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岩屋堂の広場から車道に出てる。――この地は知らなかったのだけど、本当に観光地っぽい雰囲気。定光寺からこちら、地味なところばかり歩いてきたので、意味も無くソワソワしてしまう。
鳥原川の上流へ進む。車道でも、まわりは濃い緑。
と、東海自然歩道の指導標が立っていて、川を渡るよう指示された。
指示通り、歩行者用の橋で鳥原川を渡る。
現れたのは……なんと迂回路指示の標示。「私有地に付き通行をご遠慮下さい」
ええっと、私有地と言われても……ハイクコースや自然歩道は私有地を通らせてもらうのが結構当たり前なのだけど。今更この区間が歩けないとは、どういうことなのだろう? 地権者からクレームが来た、というパターンだろうか?
まあ、仕方無い。時刻を見る。PM2:20。――さあ、どうしよう?
雲興寺までは、ざっと3.3kmだ。この区間は速いペースで歩き抜けたいと考えていたけれど、示された迂回路は随分と大回り。この時刻での時間ロスは、ちょっと頂けない。
……迷う。迂回標示を見ると、歩けないとバッテン付いているのは一部の区間だ。示された迂回路を行くのではなく、通行止めのところだけ回避して歩けば――。
でも、山の道だ。指示された道以外の道を進んだら途中で道が消えた、なんて良くあることだし……。よし、ここは急がば回れか、と指示された迂回路を行くことを決断。
道を引き戻り始める。先ほど訪れた駐車場を過ぎ、さらに進む。
分かれ道を左。東海環状自動車道を過ぎると少し視界が開けた。濃尾平野の淵に出たような感じ。
当たり前なのかも知れないけれど、迂回路に入ってから道案内が全く無くなった。情報は、先ほどの迂回指示に書いてあった迂回路概略マップだけ。
それを良いことに、一箇所だけ道をショートカットした。そのおかげで、すぐに県道22号に。
左折。ここからしばし、県道歩き。この車道には歩行用スペースが無い一方で、車の往来は比較的多い――というかビュンビュン走って来る。少々、身の危険を感じる。
時間短縮のため少し走りたいところだけれど、車の往来が多くてなかなか出来ない。
やがて山の迫った狭隘部を抜けると、住宅地に出た。左手にあった住宅地の路地へ逃げるように入り込む。
地図を確認すると、ここは窯元町というところらしい。さすが瀬戸焼の瀬戸市、焼き物にちなんだ地名が多い(のか?)
山裾を辿るように進む。先ほどの県道と違って、車の往来は滅多に無い。左に長谷山観音を見送ると、県道33号に当たった。
また左折。今度は山に戻っていく方向へ。
東海環状自動車道を潜ってその東側に戻ると、赤津バス停があった。背後は車両基地になっている。県道を真っ直ぐ行けば雲興寺だけれど、示されていた迂回路は左折。細い道に進む。
やがて現れたのは、瀬戸市の児童自然遊園、「ねむの森」。池のほとりでは家族連れが遊んでいる。
池を右に見ながら歩く。だいぶ山あいに戻ってきた。その先で「←雲興寺」の道標が現れる。
……ふう、ようやく東海自然歩道に合流だ。結局、迂回に掛かった時間は55分。
でも、まだ先に猿投山越えが残っている。ここからは急がないと!
気持ちは急いているのに道は登り。まっとうな山道だけれど、結構疲れている。ペースが上がらない。
ありがたいことに、そのうち勾配が登りから下りへと切り替わった。一気に下っていく。現れたのは雲興寺の……背中。
いきなり雲興寺境内に飛び出す。
ぱっと目に入ってきたのが本堂の屋根瓦……組み合わされた色合いの妙。
この時間でも参拝客がチラホラ。心安らぐ雰囲気があって、しばらくここで休んでいきたいような気持ちにさせられる。
でも残念、時間が無い。まだ午後の日差しを浴びる本堂を後に、参道へ進む。途中、立っていたのが東海自然歩道のコース案内板と解説板。
――「約600年前に開かれた禅寺です」これはプラス35年かな? 「盗難よけの守護で知られています」 盗難避けを、守るって?
雲興寺の山門から外に出る。赤津から続いている県道が左右に渡っている。横断して、いよいよ猿投山の登山道へ。時刻は――PM3:28。
ここに立つ道標には「山頂まで2時間40分」と書いてあるけど、その2時間40分後には下山も終わって、猿投神社の前でバスを待っている予定だ。
だから、ほんとに急がねば。
しばらく勾配の落ち着いた道であったのに、途中から一気に高度を稼ぎ始める。終盤に来て、今日一番の急勾配だ。ぜいぜいと息を継ぎながら途中で立ち止まり、地図を確認すると、雲興寺からは高低差200mの登りとなっていた。このままだと体力がもたない、と、少しペースダウン。
鉄塔を過ぎる。勾配は緩み……そのうち下り始めるようになる。せっかく登ったのに失われゆく高度。
公衆便所の先、林道に当たる。今度は林道で山を下るのだ。猿投山は低山だけど、このあたりなかなか、いやらしい。
林道を下る。登山口からこちら、一人もハイカーに出会っていない。人気の山とは言え、さすがにこの時間は遅いのだろうか。
走る。これだけ道幅があって、しかも緩い下り勾配。「どうぞ走ってください」と言わんばかり……なので、走る。
小走りで10分ほど進んだところに、首尾よく、登山道の続きの道標を見つけた。見逃したら山を下り切ってしまうのではないか、という心配は杞憂で終わる。
登山の再開。残す高さは300m。
道の状態は良く、落葉樹が多くて西日も射し込む素晴らしい道だけれど……かなり疲れた。定光寺駅から歩き始めて既に8時間半が経過している。
ただ、高さを得るに応じて展望が得られるようなところも出てきた。見えるのは霞んだ光景ばかりだけれど、それでも気分的に少しは楽になる。
気温も下がってきて、コンディションも良い。勾配も途中から比較的緩やかになったので、道もさくさくと捗る。あえて悪条件を挙げるとすれば……
バスの出る時刻まであまり時間が残されていない、という、ただ一点。
――じつは今日は新しく買ったカメラを初めて持ち出し、道すがら、レンズをとっかえひっかえ試し撮りなどをしていたせいで、時間の余裕がまったく無くなってしまったのだ。そういう言う意味では自業自得。
突然、恵那山ポイントなる標示が現れた。恵那山は昨年秋に日帰りで登った山。その山を見て懐かしむ――ということは、今日は出来ず。
恵那山は2,000mを越える高峰だけれど、山道の楽しさで言ったらこの猿投山の方が上のような気がする。広葉樹の自然の森というのは、やっぱりポイント高いのだ。惜しむらくは低山が故の展望の悪さ。濃尾平野への大展望が欲しい、と思っていても、ここまでそれは得られていない。
でも、あと少しで山頂だ。
着いた。猿投山山頂。一等三角点もある。
誰もいない。静かなものだ。夕方の、ひんやりとした冷気を帯びた風が吹き渡っている。
時刻は、PM5:02。
見晴らしがあった。方角は北西~北。濃尾平野の東北部の淵が見える……そう、東海自然歩道が貫く丘陵地帯が正面。名古屋方面は、見えない。
……その景色を眺めながら、山頂で10分ほど呆けていた。何と言っても今日のハイライトはこの場所だ。西日も極まって、かなり寂しげな雰囲気に満たされてはいるけれど。
とりあえず、無事に山頂に着けたことを喜ぼう。じゃあ、気合を入れ直して下るか。
一気に下り始める。良く整備されて、歩きやすいどころか、走りやすい道。
途中、目と口が落書きされた岩があったのでブレーキをかけて立ち止まる。それは「カエル石」というものだった。なるほど。
さらに下ると小広い場所に出た。社が建っている。東の宮、らしい。
東の宮から正面に伸びている参道を下る。参道と言っても山道だ。
参道の最後に鳥居を潜ったら、車道に出てしまった。
小さな駐車スペースがあって、車が二台、停まっている。それと、公衆トイレ。
――愛知県コースでは珍しく、キレイで近代的な設備(?)のトイレ。
下山路は、車道を横断してさらに先に続いていく。道標によると自然観察路が左右に渡っているようだけれど、次に来ることがあったら歩いてみよう、なんてことだけ考えて黙殺。再度、山道に突っ込む。
駆け下る。疲れてはいても、下り道ならある程度継続して走ることが出来る。怖いのは、疲労のせいで踏ん張り損ねて転ぶことだ。下山で転んで転落して大怪我、なんてことになったら目も当てられない。体重は後ろ、慎重に駆け下る。
そして、ついに日差しも山際の向こうに消えていった。こうなると、明るかった森は一気に色を失う。
あずま屋と解説板のある地点を過ぎて、さらに下る。
ようやく下り勾配も緩やかになってくる。と、車道に出た。ここも横断。
さらに御門杉を過ぎると……。
また車道に出た。この先にはもう、山道は無い。残りの区間は車道歩きだ。
それにしても、今日のコースの山道率は素晴らしいものであった。優に8割はあっただろうか?
東海自然歩道の、特に支線なんかは8割ぐらいが車道のところもあって足裏が痛くなるのだけれど。やっぱり、国定公園に選定されたことの効用なのだろうか?
お倉岩を見て、「倉じゃなく鞍では?」なんて突っ込みを入れつつ車道を下る。先に、赤い水車が回っていた。トロミルって何だ?
さらに下る。広い駐車場があった。東海自然歩道のそれも含め、色々な案内図がある。その先が――猿投神社であった。
境内に入っていく。夕方の散歩をしている地元の人しか見当たらない。
猿投神社到着、PM6:08。今日の歩きは、ここでオシマイ。
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猿投神社から出ると、すぐに猿投神社バス停。便は少なく、4分後に来るバスが今日の最終便だ。もし遅れてこの便に乗れなかったら――たぶんタクシーを呼んでの帰宅になっただろう。
もちろん、駅まで戻れても終電に間に合わなくなる可能性もある。遠方の地で、こんな、リスキーな賭け。
バスが来た。乗り込む。
――でも、なんのかんの言っても、今日も無事に帰れることとなったのは事実。目的完遂は実際、明日への活力になっているのだろうと思う。だからハイクでもウォークでも、この達成感というのは大事にしたいと思う……たとえ、いつか失敗したとしても。
バスは走る。日が沈んで黄昏た郊外風景。愛知県の豊田市と言えば某・車メーカーのお膝元。
そして、到着したのは名鉄・豊田市駅。もちろん、初めて見る駅だ。思ったよりこじんまりとしていて、そうなのかと変なところで感心する。
さあ、帰ろう。そして、またここに歩きに来よう。