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鞍馬~薬王坂~静原~江文峠~野村分かれ~大原

鞍馬寺の寺名碑
鞍馬寺の寺名碑。西日が当たる
鞍馬の茶屋
鞍馬の茶屋。やきいも、甘酒、みたらし
薬王坂入り口
鞍馬寺から少しだけ北、薬王坂入り口

鞍馬寺。

鞍馬天狗が義経を修行したところ、だと思っているけれど、違うかも知れない。境内には確か、鞍馬天狗像が立っていた筈。

ただし、今日のところは車道に面した山門を一瞥するのみ。ちなみに、背後の山肌に紅葉はあまり目に出来ない。ここまで寄って来た京都北山の神社仏閣と比較べると、この寺の質実剛健さを感じてしまう。

――もっとも、ずっと上にある境内では紅葉盛りなのかも知れない。確かめてみたいなあ。地図を確認してみる。寺までの高度差は150mか……それは無理。

PM3:03、踵を返し、薬王坂へ向かう道を採る。府道をさらに奥だ。すぐに右折の道標――分かりにくい。

小キノコ
小さなキノコ
鞍馬の指導標
京都一周トレイル道標と共に
鞍馬川
鞍馬川を渡る

 


薬王坂へ
薬王坂(やっこうさか)を上る
薬王坂
薬王坂の最上部、いわゆる峠。海抜375mほど

家の間の狭い路地を抜け、鞍馬川を渡る。ここに東海自然歩道のコース案内板。左に地蔵寺、右に八幡宮を見ながら山道に入り込む。

山の西斜面を登る。背中から西日が刺し貫く。黄葉もあって、明るい山道。下りて来る2、3人とすれ違う。散歩のような身なり。

一生懸命登る。と、鞍馬からものの15分で薬王坂に到着。解説板が立っている。――それにしても、峠なのに「坂」とは変な感じ。

静原へ向かう
山際に沿って静原の集落へ向かう
里に下りる
まだ日の降り注ぐ里に下りていく
薬王坂を下る
薬王坂を下る。一瞬、見晴らしが

薬王坂の東斜面を降りる。日光が入り込まず、暗い。登りが明るい道であったことの反動で、夜泣峠からの下山道に比べても輪を掛けた暗さに感じる。

ほどなく下り切って、山間の田園地帯に出た。ここから先はまた平坦な道。ダートの道を回りこむように進み、静原集落に入っていく。京都盆地から北に一山隔てた、小盆地の里、静原。

静原
静原を一望する。名の通り、静かな集落
「ほっとする里」
ほっとする里、らしい

 


静原集落
静原集落。ここでいったん左折するが、直ぐに右折

静原の住宅地の中、少し高台となったところを東へ進む。と、道端に座ったおじいさんから声を掛けられた。「オウハラか?」

何を聞かれたのだか、一瞬分からなかった。でも、この道は東海自然歩道だ。きっとこの御老人は、ここを行き来する人たちをずっと見続けて来たのだろう。と、すると……。

「はい、大原へ行きます」「道は知ってるか?」

逆コースを一度歩いたことがある。「はい、知ってます」「そうか……」

それで会話は終わった。少し申し訳ない気がしたのは何故だろうか。

クランク状に道を曲がると、前方に静原神社が見えてきた。そして、鳥居の向こうには燃え上がるような紅葉――今日はこの紅葉を見ることを目的に遥々やって来たのだった。そう、9時間もの道のりを経て。

静原を往く
細い路地を通り抜ける
静原神社の鳥居
静原神社の鳥居
静原神社
静原神社

まさに注文通り、晩秋の西日が当たった紅葉。……やや、散り掛けかも知れない。それでも構いやしない。

神社の隣の公園では子供たちとその親が遊んでいた。歓声が静かな境内に響く。

京都北山のとりとめの無いワンシーン。なぜか感傷的になる。――少し疲れたかも知れない。

静原神社の紅葉
静原神社の紅葉。燃える――

 


金比羅山
金比羅山、標高573m。ロッククライミング適地
静原の案内板
コース案内板が立つT字路。右折でバス停

あとは惰性の歩き、と言っては何だけど、とりあえず日没との闘いは無くなった。この場所で光があること、それが重要であったのだ。そしてそれは達せられた。

……とは言え、暗がりの里歩きはよろしくない。先を急ぐ状況は変わらずだ。東海自然歩道案内板が立つところが静原のチェックポイント。時間は、PM3:38。

それを過ぎると、コースは府道40号に合流していく。

火の赤ちゃん
「きみにもけせるよ 火の赤ちゃん」。消すらしい……
府道40号
府道40号を往く。正面は金比羅山、左方奥に見えるのは天ヶ岳の稜線
府道を潜る
府道を潜る
杉の道
江文峠への上り。左に府道が並行
江文峠
江文峠。海抜324m

江文峠に向かって東進する。途中からは府道左の脇道に逸れ、砂利の上り坂を進むようになる。

府道をトンネルでくぐり、丈高い杉に両脇を囲われながら、さらに進む。いつの間にか、ダートの道から山道になっている。

――峠の西側斜面とは言え、日没時刻が近付いて日がかなり傾いている。脇道に入って以降、もう一切、日の光が届かなくなった。


 


京都バス・江文峠バス停
錆び付いた江文峠バス停。便は休日3本のみ
江文峠から下る
江文峠から下る。足許が見難いほどの暗さ
見返す江文峠
江文峠を見返す。ギリギリ、山の上部に残照が当たる

江文峠は標高300mあまり。静原が標高200mなので、そう高度差は無いのだけど。疲れているせいで上りはしんどい。

と、府道に飛び出た。車通りは散発的ではあるけど速いスピードで走っていく。その道を歩く――ただし、歩行用スペースも広く取られていて危険は無い。

ピーク地点を過ぎると、道は大きく右にカーブしていく。そこに下山道の入り口はあった。覗き込むと、予想通り暗い林間の山道――ヘッドランプが必要かも、とさえ感じられる。

振り返ると、江文峠の山の西斜面に、斜陽の最後の恵み。

江文神社
江文神社。拝殿、神殿、神庫、本社の四社構成

暗がりを注意深く進む。急斜面は最初のうちだけで、そのうち緩やかな下りになってくれた。左に金比羅山登山口を見過ごしてもう少し進むと、車道に飛び出た。

江文神社の公衆トイレ
五社目、ではなく神社の公衆トイレ

コースは右に折れていく。でも、せっかくなので、逆方向0.2km先にある江文神社へ向かう。まあ、ここまで来たら数分の遅れは問題にならない。

途中、ロッククライマーの連中とすれ違い、挨拶を受ける。彼らは金比羅山から下りてきたのだろう。

――江文神社は、変わらずそこにあった。


 


府道40号を渡る
府道40号を渡る。左折で小松均美術館
江文神社分岐
江文神社分岐。寂光院まで2.8kmとある

先ほどの分岐に戻り、さらに下る。

三たび、府道40号に突き当たる。脇にはコース案内板。ここは横断。

緩やかな下り。左には、大原の盆地が広がるようになった。畑が広がっている。

――そして正面には滋賀・京都府県境の山々が大きく立ちはだかっている。水井山や大尾山を擁する、標高700m前後の山稜線だ。東海自然歩道は、この山稜線を仰木峠で越えていく。

と、左折の道標が現われた。

水井山・横高山
左が水井山(794m)、右が横高山(767m)。稜線は東海自然歩道
宮川一ノ橋
宮川一ノ橋。様々な道標が立ち並ぶ

川を渡って進む方角を北へと変える。

……そう、よく憶えている。ここから暫くは、畑を貫く真っ直ぐな一本の車道をひたすら歩くだけだ。

そして、今日の歩き始めから12時間を越えた。半日を超える歩きは久し振りだ。足のスタミナ切れは歩く速度で調整可能だけれど――足裏の痛さはどうしようもない。

ただ、もう大原の里。長閑な光景が広がっている。

大原の里
大原の里に煙がたなびく
翠黛山・焼杉山
左方、翠黛山(577m)正面奥、焼杉山(718m)

日没間近で気温は急下降。上着を取り出し着込むものの、冷気は体を刺し貫いてくる。

――まだ晩秋だ、と言い張ったところで、12月。気温までは誤魔化せない。冬はもう、始まっている。

左から府道40号が合流してくる。それでも、まだ直進。野村分かれを通過。

野村分かれ
野村分かれ
乙が森へ
乙が森

平地歩きとは言え、我慢の歩きが続く。と、左の杉林に「大原の里展望特別招待席」なる看板が――。興味を惹かれて上がってみると、ただの休憩ベンチであった。看板の裏には展望図――NPO団体の作だ。せっかくなので、大原の里を眺めながら小休憩。

日没時間も過ぎた頃に、ようやく乙が森に着く。解説板が、悲しい村娘・乙について語っている。

左折して、寂光院へ向かう。


 


寂光院まで0.3km
寂光院まで0.3kmを残してコースは離れていく
駐車場
寂光院へ向かう。途中、民宿・大原山荘も
寂光院門
寂光院。冬季拝観時間は 9:00-16:30
寂光院公衆トイレ
寂光院前の公衆トイレ。明かりがきれい
土産物屋
焼き物屋。フクロウが道ゆく人を睥睨する
夜の紅葉
多くは無いが、ライトアップされた紅葉も

山側へ向かう道。やや上り気味なので疲れた足に堪える。0.5kmほど進むと、東海自然歩道は右に向かって折れて行った。

――それだと、寂光院に着かない。コースを外れ、細くなった路地を山奥に向かって進むと観光地然とした雰囲気が出てきた。人出もある。

そして、ようやく寂光院に到着。PM4:54。

11月中なら間に合ったのだけど、12月なので既に拝観は終了。がっちりと門は閉まっていた。もっとも、600円の拝観料があるので、間に合っても時間が無ければやっぱり入らなかっただろう、と自分を納得させる。

踵を返す。今日の目的地は全てクリアした。あとはもう、大原バス停へ向かうのみ。

土産物屋の明かりが仄かに照らす道を歩いていく。東海自然歩道と再合流、再び大原の里へ。


 


朧の清水
平家物語登場の「朧の清水」は暗がりの中
大原バス停へ
大原バス停へ向かう道。帰宅の途の人がちらほら
暗がりのコース案内板
今日、最後のコース案内板
夕焼け
振り返ると、西の空、ほんのりと夕焼けが。明日の天気も良さそう
大尾山と大原の道
大尾山(581m)を正面に、黄昏の里道を歩く

それにしても、結構、人が歩いている。ついでに言うと、時間帯が時間帯なので(?)カップルが多い。仄明るく柔らかい闇の中、足は大原バス停へと向かっている。

――階段に行き当たる。今日の終着地はこの上にある。

大原バス停に上る
階段の上、大原バスターミナル。脇に公衆トイレ
国道367号
大原バス停のある国道367号、通称「鯖街道」

PM5:10、夕闇の大原バス停に到着。その前の国道367号に出て、東海自然歩道の先を一応確認しておく。

ただ、次の比叡山コースは先月、既に歩いている。これまで、東から西にしか歩いたことが無かった鞍馬~大原区間が、今日できちんと方向が繋がった、というだけのこと。それでも――

2年越しの、京都区間制覇。


先のコースへ進む→

大原-(京都バス)-国際会館前駅=(京都市営地下鉄)=京都駅…

大原発バス
大原バスターミナル。この時間帯でもバスは多発
国際会館駅
地下鉄・国際会館駅の入り口

大原バス停からは、京都駅行きと国際会館駅行きが臨時便含めて多発している。それでもバスを待つ行列はみるみる間に長くなって、最後には20~30人に達した。

京都駅行きバスをやり過ごし、次の国際会館駅行きバスに乗車する。――こちらの方が空いている。

バスが発車。車窓は夕闇からすぐに夜闇へと移ろう。30分ほどで国際会館駅前のバスターミナルに到着。

京都駅行きの地下鉄に乗り換え。

京都駅
夜の京都駅。JR、新幹線、近鉄、地下鉄のターミナル
京都駅ビル広小路広場
京都駅ビルの171段階段にたむろう人々

京都駅で地下鉄を下りる。

――すぐには乗り換えず、駅の外に出てみる。何故か、少し人波に当たりたい気分になったのだ。

期待を裏切らず、駅の周囲には大勢の人。観光地京都の中心駅は、いま家路につこうとする人たちでごった返している。

ツリー
電飾のクリスマスツリー
京都タワー
狭間から、幽霊のような京都タワー

京都駅の上部はオープンスペースになっている。足は何となくそちらへ向かう。階段を上って、駅の一番上部へと。

――思い返せば、東海自然歩道の京都区間は一昨年の冬~春に“一瞬のうちに”通過してしまっていた。東海自然歩道は山岳コースと思い込んでいた当時は、華やかな京都コースに相対して少なからず鼻白んだものだ。その違和感が先に立って、その区間を楽しむことがあまり出来なかった。

ただ、それから静岡から遙か山梨のコースまでへと足を伸ばしている現在、この京都区間の重要性は良く理解できるようになった。この自然歩道にあって……というより、「この日本を代表する長距離自然歩道にあって」必要で欠かさざる要素をこの区間は持っている。…そう、思う。

京都駅構内には大きな電飾ツリー。季節はめぐり、もうそんな季節。

京都盆地南部
京都盆地南部の夜景。手前は京都駅のプラットホーム
メリークリスマス
2007年の Merry-X'mas
京都駅のオープンスペース
京都駅のオープンスペース

今回のコースを無事、踏破出来たことで、残りの区間は5つとなった。ずいぶん、遠くまで来たものだ。

そして、今年はもうこの自然歩道を歩く予定は無い――ということで。少し気が早いかも知れないけれど。


来年も良い年でありますように。

 

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