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三重県民の森~尾高観音~福王神社~宇賀渓~新町~東藤原

自然観察道
県民の森の「自然観察の森」入口
四日市市街
展望台広場より四日市市街
秋の予感
秋の予感

PM2:00、三重県民の森の自然観察道入口。

このまま車道を歩き続けるのがコースなんだけど、さっき親切なオバちゃんに「東海自然歩道歩いているの? あら、そのガイド本はあたしの持っていたのより新しいわ、とりあえず車道じゃつまらないから少し行った先の小道に入りな、遠くまで眺められるし」なんて言われたからだ。走っていた車を止めてまで助言を与えてくれたオバちゃんのご好意に甘え、観察道に入る。

意外ときつい登り道。というか山登りだ。勾配が緩んで、展望広場。たしかに、伊勢湾まで見える。

県民の森の小径
県民の森の小径を進む
尾高高原
車道に出る。尾高高原だ

下って東海自然歩道に復帰。距離的にはショートカットだったけど、ひと山越えたので時間節約にはなっていないかも。

すぐに林間の山道へ。


 


コンビナート
湾岸部の工業地帯を望む
ヘアピン
旗は「尾高高原」「中日新聞」「中スポ」等

下り道。そして車道に出た。尾高高原、なのだけど下って到達したので高原という感じはしない。

なぜか道は三角旗で囲われている。

車道をさらに下る。

三角旗
「中日新聞」の道標
迂回路
迂回路?

左折して、再び山道。下生えで道が隠れそう。

途中、「迂回路」という標示が現われたけれど、特に本線らしき分岐は無かった気がする。

音無川
音無川を渡る
尾高観音
尾高観音・六角堂。聖徳太子作と言われる千手観音像を安置

また車道に出た。音無川を橋で渡る。

林に入ると、前方に神社風の建物が現われた。神社風、ではなくて尾高観音だ。尾高山引接寺、と書いているので、お寺なのだろう。

ヒノキ林に囲まれた安息地。誰もいない。


 


尾高観音参道
尾高観音参道。樹齢300年の檜が立ち並ぶ
小路
参道から分かれていく小路
参道入口
参道を振り返る。手前、観音橋

ちょうど日が照ってきた。

――その光を受けた参道の佇まいが素晴らしい。まるで異世界へ続くトンネルのよう。


歩き切って振り返る。去りがたい道。

中の道
中央分離帯(?)を歩く
尾高駐車場バス停
菰野町コミュニティバス尾高駐車場バス停

車道に出た。駐車場があって、その脇に東海自然歩道のコース案内板が立っている。周辺図だけれど縮率が良くて、見やすい。

ふたたび車道歩き。ただ、途中から車道の合間の緑地帯を進むようになる。東海自然歩道の道としては珍しい。


 


分岐
直進注意。直進すると1.5kmで尾高口バス停
尾高山
尾高山。標高533mの低山

途中には丸太のベンチなどもあって良い感じなのだけれど、残念ながら左折しろとの道標が現われた。

左折して、細い車道に入る。一瞬、空間が開けたけれど、ほどなく深い森の中へ突入する。

木漏れ日の道
森の中の木漏れ日の道
ダート
根の平付で舗装道からダート道に逸れる
杉谷
杉谷の雑木林の道。車両進入不可

とても車など入ってこないだろう、という舗装道。実際、岩とコーンの車止め(?)も現われた。アスファルトにはヒビ。草も生え始めている。まもなく、この道は緑へと帰るだろう。

そんな道を暫く歩いていくと、幾分、人里の雰囲気が出てきた。やがて向こうに集落が見えてきた頃、再び深そうな森の中へ。

八風の大岩
八風の大岩
車道
車道

セミの合唱が姦しい……。アブラゼミにミンミンゼミにツクツクボウシ。本当に自然の森だ。道幅は十分に広く、ガンガン突き進める。西日には夏の名残を感じさせる熱っぽさ。

ただ、今までコロコロ変わっていた景色がここに来て代わり映えしなくなった。

PM3:26、ようやく八風の大岩に到着――この岩に、上ってみたい気がする。バチ当たりなので、やめておく。


 


百合
ユリが咲く
切畑バス停
菰野町コミュニティバス・切畑バス停

車道に出た。少し進んで左折、緑地帯をちょっとだけ歩いて橋を渡ると、そこは切畑の集落であった。久し振りに集落らしい集落だ。バス停も立っていた。もっとも、時刻表に示されているのは1日に上り、下り2便ずつ。

わずか2分で集落を歩き抜け、眼前に広がったのは田園地帯。その中を真っ直ぐ道が貫いている。

切畑の田園
切畑の田園地帯を往く。真っ直ぐな道
平野
菰野~四日市の展望
棚田
几帳面に並ぶ棚田

ちょっとした高台に拓かれた棚田。景色も良く、スキップしながら歩きたいような道。

――まあ、さすがにスキップするような気力は無い。なにせ今日はロングコース。夏の蒸し暑さの中、なんとか3つ峠を越えてここまで来た。最初の林道から鎌ヶ岳の鋭鋒を見たのがもう、今日のことで無いような気さえしている。

ただ、まだ1つ峠越えが残っている。体力をなんとか温存して臨まねば。

途中、田園の中のT字路を左折。伊勢湾を後に山へ向かう。

山道
山道の暗がりへ突入
シダの道
シダの茂る道

森に突入。ちなみに林でなくて森が多いのは、このコースの美点。

普通の山道を進む。最後の峠を目指して、登り一辺倒。


 


福王神社分岐
福王神社分岐。神社までは0.4kmの寄り道
福王神社参道
福王神社参道。標高差50m以上の階段

林の中で三叉路にぶつかる。道標が立っていて、コースから外れたところにある福王神社へは0.4kmとある。

ちょっと躊躇する距離だ。日没まで時間も余り残されていないし、と思いながらも既に足は福王神社へと向けて歩き出している。まったく、身勝手な足だ。

福王神社
福王神社

神社前に出る。鳥居と、東海自然歩道案内板。久し振りに「この歩道は東京の…」から始まる文句を見た。総延長距離は1,350kmとある環境庁バージョン。

さて、ちょっくら本殿に詣でてくるか、と鳥居を潜る。――階段が天へ向かって伸びている。軽く眩暈。

「0.4km」に騙された! 垂直方向の距離までは知らされてなかったぞ、と文句を言いながら長階段を上る。峠越えのためとっておいた体力を使い果たす勢い。

本殿到着。賽銭を投げ込んでとんぼ返り。

アジサイ
アジサイ
宇賀渓水晶吊橋は
「水晶吊橋は……れません」

分岐の戻って通過、峠へ向かう。

……と、禁煙看板に貼り紙。水晶吊橋は……れません、って肝心なところが消えている。まあ、「渡れません」なんだろうな、と思いながら足早に突き進む。吊橋が渡れなければ渡渉。キャンプ場が脇にあって渓流遊びも出来るというのだから、沢へのアクセスぐらい出来るだろう。


 


福王山の巻き道
福王山の山腹の巻き道
福王山
たぶん福王山。標高598m
宇賀渓
宇賀渓の沢道になる

峠と言っても、基本、福王山の山腹巻きの道なのでスピードは出る。ほどなく、峠だろうと思われる箇所を通過して道は下り気味になる。ただ、暗い。その上、夕方の蜘蛛が巣を張りに来ているのか、やたら蜘蛛の巣に突っ込む。最初は視力によってそいつを見分けて避けてやろう、と意固地になっていたものの、途中で潔く敗北を認め、長い木の枝を前方に振りかざしながら歩くようになる。

八風牧場跡、と思われる草地をいくつか通過。道脇に綺麗に縁石が並んでいるところもあったりして、微妙な整備具合。

東海自然歩道のイラストマップが立っているのを見て、さらに10分ほど進むと吊橋。かの水晶吊橋だ。

宇賀渓水晶吊橋
宇賀渓水晶吊橋
水晶キャンプ場
水晶キャンプ場
宇賀川沿いの小道
宇賀川沿いの遊歩道

ふつうに渡れる。注意書きらしきものは一切無し。なんだ、ガッカリ(?)だ。

吊橋の上から見下ろす宇賀渓は――緑に埋もれそう。

渡り切って、水晶キャンプ場。……家族連れがキャンプの真っ最中、夕食の準備の活気のある場面だ。

なんだ森から出てきたこの人は……と思われながら(想像)、その只中を歩き抜ける。なぜだか恥ずかしい。

暫く林間の小道、というか遊歩道。川下方向、つまり人里のある方角へ向かって進む。もう明かりの欲しい暗さだ。でも、まだ出さない。


 


登竜荘
国民宿舎・登竜荘
国道421号
国道421号・八風街道

林を抜けると前方に建物。そのすぐ傍まで接近して、舗装道に出される。歩道つきの立派な車道、国道421号だ。そして、この建物は国民宿舎・登竜荘。近くには宇賀渓遊歩道案内図が立っている。一帯は遊歩道やハイクコースが整備されているのが分かる。「砂山」にはちょっと登ってみたい。

それと、ここにはトイレもある(らしい)。

車道
ひたすら車道
宇賀川
宇賀川。だいぶ下になった

国道からはすぐに離れて、静かな細い車道に入る。車の往来は無く、緑がガードレールを越えて溢れている。

特に見るべきものも無く、淡々と歩く。夕方になって気温も落ちてきたのか、Tシャツ1枚ではやや涼しすぎる感じに。

国道のアーチを見上げながら落合橋を渡ると、再びその国道に合流。

車道の歩道
石榑(いしぐれ)は石榑茶の産地
寺尾児童公園バス停
大安町福祉バス・寺尾児童公園バス停?
おやすみ所
東海自然歩道おやすみ所

国道歩き……それも30分に達しようかという頃、ようやく寺尾集落に入った。辺りは一気に人里らしい雰囲気になる

バス停のY字路を道標に従って左へ。国道ともここでオサラバだ。

すぐに「東海自然歩道おやすみ所」。3つの岩と3本の丸太と小さな松――ここで休まない理由は無い。よっこらしょっと丸太に腰掛け、アスファルトの地面に打ち付け続けた脚を労わる。

ところで寺尾児童公園って、あの柵で囲まれた四角い空間のことだろうか? 端にブランコと滑り台があるけれど、中央にはでん、とゲートボールコートが居座っている。


 


北山の山道
石榑の田園地帯の端から闇の中へ
石榑北山
石榑北山の山道

ゆっくりもしていられない。再び歩き始める。最初は田園地帯。

……次に山道。山麓を北上する。午後6時を過ぎて、いよいよ本格的に暗くなり始めた。木々が濃いところでは足許も良く見えない。

仕方ないからヘッドランプを出そうか、と思うと森が切れ、右手に田園が広がった。前方には石榑北山の集落が見える。

黄金橋
青川に架かる黄金橋
手繰る
細かい道を手繰る

とにかく、道が細かい。いちおう要所には道標があって迷いはしなかったけれど、夕闇の中で道標を見逃す恐れが足をさらに早くさせる。なにしろライトの灯かりで道標を照らし出せるかどうかは、ほとんど運となるからだ。

急いだ甲斐あってか、首尾よく黄金橋に辿り着けた。PM6:22。

黄金橋の上流
黄金橋から青川上流方面。

橋を渡る。見晴らしが良い。晴れていれば、竜ヶ岳~藤原岳の鈴鹿山脈稜線が見える眺望だけれど、今日のところはお預け。次の機会を待とう。

渡り切って左、新町の集落へ。


 


夜の道標
道標は必要十分

新町の集落を通り抜ける。コースを外れ、近くの奥村バス停まで行ってみたけれど字も読めない暗さ。引き戻って、コースを消化することに徹することにする。

ここで遂にヘッドランプを取り出す。林の中の車道を道を照らしながら進む。何も無い、真っ直ぐな道。というか、暗くて周りに何があるのかも良く分からない。

――国道421号も長かったけれど、この道も長い。暗さが輪を掛けている。もし近くに駅があったら、そっちにエスケープしてしまったかも知れない。でも、ここから一番近い駅は東藤原駅。今日の目的地。

三岐鉄道ガード
三岐鉄道&県道ガード(車両用)を潜る
灯かり
辺りには灯かりが少ない

暗闇の中から突然、三岐鉄道ガードが現われた。明かりは無い。ただ、線路と並行している県道に、時折、車が往来する。

ともかくガードを潜る。……向こう側に出て、迷う。ガイド本を取り出して見ると、実は車道とは別に歩行者用のトンネルがあるらしい。ただ、この闇の中では判別不可能。

車と鉄道
遠方、三岐鉄道の列車が横切っていく

ともかくコースの見当を付けて、そちらに進んでみる。

正解だったようだ。道標がランプの明かりに浮かび上がる。ただこの先、コースを拾っていけるかかなり不安。現在位置は把握できているので、線路沿いを辿れば駅への到達には問題ない、と自分を落ち着かせて、とにかく注意深く道標を探しながら進む。周囲が開けているのは幸いだ。

――何度か道標を捉え、何度か道を曲がる。綱渡り。

東藤原
東藤原。集落名としては"別名"か

集落に入る。名前はよく分からないけれど、ともかく東藤原駅付近の集落だ。民家が密集しており、街灯もちゃんと付いているのが安心感を誘う。ただ、死んだように静か。

集落の中ほど、ゴミ捨て場(?)の横に東海自然歩道の標識。コースはこのまま真っ直ぐ、の緑の矢印だけど赤い矢印で「迂回路」左折の標示。位置から考えると、この迂回路が東藤原駅に抜ける道なのだろう、と判断してコースから離脱することにした。

次は、朝、この場所から始まるはずだ。少しの間、なんの変哲の無い路地を眺めやった後、道を曲がる。PM7:25。

先のコースへ進む→

東藤原~東藤原駅=(三岐鉄道)=富田駅…

東藤原駅
東藤原駅
県道615号
県道615号とガソリンスタンド

集落の路地を抜け、県道615号を横断する。目の前には東藤原駅。あっけない。PM7:28、コースから僅か3分ほどの距離。

駅前には自動販売機。今日は全く、この自販機の姿をどれほど探し求めたことか。ただ夜になり、今は渇きは解消されている。それでも、記念と言うわけじゃないけれど1本購入。

東藤原駅舎内
東藤原駅の駅舎内。有人駅
東藤原駅ホーム
駅ホーム。貨物車両が並ぶ

予定では日没までにここに到達する筈だったのだけど、結局、1時間半遅れた。湯の山でゆっくりし過ぎたことと、寄り道した福王神社の予想外の遠さ、それに秋近しとは言え蒸し暑さにロクに走れなかったことが響いた。

――ロングコースを歩くのは5月が一番だとつくづく思う。春はハイクの季節とは良く言ったもの。

セメント車両
太平洋セメント藤原工場の脇だけあって、セメント車両が目立つ

三岐鉄道の列車を待つ。もちろん、ホームには自分ひとりしかいない。セメント工場の貨物駅、という性格を持つこの駅の土曜の夜。1時間に2本、という運行ダイヤは必要十分に思える。

やがて静寂が打ち破られ、ガタゴトと二両編成の電車がやってきた。

 

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