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高雄観光駐車場、AM10:30。
もっとも、地名としては「栂ノ尾」。ただ、コースの区切りという意味でちょうど良いので、高雄-鞍馬区間の始点はこっち。
ちなみに、箕面ビジターセンターで東海自然歩道コースマップ(¥350)を買ったとき、「裏にタカオまで載っているから」と言われてエッ?と思ったことがあった。東京の高尾(東海自然歩道終点)まで載っているの? と。
国道162号を中川に向かって歩き始める。清滝川に沿った、山間の道。
前回にも増して車の往来が激しい。はっきり言って歩行不適! 二車線で、わずかに端に人の歩くスペースが確保されているけど、人が歩くような雰囲気ではない。車も結構なスピードで往来する。
ただ、周囲は北山杉の山肌。各々の光線の当たる角度によって様々な表情を見せる。
夫婦橋を通過。川を左側に置き、歩く。
カーブが増える。山陰に入ることも多くなる。車道は白線一本となって歩行スペースすら無くなる。ただ、車の交通量は変わらない。一本道だから当たり前だけど。
周囲は杉山ばかりだけど、紅葉が混じる山もある。タイル地のような緑色にモサモサしたオレンジ色が映える。
――毘沙門橋通過。
国道脇に寄り添うようにくっつく新道が見えてきた。
じつは、新道がもう開通しているんじゃないかと期待していた。川東工区、2,150mに及ぶ直線化事業。「工期平成14年度~19年度(予定)」と書いてあるのにも拘らず、まだ第一工区950mも未開通。開通の暁には、再び東海自然歩道に安息が訪れるハズなのに……。
道を歩くため新しい車道の開通を願う、というのも納得いかないところではある。ただ、サイアクなのは、新道開通したせいで旧道の整備が止まって藪に沈み、歩きたいのに歩けなくなってしまうような状況だ。今までに何度かそのようなところを見て来た。
――行く手に見えてきたのが中川橋と中川トンネル。
中川到着、AM11:05。
……と、言っても正確にはここは中川集落への入口。で、そちらの方向、清滝川左岸に沿って進む。すぐにJRバス「亀石町」バス停。1日18本もの京都行き便を示しているけど、なぜそんなにあるの?というくらい周囲は田舎の風景。ただ、久しぶりに民家を目にするようになってきた。
と、90度右折の指導標。右を見ると2本の車道が一瞬だけ接しているような潰れたX型の交差点。
落合からここまで3時間近く付かず離れず一緒だった清滝川ともお別れだ。ほとんど180度のターンをして、菩提川に沿った1車線の林道・菩提道に入る。
上り勾配で、高度はすぐに200mを超える。――針路は南南東。昼時になって、陽射しも真上から降り注いでいる。平和な道。
北山杉の木漏れ日の道をトコトコと歩いていく。気候的にも申し分ない。
時折、樹林が切れるものも、谷あいの道筋なので山肌しか見えない。今回はハイカーの姿も無く、静かに歩ける。
と、向こうから騒がしく軽自動車がやって来た。山側に張り付くようにして、避ける。やれやれ。
「菩提の滝」という解説板が道脇に立っていたのにも拘わらず、通り過ぎ掛けた――というわけで、少し引き戻って菩提の滝に到着する。AM11:34、前回比、まだ45分の遅延。
さて、あまり変化の無いこの区間の見どころである菩提の滝。確かに小ぶりな滝ではあるけれど、加えて今回は水量も少ないみたいだ。秋なのに黄葉で飾られてもいないし、昼なのに日の光も射し込んでいない。なんだかとても地味な佇まいで、滔々と水を落とすだけ。
それでも、落ち着く空間であることは変わりない。歩きを再開したのは15分後。時間が無い、無いと言っておきながら……。
さらに進むと沢ノ池分岐に着いた。片道1kmほどの寄り道でお弁当適地の沢ノ池だけど、「時間が無いからパス」
緩い上り道を、かれこれ1時間ばかり歩いてきた。路面こそダートに変わったけど、幅も勾配もさして変わらず……上ノ水峠到着。PM0:01。
まあ、これほど平坦な峠は珍しいかも知れない。京都一周トレイルの道標にその名が刻まれていなければ、峠とは気付かず通り過ぎることだろう。
峠を抜ける。
すぐ小広い道に下りるけど、車止めの先の下山道へ。ようやく山道だ。
峠の南側斜面だけあって、雰囲気が明るい。時折、展望が開け比叡山なども見える。人工物はまったく見えず、京都盆地からちょっとしか離れていないことは実感できない。
やがて谷間の緑に埋もれるように家の屋根や電信柱が見えてきた。最後は坂をまっすぐ下って、車道に出る。数軒、民家があるだけ。
車道を東進する。併走するのは紙屋川。
黄葉をチラホラ目にしつつ歩く。谷道で、太陽の位置が高い時間帯なのに路面まで陽射しが届かず、そのせいでなんとなく暗い雰囲気に包まれている。
さらに進むと、右側に民家が並んだ。ようやく人里――ここが坂尻だろうか。ほどなく、左手にも建物が現れる。ただし人気はあまり無く、とても静か。
集落を抜けて、再び林の中の何も無い道へと移ろう。時折、直線的な道になるけれど緩い下りがひたすら続いていくのが見えるのみ。峠に上る道も緩やかだったけど、それとバランスを取ろうとするかのよう。
千束のT字路を過ぎると、ようやく郊外住宅地っぽい集落に出た。千束だ。車の往来があって、人も歩いている。
一度右折すると鷹峯・鹿苑寺分岐。次に来る時は余裕を持った計画にして金閣寺に寄っていこう、と考えたのはいつの日のことだっけ――今日も逡巡無く左の道へ。
今日、一番の急坂。車でも一速に落とさないといけないような急勾配だ。上り切ったところに頭上ミラー。相変わらずある。
ところが、次の瞬間に目にしたものには意表を突かれた。
鷹峯に到着、PM0:36。
――なんだか、観光客が大勢たむろしている。タクシーを始め車の往来も激しく、道路脇の駐車も目立つ。春に来た時と全然違う。あれ、鷹峯って観光地だっけ?
光悦寺・圓成寺の前に来て疑問氷解。その参道を一目見て、ここは京都北山の紅葉名所だということが分かる。これは失礼……。
ただ、光悦寺・圓成寺では参道をちょっと入っただけで、すぐ引き返す。参道の雰囲気の良さに長居注意報が発令されたのだ。日が翳ってきたし、それになんか人を見に来たようじゃないか、と自分を無理に納得させて先へ進む。
鷹峯小学校を過ぎると左手には次なる難敵、源光庵が出現。「血天井」などの文字が躍る。興味を引かれつつも黙殺。そしてようやく鷹峯交差点。
左折し、方角をやや北よりに修正。ただ、次の常照寺前の見事なカエデに引っ掛かってしまった。仕方無く、参道に入って太夫寄進の吉野門だけ見て、取って返す。
昼過ぎから空には薄く雲が懸かっていて、日差しが弱々しい。
今日はずっと晴れかと思っていたけど、このまま曇ってしまう可能性も出てきた。京都・紅葉・西日の取り合わせはなかなか得難いものだから、どうにか、もって欲しいけど……。
クランク型に住宅地を横切ると、コースは北へ向かう。氷室道だ。
ただ、閑静な住宅街をしばらく歩いて尺八池に着くと、そこで氷室道とは別れてしまう。コースは再び町中へと下っていく。
にしても、一度歩いた道だと、どうも次の展開が見えてしまうので面白くない――特に、その先があまり面白くない道、と分かってしまっている場合には。
玄琢から先はもう、ごく普通の住宅地だ。店や医院、水道施設にアパート。二車線の道の左右両方に、ガード付きの歩道が付いている。もっとも、人の数より車の数が多い。
右前方にセブン・イレブンが見えてくる。と、その手前、目立つところにコース標示が立つ。ここで左折だ。
ここから再び北へ向かう道となる。住宅密集地を抜けると、畑の目立つ郊外住宅地の風景へと変わる。京都盆地の縁歩きだ。
紫竹西通りに合流直後に左折して、すぐ右折。左に鎮守庵公園を見て進み、突き当たると右折、すぐ左折。道は細かいけど、指導標や案内マップも充実しているので問題なし。
今度は右に公園を見て、あとは北へ向かって一直線。……ただ、平らな舗装道歩きが続いて、正直ちょっと疲れて来た。
西賀茂の町は、賀茂川上流方向に進むにつれ細くなるような格好となっている。右手にはその賀茂川も見えてきた。
左手に西賀茂中。見上げながら過ぎると見晴らしが良くなり、田畑が賀茂川まで続くのが見えるようになる。のどかな風景。川との合流までもう少し。
……と、言っている間に右折の指導標。
東に折れると数歩で賀茂川の右岸。北上すると、賀茂川を渡ってくる府道38号線に当たる。柊野だ。PM1:32。
川の向こうには京産大総合グラウンドが見えている。
ここが京都盆地の北端となる。海抜は113mほど。さて、また山の中へ突進だ。
府道38号の歩道を歩く。山の谷あいの道で、人家は見当たらない。空の雲が濃くなって、日も隠される。まだ午後1時台というのに、すでに夕暮れ間近のような雰囲気。「夕日色」の山がそう感じさせるのだろうか?
気温標示板のある府道61号分岐に出た。ここで、東に折れていく府道38号を尻目に、引き続き賀茂川を上流へと追う。
一車線の道。車の往来は滅多に無い。久し振りの上り坂に一段と疲労が募る。
野犬一匹。飼い犬っぽい。近付くと路傍に消える。
コース案内図の立つ夜泣峠登り口が現れる。ここから東の方角にある尾根を横断することになる。
上がっていくと、再び日の光が路面に当たり始める。また犬が現れた。猟犬? ……狩をやっているのだったら嫌だなあ。
途中まで大した上りでなかったけれど、右折して道幅が狭まったら上り一辺倒に。
さらに、コースはジグザグに道を切り始める。射し込む日の光で足元は明るいものの、足の方の疲労が濃くなって、スイスイとは登れない。
――夜泣峠、PM2:23に到着。
前回はPM2:00に着いているから、まだ23分遅れている計算になる。まあ、前回は途中の二ノ瀬で時間潰したという経緯もあるからそこで追い付けるかも知れない。とにかく、また雲が薄くなったのは幸いだ。このまま日没まで持って欲しい……。
峠には、西方への見晴らしがある。前回見れなかったから、と期待して見ても近くの山しか見えない。愛宕山も見えるロケーションの筈だけど、今日はそこまで遠望は利かないみたいだ。残念。
西以外の方角は、林、また林。他に峠にあるものは、大岩・二ノ瀬・向山・大岩分岐を示す十字の道標と解説板(これには誰かが漢字に振り仮名を振っている)、あとは祠。祠は木の根元にあって、小さい。
二ノ瀬へ向かって――東斜面なのでそちらは随分と暗く感じる――下山を開始。
今日一番の急斜面。道が細いわけではないけれど、落ち葉で足許が隠されている。勢いがつき過ぎて道を踏み外しそうになるのが怖い。
見晴らしの無いジグザグの道をずんずん下る。暗い沢筋を暫く進み、最後は階段を下って二ノ瀬集落の外れに飛び出た。
富士神社、守谷神社、二ノ瀬ユリ入口を左に見て叡山電鉄の線路を渡る。ここには、コース案内板も立っている。
鞍馬川を橋で渡り、人家の間の狭い路地を抜けると、府道38号に飛び出した。
PM2:35、二の瀬に到着。――府道38号が左右に渡っていて、両脇は民家。一車線だけれど、けっこうな車の往来がある。
さて、ニノ瀬駅があるのは右だけれど、鞍馬はもちろん左、山奥へ向かう方角だ。そちらに向かって府道を歩き出す。
……ここからは少し、我慢の歩きとなるのが分かっている。でも、今日中に大原に着くためには、この区間こそ気張らなければ。
やがて集落を抜けて、山あいの道に。左側からは鞍馬川が合流して、狭い空間を一緒に進むようになる。細かいカーブが多くて見通しが悪い道。でも、車の往来も多い。気を使う歩きが続く。
それでもこの季節、赤や黄に色付いた紅葉が心をなごませてくれる。
道が二車線になっると、すぐに貴船神社の分岐。ここには大きな鳥居が立っている。貴船神社はそちら、紅橋を渡って2.0km先。
――鞍馬は逆。府道38号を直進だ。鞍馬小を左に見送って歩道橋を潜ると、また暫くは林間の道。崖崩れ注意の標識もある。
淡々と歩いていると、前方に民家が現れだした。鞍馬だ。鞍馬川が右手に回ると、民家の密度も上がった。由岐神社を通過。
道が左に曲がり始め、路面が膨らんだ。と、同時に土産物屋や観光客の姿が現われ、雰囲気が一気に観光地めく。
左折すると鞍馬駅の入口だけど、そのまま進んでカーブを曲がり切る。正面、鞍馬寺山門が現われた。
PM2:57、鞍馬寺に到着。過去冬に二度、春に一度この地を訪れたことがある。秋は初めて。
ちなみに前回は去年の5月。PM2:55にここに着き、列車に乗って帰った。ほとんど今と同時刻だけれど、季節が違う。晩秋のこの時刻は帰宅の途につく時間だ。その証拠に、鞍馬駅には帰る観光客が列をなしている。見ているうちにも伸びる一方。
でも、今日は続けて大原まで歩かないといけない。そのために、あと峠を2つ越えるのだけど……日没と競争して、果たして体力が持つかどうかは分からない。
もっとも、到着がたとえ夜になっても大原からバスは多発と分かっているので、気は楽だ。他の山奥のコースだと「なんとしても間に合わせないと」みたいな悲壮な感じになるのだけど、それはそれ、お気軽京都区間の利点。
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