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AM10:55、桂坂公園のベンチに座って豚焼きを食す。――これは前回に続いて2度目の体験。でも、ここがこんなに開けっぴろげなところだったとは初めて知った。ということは、こちらも丸見えになる。やや気恥ずかしく、かき込んで食べる。
10分後、再び東へと歩き出す。公園は尽きることが無い。車道に当たって、少し大回りして横断歩道を渡るものの、その先も緑地帯。どこまでも続く。
巨大な住宅地のど真ん中を横断しているのに、目に入るものは緑に赤や黄色。春の花々。
――この桂坂ニュータウン、東海自然歩道より後に造成されたものだけど、コースをグリーンベルトとして残すように設計されたのは瞭然。車道歩きは中心部のローターリー交差点のところだけ、という徹底ぶりだ。
その緑地帯も左右から住宅地の挟撃を受けるようになった。ほどなく行き止まる。コース案内板は左に曲がりながら下りていく薄暗い道を示している。前回は疑心暗鬼で下りていった道。昼間の今でも、その道はうろんに見える。
突入、と、すぐに見事な竹林の道へと一変。光があると、何故にこれほどガラリと印象が変わるのか。そして、西山には何故こうも竹林が多いのか。
緩やかな下り。桂坂の台地から盆地へと下りていく道だ。東海自然歩道の開設当初から全く変わっていない道なのかも知れない。
そして方角が北から東へと変わる。前回、この変化にどれほどホッとしたことか。道は左右にうねりながら伸びていく。
――車止め。超える。右側が小川になった。人工物も目に付き始めた。下り勾配も消えた――京都盆地に戻って来た。
出たのは住宅地の外れ。上桂だ。直進を示す道標に従うと両脇に民家が立ち並んだ。ここから先は京都の観光地区間。
十字路を左折。北上し、細い路地に入っていく。山口家住宅を過ぎて五差路に出る。前回は闇の中で慎重に道を見極めたけれど、道標の見える昼間なら楽勝。
周囲は完全に普通の住宅地。しかもお昼時で、自然歩道のコースを歩いていることなど忘れそうになる。これが京都西山区間。
左、奥まっている竹の寺は見逃しそうになる。緑の絵の中のよう。通り過ぎる。
道はますます細くなった。緑も増えて来る。と、下り階段に変わった。下りると広場。苔寺の入口だ。一気に観光っぽくなった。
とりあえず――またもや西芳寺に寄り道。どうせ拝観できないのだから2度も行かなくて良いと思うのだけど、それでも一応確認しておきたい。
――到着。昼間であっても固く閉ざされていた。当たり前。PM0:05。
コースへと戻る。寄り道に要した時間は10分ほど。
再び北上を始める。華厳寺橋を渡る。――明らかに観光客の姿が増えてきた。京都らしい光景だ。しかも今は桜のシーズン、観光客がいないわけはない。
案の定、鈴虫寺では長蛇の列、参拝客が道に溢れていた。その前を巻くようにして小道に入る。最福寺の前の十字路まで進み、立ち止まる。
……さて、ここから。前回は道標を見付けられず完全に道を失ったっけ。山際から離れないように適当に北へ向かったことを憶えている。
今回は明るいので道標の捕捉も容易。それは路地をまっすぐ歩いて突き当たったところで見付かった。左折。
西光寺の前では直進。その先では左折。――これだけ道標が多く設置されていたのか。暗闇でだいぶ見逃していたなあ。
山際へと向かう。児童公園に当たって左に曲がると月読神社。前回は境内が真っ暗だったけれど今回は大丈夫。ただ参拝客はほとんどおらず、静けさが際立っていた。
車道に戻って、山際の北上を続ける。洛西用水を超えると、ほどなくして赤鳥居が見えてきた。
松尾大社へ到着、と、その前のコース案内を見て驚く。ここでコースが二股に分かれているじゃないか!
どちらへ進むか思案しながら、とりあえず境内へ。楼門を潜って本殿の前へ。――大勢の参拝客。こんなにも人多き神社であったとは。
北側の水回りを辿って赤鳥居まで戻る。境内では桜よりもヤマブキが目立っていた。時季的には桜は遅く、はや新緑の季節。
結局、そのまま松尾神社前通りに進むことに。巨大な――今日一番の鳥居をくぐる。
松尾大社交差点。車通りも人通りも多い。信号を待って横断歩道を渡ると松尾大社駅。PM1:02。
……1時になってしまったか。一度歩いたコースを昼間辿るだけだから午前だけで終わるでしょ、なんて考えていたけれど甘かった。迷わず歩いたのに、何故かペースが出ていない。
改札前で少し悩む。時間が時間だし、このまま電車に乗って次の目的地へ向かってしまおうかと。
でも改札は潜らず、踏切を渡る。ここから嵐山まで暗闇しか目にしていない。そこに何があったのかを見て、記憶を上書いておきたい。
松尾橋の手前の道標を見て左折。桂川に沿って北上。やがて自転車道に合流し、川面にさらに接近する。菜の花の彩り、春うららの桂川。
左手より車道近づき、合流した。前方には京都北山の山並み。桂川が左にカーブしていくので、すこぶる見晴らしが良い。あの山麓に絡む東海自然歩道を歩いた時のことを少し思い出す。
自転車道でもあるので自転車が走ってくる。ただ、あまり多くない。川の反対側には芝生尾のグラウンド。少年たちが野球の試合中。その向こうには満開の桜並木、小倉山、愛宕山。
――平和だ。
左側は広い公園になった。桜の木も散在していて、その下で家族連れがお花見中。でも、人の姿はパラパラ。穏やか過ぎて、嵐山に近づいている気がしない。
車道が再び近づいて来た。見ると、東海自然歩道の指導標、ということで自転車道から離脱。
左に並ぶ民家、右には畑。……穏やかだ。でも、それはもうすぐ終わることも分かっている。――来た。目の前に群集が川の流れのように横切っていく。京都は嵐山、そのメインロードにぶち当たったのだ。
ここにも東海自然歩道の指導標。この道標は東京まで列になって続いている。……でも東京は遠い、今、まさに実感している。
渡月橋には人が鈴なり。、花も残った葉桜の桜並木。その下に並ぶ出店。人の流れに混じって橋を渡り、中ノ島へ。
……思ったよりは混雑していない。たぶん、1週間前はこんなものではなかっただろう。今、華やかなのは咲く時期の遅い枝垂れ桜ぐらい。正面、「嵐山」の山肌には新緑のパッチワーク。
今日はこのまま嵐山を回って家に帰っても良いか、なんて少し思ったものの足の歩みは止まらない。歩くのを止めると死んでしまう生物……ではないけれど。流石に。
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渡月橋がだんだん大きくなってきた。観光客で鈴なりだ。今日のゴールはあの橋を渡ったところ。……ようやくか。もう午後2時に近くなっている。なんでこんなに時間が掛かったのだろう?
嵐山公園から府道29号に出る。渡月橋方面を見て、逆方向に少し進む。公園の入口に立っているのは東海自然歩道のコース案内板。いちおう確認しておかないと不安になる……。
踵を返し逆方向、渡月橋を渡る。のろのろと進む人の波に混じって。横から眺めた時と印象が違って、渡っている時はただのアスファルト舗装道。木の欄干でそれと分かるぐらい。
川を見下ろす。菜の花が点在していて、いかにもな春光景。このあたりは本当に川幅が広くなっている。一方、上流を眺めると堰の向こうに多くのボート。
――その左岸に伸びている道が東海自然歩道。でも、今日はそちらに足を踏み入れない。その代わり、大勢の観光客が道を行き交っている。
渡月橋を渡り切り、左に曲がらず直進。コースから離脱。
大勢の観光客とともに長辻通りを歩いていく。……ゆうても自分も観光客。長い距離を歩くタイプの観光客に過ぎない。そのことを最近は自覚しつつある。
桜の花が少し戻ったかも知れない。それでも最盛期は過ぎている。花を惜しむ季節もまた良いもの。
今日の反省は、夜歩きになってしまった区間の歩き直しにも拘わらず、時間が掛かったことだろう。目に見えるものが多いと捉われるものも多い、ということかも知れない。京都であるなら、なおさら。
ほどなく嵐電嵐山駅の前に到着。ずいぶん賑わっている。何かの土産でも買っていこうか、とも思ったけれど、今日はまだ次に向かう先がある。止めておこう。PM2:03。
嵐山駅に入り、ホームへ進む。改札は無い。その代わりホームの奥に足湯のある珍しい駅。
停まっていた北野白梅町行き電車に乗り込む。――今日の京都歩きはまだ終わらない。そして、今後も何度もこの京都に来ることになるのだろう。それだけ余裕を持てる人生になって欲しいというのは、まだ願いであるけれど。