- 御在所山肉薄の道 -
【踏 行 日】2006年8月下旬
【撮影機材】OLYMPUS E-1, ZD14-54F2.8-3.5, CASIO EX-P505
近鉄の車両に揺られ、三重県を横に横断する。山が近づいてきて、すぐに湯ノ山温泉駅に到着。
――またしても天候がよろしくない。このところ連戦連敗だ。とりあえず、夏の日射しが無いので歩きやすい、とポジティブに捉えることにする。
駅前は閑散としている。観光客が訪れるには早い時間なのだろう。自販機でゴソゴソと飲み物を何本か購入し、出発。AM8:10。
少し道を戻り、踏切を渡ると上り坂。周囲は林。
勾配が緩くなり、ついで何軒かの民家が現われる。よし、まだ覚えているぞ……。
左から車道が合流、すぐに右側に茶畑の間を真っ直ぐ上っていく道が現われる。方向としてはそっちが近い。少し迷ったけど、ここは記憶を頼りに左、県道を直進。
茶畑を見ながら舗装道を上る。やっぱり8月、朝とはいえ暑い。早足で歩いているため汗が噴き出してくる。
右手には御在所山の前山。残念なことに本体はガスの中。いまだコース上から御在所山がすっきりと見えたことは無い。
背後には伊勢湾。
十字路。右に曲がって、さらに上る。
現われたのはT字路。そして東海自然歩道の指導標。そう、前回の離脱点、湯森谷林道だ。
ただ、2ヶ月前と同じ標示板も一緒に立っていた。湯森谷林道は土砂崩れによって通り抜け出来ない、という標示だ。なんだい、まだ道の修復終わっていないのかよ……。
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仕方ないなあ、と思いながら林道に突入。AM8:37。
――山歩きをしている弊害で、どうも山に現われる通行止め看板に対してぞんざいになってしまっている。“道”は通行できなくても、道でないところが歩けないとも限らない、ということを知ってしまっているからだ。なんか、物凄く回りくどい言い方だけれど。
……っていうか通行止めじゃない。通り抜け不可ってだけだし。
林道はいたって穏やかに続いていく。今日は光がないので、淡々とした行程。
途中、林が切れて下界が眺められる箇所もあった。また、御在所山の稜線が見えることもあった。ただ、多くは見晴らしの無い林の中の道。
道は大きくうねり、ほとんど戻る方向に進んでいく。やがてあずま屋が見えてきた。
AM9:05、雲母高原休憩地に到着。
高原、と言っても道が膨らんだだけの平地に過ぎない。それに展望も案外、窮屈。まあ休憩には丁度良い位置にあるな、ということで一休み。
――なんだかんだ言っても、やっぱり土砂崩れの状態が気になる。休憩もそこそこに、出発。
左に雲母ヶ峰林道への分岐を見て、さらに進む。
道はダートに変わる。
傾斜は厳しくないけれど、やっぱり8月は8月だ。気温はそう高くは無いはずだけど、風も無いので熱が身体に籠もる。あまり良いハイク日和ではない。これで天気が良かったら死にそうになるだろう、と思うと今日の曇り空は正解だ。
――と、一瞬、雲の合間から陽射しが降ってきた。よし、このまま晴れてくれ! ……すぐに曇る。まあ、曇り空が正解だし。陽射しなんか全然要らないから。
未練がましい。
林道は平坦に近くなってきた。山肌を巻くように伸びていく。
と、ここまで雲に覆われていた御在所山が、なんとなくだけど全容を現わした。ロープウェイと鉄塔、そしてところどころ露出した岩が特徴的。いつか、この山の山頂にも上ってみたいものだ。
――ただ、次に前方に現われた鎌ヶ岳にあっさり心を奪われる。こっちは近いうちに登ること決定。御在所山はその「ついで」でいいや。
標高578mの林道最高点はいつのまにか通り過ぎた。道は赤土の地道になって、そして下り始める。その下り際、湯ノ山温泉の町を遠くにチラリと見せる心憎い演出。うん、ここまでは良い道だ。
何度か大きくヘアピンを切り、高度を下げていく。そして、眼下には沢の流れが見えてきた。
林道は車両通行困難な窪道になり、やがて行き止まった。この先は人しか進めない道だ。さらに、普通の山道に変わる。
そして、陽射し。濃い樹林があるなら陽射しは大歓迎。緑の光シャワーを浴びながら下る。
さて問題は土砂崩れの場所だけど。
でも確か「林道にて土砂崩れ発生のため」と書いてあったような……。もうここは林道じゃないから、もしかすると先ほどの赤土の道が土砂崩れ箇所(かつ復旧工事済み)だったのかも知れない。
どちらにしろ、気は抜けない。
沢に近いからだろうけど、道が変化に富んでいて面白い。三次元の構造がある山道は楽しい。
眺望は無い。あっても、見えたのは緑の山肌だけ。他はすべて深い森の中。――林では無く森であることはポイント高い。
次に、巨大な堰が現われた。その落水の先を見下ろすと赤い流紋。これは見事。
赤い沢とともに進む。流れが穏やかにつれ、その色も褪せていくように思える。
潜戸の滝。落差は大したことは無いけれど、まことに絵になる。色ももう、赤くは無い。
――この先、沢の水は今度は蒼くなっていって、蒼滝に至るのだろうか? そんなわけはない。
5分ほど山道を更に下っていくと、あずま屋が現われ、道も広くなった。良い道もここで終わりかと思うと、ちょっと残念。
あずま屋を過ぎると、湯ノ山温泉の建物が現われた。
結局、林道の土砂崩れ箇所はほとんど復旧しかけだったらしい。前のコース歩きの最後に林道通行止めの標示を見て、「時間を置けば復旧はしていなくても改善はされているだろう」と考えたのが2ヶ月前。まあ予想は当たったと言える。――でも、「通行止め区間を突っ込んだ」とは大っぴらには言えない。まあ、余計なことは言わず黙っておけばいいや。
林道終点を過ぎた後には、人の歩かなくなった下山歩道の状態の方がむしろ心配だったけれど、一部危険箇所もあったものの総じて道の劣化は無し。道標も十分で、むしろテンションは上がった。さすが東海自然歩道のモデルコースだと思う。
――旅館の建物の前を進む。
潜戸橋を渡って、湯ノ山温泉に到着。AM10:37。
湯ノ山温泉駅から歩いて2時間半、それも標高578mのところまで行って返して来たわけだから、「峠1つ越えた秘境温泉の地」の錯覚が生じてもおかしくない。
ところが、目の前にはマイカーがバンバンと走り抜け、観光客や家族連れの賑々しい光景。どう見ても普通の観光地だ。錯覚はリセット。
涙橋。橋を渡る前に、コースを外れてロープウェイ駅まで上がってみる。階段をフウフウ言いながら上る。結構遠い……。
到着――思っていたより客は少ない。子供達は夏休みの最後の週末。親に写真を撮ってもらったりしている。
自販機で飲み物の補充だけして、涙橋に取って返す。15分ほどの寄り道だった。
涙橋を渡って左折。旧道の路地を進む。すぐに現われたのは急階段。
上り切って、いったん車道に出たものの、横断するとまた階段。辛い。先ほどのロープウェイ駅寄り道が結構なアルバイトだったので、体力が回復していない。
階段の上で右折、雰囲気のある路地を進む。
途中、三岳寺に立ち寄る。今度はコースのすぐ脇。
さらに山へ向かって進むと大石公園。その名の通り、川の脇に大きな石がある。
この橋の袂の道標は、御在所山も指し示している。だけど、東海自然歩道はここが湯ノ山のコース最高点。橋を渡って、道は下り始める。
山道。心地良い散策道。
AM11:26、蒼滝に到着。
涼しげだけれど、すでに多くの人が良い場所に陣取っている。やや遠くから涼をとって、さらに進む。
川を木橋で何度か渡りながら高度を下げていく。
車道に出た。脇には東海自然歩道“菰野町湯の山地区”案内図。手書き然としたアバウトなものだ。
……にしても、アスファルトに出ると一気に気温が上がるような気がする。そろそろ昼時だ。
水産センター前から再び山道に入る。木陰がありがたい。
この道は鳥居道というらしい。遅れを取り戻すため小走りで進む。ただ、意外とアップダウンがある。途中でダウン、道の真ん中で小休止。
夏も盛りを過ぎたし、高度が少しあるので涼しいのではないかという考えは甘かった……。
考えてみれば標高300~500m、気温は下界から2~3℃しか変わらない。
あずま屋とベンチが現われた。鈴鹿ハイウェイのすぐ脇で、駐車場もある。
ハイウェイをトンネルで潜って向こう側に出る。
希望荘前にもコース案内図。久し振りに菰野町のものではなく、従って「1350km」という距離も書いてある。
暑くて堪らなくなってきた。再び山道へ。
峠越えの道。登りだ。ここは踏ん張りどころ。
上空は雲で覆われてしまう。
PM0:56、風越峠に到着。
越していく風は――無い。冷たい飲み物が恋しい。
さて、下山だ。
体が楽になると、今度は日の光が欲しくなる。もう、今日は晴れることはないのだろうか?
葉の間から見える空は、どうしようもなくどんより。
朝明川の飛び石。
もちろん、今日は増水時の迂回路を取る必要なし。ぴょん、ぴょんと渡る。
朝明川を渡り切って車道に上がる。県道762号だ。ここからは下界に向かって下る。
車道歩き。ただ、ただ下る。交通量はほとんど無いものの、蒸し暑い。
PM1:53、三重県民の森に到着。
到着、と言っても左手の緑の山がそれだ。施設があるのは、まだ少し先。
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