- 人気の山を越える -
【踏 行 日】2007年4月下旬
【撮影機材】OLYMPUS E-410, ZD14-42F3.5-5.6, ZD40-150F4.0-5.6, ZD50F2.0, CASIO EX-P505
愛知県コースも今日で2回目。木曽川を越えたところからカウントすると3回目となる。
――今年の春は、東海自然歩道歩きにラッシュをかけている。それも、ちゃんと前回歩き終えたところから歩き始めるような形でだ。
じつは、三重や岐阜のコースでは区間の幾つかをすっとばして先を歩いている。なのに、愛知県コースに対しては真っ向、ストレート勝負。
……何故か?
毎回、コース選定は季節と気分で選んでいるので、このような歩き順になった理由は正直、分からない。“たまたま”だと思う。
それにしても、今朝の空を見上げると見事な青空。4月下旬というウォーキングに最適な季節、どこを歩くにしたって気分良く歩けるに違い無い。
新幹線のぞみ号は名古屋駅のホームに滑り込んでいった。高速の旅はここまで。時刻はまだ朝7時前、寝ぼけ眼のまま下車。
中央線に乗換えだ。オレンジ・ラインの入った電車に乗車。――ようやく目が覚めてきたような感覚。
列車が走り出した。新幹線に比べると、ほんと“ゆっくり”と感じる。車窓は都会風景。さすがに日本第三位の都市、街区間が長い……。
ところが高蔵寺駅を過ぎると車窓に緑が一気に増えた。濃尾平野を突き抜けたのだ。右手に川の渓谷部――その車窓の“デジタルな変化”に背中を押され、やや慌てて降り支度を始める。
渓谷駅の雰囲気のある定光寺駅に到着。AM7:44。
数人がこの駅で下車した。自分も降りる。駅のホームを潜るトンネルを潜って、駅の外へ。
――つい20日前に来た時とは印象が一変。前回は雨の夕闇で、景色も色無く濡れぼそっていたけれど、今日は鮮やかな緑。まさに、春もたけなわだ。今日は山道の多い区間なだけに期待が高まる。
トコトコと歩き出す……と思う間もなく城嶺橋に着いてしまう。東海自然歩道との合流点。だけど、橋を渡らず前回歩いた春日井コースの入口ゲートに向かう。
……時の流れを感じさせるゲート。東海自然歩道を東から歩いてくる人は、このゲートをどういう思いで潜るのだろう?
引き返す。城嶺橋へ。右手、庄内川の渓谷が結構下の方に見えている。
←前のコースへ戻る |
AM8:00、城嶺橋を渡り始める。
左右の渓谷を見る――やっぱり、山奥にいるような錯覚。実際は、濃尾平野と多治見盆地のちょっとした境目に過ぎないのだけど。
橋を渡り切り、そのまま県道15号の信号を越えて進む。歩道を辿っていくと、すぐに右に「健康の道・11 健脚コース」なる案内。そちらに入る。もう、山道区間。
朝の散歩に最適だ、と感じさせる小路。実際、散策をしている人の姿もチラホラとある。太陽の方角へ進んでいるものの日の角度は浅く、周囲の濃い木々の葉のせいで道は結構、暗い。それでも、時折射し込む朝日の眩しさ。脇には、定光寺川のせせらぎ。
――10分ほど歩くと道が尽きた。眼前に広がるのは正伝池だ。東海自然歩道のコース入口案内板も立っている。
「コース入口まで10m」……そんな、コースが目に入るようなところに立てて意味あるの?
案の定、ほぼ同じところに道標も立っている。三方向だけれど、愛知県の指導標はオンコースが緑矢印で示されるのでありがたい。それによると……定光寺は0.3kmの寄り道とのこと。
もちろん寄り道を選択。正伝池を左から回り込みにかかる。
まだ新緑の残る季節、良い雰囲気の池、清々しい朝――これは、長居注意報を発令せねばならない。そう思い、足早に進んでいくものの……ネコに引っ掛かった。数匹いる。キャットフードがあるので、誰かが毎朝、エサをあげているらしい。
振り切って先へ。300mということは池の向こう側か、と思ってずんずん進むものの、車道に上がって道を失う。あれ、交差点? ――定光寺の標示はどこにもない。
地図を確認。行き過ぎたと分かる。実際は定光寺は池の北側の奥まったところに在るらしい……と言うことで、車道を歩いて戻る。少し雰囲気に任せて適当に歩いてしまった。
10分ほどロスして定光寺参道入口に到着。階段を駆け上がるものの――結構、長い。
山門を潜るとようやく定光寺の境内だ。木立が多くて見通しが悪いけれど、それが、いかにも山のお寺という感じ。時間帯が早いせいか参拝客はいない。AM8:45。
キョロキョロと見回す。……左側に展望地に上がる道があった。そちらへ。
あずま屋のある展望台。高度は200mほどで見晴らしも一方向だけれど、名古屋のビル群が見える。その先の青と水色のぼんやりした境界は……水平線だろう。三河湾だ。
定光寺境内へ戻る。参拝客の姿が見られるようになっていた。また長い階段を駆け下って、車道へ戻る。そのままバス停脇を抜けて正伝池へ。そして、東海自然歩道の先ほどの道標地点に復帰。結局、この園地では46分も費やしてしまった。ただ、もうちょっと居たかったのは確か。
コースの先へ歩き出す。ここからが今日の本番。まずは階段から。
広場を経てさらに進む。ほどなく車道に当たった。ここにはコース案内板が立っている
道標に従って車道を離れる。今度は木立のダート道に。周囲にはまだ朝の清涼な空気が残っており、道もフラット。快調に歩ける。……ただ、今日は昼間は暑くなるかも知れない。高度は無いとは言え、山岳区間なので飲み物は十分持参してある。
定光寺でやや時間を食ってしまったので足早に進む。周囲は雑木林から植樹林へと変わり、そう言えばスギ・ヒノキの区間がこのあたりではやけに少ないことに気付く。他の県のコースによっては、一日中、人工林ばかりだったりするのに……。
右手、木立の間から濃尾平野北部の見晴らしが得られるようになる。意外にも高度感があってびっくり。見えているのは――高蔵寺ニュータウン?
箕面から最勝ヶ峰へ登っていった最初の日、千里ニュータウンを見下ろした時とは随分と印象が違う。大阪平野と濃尾平野の持つ雰囲気の違い……そんなものがあるのだろうか?
車道に当たった。目の前には駐車場。東海自然歩道は車道に下りる直前で鋭角に左折して、再び山道を辿っていく。ここには定光寺自然休養林の解説板もある。
すぐに高根山の山頂に到着。……うーん全然、山に登った気がしない。日陰のベンチに腰掛けて休憩。すこし気温が上がって来たかも知れない。
先に進む。山道が尽き、車道に下りて行く。その先に人工物。なにかと思ったら、立体駐車場だった。反対側には3階建ての建物。水の抜かれたプール。――愛知県労働研修センターだ。
解説板も立っている。「設置目的:豊かで明るくゆとりのある労働者の生活の形成を目指し…」
労働者の研修センターが、なんで東海自然歩道の見どころポイントとしてあるのだろう?
すこし昭和っぽい香りがする。東海自然歩道が設置されたのは昭和49年。日本の高度成長が終わった年。
……そう、よく考えたら自分も立派な“労働者”。労働者のストレス解消に、今でも東海自然歩道は役立っている。その実例が自分なんだろうな。
「サンパレア瀬戸」の建物の前から山道に下りる。道幅十分の、整備された山道が再開。本当に愛知県の道は状態が良い。
さすがに、これほど快適な道だと歩く人も多いようだ。前方にハイカー発見。微妙にペースが遅く、抜かすに抜かせない状態で暫くお付き合いをしてしまった。まあ、あまり急いでも勿体無い道。
陸橋で県道207号を渡ると、そこには大洞峠の標示板が立っていた。峠っぽくは無い。
さらに進む。相変わらず自然の森の道で明るく、気持ちよい道が続く。道脇にはツツジも散見されるようになってきた。
……と、比較的フラットであった道が上り基調となった。少しは山登りらしくなってきたかな。
と、思う間もあればこそ、ほどなく勾配は落ち着いてしまった。……そう、未だに山道に“登り甲斐”を求めてしまう自分がいる。その意味で言うと、このあたりの道は「ぬるい」。とは言え、今日の終盤には猿投山が控えている。この前半ではあまり体力浪費しないようにするのが作戦としては正しいのだろう。
道がやや広くなった――と、思ったら、そこに山星山の山頂標示が現れた。脇のベンチでは休憩をとっている人達も。時刻は午前10:24。
……そのまま通り過ぎる。その後も比較的平坦な道が続き、やっぱり山の縦走路っぽくは無い。見上げると目に入ってくる送電線も、そう感じさせる理由の1つ。
とは言っても、コース上に植樹林帯が無いことは、やっぱり有り難い。キレイに枝打ちされ、整然と立ち並んだ人工林ばかりの区間は、自然の持つダイナミズムが不足している様に感じられるからだ。樹木がぐちゃぐちゃと絡まって、葉が乱雑に幾重にも被さっていながらなお“自然”に見えるのが、「森」と云うもの。
さすが国定公園、と言うべきだろう。なんか上から目線だけれど……。
車道に出た。日が良く当たっている、砂利と土の道。道標があって、先に続く山道を指している。道路を歩かせるということは無いようだ。さすが。
――このような愛知県コースの優等生ぶりに慣れてしまうと、他の県の人工林ばかりのコースを歩くのが苦痛になってしまうのではないか、と心配。
もっとも、東海自然歩道はあと1回歩けばとりあえずの目的地・香嵐渓に着く予定だ。そこから東へ進むのは止めて、すっとばしてきた本線区間や奈良・三重の山之辺支線コースを歩き回ろうかなあ、と考えている。だって、さすがに静岡県は遠い。何より、現地到達のための交通費が莫大。自分の経済的実力を鑑みれば、もう限界点。
……自分にそう言い聞かせながら歩いていることが、この頃、多いような気がする。
予想通り気温が上がってきて、日陰がありがたく感じられるようになった。少し、ヒノキ林も目立つようになったかも知れない。
宮苅峠では、いつもの木製公衆便所が現れた。……相変わらずレトロな作り。いったいこの設備に、どれくらいの利用があるのだろう?
便所だけでは無く、道標やベンチ休憩所も適度な間隔で現れる愛知県コースが、逆にちょっと怖い。
なにか、PAやSAが適時出現する高速道路に似ている。実際、愛知県は高速道路を設計するのと同じように自然歩道も設計しているのでは?と思えてしまう。人が歩く道も自動車が走る道も、結局のところ移動手段が違うだけで必要になるものは同じ……本当にそうなのかどうかは、まだ良く分からない。
宮苅峠を過ぎても緩いアップダウンの道は続く。そう言えば、大洞峠からこちら、「瀬戸市内でクマらしき動物の目撃情報がありましたのでご注意を」の貼紙が道標に付いているけれど、雰囲気が雰囲気なので、どうも“森のクマさん”をイメージしてしまう――コミカルなクマさんを。
階段の下りが少し続くと、車道に当たった。久しぶりの舗装道だけれど、車の往来は皆無。「稚児橋(国道)」標示が立つけれど、今は国道でも無ければ橋も無い。AM11:06。
林が少し続いた後、丘の上に上がっていく明るい道になった。シュロの並木も現れて雰囲気が明らかに変化。舗装道に出ても、シュロの並木もずっと続いていく。このまま車道歩きか……と思ったら道標が右折指示。山道を下っていくと、すぐに上半田川歩道橋。国道248号を渡り、もう1つ橋で川で渡ってダートの道を進むと――風景が開けた。
山あいの田園地帯。そこに、太陽がほぼ真上から燦々と照らし付けている。長閑、という言葉そのままの里風景。
田んぼ脇のダートの道を進む。白い手摺が続いていく。なんと言うか、これまで狭い視界の中を歩いてきたので、なんとなく気の抜ける道。
右側から川が近づいてきて、合流。蛇ヶ洞川だ。さらに、正面には集落が見えてきた。と、中平橋の標示板。この先は県道歩きらしい。
県道を進む。何も考えずに前に向かって歩くだけで、暇。愛知区間もこんな車道ベタ歩き区間はあるということだ。だけど、周囲の景色は新緑の山々、雰囲気は相変わらず。
金峯神社入口を過ぎる。両脇から山が迫ってきたけれど、民家も増えた。道標が右折を示したので県道を離れ、少し進むと山道入口。里区間は30分だった。
少し薄暗く感じる森の道。下るかと思ったら、山道は上へ向かって伸びている。峠のようなとこに出たら、一気に下り始めた。左手に神社を見て、車道に下り立った。国道363号だ。
ここには白岩町バス停も立っている。道標に従って左折、すぐに国道から逸れ里に下りる道に。
時刻はPM0:45。定光寺からの12.9kmの距離を3時間ジャストで歩いたということだけど、急いだ割には捗っていない。この先には500m級と800m級の山が控えているので、今のペースは最低限、維持したいところ。
白岩の市道から逸れて砂利道、さらに橋を渡って緑の道。林の道となって、車道に当たる。右折。
車道歩き……林道かも知れない。これはチャンスと行動食を摂る。3分ほど先で指導標が右折を指示した。東海自然歩道のコース案内板も立っている……ちょっと古い。あと、相変わらず「熊注意」の貼紙。
山道となる――これまでとは少し違う。今度のは山へ登る道、いわゆる登山道だ。
じつは白岩で高度300mくらいあったので、登るのは高低差200mほどでしか無い。
――それでも、ずいぶんとワイルドな道になってきた。森は深く、展望の開けるような箇所は無いものの、今の季節はまだ新緑が残っていて木々の葉が瑞々しい。それと、林床ではシダの若葉が一斉に立ち上がっている。さらに、春山ではお馴染みのミツバツツジ。
せっせ、せっせと登る。高度を得たせいか、頭上を覆う樹木の葉が少なくなってきた。
代わりに、目立ってきたのはマツの木。
499mのピークがこの区間の最高点。送電線が通っており、あまりそれっぽくは無い。ただ、東海自然歩道の指導標に、「←岩巣山」の落書きあり。
――そう、岩巣山の標高481mの山頂は東海自然歩道コース上には存在せず、少しの寄り道が必要。そちらに歩き出き出しかけたものの、やっぱり諦める。展望は猿投山に期待しよう……。
愛知県に入ってからこの方、高いところからの眺望というのに恵まれたことが無い。濃尾平野を見納めてから三河の山々に入って行きたいと思っているのけど、なかなか上手くいかないものだ。前回コースの弥勒山や道樹山あたりで得られれば良かったのだけど、雨にたたられてしまったし……。
なので今日がラストチャンス。
そんな思いとは裏腹に、たいした展望を得られないまま道は無常にも山を下っていく。
そして、「瀬戸大滝0.7KM」の分岐の立つところに立っていたのが――「岩巣山」の標示板。
標高360mほどの地点。本物の岩巣山山頂で無いことは確か。
――でもその先に展望の得られる場所があった。岩巣山展望台だ。ここからは一応、濃尾平野が見える。高度不足とは言え、まあこれで良しとしよう。
後はもう下るだけ。足がだいぶ草臥れてきたけれど、それを無視して駆け足で下っていく。
広場に出た。雰囲気が明らかに変わったのが分かる。
東海自然歩道のコース案内板や解説板が立っているのが目に入った。その解説板に書かれてあったのは――「岩屋堂」のいわれ。
そう、ここが岩屋堂らしい。人の姿もチラホラと見られる。ちょっとした観光地なのだろう。PM2:02の到着。
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