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鵯越~天王吊橋

鵯越駅前
神戸電鉄・鵯越駅。脇に縦走路入り口
山麓バイパス烏原大橋
山麓バイパス烏原大橋をくぐる
菊水山を捉える
前方に菊水山を捉えた

AM9:30。鵯越駅は高度140m前後の高所にある。神戸の街を出発した電車が、これほど急激に高度を上げて行くのは大変なことだろう。

駅舎の右脇、細い道が縦走路入り口。なかなか、それと知らないと分からないようなところ。

――そちらへ。縦走路に入ってしばらく林の道を進むと、谷あいに沿った、静かな林道に出る。豊かな緑、車の通行も無い。

烏原ポンプ場を過ぎ、山麓バイパスの高架を潜り、緩やかに高度を上げていく。前後に、チラホラとハイカーの姿。

そして、鈴蘭台下水場を過ぎるとT字路にぶつかる。右折。道の先に菊水山が見えてきた。左手上方には、さらに高度を上げて行く神戸電鉄の線路が……。

と、「菊水山駅は廃駅になりました」の標示のある分岐。菊水山駅だ。ハイカー専用駅だったのだろうか? なにしろ、周りに住宅など全く無いのだから。

石井ダム
石井ダム。まだ真新しいように見える

AM9:52、石井ダム前を通過。

菊水山トンネルの入り口を眺めやりながら、ようやく菊水山登山道に入り込む。さあ、ここからは高低差280mほどの登りだ。きばらねば。

……と、ここで右膝の痛みに気づいてしまう。

もともと今年に入ってから痛みがちだった右膝が、硬い道の上ばかり歩いて来たためだろう、ここで再発してしまったようだ。まだ登りではほとんど無視出来るぐらいだけれど……下りが怖い。

登山道は樹林帯の中を進み見晴らしは無い。前後、家族連れハイカーが何組か。時折、眼下に菊水C.C.の緑の芝が目に飛び込んでくる。――素晴らしいのは、ここまで樹林帯がことごとく自然林であり、単調なスギ・ヒノキ林が見られないこと。新緑や紅葉の時期はさらに良いことだろう。今は、ちょっと新緑の時期を過ぎている。

登山道を淡々と登っていく。

菊水C.C.を望む
登山道から南西方向を望む。眼下には菊水C.C.と神戸電鉄の線路、遠方には高取山、横尾山、旗振山とこれまで歩いてきた道が一望
菊水山頂
菊水山(459m)の山頂広場。電波塔が立つ
菊水山からの見晴らし
山頂からは神戸市街への見晴らしが……

AM10:16、菊水山山頂到着。

一気に登ってしまったため、どっと汗が吹き出る。山頂は広場となっていて、山名を刻んだ大きな石碑と、電波塔が立っている。十数人のハイカーが、その広場の思い思いの場所でくつろいでいる。

残念ながら空は曇ってしまった。でも、まだ見通しは効いている。今日の目的は全山縦走とは言え、百聞は一見にしかずだ。

ポートアイランド
ポートアイランドと神戸大橋
神戸タワーとオリエンタルホテル
神戸タワーとオリエンタルホテル、メリケンパーク
港町
神戸港のキリンたち

山頂から見晴らす。

――神戸の街がすぐ間際に思えるほど大きい。三ノ宮の都市群から神戸大橋を隔てたポートアイランドまで、手を伸ばせば届きそう(と言うのは大げさだけど)。元町・神戸はやや右手にあった、神戸タワーの立つメリケンパークが目立っている。街への近さという意味では高取山に負けるかも知れないけれど、なにしろこの山は神戸・三宮の街の真裏に位置している。ハイカーに人気が高いのも納得できる眺望。

一方、東側にはもう、緑の山の連なりしか見えない。六甲山地の連なりを横通して見ていることになるのだ。見る方角によって、これほどの差。

先はまだまだ長そうだ……そう感じつつ、菊水山の山頂を後にする。

鍋蓋山
正面に見る鍋蓋山。菊水山より少し高い
菊水山北面のツツジ
登山道にツツジがチラ、ホラ

樹林帯を北進。アップダウンは大したことないけれど――やはり右膝は故障のようだ。下りでは、脚を引き摺るような状況になってきた。この事態も想定して少し固めの膝サポをしてきたのだけど……あまり助けにはなっていないなあ。

それにしても、今年はあまり山歩きしていないのに膝故障再発とはどうしたことだろう? 膝周辺の筋肉が鈍ったかなあ……。

中里町ヒルズ
中里町ヒルズ。登山道から間近に見下ろされる――

時折、風景に変化を与えるツツジの色鮮やかさが痛みを忘れさせてくれる。新緑は終わっているけれど、その後のツツジも良いものだ。

道は北から北東へと向きを変えた。地図によると、ここはどうやら城ヶ越というところらしい。下り傾斜も、次第に急に。

と、目の前に山間の住宅地が出現。ここまで何度か山の中腹に切り開かれた開発住宅地を目にしてきたけれど、ここまで几帳面に家々が並んでいるのは凄いかも。

城ヶ越
城ヶ越付近。高度400m前後の尾根道
堰

下り一辺倒となる。ゆえに、膝の痛みでかなり苦労。ただ、片足を庇って反対の脚に負担を掛けるのも良くない。両脚とも壊すなんてことになりかねないからだ。

そこまで行かないにしても、気を遣う分、体力消費はかさんでいく。まあ、このコース、エスケープルートは豊富すぎるぐらいあって何時でもリタイヤ出来るのだから、気は楽。


天王吊橋~市ヶ原

天王吊橋
天王吊橋。高度は280m程度まで落ちた
国道428号
吊橋の上から。国道428号が眼下に見える

AM10:40。樹林帯が切れた。

目の前に国道428号――その上を天王吊橋が渡っている。まさに風景が切り替わった感じ。

吊り橋を渡る。眼下には国道を走る車と天王谷川――なかなかの高度感だ。結構怖いのだけれど、国道まで下りてまた上り返す方が良いのか?と聞かれたら即座に首を振る。高度はもう、1mでも落としたくない気分。

ツツジの径
木漏れ日で明るいツツジの径
鍋蓋山登山道
鍋蓋山登山道を登っていく
ツツジ
満開のツツジ――ミツバツツジ?

急斜面の上り返しが始まる。

本日、300m・200m・400mと来て今は200mの山を登っているのだ――と、考えれば気も楽になりそうなものだけど。途中の住宅地歩きで思いの外、体力を奪われて結構ヘバっている。休んでは登り、休んでは登りの繰り返し。ああ、冷たい飲み物が欲しい……。

追い討ちをかけるように陽射しが降り注いできた。登山道は、たちまち明るいツツジロードと化す。……その光景を眺める余裕もあまり無くなり、辛抱しながら足を運び上げていく。

AM11:04、ようやく鍋蓋山の山頂に到着。涼しげな木陰がある静かな山頂。路傍のツツジと、展望に丁度良いベンチ。菊水山よりずっと落ち着いている。まあ、地味なのは否めないけれど。

眺望も良い。奥まった位置にある山だけれど、臨海部も見える。

鍋蓋山山頂
鍋蓋山(486m)の山頂。四等三角点がある
高取山
山頂からの眺望。これまで辿ってきた旗振山・横尾山・高取山もここで見納め
大竜寺
大竜寺
大竜寺の自販機
大竜寺の自販機

山頂を辞し、再び樹林の登山道へ。木立の緩やかな稜線を西進。歩きやすく、行程もサクサクと捗る。下り主体の道だけれど、膝の痛みとはなんとか折り合いが付いたよう。

再度越えを過ぎ、大竜寺に着いた。階段を上って本堂を見たいけれど……今日は遠慮しておく。

と、ここに待望の自販機が! 速攻、冷たい飲物ゲット、生き返る。

大竜寺山門
大竜寺山門。近畿三十六不動尊第九番、とある
橋脚
朽ちて葉で覆われた……橋脚?

その後は久しぶりに舗装道歩きとなる。大竜寺の山門を過ぎて、さらに直進。カーブの多い林道。勾配は下り。右手には再度東谷。

……頭を空っぽにして歩いていく。集中力をわざと切らして頭を休ませることも必要なのだ。これは、長歩きをするための経験則。既に歩き始めて5時間半が経過している。

道標に従い、林道を離れて山道に入っていく。

と、すぐに開けた場所に出た。市ヶ原の川原に着いたのだ。目の前に、大勢の家族連れが水遊びに興じている光景が出現。

林道
林道をだらだらと下る。正面に世継山(417m)
市ヶ原の川原
市ヶ原の川原に到着

何故?と思って地図を広げてみると、ここは新神戸駅まで2km強、三ノ宮まで4km弱の地点だと分かった。しかもその途中には布引渓谷と、百名瀑の布引の滝がある。

――要するに、ここは都市に住む人たちにとっての絶好の自然スポットということ。五月晴れの休日に人が多いのは、至極当然。

さあ、ここから全縦の中盤戦。時刻はAM11:35。

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