない。もう、勾配はフラットなので走れないけれど、それなりの歩行速度はキープ。
……ただ、足裏が痛い。長距離をオーバーペースで歩いてきた副作用。覚悟はしていたさ。
茶畑が目立ってきた。そりゃそうだ、川根町は「日本のかおり風景100選・茶のかおり」にも選ばれている地。
と言っても、川根町だけじゃないけどね。大井川に沿った川根路の9市町村が選定地とのことだ。
ようやく空間が開けてきた。車道も二車線と化した。今日のオシマイは近い。
越地で右折。その先でようやく自販機に巡り合えた。ほんと、地方はDydoだなー。
ただ、時間もあまり無いのでパス。昼は暑かったけれど、今の時間はそうでもない。風も無く、ジトっとした感じはあるけれど。
てゆーか雨が降ってきてもおかしくない空模様。大丈夫か?
家山川に沿って車道を突進。
――と、左側に野守公園の入口が現われた。手許のガイド本を手早くめくる。ガイドには、ここを左に逸れるようなラインが示されているけれど……実地には指導標が立っていない。直進が正解では?
さあ、直進か?左折か!? 3秒以内に決めろ!
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左折する。坂を上って行くと……
川根町民文化会館の立派な建物。鐘のぶら下がるオブジェもある。
その向こう――見下ろされるのは野守の池だ! これは素晴らしいビューポイント。
家山の町並みも間近に見えている。あの中に家山駅はある。もう、すぐじゃないか。時間は……まだ30分もある。今日のエンディング・テーマが聞こえてきそうだ。
列車を一本遅らせてでも見入っていたい風景なのだけど――。
残念ながら、次の列車に乗り遅れると今日中に家に帰り着けなくなる。あしたは仕事なので、それはムリ。
アジサイのジグザグ道を伝って池の畔に下りる。
と、そこで東海自然歩道の道標をようやく発見。……おっと、やっぱりコース採りを間違えていたらしい。正解は池畔を一周か。
でもまあ、損をした気はしない。コース通りに歩いていたら、高台から野守の池を見下ろすようなことが出来なかっただろうから。
池の周遊路を時計回りに歩く。もうだいぶ薄暗くなってきている。
――でも、ゆっくりと歩きたい道だよなあ。水面を眺めながら歩くのは気分が安らぐ。……と、そんなところを時間が無いからセカセカとした早歩き。やるせない。
池の東端に到達。ここには、ちょっとした広場があった。そして公衆トイレも。時刻はPM6:38。
――池の周遊路、ここから文化会館上り口までが歩けていない。歩けていないのだけど……さすがに今日は歩けない。持ち時間は20分を切っている。
でも……道標が見当たらない。ここに来てピンチか!
とにかく、進むしかない。あさっての方へ行きかけて、オカシイと思い引き戻って隣の道筋に入っていく。と、東海自然歩道の道標発見。ふう、危ない。
小高い丘へ上っていく。着いた所が天王山公園。野守の池もよく見えている。ここに立つ東海自然歩道コース案内板で、家山駅までの道筋を最終確認。
それなのに公園から下ると……もう完全に道が分からん。町中だ。とにかく駅に向かう道が見付からん。
迷う、迷う。駆け回る!
なんとか家山駅に辿りついたけど……げっ。今はPM6:55!! どないするねん、列車の来る2分前や!
駅の窓口に押しかけ、速攻で切符を買う。駅員さん、早よう、早よう!
ホームで立ち尽くす。列車が、きぃひん……。
あ、そや日頃の遅刻対策で時計を2分ほど進めといたの、忘れとったわ。まんまと自分に騙されとる。
――列車が、ゴトゴトと音を立てながらやって来た。