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東林寺白滝を見物。えっと、たしかこの滝には云われが……。
なんて思い出している時間もあればこそ。境内を駆け回って5~6分で東林寺詣り終了。正直言って、少し焦り出した。なにしろこの季節は、あと3時間ほどで暗くなってくる。それなのに、まだ峠のこちら側というのは結構、気が焦る状況。
先ほどの分岐に引き戻る。PM1:44、改めて川原越えに向けて出発。……ここまではぶっちゃけ、ウォーミングアップ区間。今日の歩きの本番はここから始まる。
今日、初めてまっとうな山道となった。また気まぐれに陽射しも戻ってきて、西側斜面ということもあって明るい森の道となる。
ただ、勾配もそれなりにあるので、暫く頑張って登っていると息が切れてきた。秋も押し詰まって来ているとは言え、昼間のうちは、存外、気温は高い。
自然多き道を気分よく登っていく。道幅も十分あるし、整備も悪くない。周囲は、多種多様な樹木が織り成す雑木林。
……やっぱり、山登りはこういう道でなくっちゃ、と思う。
と、樹林が切れたところには、路面にシダが広がっていた。別段、歩くのに支障はない。
ただ、さすがにペースは落ちてきた。日没は養老山地の向こう側のどこかで迎えることになるだろうけど、まあ、山の中じゃないので危険はないだろう、と少し甘い考えになる。
なにしろ、東林寺から本日の最高到達地点まで、高度差500mの一気登り。これまでの平坦な道のりで体力は十分に温存できた、と思いたかったけれど。実際は、たいして温存されていなかったらしい。足に疲労を感じる。
上り一辺倒であった山道が変化を始めた。アップダウンしながら上っていくようになる。途中には林道も現われた。
次第に、周囲の景色も開けていく。残念なのは、途中までは自然林であったのに、高度500mを越えたあたりからヒノキの植樹帯となったこと。山の上の方では紅葉が見られるかも、と思っていたのに、これじゃあ無理だ。
と、あずま屋が現われた。このあたりが713mピークだろうか? ちなみに、川原越の峠は、もっと低いところにある。
眺望も開けている……のは確かなのだけど、手前のヒノキ林が邪魔で周囲があまりすっきりと眺められない。そもそも今日は気象条件も良くなく、山々の稜線がぼんやりとしている。
道は一気に下り始めた。
……というか、猛烈に下り始めた。ここまでせっかく獲得した高度が、どんどんと失われていく。もちろん、眺望はあっという間に無くなった。しかも地面は苔むしていて、スリップが怖いほど。
結局、僅か15分で200mほどの高度を失ってしまった。
はっきり言って、峠越えの道のなのにこんなに下るとは思っていなかった。事前調査不足だ。
コンクリ橋を渡ると登奈井尾林道に出た。ここを右折、勾配は再び上りへと転じる。
……心情的には林道よりも断然山道なのだけど。この時点でかなり足が消耗してしまっているのが分かる。林道で緩く上っていけるなら、そっちの方が良いのかも、なんて思う。
丸木階段を上っていくと、左右に渡るダートの林道へ出た。右折、少し進んで左折、短い階段を上る。――そこが川原越であった。PM3:14。
さあ、向こう側が岐阜県、そして愛知県へと繋がる濃尾平野だ。ただ、峠から東への展望はほんの僅か。その僅かでさえ白くかすんで、はっきりしない。
そんなことより問題なのは……
問題なのは、その岐阜側への下り口に「立入禁止」の文字が躍っていることだ。ロープも渡っている。1つ好材料があるとすれば、そのロープが地面に落ちていることくらい。一時的に通行可となっている可能性。
さあ、どうしよう?
この時点での通行止めは考えていなかった。うーん、またもや事前調査不足だ。とりあえず登山道案内板を見て、エスケープルートを検討。
……尾根縦走路に入って暫く登り、岐阜側に伸びる尾根の下山道を捉えて山を下りるのが妥当だろうな。ただ、下山途中での日没必至の上。川原越からのハンパな歩き残しも出来てしまう。
せめてコースの状態が分かれば……と迷っていると、数人のハイカーのパーティーが峠に到着。そして、なんとそのまま岐阜県側に下りて行くではないか!
この人たち、こんなデカデカと書かれた「通行止め」が目に入らないのだろうか。それとも、このあたりを歩き慣れて道を良く知っている人達なのか……。
ここは都合よく、後者と推定。
沢道なので、崩落地の迂回は辛いことは覚悟。暗くなってしまったら、それこそ迂回は不可能だ。無理に突っ込めば、転落や滑落をしかねない。
でも、先行パーティーは悠々と下りて行く――頼もしい。10分ほど下ると、明らかに道が荒れ始めた。先行パーティのペースがたちまち鈍る。あれれ?
「ああ、先に行って下さい」しかも前に出されてしまった……。
確かに崩落箇所があったし、それを修繕中のところもあった。ハイクコースとしては通行禁止は妥当だろう……なんて思いながらも、スタスタと下りて行く。このくらいであればバリエーションルート・レベル。要所を押さえればリスクはさして無い筈。
――と、余裕ぶってみせるものの、日没が迫っているせいで気は結構焦っていた。崩落地が一部のみであったことが幸い。
通行止め区間が終わった。トラロープの向こうに出て正常復帰。それにしても、先ほどのパーティーは大丈夫だろうか?
コースは左に曲がり、山腹をそのまま辿るような道筋になっている。ただ、そうもそちらはどうも道が細いように感じられる。
……大丈夫だろうか?
案の定、道は荒れていた。どうも、あまり人が通っていない、ないし整備が長いこと行われていないような感じだ。しかも、山腹の水平道ではなく、平野側に延びる小尾根の筋に沿ってアップダウンを激しく繰り返す。
その度に体力が奪われていく。屈折が多い割りに道標が少なく、迷うようなところもあった。
だいぶ高度を下げてきたきれど、相変わらず林の中。それに、何が大変かというと道の状態が一定では無いこと。歩きやすい幅広の山道もあれば、道かどうか分からないようなヤブった道もある。道標も「養老7.05km」と0.05km単位で標示する真新しいものもあれば、あって欲しいところに無かったり。
神経を使う道手繰りが続く。
そろそろ日没時刻だ。曇り空なので、気付かないうちに段々と薄暗くなってきている筈。
あずま屋を通過。――じつは一週間前、岐阜県の鍋倉山コースを気まぐれに歩いていたりするので、今日が岐阜県コース2回目。思うのは、岐阜県は東海自然歩道の初期整備はしっかりしていたようだけど、その後の整備が行き届いていないような感じ。
ちなみに、岐阜県では行先標示板のついたしっかりした木製指導標が立っている。三重県のプレート標識より、やっぱりこっちのが本来の東海自然歩道の道標だ、と感じる。
――でも、そんな道標でも朽ちかけているものも多い。なかなか、メンテ予算が付かないのだろうとは察するけど……。
再び草で覆われ不明瞭な山道となる。抜けると、砂利の林道に出た。ただ、そこに立つ指導標が指し示しているのは、どう見ても草やぶの空間。
このまま林道を歩いていって迂回した方が良いのでは?と思うものの、方角が合っているとは限らない。仕方なく、周囲に比べるとやや密度が薄くなっているヤブに突っ込む。それでも、ヤブ漕ぎ2級程度か。道筋は分かる。
もうアップダウンはだいぶ落ち着いた。人里の直ぐ近くなのだろうと思うけれど、進む道は山の中そのもの。伐採された倒木が道を塞いでいるような箇所もあった。
――今日は、川原越下の崩落地が最大の難所かと思ったら、じつは真打はその先に控えていたというわけだ。箕面からここまで東海自然歩道を辿ってきたけれど、ここまで放置された区間は初めて。
と、いきなり森を透かして建造物が見えた。もう、人里は目と鼻の先じゃないか!
時刻を確認、もう5時を過ぎている。これから急速に暗くなってくるだろうけれど、いざとなれば人里にエスケープ出来そうだ。少し、気が楽になる。
次に現われたのは今熊谷。ここも伏流のようだ。砂利面に下りて横断。注意標示板もあるけれど、確かに降雨時には鉄砲水が怖い。
養老町のひょうたん道標があった。これは個性的。
「川原越え通行止め」とあるけれど、三重県側にそんな注意表示、1つも無かった。県間の連携が無いのは困るよなあ、と自分の調査不足を棚に上げて責任転嫁。
その先で広い草地に出た。明かりの灯り始めた濃尾平野が見える。草地を横断すると、ようやく人里に出た。若宮の集落だ。
よし、今日はいけそうだ。
じつは足が棒のようになっている。川原越からこちら、道筋を辿るのが精一杯で足を気遣う余裕が無かったせいだ。だから、久しぶりの車道歩きで楽させてもらおう……と、そう思っていたら。
コースは集落を回り込むように進み、集落外れで示されたのは再び山道。……いや、そりゃあ山道は良いのだけどねえ。進む方向が明確であるならば。
確かに進む方角は単純だ。養老山地の山裾を、北へ向かって一直線。コース通り辿らなくて良いなら、コンパス使って楽に進める。でも、ここまで来たらやっぱり、コース通りに辿りたいし。
小倉谷を渡る。闇で足元が良く見えず、怖い。谷の先で車道に出て、左折が示される。歩いていくと――赤岩神社。PM5:30。
コース案内板が立っていた。「1,370kmバージョン」の東海自然歩道コース案内板だ。それと、石造りの公衆トイレにも案内板が張り付いている。そっちには「養老孝子をたずねるみち」というコース名も書いてあった。岐阜県はコースに名前を付けるのか……。
いよいよ、今日の目的地、養老公園が近づいてきた。ここからは急がずじっくり辿ろう、とザックからヘッドランプを取り出す。それと防寒着も出して着込む。
さて、進む先はどちらだ、と道を探る。――こっちか。
道をヘッドランプで照らし出しながら、注意深く歩いていく。今日は月も星明りも無いので、周囲は本当に真の闇。――山の闇歩きは「慣れる」ということが無いように思う。そこは既に人の領域ではないのだから。
と、人工の明かりが見えた。京ヶ脇集落だ。ヘッドランプをいったん消す。
道標を辿って集落の外れまで来た。神社があるのだろうか、鳥居があって、そこから細い車道が北へ向かって伸びている。PM5:51。
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ランプを再点灯、養老公園への最後の区間に入る。
車道を、ただ、ただ真っ直ぐ辿る。道脇は森のようだけれど、闇の中でよく分からない。
ところが途中から雰囲気が変わった。木立はあるものの、空間的に開けたみたいだ。右側には濃尾平野の街明かりさえ見える。たぶん、養老公園の領域に入ったのだろう。
もちろん、ひと気は全く無い。夏であればまだ夕暮れにもなっていない時刻なのだど、今は中秋。ちょっと寒い。それに追い討ちを掛けるかのように、雨も降ってきた。
歩いていく。前方に橋が見えて来た。――近くにあった公園案内図で確認する。どうやらこれが不動橋らしい。今日の目的地だ。ようやく到着した! PM6:03。
コースを離脱。東に転回して養老駅を目指す。雨は大したことなく、やがて止んでいった。
坂道を下る。だんだんと、町の雰囲気が濃くなってくる。県道56号を地下道で潜ると、近鉄・養老駅に到着。PM6:17。
――さあ、これで東海自然歩道も関ヶ原まで一区間を残すのみとなった。今年中に一気に終わらせてしまえるメドが立ったということだ。養老公園は紅葉の名所、来月にでもまた歩きに来るか。