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泉原。東海自然歩道を西から歩き始めて当たる、最初の集落。
……でもって早速、迷っている。道が幾つもあると道標がどこか見当が付かない。とりあえず住宅街に引き戻ってコースを探ることにする。きっと山際の方だろう。
集落の中で突き当たって、そこに運良く道標を発見――こんな感じだと集落歩きはちょっと骨かもなあ、と思う。
すぐに素盞鳴尊神社――東海自然歩道を西から歩き始めて最初に当たる寺社、ということになる。ただ、集落付きの普通の寺社。見物すべきものか参拝すべきものか、扱いが良く分からない。とりあえず通過。
棚田を過ぎると林間の小径。道は平坦に近くて歩きやすく、適度な木漏れ日もあって気持ち良い。腹が減ってきたのでパンなどをパクつきながら歩く。
同じく自然歩道を歩いていると思しき人を発見、だけど、ペースが速くて置いていかれる。自然歩道ウォーカーって皆、こうなの?
林はあまり続かずに再び視界が開けた。出たところは、山あいに広がった田園地帯。向こうに見えているのは府道110号だ。
合流地点まで進む。横断した先、立派な歩道案内板が立っていた。時刻はAM11:31。
小広い谷あいの道を、左に並行して走る府道から付かず離れず進む。左手は棚田で右手は林。まったりとした歩き――晩秋のお昼時、空気は結構冷たいけれど、日射しには温もりが感じられる。
……でも、好天気の秋の日の昼前に、こんな平坦な道をのんびり歩いていることに、自分のハイカーの部分が不安を感じている。山行なら今頃、山頂手前の急勾配をひいひい言いながら登っている時間帯だ。どうもまだ、自然歩道歩きには慣れない。
それでも歩は進む。疲労感は感じられない。楽、と言ってしまえば楽。ただ、舗装道ばかりなので足裏が痛くなりそう。履いているのはトレイルランニング・シューズ。車道ばかりだと、靴裏のソールの減りが気になってくる。
バス停のある上音羽で府道合流……という直前、180°のターン。ここが上音羽屈折点。
以降、静かな林道の歩き。勾配も大したことはない。木立に囲まれ退屈なので、今度はお握りなどをパクつきながら歩く。車が来る心配も無さそうだし。
と、正面に展望が開けた。見えたのは、まあるい形の竜王山。
その後、道は下りとなって――いきなり竜王山荘の前に出された。これが山荘? テニスコートや野球場を擁している山荘って一体……。
竜王山荘の前を左折。すぐに交差点が見えてきた。忍頂寺交差点だ。信号機もあって車の往来が激しい。それもその筈、横断するのは府道43号・清阪街道だ。
その向こう、竜王山参道の鳥居と石段。信号を渡り、石の鳥居を潜って階段を見上げる。
――さしづめ、竜王山登山口、といったところか。
登山地図を確認すると、竜王山山頂はここから200m上方にある。高度差は物足りないけど、ここまで長いアプローチをしてきたと思えば、などと思いつつ、おもむろに階段を上り始める。この先、登山道の山道に繋がっていることを期待して。
階段が終わった。目の前に伸びているのは変哲の無い車道。そこに立つ道標の指し示す先も、やっぱり車道。竜王山を今日の登山ターゲットにするという目論見は一気に萎えた。
車道の勾配を上がる。低山だから植林の山か、と思っていたけれど、ところどころ紅葉も見られる。車道ベタ上りとは言え、これはこれで悪くは無い。
途中、蛙岩という蛙に似ていると言われる岩もあったけれど、こちらは微妙……。どちらかと言うとマンガに出てきそうなカエルだ。
道は曲がりながら、さらに上っていく。高度感も出てきた。大阪平野側が見晴らせる箇所もあった。――朝方よりも多少空気が晴れたかも知れない。大阪中心部の高層ビル群が林立している姿が見える。
道はやがて、石の階段の参道と車道に分かれた。車道側にはきれいな公衆トイレ、参道には枯れたアジサイ。なんとなく寂しげな雰囲気。
参道の方を上っていく。それでも、山登りという感じはしない。ほどなく宝池寺に到着。……忍頂寺では無く、宝池寺だ。てっきり忍頂寺参道を上っていたと思っていたので、何か間違えたかと慌てて地図を開く。
……どうやら、忍頂寺は山麓にあった模様。気になる名前のお寺だったのに残念……。
それはそうと、ここからは待望の山道だ。早速、登り始める。久し振りの土の感触が足裏に心地良い。
ところが、手摺のある上り坂を1分ほど登り、次に右に曲がって平坦な山道を1分進んだだけで、あっけなくてっぺん――竜王山山頂に到着してしまった。
木立の中のちょっとした広場としか思えない。散歩の身なりのおばさん達がベンチで談笑している。それと無相応に立派な展望台があって、地上に君臨するかのように高く、高く聳えている。
まあ、都市近郊の低山なのだから、こんなものなのかも知れない。時刻はPM0:17。
展望台に昇ってみる。木造だけれどもしっかりした造り。ぐるぐる回りながら昇って、最上部の展望台に到達。
――角度で言うと180°くらいの見晴らしだろうか? 今日歩いてきた最勝ヶ峰の稜線から大阪平野、高槻・茨木の街、生駒信貴、そして今度目指そうと思っているポンポン山までが見えている。
ただ、もう少し空気が澄んでいればもっと遠望が利いたのだろうけど。今日は生憎ダメ。
山頂で15分ほど滞留後、下山開始。
急斜面の山道をずんずん下る。が、途中で山頂の三角点を踏むのをすっかり忘れていたことに気付いた。さあ、どうしよう? 時間もあるので戻るか。
一転して急斜面の登り。体力が余っていたので駆け上る。今日初めてゼイゼイと息を継ぎ、汗も噴き出してくる。
山頂部に再到着。そして、ようやく得られた「登ったぞ感」。三角点は――
三角点の石柱は山頂裏手の木立の中にあった。とても地味で、30分のロスをしてまで、というようなものでは全然無い。
ただ、こういうのは気分の問題。いちおう今日の登山ターゲットはこの山なのだから、山頂をしっかり踏んでおくという儀式を執り行なっただけ、といったいどこへ向かって言い訳しているのだか。
――それでも、まだなんか消化不良。
先ほどと同じ下山道に再突入、展望の無い林間の山道をひたすら下っていく。階段は多いけど、車道や参道を上がるよりかはずっと登山道らしい道。
もっとも、15分ほどで山道も尽きて車道に出された。東側の登山口だ。
車道で山を下っていく。
このあたり、茨木市の「竜王山自然歩道」が絡んでいて、その道標もある。ただ分かれ道も多く、歩いていて道が合っているか不安になることも。道標の無い分岐では、とりあえず下る方を選択。
――どうやらコースキープは出来ているようだ。車作の集落を見下ろせる箇所に出た。この集落は山の中の凹みに広がっている。その山際の向こう、真っ平な大阪平野の街並みが覗いているのが見透かされる。まだ遠い。
その里と街との紙一重感が、なんと言うか、そそる。
――それにしても泉原からこちら、平野部から少し山に入ったところをなぞるようなコース採りだ。散歩気分で歩ける気楽さはあるけれど、個人的にはもう少し奥山に攻め入りたい気分。
車作集落の路地を抜けていく。その後、針路は再び北になり、街から離れていく方向。ただ、道は下り基調。林間で薄暗い。
途中、林の合間から安威川の渓谷・竜仙峡と、それに沿って走る府道46号が見下ろされた。なんかまた、とんでもなく山奥に来たような雰囲気だ。
逆に言うと、だだっ広い東京の平野では、大阪のような山と都市の近さが無い。考えてみれば、日本のような山国では都市部と山がごく近かったりするのが普通だ。そういう意味では、関東平野の真ん中に君臨する東京という都市はある意味可哀想かも、と思う。確かに東京には都市公園がいっぱいあるけれど、公園はしょせん、公園に過ぎないし……。
山の東側に回り込んだため、日が陰る。車作大橋に向かって、ゆっくりと、途中からは急激に高度を下げる。
あと少しで下り切るというところに三叉路。茨木市の3つの自然歩道と交わる要所らしいのだけど、東海自然歩道は右。下り切って府道46号に合流。
トンネルと逆方向に車作大橋、PM1:36に到着。案内板が立っている。健脚コース・一般コースの分岐とのこと。
――前者を選択。もともとのコースはこちらっぽい、という理由で。ところが歩き始めると、車の往来の多さに辟易。雨の日は絶対歩きたくない、と感じる。もしかしたら一般コースはこの車道歩きを避けるために設定されたのかも、と思えるほど。
暫らく進むと山側に道標発見。車が来ないことを確認して道を横断、沢沿いの薄暗い山道に入りこんで、ようやく一息。
山の中、急坂を進む。陽が翳って薄暗い木立の中、眼前に現れたのはの竜仙の滝。
――解説プレートがあることで初めてそれと分かった。と言うのはこの滝、水量がほとんど無い。しばらく雨が降っていないからなのか、それとも水源の衰退なのか。後者であればコースが複線化した理由の1つかも知れない。今の時期は訪れる人も無く、物寂しさばかり。
コースの先を探したけれど道標が無い。滝を高巻くように急上昇する細い道――これ?
……どうも、正解らしい。これまでの道のりに比べると、やや足場が悪く危険かも知れない。コースが複線化した理由は(以下略)
思いの外、上りが続く。さすが健脚コースだ。高度を得たおかげで再び陽射しも得られるようになる。あたりは深い樹林、雰囲気もなかなか良い。
勾配が落ち着き、ほどなく竜仙峠。ここで車作大橋から一緒だった茨木市「武士自然歩道」が南に分かれていく。東海自然歩道は東へ。
既に高槻市に入っている。今日、北摂で3つ目となる行政区。山道を下っていくと棚田が現れて、その横幅が次第に広がっていく。やがて前方に車道が見えてきた。
PM2:22、その府道と合流。ここは荻谷というところ。健脚コースと一般コースの合流点。
――コース案内板が立っていたのに、団体ハイカーが取り囲んでいて近寄れない。
道標だけ確認して、府道の裏手の車道へ。ここから大阪平野に向かっての南下が始まる。もはや「帰路」の感覚。
林を抜けると集落。民家の間の細い路地を抜けると竹林の薄暗い山道になった。それもすぐに尽きて、車道に上る。一瞬、府道かと思ったけれど、違った。
その車道を少し進むと、緑色の芝の色が視界に飛び込んできた。サッカー場だ。そう、ここは荻谷総合公園の領域。
それにしても良く整備された綺麗な公園。きっと、造成されてからそう日が経っていないのだろう。植樹された木々の色付きも、森林の中でみるそれとは一味違う。こちらのは樹木の配置・色付き方が揃っていて庭園的な美しさ。人工的、とも言えるけれど。
その向こう、大阪平野の市街地が間近に覗いていた。今日はあとはあそこに戻るだけか、と思うと正直、歩き足らなさを感じる。頑張って登っているうちに調子が出てきた、と思ったら下り道に切り替わってしまうというコースの特徴がそう感じさせるのか。最勝ヶ峰・竜王山・竜仙峠、思い返してみると、すべてそうだった。
サッカー場前のゲートを横目に、さらに南下。サッカー場と野球場の間の道に入る。もう、完全に公園の中の道。
木立の中のボードウォーク。時折、運動場から歓声が聞こえてきたりするので、雰囲気的にもはや自然歩道という感ではない。
またしても車道に出た。公園内車道だ。そこに見晴台があったので、何が見えるのか気になり立ち寄る。
眼前に見えたのは――変電所施設であった。見晴台から変電所を眺める、というのも変な感じだ。たしか武士自然歩道は確かあちらを通っていたっけなあ、とだけ思って、コースに戻る。
ここからまた下りか。整備された道をジグザグに下りていく。
下り切ると、周囲は再び緑に包み込まれた。よくもまあ、コロコロ変わること……。
水路に沿って進んでいく。と、今度は急な上り道となる。そこで、足にそれなりに疲労が蓄積されているのを自覚する。
車道に出た。そのまま坂道を上って行くと、左手に摂津峡の下り口が現われる。コースの先がそちらだと示す道標も一緒に立っている。先は急下降。
ひょい、という感じで下りる。
谷あいの道となって、次には細い沢が現れる。それと、比較的平坦な摂津峡公園の遊歩道が。ただし、ひと気が無い。
と、言うのもこの季節・この時間帯では日が射し込んでこないからだ。紅葉は散見されるものの、なんとなく薄暗くて、寂しげ。白滝も、地味な佇まいで水を落としていた。
もう少し進むと散歩の人の姿がちらほら現われ、やや観光地っぽくなってきた。ほどなく白滝茶屋に到着、PM2:55。
――ここは大阪平野の「ふち」に位置する。箕面も「ふち」だったので、結局、今日は北摂の山の中を一巡りして戻ってきた形。
ここで今日一日付き合った東海自然歩道ともお別れだ。
ただし、次のコースもいちおう歩く予定にしている。それなりに標高のあるポンポン山を通るルート、普通にハイクコースだ。せっかくなら、今日歩いた東海自然歩道の続きから歩き継いでみようと思っている。
――たぶん、近いうちに。
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紅葉狩りとしては、今日はまあまあ。
ただ自然歩道ウォーキングとしては、結局、気分をどこで盛り上げたら良いか分からなかったままだった。
ピークを目指す山歩きならそれは明確だ。人里から歩き始めて次第に人工物が減っていくアプローチ、登山口からは登り一辺倒、高度を獲得して見晴らしが開けるとともに気分が上がり、山頂に達すると雄大な眺望を目にして強い達成感を得る――
そんなようなプロセスが自然歩道歩きには無い。自分でテンション・メイク(造語!)しないと、だらだらと歩いてしまうだけに。
逆に言えば、気張らず散歩気分で歩くには良い道、ということか。コース途中からの離脱もしやすそうだし。
――とは言え、歩き足らない感。だって、丹沢の東海自然歩道は本気で山登りコースだった。本来の東海自然歩道は、いったいどっち?
まだ日が高かったので摂津峡公園を散策。家族連れも多く目にするようになっている。
川下に向かって進む。峡谷にへばり付くようなホテル山水館を背後にすると、川の流れも穏やかに。
「約3,000本の桜、約420種の植物、野鳥13種」――そんな説明板を見て、桜の季節にも来てみたいものだと思う。高槻市民の、というより大阪府民の憩いの公園なのかも知れない。
摂津峡公園を出る。坂を下ると芥川が目の前を横切っていた。
塚脇橋を渡る。目の前にはまっ平らな田園地帯が広がった。遂に大阪平野へ戻ってきた。ここから先にアップダウンは無い。
温泉施設を横目に歩いていく。
ほどなく塚脇バス停に到着――そのまま通過。夕暮れ時という一番いい時間帯をすっとばしたくない、という理由で。
周囲は住宅地の光景、さらには街の光景へと移ろい変わっていく。
と、空に太陽とは別の光点があることに気付く。あまりハッキリはしていないけれど――幻日だ。そういえば今日の空は晴れていたけど薄く雲が懸かっていた。 駅まで歩こう、と思ったことが僥倖。
ただ、駅までの道中は長く、総じて退屈。何度もバスに追い越されていったけど、ここまで来たら最後まで歩き通さないと悔しい。
街中の光景に変わった。車の走る騒音を常に耳にしながら歩道を辿る。
――今日は静かな道ばかりだったので、普段聞き流している騒音がやけに耳に付く。街は、本当にうるさい。
JR高槻駅に到着、PM4:25。新快速も停車し、大阪・京都へのアクセスはひじょうに良い駅。
でも、まだだ。さらに商店街を5分ほど歩いて阪急高槻市駅まで進む。街中は人で溢れ、雑然とした活気に満ちていた。
もう、いい加減歩くのはここまでで良いだろう。切符を買って改札を潜る。
――結局、今日も長く歩いてしまった。いや、最後は無理やり長くしたのだけど……まあ、そこそこ疲れた。帰って、風呂と美味い飯にありつくとしよう。