- 満願成就を目指す道 -
【踏 行 日】2007年7月下旬
【撮影機材】OLYMPUS E-410, ZD14-54F2.8-3.5, ZD40-150F4-5.6, CASIO EX-P505
梅雨が明けた。天気は絶好。
そして今日は平日。平日は滅多なことでは仕事が休めない。今回は半ば強制の休暇取得。もちろん休んだがために色々と余計な借金を背負い込む破目になったけれど……その返済も自己責任でと言うのだからやってられない。
いや、休みが嫌いな訳ではなくて。むしろ大好きだ。有休取得率を――5割とは言わないが――2割ぐらいに到達させたいというのは積年の夢であったりする。歩きたいところを歩くのには湯水のような時間が必要なのだ。
……とまあ、愚痴はさて置き。今日は、休日ダイヤではバスの便がどうしても合わなかったこのコースを選んだ。もちろん、本当は春か秋、ないしは雪の季節に歩きたかったけれど仕方が無い。で、「真夏に歩くのもたまには良くね?」と自分を騙してみた。暑さとの闘いになることは承知の上。
JR大垣駅からいったん外に出る。晴れ渡る空、しかしまだ朝の清涼感が残っている。この時間帯なら歩くのは問題ないのだけど……。
平日だけあって、通勤・通学客が多い。お隣、近鉄大垣駅に入るとちょうど電車が到着したところで、人でホームが溢れた。やりすごして、揖斐行きの赤い二両電車に乗り込む。
AM8:20、列車は動き出す。乗客は疎ら。濃尾平野北西部を北へ向かって突き進む。車窓にはたいてい池田山が映っていて、あまり変わり映えのしない風景が続く。平野部を進むため揺れも少なく眠気を誘う。途中、8駅に止まる間に乗客も次第に減って……終点、揖斐駅到着。AM8:44。
乗り換え時間は1分。駅を出ると、今にも発車しようとしているバスがいた。平日ダイヤにしか無い貴重なバス、逃したら大変!
乗り込む。背後で扉が閉まって、席に着くや否や発車。やれやれ。
乗客は7~8人。お年寄りばかり。コミュニティ・バスはお年寄りのためのバスという印象が強いけど、確かに……。
バスは揖斐川町の中心地を細かく回る。乗客の乗降もそれなりに多い。
だけど山間部に入ると人の乗降がハタと止まる。バスは揖斐川に沿って、国道303号を北方へひた走るのみ。長いトンネル2つ抜けると終点の東津汲。AM9:17。
料金¥200を払って下車。この路線が名阪近鉄バスであったころより劇的に値下げされている。揖斐川町の予算から出ているのだろうか?
東津汲は山あいの町。久瀬地区という方が通りが良いかも。
山があって揖斐川が流れる。でも、乗車時より気温は上がったように感じる。今日の暑さとの闘いは、逃れられない模様。
久瀬橋に向かって歩き出す。すぐ、東津汲交叉点。ここでは土産類が売られ、その脇はトイレと観光案内図。東海自然歩道の指導標はさらにその脇、久瀬橋の袂。
ここで準備をしっかりとする。日焼け止めも肌が青白くなるくらい塗りたくる。飲み物は……500mlを2本、350ml1本を自販機で購入。あとは駅で買ったお茶がいくらか残っている。小津や横蔵寺での途中補充を見込んで、この時期としてはやや少な目にしてみた。大丈夫だろうか……。
さて行くか、と東津汲交叉点の横断歩道で信号待ち。正面には久瀬村役場の建物、「'07/07/28参議院選挙」の垂れ幕。
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東津汲、AM9:31出発。小津川の桜並木を右手に、県道268号を東へ向けておずおずと歩き出す。
高知川――やがて小津川と名を変える――を見ながら歩く。その川面は清涼で涼しげ、ではあるのだけど。やっぱり、それぐらいではこの暑さは相殺できない。早くも暑い。本当にこんな熱波の中、歩いていけるのだろうか?
カーブを曲がると巨大な鉄管が見えてきた。潜る。本日のスタートゲートだ。――とにかくスタートしてしまった以上、行けるところまでは行くさ。
車道は二車線で、とても歩きやすい。ただ、落石には注意する必要がありそうだ。
道なりに暫く歩いていくと……
小津トンネルが現れた。右に、おそらくトンネル開通前の旧道であろう、川に沿ってさらに続く道が分かれている。
そして「木天蓼橋411m→」の標示。いったい、どんな橋なのだろう?気がそそられる橋名である。どちらにしても東海自然歩道の道標はそちらを指し示している。
木天蓼橋はコンクリート製の橋であった。吊っていないため、上を歩いていると風化して崩れ落ちるのではないか、という心配すら感じる。おそるおそる対岸に渡ったものの、そこの小広場は草ボウボウで一休みすることも叶わず。先に道も無いので、寸詰まり。そのまま引き返すしかなかった。
ただ――橋の上から見た渓谷は、秘境じみていて美しかった。
小津峡谷遊歩道から再び県道に合流。小津まで1kmとある。
再び我慢の県道歩き。この暑さでは急くこともできない。気温はいったい何度くらいあるだろう? 30~35℃の間であることは確かだ。
そういえば、揖斐地方というのは夏の暑さでは有名どころではなかったっけ、なんてことを今頃思い出す。
小津集落に到着、AM10:23。
飲料自販機があるのが見える。よし、ここで飲料補給だ、と思いきや。近づいてみると、そこには「故障中」の貼り紙。しまった……。
――夏に町歩きをする場合、途中途中での自販機飲物補給を基本にしている。出来るだけ冷えた飲物にありつきたいからだ。
今日も、この地点で最終的な飲物補給を予定していたのだけど。完全にアテが外れてしまった。持参分だけで足りるかなあ……。
足りないよなあ、と思いつつも集落を進む。道標があって、右折を示している。「花房の滝」解説板もあって、直進15kmとある。そんな寄り道は不可能。
コース本線の標示に従い、小津川を渡る。
橋を渡ったら右折、すぐに右側に階段があった。洞泉寺だ。
階段を上る。辿り付いた洞泉寺の境内でしばし休憩。やはり土の地面と緑の木陰は、気分的に涼しく感じる。アジサイの花も、まだ残っていた。
さてここから、下辻谷沿いの道となる。
田の広がる下辻谷を上り詰めていく。
――アスファルトに熱が篭っている。昼時も近く、太陽はほぼ真上から燦々と照らしつけてくる。気温は35℃くらいあるんじゃなかろうか……。山に入っていくにつれ涼しくなっていくことを期待していたのだけれど、夏場の歩きはそんな生易しいものじゃ無いのは分かっていた筈。
辛い車道歩きが続く。と、前方にあずま屋が見えてきた。
あずま屋に着く。そこは、下辻谷第二砂防ダムの前であった。AM11:17。
このようなところにこのようなものがあって大感謝だ。まあ、滝でなくて堰だけれど、この状況だとどちらでも構いやしない。水飛沫とマイナスイオンを浴び、とにかく身体をクールダウンさせる。
叶うなら、ずっとこの場所にいたいのだけれど。
……そういうわけにもいかない。後ろ髪を引かれながら灼熱の歩きを再開。ただし、この先から待望の山道が始まる筈。当然、木陰の道となるだろう。この陽射しからは逃れられる。
180°ターンして、ついに舗装路は終わった。その先は草の生える道となる。よし、まずはアスファルトの蓄熱からは解放された。
そして、道脇に登山警告板が現われた。登山口、というか峠道の始点。ようやく、本格的な山道が始まる。ここまで、ざっと2時間のアプローチ。長かった……。
ところが、草の地面に足を踏み入れた途端、ムワッと湿気の多い空気が襲ってきた。
沢に絡みながら登っていく。とにかく水気が多い道。ヒル出没とあるのも、さもありなん。立ち止まるのは怖いので、頑張って登る。
そのせいもあって、期待していたよりは涼しくなってくれない。確かに日射が無い分、楽だけれど、身体の方はヒートアップしたままだ。でも、高度を100m上げたら0.6℃下がるんだっけな……と、そっちへの期待をし始めるものの、今はまだ午前中で昼に向けて気温が上がり続けるのだから、結局相殺か、なんて気付いてガッカリする。
――どうも、熱気のせいで頭の方もちゃんと回ってくれない模様。
道は、一部草地と化しているところもあったけれど、それほど酷くは無い。
傾斜も急になって、僅かながら上空が開けるところも出てきた。ほとんど休み無しで登ってきたものの、湿気も少なくなったのでところどころで立ち止まって小休止する。そして――
下辻峠、AM11:55到着。
稜線道だろうか、砂利の車道が左右に渡っている。よし、ここなら大丈夫だろう、と道の真ん中、乾いた地面の木陰に腰を下ろす。
地図を広げて、しばし休憩。……と、右足に刺す痛み! あわててズボンを捲くると、ヤマビルが厚手の靴下の上から踝に食らいついていた!
弾き飛ばす。他にも2匹ほど靴に取り付いていた。ここまでの道で靴に取り付かれていたのか、それともこの峠で休んでいるうちに取り付かれたのか。まったく、油断大敵だ!
というわけで、ゆっくり休んでいることも出来なくなった。うーん、地面が乾いていてもダメなのか、この相手には……。
横蔵寺側に降りる下山道――草にほとんど隠されていた。下りていって大丈夫だろうか? でも、進むしかない。幸い、山道は最初こそ草に隠れがちであったけれど、すぐに状態は良くなった。まあ、これならば安心して下れる。
……と、思っていたら。いきなり藪道になった。道も細く、安易に草むらに足を出すと道を踏み外してしまうような箇所も多くなった。
やがて、ヤブで進むべき道筋が完全に分からなくなった。
でも、立ち止まって思案していると、またヒルに取り付かれそうだ。これまた、随分と厳しいなあ……。
とりあえず進むしかない、と、勘で方角を決めて進む。指導標が比較的多く設置されていたので結果的に道を外すことは無かったけれど、最後は腰まで草に埋もれながらの進軍となった。夏だから草が育ったというより、長い間整備されていないような感じだ。
なんとか明瞭な道に出る。最後には砂防ダムを右手に見ながら、沢沿いの穏やかな道を下る。
養魚場の脇に飛び出した。その先で待望の車道に飛び出す。……あれ?待望すべきは山道じゃなかったっけか?
道筋にもヒルにも気にしなくて良い舗装車道。そしてそれは、同時に灼熱のアスファルト歩きが戻ってきたということも意味する。しかも正午を過ぎて、気温はこれからピークに上り詰めようとする時間帯。
それでも、ひと山越えたという気分のせいなのか、いくぶん熱気は冷めているようにも。
車道を下っていく。
やがて、幾らか広々とした場所に出た。橋を渡った後、道標に従って右折する。
すぐに車道は二手に分かれた。そのまま山べりを進む道と川べりを進むやや細い道。道標は無い。……どっちだ?
エイヤと細い道の方を選ぶ。ただ、川のせせらぎは心地よいものの、日陰が全く無い暑い道。
300~400mほどで元の道と合流。そこには道標があって、進路は山べりの道を指し示していた。残念、外していたか……。
遠くに集落が見えているけれど、なかなか近付かない。そして、だんだんと思い出してきたかのように気温が上がっていくのを感じる。
ようやく集落に入ると、T字路に突き当たった。ここの標識によると、今まで歩いてきた道は「県道268号線」であったらしい。そういえば東津汲側も268号であった。下辻峠の中断区間を越え、ここまで延々と続いていたのだ。
左折して県道267号に入る。上神原集落の家々。
前方、広い駐車場が見えてきた。バスも止まっている。横蔵寺だ。PM0:55到着。
――ただ、暑さのせいだろうか、参拝客の姿はほとんど無い。ファミリーが一組ぐらい。
そして店の前には待望の自販機があった。それも2つも! と、喜び勇んで駆けつけてみると、そのうち1台は故障中だった。危ない、危ない。
500mlペットボトルを3本ほどを買い込む。そして、休憩舎の日陰へ退散し、冷たい炭酸飲料片手に至福のひと時――。
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