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三筋滝~田代~西山峠~黄瀬~紫香楽宮跡

三筋の滝
信楽(しがらき)路傍休憩地の眼前、三筋の滝。3本目が細いけど大丈夫だろうか?

三筋滝。

その名の通り、3本の滝筋がある滝で単純。落差は大したことは無い。それでも、京都北山の菩提滝以降、久し振りの滝。

――東海自然歩道は寺社巡りの旅でもあるけど、滝巡りの旅でもあると思っている。それゆえ、この取り立てて有名では無い滝の存在意義は重要。なぜ重要かと言うと……ええっと、なんでだろう?

たぶん、キーワードは音。

田代川急流
田代川、滝手前の急流
三筋滝を見下ろす
見下ろす(実際に見下ろしているのはカメラ)

自然歩道では静寂の歩きとなることが多い。特に人里離れた区間を歩いて来ると、一時的に葉擦れの音や沢のせせらぎが音量基準になっていたりする。

――そこに、叩き付けるような轟音。滝だ、と頭では分かっていても、腹の底から身を震わす重低音に、セワセワする気持ちが抑えられない。

一種の眩暈。静から動への移ろい、加速感、長く重く、旅を貫くビート。

信楽路傍休憩所
公衆便所。ゴミ箱もあるが、ゴミ箱は余計
信楽マップ
甲賀(こうか)市信楽町のコース案内図

……とまあ、そんな事ばかり考えているわけでは無いけれど。

ちょっとだけ休息。そして、車道では無く、川に沿った遊歩道を歩き出す。

滋賀県は出来合いの道を自然歩道としていることが多いけど、路傍休憩地には力を入れているように見える。ある意味、精一杯のメリハリなのかも知れない。


 


コンクリート橋
この橋で田代川の左岸に渡る
吊橋
田代川の右岸に渡る吊橋
田代川
田代川の淀み

田代川左岸の遊歩道を突き進む。

冬枯れの季節であっても、車道を歩くよりは何倍かマシ。この道がこのまま田代まで続かないかな、と淡い期待を抱いていたけれど……。

ほどなく遊歩道は終了してしまった。まあ、道が草叢に埋もれていなかっただけラッキーと思っておくべきか。そう長くも無い赤い吊橋を大事に大事に渡り、対岸に戻る。

アスファルトの県道歩き、再開。

藁葺きの里
藁葺き屋根の民家の里? と一瞬期待を持たせが……秀明自然農法「しがらきの里」
藁葺き家屋
綺麗過ぎるきらいさえある、藁葺き家屋
タイル
湖北からこの地に移築してきたとのこと

前方が開け、山間の里といった雰囲気の空間になる。

県道脇の「しがらきの里」を通過。藁葺き家屋が二軒、懐かしい日本の里の原風景を自己主張している。加えて、周囲の農場は無農薬栽培とのこと。

――作られた原風景というのは、どうもあまり食指が動かない……という意見は、東海自然歩道ウォーカーには結構賛同を得られると思うのだけど。どうだろうか?


 


田代の集落
県道12号・栗東信楽線の田代の集落
田代高原の里
田代高原の郷。レストランらしい……

T字路が現われる。

しばし迷う。道標がビミョウな方向に立っている。だけど、ここは手元の10万分の1地図(!)に予め付けておいた印の通り、直進を選ぶ。田代集落からの山道は廃道になっていて、今では道が付け変わっているなんてゆーオチじゃなきゃよいけど……。

田代高原の郷を左に見送る。まもなく田代の集落が見えてきた。

田代バス停
田代バス停。帝産バスと信楽高原バスが並ぶ
KOUGEN BUS
本数は見ての通り

田代集落。

塀にまで瓦屋根があるような家が多い。豪邸、というのとは違うかも知れないけれど、集落に雰囲気があるのは確か。

田代バス停はオープン・スペースにあった。KOUGEN BUSは、隣の赤いチーターと対照的に青いバスをあしらった図。

そして、肝心カナメの紫香楽宮跡に向かう左折点なのだけど……あった、あった。指導標もきちんと立っている。ホッと一息。

山道
林の道を往く。早くも薄暗い
田代集落の指導標
ここで左折、紫香楽宮跡へ向かう峠道へ

とは言え、7.6kmという距離はざっと2時間の道のり。今はもう午後3時半。急がなきゃ。

田代川を跨いで、車道から山道に入っていく。久し振りの山道。

道の状況は悪くない。ただ、やや上り勾配で、せかせか歩いていると息が切れてきた。


 


苔砂袋
変わった形をした岩壁……では無く砂袋にコケが付いたもの
採石場
車道に合流。砂山と採石場が見える

車道に出た。

砂を被った白いダートの道。右手向こうに、その元凶(?)の採石場が見える。

そちらに向かう。上り勾配はいまだ続いており、峠まではまだ距離がありそう。見るべきものが無く、あまり楽しくない車道歩きが続く。

ちなみに採石場は、今日、もちろん休日。青い鉄骨組みの工作機械たちが、岩に張り付き岩盤を削り出す姿形のまま凍り付いている。

西山峠
西山峠。標高は440m程度
白い道
白い道を峠に向かう

白い道と白い空。どちらも艶消しの白で、のっぺりとしている。頭も一緒に空っぽにして、歩く、歩く。

道が右に曲がっていくと車道を覆っていた白い砂は劣勢になり、やがてそこからアスファルトが現われた。そして峠。

峠を越えると緩やかな下り道。

大股にどんどん下っていく。もう最後のピークは抜けた。あとは一直線に歩くのみ。(じつはこれが大きな慢心)

のんきに下る
林の中の下り道
紫香楽宮跡への分岐
紫香楽宮跡への分岐。道標の示す方角微妙!

やがて右側に沢が現われ、並走するようになる。左右に幾つか分岐が現われるが、すべて無視。どんどん下る。

「雲井スクスクの森(雲井小学校林)」「注意 ダンプ・ミキサー車出入り口(信楽生コンに十数台のミキサー車が並ぶ)」「信楽陶芸村やきもの市場(大小様々なタヌキの焼き物が並ぶ)」「COSMO(石油。国道307号に出た)」

国道を渡り、集落の中へ――。


 


黄瀬集落
短絡路から黄瀬集落の端っこに出る
紫香楽宮跡への短絡路
紫香楽宮跡への短絡路。もう日没を過ぎた

あれ? 紫香楽宮跡っていったいどこだ? と地図を久し振りに引っ張り出す。加えてコンパス確認。

……どひゃー、ここ雲井やで、方角ぜんぜん違うやん! 慌てて手持ちの10万分の1地図(しつこい)で紫香楽宮跡への分かれ道らしき線を探す……これか?

決断し、今まで歩いて来た道を巻き戻す。軽い上り勾配でも辛い……。

果たして、雲井スクスクの森付近にその分岐はあった。1時間のロス!

県道16号
県道16号を渡る。その向こうは大戸川
黄瀬の山道
黄瀬から紫香楽宮跡へ抜ける山道の入り口

大急ぎで短絡路を行く。真っ暗になって道標が捉えられなくなったらオシマイだ。

黄瀬の集落。突っ切ると県道16号。大戸川と再会して、車道が左にカーブしていくところ、東海自然歩道の細い道が階段となって斜面を上へと延びていく。ここに来て山道か……。

樹林帯、丸太の階段。黄昏時も長くは続かない。そろそろ灯り無しは限界。

紫香楽宮跡解説板
紫香楽宮跡(しがらきぐうし)の解説板
アパート
並び立つアパート。実は紫香楽宮跡のまん前

――と、前方が開けて人口の照明。アパートが建っている。そして、そのアパートを回り込むように幅広い道を進んでいくと、明かりの灯る小屋が現われた。近付くと、真新しい東海自然歩道公衆便所。

その前には、紫香楽宮跡の解説板が立っていた。もう暗くてほとんど字が読めないけど、確かに紫香楽宮跡のものだ。

……そう、到着したんだ。PM5:54。

先のコースへ進む→

紫香楽宮跡~紫香楽宮跡駅~雲井駅=JR貴生川駅…

近江グリーンロード
国道307号、通称近江グリーンロード
紫香楽宮跡駅前
紫香楽宮跡駅前

道標は見付からない。とりあえず、紫香楽宮跡を表から裏へ抜けてみる。ほとんど暗闇で何も見えない。

車道に出ると道標があった。クランク状に進んで東に向かう砂利道に。しばらく暗闇歩き。ヘッドランプの頼りない光円が路面を照らす。

本当にこの道で合っているのか?と心配になってきたころ、眼前に大きな車道が現われた。国道307号だ。

紫香楽宮跡駅のホーム
片ホームの無人駅。誰もいない。トイレはある
紫香楽宮跡駅
信楽高原鉄道 紫香楽宮跡駅

ここにも指導標。右折し、国道を歩く。さすがに国道の交通量は少なくない。ライトを持っていても、夜の国道歩きは怖い。

6分ほどで紫香楽宮跡駅に到着。なんとか今日の予定していたコースを歩き切った。やれやれ。

で、安心すると腹が減る。さて貴生川行き上り列車は、と時刻表を見る。

50分待ちらしい……。

雲井駅
雲井駅。町中の駅だけれど、無人
雲井駅舎内
雲井駅舎内。椅子の上には座布団がある

なにしろ2月中旬。じっとホームの椅子に座っているだけだと凍りついてしまう!

一大決心をして駅を出る。国道をさらに南に向かって歩き始める。

牧交差点のセブンイレブン。温かい弁当と温かい飲み物を購入。夕方、道を間違えた時に国道沿いにコンビニが見えたのを憶えていたのだ。

そして雲居の集落へ。おっと、この場所は見覚えがあるぞ……。

雲井駅ホーム
雲井駅のホーム
黒電話
懐かしのダイアル式黒電話

雲井駅。座布団に腰掛け、弁当を食う。ようやく人心地を取り戻す。

――まあ、なんとか今日も一段落だ。でも、やっぱりガイド本ぐらいは入手しておかないといけないな、と思う。それと、今回のコースも、もう少し良い時期・良い天候の時に歩きたかった。

弁当を食べ終わると、そろそろ列車の時間も迫ってきた。チラ、ホラと乗客も集まってくる。

信楽高原列車
貴生川駅の信楽高原列車。JRとの間に改札無し
乗り継ぎ清算済み証明書
乗り継ぎ清算済み証明書

列車が来た。当たり前のように一両列車。そして、ワンマンだ。

車内には季節柄、花の付いた梅の枝が飾られている。蛍光灯下の梅の花――色が冴えない。

高原列車は、暗闇の高原を貴生川へ向かってひた走る。

 

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