- 大阪の里道 -
【踏 行 日】2005年11月下旬
【撮影機材】OLYMPUS E-1, ZD14-54F2.8-3.5, ZD50-200F2.8-3.5, CASIO EX-P505
大阪は梅田駅。
阪急電鉄の幾つも並ぶホームから1つを選択。宝塚線だ。小豆色の列車に乗り込む。
列車は発車。石橋駅に着くと、今度は箕面線に乗り換え。計30分ほどで終点・箕面駅に到着する。ごく短い列車の旅がここで終了。
駅から出る。秋の終盤、めっきりと寒くなってきたのを実感する。朝早いだけあって、駅前に人は少ない。
――さて、今日の目的はズバリ「紅葉」だ。自身、今年の紅葉狩りは10月頭の御嶽山・乗鞍岳から始めたのだけど、やがて低山に下りてきて、11月下旬の今日は遂に平地に到達した、というわけだ。その紅葉シーズンが終わると、いよいよ2005年も暮れる。
そして箕面は紅葉の名所。大阪駅の北方12kmに位置する、大阪平野の北のふちの町。
箕面駅前から歩き始める。時刻はAM7:07、方角は北。
商店街を抜け、スパーガーデン案内所の前を抜けていくと、ものの10分で箕面公園入り口に到着した。ここから「滝道」。舗装道だけど、峡谷を潜るように抜けていく薄暗い道と聞く。歩くのは初めてだ。
いつものように、いきなりトップスピードで歩き出す。
……にしても早朝ウォーカーがやたら多い。自分も結構な速度で歩いているのに、皆だいたい同じぐらいのスピード。
そんなわけで自分もウォーキングの人と間違えられるのか、すれ違う度に「おはようございます」と声をかけられる。
――「お早うございます」と挨拶を返しつつ道を急ぐ。昆虫館。瀧安寺。道の脇には時折、茶屋も現れる。「もみじの天ぷら」の看板もあるものの、どこも開店前。
肌に心地よい11月の朝の冷気。紅葉のトンネルに箕面川のせせらぎ――
紅葉は確かに素晴らしい。けれど時間帯が早過ぎた。この時期、こういった谷道に日が差し込むのは昼間限定であることに気付く。
途中、山に上がっていく遊歩道の入口も幾つか現れる。登っていけば明るい陽射しの下に出られる筈。……入り込みたくなるのを我慢して直進。
と、それまでぐねぐねうねっていた道が少し真っ直ぐになって、前方が開けた。そして前方に忽然と現れたのが、箕面大滝。
滝下に到着。ウォーキングをしていた人たちが体を休めている。ここを折り返し点として、また下って行くのだろう。それとは別に、滝道にはいなかった観光客然とした家族連れの姿も多い。どこから涌き出したのだろう?
それにしても――豪快に水を落とす滝。もし仮に、東海自然歩道を東京から歩いたのだったら、この滝の出迎えは感動ものだろう。そして、紅葉で真っ赤の滝道がゴールの後のプロムナード。
箕面を歩くなら秋がいい……勝手に、そう断定しておく。
先に続く道をキョロキョロ探す。けれど、それらしきものが無い。見当をつけて左岸、逆方向上方へ伸びる遊歩道に取り付く。
家族連れがいっぱい下りてくる。どうやら上に駐車場があるということらしい。樹林の中の勾配のきつい上り坂で、一度大きくターンして滝方面に再び向き直る。そういえば箕面のサルたちはどこにいるのだろう? 未だ活動時間では無いのか、気配は無い。
ほどなく峡谷沿いの府道に合流、歩道を北に向かって歩き始める。滝は遙か下方にあるのだろう、目には出来ない。
短いトンネルを1つくぐり、左に降りていく小道に興味を惹かれつつも府道上をそのまま進む。向かって来る人の流れが強くなって……大日橋駐車場に到着。この時間帯でも車がいっぱいだ。
府道をさらに先へ。山蔭に入り、人影も無くなる。動くものは、間歇的に走り過ぎていく車だけに。
コース始点まで府道ベタ歩きの予定だったのだけど……日和の良さがだんだん勿体無くなってきた。百年橋を過ぎると、頃合いよく自然研究路の入口が現れた。……そっちに行きたいなあ。
決断して、自然探求路に入る。ようやくの山道で、なんとなくホッとする。
序盤の登りもすぐに落ち着き、朝日の射し込む道を落ち葉を踏み締めつつ歩いていく。周囲は人工林に変わって紅葉は消えた。
ひと登りして稜線上の分岐に出た。ここで散歩中のおじさんおばさんに道を聞かれる。――自分も五月山へ行きたいなあ。でも、と地図で道を確認、下っていく道を選択する。
周囲は雑木林に変わった。明るい道。ほどなく府道に出る。
ビジターセンターはすぐそこだった。開館時間は10:00-16:00……まだ開いてないか。その脇手を進むと駐車場。
――そしてそれはそこにあった。「東海自然歩道」の名を刻んだ石柱。
ただ、果てしなく地味だ。案内板もあるけど、それも『おおさか環状自然歩道』のもの。確かに、ここから東京を目指す人なんて滅多にいないだろうけど、もう少し背中を後押ししてくれる「起点」であって欲しいよなあ……。
少し奥まったところにあったのが政ノ茶屋園地。朝の光が射し込んでいて、清々しい。
そしてここは「終点」でもある。雰囲気は申し分ない。東海自然歩道を歩く人たちの旅の道中が平安であらんことを。
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東海自然歩道・西の起点に立つ。高度は285mほど。
AM8:52、第一歩を刻む……と言っても、遙か東京を目指すつもりは毛頭無い。現に高尾山は一度歩いているし、丹沢の東海自然歩道区間もよく歩いた。そういう意味で、その「西の起点」に来たのはどちらかというと"郷愁"。道は繋がっているんだ、と懐かしむため。
今日のところは一区画を歩いて、東京・神奈川のそれとどのくらい違うのか、もしくは同じなのか、確かめてみるつもり。
――もっとも、それさえ「ついで」。主目的は紅葉狩り。
石の階段はすぐ途切れ、方角を東へと変えた。そこが自然研究路4号線との分岐。
――この4号線は勝尾寺までほぼ平坦に続くらしい。そう言えば、勝尾寺は紅葉の名所だと聞く。今日の目的を考えれば、自然探求路の方を選択すべきなのかも知れない。その先で東海自然歩道に合流すれば良いのだし……。
ただ、今日は登りを渇望している。ゆえに山の稜線を目指して東海自然歩道の階段を踏み上げて行く。
とは言え階段ばかり続くのもなあ、と思い始めたところで前方に陸橋が現れた。しかも、真っ赤な紅葉で飾られている。一転して道の印象が良くなるのだから、人の気分なんていい加減なものだ。
陸橋は府道4号を跨いでいた。こうやって見下ろすと、もうすっかり山の中の車道だ。左手には巨大な何かがある。何だあれは? 地図を確認、どうやらあれが箕面川ダムらしい。
陸橋を渡り切ると、ごく普通の山道へと戻る。――さあ、自然歩道も本番だ。
好印象を引き摺って、気持ち良く感じられる尾根道を進む。なにより周囲が自然林なので赤や黄に色付いた木々の葉を楽しみながら歩けるのが良い。
ただ、その後は北側から人工林と成り代わっていった。アップダウンも多い上に、見晴らしもほとんど無くなった。
何箇所かに休憩のためのベンチが設置されており、道標も多い。道の幅・状態とも申し分なく、良い散策道と言える。
――けれど、だんだん退屈になってきた。
前方に石のテーブルが見えた。近づいてみると、石の展望盤だということが分かった。分かったのだけど……肝心の、その展望がこの地点からはほとんど無いのはどういうことだろう? もしかしたら、自然歩道開通当時は展望があったのかも。「かの千里ニュータウンが間近に見下ろせます!」といった風に。
日本初の大規模ニュータウン千里――その謳い文句が喧伝されてから40年近くが経過。周囲の木々が高々と育つとともにニュータウンはニュータウンで無くなった。
時間の流れを思う。
高度もだいぶ増してきた。と、目の前に木道が現れた。ピークをこれで巻くらしい。
木道を渡り始めると、初めて北方への展望が得られた。と言っても、向こうもこちらと同じような一本の稜線が見えるだけ。
そしてAM9:31、最勝ヶ峰へ到着。標高は535m。ただ、山頂は開成皇子の墓があって立ち入り禁止となっている。……山頂に到達したという感じじゃあ無いなあ。
脇には説明板。少し休憩するつもりだったけれど、先を急ぐことにする。
……と、その先にちょっとした岩場があった。ここで初めて南方への展望が開けた。よし、ここで小休憩だ。
どっこいしょ、と腰を下ろして目の前の大パノラマを眺める。――淀川に沿う北摂の街並み、大阪万博公園と太陽の塔の背中。ただ、霞がかっていて、たいして遠望は利かない。
再び歩き出す。道は少し下るものの、すぐに上り勾配。石段が現れ「勝尾寺」を示す道標があった。
――勝尾寺は西国三十三所の1つ。千本のカエデがあると聞く。この時期、真っ赤に染まっていることだろう。……残念ながら、その赤はここまで届かない。ただ、勝尾寺の施設なのだろうか、石畳の上に石塔が並んだ区域があった。その先の「勝尾寺園地」への道標が立つ十字路も通過し、さらに上っていく。
あまりに上りが多いので地図を確認してみると、先ほどの最勝ヶ峰は単に稜線派生ピークに過ぎず、この先にもっと高い無名ピークがあることが分かった。……まあ、さっきのピークじゃあ物足りなかったし。
周囲は植林ばかりで紅葉も物足りない。もうすぐ箕面国定公園の領域から出るので、その先の山道もスギ・ヒノキばかりかも。……やっぱり勝尾寺に寄っておいた方が良かったかなあ。
やがて左手に整然と立ち並ぶ墓石が見えるようになる。北摂霊園だ。同時に北への展望も開ける。
で、今日のコースの最高地点はこのあたり。標高は600m近くなのだけど……それを示すようなものは見当たらない。そしてその場所にあるものも墓地ということで、なんか、あんまり達成感も無い。
その先では霊園の車道に出されてしまった。ここから車道歩き? いや、すぐに右手に歩道入口が見付かった。
さあ、下山だ。まだ10時過ぎなので早過ぎるような気がしてしまうけれど。と、車道の坂道を競技用自転車がつーっと走り抜けていった。
箕面国定公園からは脱したので、ここから先は大阪の里道ということになる。"北摂・京都西山"の5万分の1登山地図を広げ、この先の道取りを確認。
……でも山歩きだったらこのくらいの時刻からが本番なのに、などと思いながら下山道へ突入。
とりあえず次の竜王山を目指すための長いアプローチと考えておくか。竜王山は地図で見る限りは山らしい山。もっとも、竜王山の山頂はここより低いけれど……。
林の中の山道。結構、急で前につんのめらないように気をつけながら、それでも勢い込んで下っていく。
下り切ると、小さな広場に出た。脇には真新しい木製の自然歩道の案内板が立っている。ただし、またもや大阪環状自然歩道のものだ。これより、箕面市から茨木市に入ったことを知る。
ここを始点に舗装道が伸びていく。林道だろうか? 時刻はAM10:15。
フラットな舗装道。山肌を巻きながら東へ向かっている。
歩き出す。展望のある箇所の多い、明るい道だ――と、前方に停まっている車が現れた。近づくと、どうやら道脇の湧き水をポリタンクで汲み上げているらしい。
それからは再び静かになった。淡々と道を進んでいく。見えるものは環境クリーンセンターの大きな建物、府道とその路傍の集落、棚田。それ以外は緑。
――鄙びた山奥の集落だ、と言っても違和感は無いかも知れない。箕面駅は確かに郊外都市の雰囲気であった。そこから少し山に入っただけなのに、随分と雰囲気が変わるものだ。
道はごく緩やかに下りながら続く。行程は単調、気候が良いこともあって、眠たくなってきそうだ。車の往来も無い。まったく、山歩きでも無い。
やがて北摂霊園から下ってくる車道と合流した。さらに進むと、府道43号へと合流した。――ここで海抜370mほど。意外と、高度を維持している。
左折して1分ほど二車線の府道を歩く。次には道標に従って、左手に上がっていく別の細い舗装道に取り付く。その分岐には大きな丸い石があって目印になっている。
……とりあえず、街から離れていく方向でホッとする。
道標が2つ並んでいる。この先は「山脈自然歩道」との重複区間らしい。
……とは言え、何が変わるわけでも無かった。林が切れると棚田や段々畑が現れ、山里の雰囲気が色濃く漂っている。
やがて林間ばかり続くようになる。見るべきものが何も無い。と、道標があってほぼ180°のターンを指示される。直進していく山脈自然歩道を見送って、細く薄暗い下り坂に。
木立の道をくねくねと進んでいく。と、思ったら展望が開けて棚田の最上部の道となったりする。
――やっぱり、どうも山歩きとは勝手が違う。ピークを目指さないトレッキング、というのとも違う気がする。これが日本の自然歩道歩きというものなのだろうか。ただ、以前歩いた東海自然歩道の丹沢区間は単純に山の稜線歩きの登山道で常にアップダウンを繰り返していた。高い山の無い関西だからこう、ということなのかも知れないけど。
眼前に住宅地が現れた。泉原の集落だろう。
下り一方。住宅の並ぶ路地を抜け、真っすぐ下って行く。指導標らしきものが全く見当たらないのだから仕方がない。
下り切って、府道43号に突き当たった。見回すものも指導標は無し。どうやらコースから外れてしまったようだ。登山地図を広げてみるものの、いかんせん5万分の1、細かい道取りは分からない。
とりあえず方向は合わせよう、と、府道を東に歩き出す。すぐに泉原西バス停、AM11:12。
再度、地図を開いて思案。府道をこのまま進むと「キリシタン自然歩道」に合流するらしいけど、東海自然歩道は北方向へ引き戻る形だ。さてどうするか……。
ちなみに、バスはきっちり1時間に1本の運行となっていた。――諦めて帰る、という選択もあるけれど、悔しいからそれはしない。
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