- 滝めぐりと天竜美林鑑賞-
【踏 行 日】2007年5月下旬
【撮影機材】OLYMPUS E-410, ZD14-54F2.8-3.5, ZD40-150F4-5.6, CASIO EX-P505
飯田線の列車に揺られながら「飛騨牛めし」をパクつく。車窓には、春も盛りの里の緑の風景。明るい日差しが降り注ぎ、まどろんでいる。
――旅の楽しみの1つは、列車内で現地の駅弁を食すこと。古臭いかもしれないけど、それは旅の一場面として欠かさざるものだと思う。出来れば、新幹線の車内ではなく、地方ローカル線の車内が良い。新幹線だと、そのスピード感ゆえか気分が忙しなくなってしまい、どうもいけない。
さて、牛めし美味しく頂きました。そろそろ、今日の目的の駅だ。
AM9:22、三河大野駅に到着。
駅舎から出る。隣に公衆トイレ。駅前には国道151号が通っている。そして国道は駅までカーブを描き、宇蓮川に架かる大野橋へ。
そちらに進む。と、左手に「東海自然歩道鳳来寺山方面」の赤錆びた鉄の道標。北へ向かう細い路地を指している。きっとこれは、コースのショートカットだろう。
大野橋を渡る。
さらに信号のある大野交差点を渡ると、店や民家が立ち並ぶエリアに入った。大野集落だ。
途中の自販機で飲み物を購入。今日は天気が良く、気温も上がりそうなので多めに。
廃屋の洋館が建っているところで突き当たる。左折すると、大野宿。
秋葉街道のかつての宿場町ということで、それっぽい町並みが続いている。
洋館の隣には和洋の若松屋旅館。その前で東海自然歩道の道標を見付ける。鳳来寺山から下りてきた東海自然歩道は、ここで90°折れて静岡県境を目指す。
――さあ、今日も長い一日の始まりだ。
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AM9:35、大野集落から出発。
最初は住宅地の合間の路地を抜ける。ほどなく集落周縁の道へ出て、左に東陽小学校を見ながら歩く。
――その校庭には誰もいない。土曜日の朝、気持ちよい五月晴れの日。
すぐに林に入って、周囲は緑に変わる。
小さな峠を越えると、睦平の集落を見下ろしながら進むようになる。左手に石仏も見掛ける。
ほどなく、二車線の県道505号に合流。そのまま0.2kmほど県道上を歩くと、右に道標を捉えた。ここには東海自然歩道の案内図と一緒に「さわやかウォーキング常設コース」の道標も立って、同じ方向を指している。
そちらへ。
山道に入ると空気に清涼感が出る。気温が僅かに下がるので、そう感じるだけかも知れないけど……。
足裏に感じる土の柔らかさ――やっぱり、落ち着く。
さっそく、木のベンチの休憩所が出現。相変わらず愛知県コースはサービスが良いのだけど、今日はその愛知県から脱するための歩き旅だ。
木橋で沢を渡ると上り勾配。いよいよ本番か、と思いきや……。
すぐに林道に出されてしまう。道標の指示は、その林道。
木漏れ日の林道歩きへと変わる。まあ、今日の気候なら、それもまた良し。
右に道標を捉え、林道から山道に入っていく。
――山道、と言っても植樹帯であることは変わらない。もっとも、下生えが多いというか、緑が溢れている。几帳面に手入れされた人工林とは違って、この緑の多さが自然を感じさせてくれる。
また、林道に当たる。少し歩いて、また山道へ。
そして林道へ。道が平らになって――鉛山峠に到着。時刻はAM10:29、大野から1時間弱と言ったところ。
林道はフラットに続いていくけど、道標が指し示す方角は下。下っていく山道。
山道を下り始める。
この道には水の残る箇所が多い。そこになにか赤いものがいるぞ、と思ったらサワガニだった。
――生きたサワガニを見たのはずいぶん久し振りのような気がする。子どもの頃は田舎でサワガニ捕りに興じたこともあったけれど……。
童心を思い出して、突っついたりしながら遊ぶ。蟹にとっては、まったく迷惑な話。
猿滝へ70m、の道標が現われた。コースから外れる寄り道となるけど、ここは喜んで寄り道。沢に架かる木橋を渡って、森の奥へ分け入る。
水の落ちる音が大きくなってくる。そして、一枚岩を滑り落ちる奔流――猿滝が現われる。
薄暗い地面にポツポツと日光の斑点が落ちる、小狭い空間。ずっと山の中を歩いてきてようやく到達した滝であるせいもあって、なんとなく秘密めいた場所のような感じがする。もちろん、観光客など誰もいない。
マイナス・イオンを吸い込むように、深呼吸。ただ、今日はこの先、幾つも滝が待っている。まだ、今日の旅は始まったばかり。
踵を返し、コースへ戻る。
道は公園散策路風になってきた。雰囲気はとても良いけれども……なんかヒトの匂いがする。動物みたいな物言いだけど。
と、案内板が立っている大きな広場に出た。ここを右に行くと阿寺の七滝の駐車場があるとのことだ。
そして……ヒトがいた。(ほら見ろ、やっぱりだ)
七滝のある広場に出た。軽装の人たちが何人か、思い思いの場所で寛いでいる。
日本の滝百選の碑。ただ、肝心の滝は一段しか見えない……。
広場の端まで行くと、幕のように何段にも渡って流れ落ちる滝を見ることが出来た。ただ、4~5段ほどと言ったところか。木々が邪魔で、七段全部は見えない。
展望台の建物があるので上ってみたけれど、見え方はあまり改善しなかった。あの、滝の脇にある探勝路を上らないとダメか。
探勝路に進む。滝の上部を見ることが出来る――けれども、やっぱり七段を一度に見ることは叶わなかった。
探勝路分岐まで戻り、今度は下りずにそのまま、東海自然歩道のコースの先へ進む。
ひとしきり、厳しい登り。
やがて、勾配は緩み道幅も広くなった。右手の沢は阿寺の滝の源流だろうか? ともに進む。
林道の上空が開け、一気に明るくなった。暫く忘れていれたけれども、5月末の強烈な日射しが降り注いでくる。太陽の位置も高い。なにしろ夏至まで一ヶ月しかないのだし。
遂に車道に出された。ここまでの道は素晴らしかっただけに、この先の道は我慢だ。
車道歩きの序盤、養鶏場が立ち並ぶところを過ぎると、巣山の集落になった。田や畑が広がる、落ち着いた山里の光景。
県道442号と505号の交わる巣山の交差点に着く。AM11:55。もうすぐ正午……。
キョロキョロと見回すものの、周囲にバス停らしきものは無い。変わりに、巣山公民館。一階の車道に面した部分が休憩所になっている。さらにそこには自販機も納まる。日射しを避けるには好都合。
小休止。冷たい飲み物を呷ると、天井の梁にツバメの巣があるのが目に入る。
さあ、車道歩き再開だ。県道442号を東へ。静岡県へ!
――にしても、上空の太陽は何とかならないものかなあ。単純な車道歩きだけれども、熱せられたアスファルトと両面でジリジリと熱を放射してくる。日差しを避けるものが、周囲には何も無い。
田圃には、まだ植えて間もない苗。こちらは日の光を盛大に吸収している。
ゴルフ場の陸橋を潜ったところで、右に逸れる傍道へ。
――と言っても何も無く、すぐに県道と合流。
もう1回、傍道へ。今度は途中に休憩所があった。木陰もあって、ようやく座り込んで休憩が出来る。やれやれ。
夏明橋の三叉路に到着、PM0:26。
バス停の他に、東海自然歩道の公衆トイレと休憩所がある。
大島川を渡って、左折。
――ちなみに、ここの指導標の上には獣の骨が載っかっているのだけれども、いったい何を暗示しているのだろう?
大島川沿いに、県道442号を北上する。すぐに、百間滝入口。滝まで行くと往復1.2kmほどの寄り道となるので、ちょっと迷う。時間に余裕があるわけではない。
結局、滝の方向へ突進。
日射しにまともに晒されながら、ダートの車道を歩く。滝まで行ったら水飛沫でも浴びたい気分だ。
途中、遊歩道の入口がある。上って、下りると沢沿いの道。かなり水との距離が近い。増水時は水没してしまいそう。
いったん、滝の上部に出た後、大きく下る。
――まだ下る。下り過ぎ! 100m以上の落差は伊達じゃない。ようやく、ベンチの休憩所が現われた。滝に肉薄していて、言葉通り、水飛沫を被っている。脇には解説板。
昨日は雨だったので、水量はさすがに多い。物凄い轟音を立てて水がほとばり落ちている。
ただ、滝の全容は、ここからでは掴めない。もっと下りたかったけれども、時間と体力の都合で今回はここまでだ。滝に沿って登り返す――きつい道。
コースに復帰。頑張って往復したものの、30分を消費した。ただ、この滝巡りコースには欠かせない豪快な滝だった。後悔は全く無い。
車道を進むと、三叉路の突き当たりにバス停が立っていた。六本松停留所だ。
ここで県道と分かれ、右へ。現われたのは六本松の集落。
――と迂回自然歩道・愛知県側の最後の集落だ。上りの道は向久保バス停前から。
いよいよ、県境越えに挑む。
集落を後に、きつい勾配の車道を上がっていく。これだけ急勾配が長く続くのは今日初めてだ。辛い。
標高差にして140mほど上がったところで、指導標に導かれてダートの車道に入る。
結構な高度に達した筈だけれど、見晴らしは一向に開けない。そして道の向こうに――
ベンチがある。更に、コース案内板が2つ。片や見慣れた愛知県のもの。片や初めて見る、情報量の多い真新しい案内板――静岡県のものだ。そう、ここが愛知・静岡県境。
見晴らしは無かった。木が育ち過ぎ……。
ここからが静岡県の最初のコースだ。静岡県は浜松市。旧区分で言うと引佐郡引佐町。
――県が変わったからと言って道が劇的に変化するわけも無し。今までの続きのように道は続いていく。当たり前だ。
やがて山腹の巻き道となって、道は細かく出っ張ったり引っ込んだりするようになる。ところどころには小さな沢が渡っていて、サワガニなども潜んでいる。
途中、鳶ノ巣山の山頂を向かう小道もあったけれども、もう今日の寄り道は打ち止め。終点までコース上を真っ直ぐ進むのみ。
林道の途中、寺平への下り口の道標を捉え、林間の下りとなる。
ひとしきり下りると、休憩所が現われる。その先、すぐに車道。
アスファルトの車道下りとなる。右には沢が併走。
あまりにも緩く歩きやすい道――。午後も2時を過ぎて日も傾き加減だ。自然に小走りになる。
柱と椅子しかない、シンプルなあずま屋が現われた。黒滝休憩所だ。
そこから少しだけ入ったところに黒滝がある。
――黒滝、とってもちっちゃい。どうしても、ここまでに見てきた滝と比べてしまう。
轟音、などでは当然無く、くぐもったような、落ち着きのある落水の音。却って、辺りの静けさを引き出しているかのようだ。
淡々とした歩きになる。次の目的地は熊の里だ。もう、午後3時になろうかという時刻なのに、まだ静岡県最初のコース「天竜美林」の序盤戦。日が長いとは言え、やや焦りを感じ始める。
寺平の集落を過ぎて、さらに進む。途中、草むらにヘビを見つけたので、つついて遊ぶ。(つまり本当に焦っているわけではない)
熊の里に入ったようだ。宇丸不動院やあざまる公園、道の駅くんま水車の里、国民宿舎若杉荘など、一通りのモノは揃っている。
そして、路傍に“くんまご当地ソング”の立て札。『くんま水車音頭』『ふれあい演歌』の二曲の歌詞が掲載されている。素晴らしい。
阿多古川に沿って南下。
県道9号に合流、熊に到着する。PM3:02。
コースはここで180°転換していく。
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