
鳳凰山。南アルプスの前衛の山――と言うには貫禄のありすぎる山。どちらかと言うと“白峰三山を守る城壁長”といった感じでしょうか。
甲府盆地に住まう人にとっては馴染みの山。果たして鳳凰が翼を広げているように見えるのでしょうか?地蔵ヶ岳のオベリスクを鳳凰のクチバシに見立てて……。



南アルプス北部の山。赤石山脈の支脈となります。地蔵ヶ岳・観音岳・薬師岳の三山より成りますが、観音岳・薬師岳はひと続きである一方、高さ的にも切れ込みにもハッキリしている高嶺が三山に含まれないのは、たぶん“甲府盆地”視点なのでしょう。
北岳・間ノ岳という高峰を取り巻く山の1つで、甲府盆地に近いこともあって人気は高いです。花崗岩の白さとハイマツの緑の織りなす世界は甲斐駒と同じですが、鳳凰山は長い稜線を持っているところが特徴。夜叉神峠からの長い縦走路を歩いてこの山に到達するコースが人気なのは、稜線歩きを堪能したいというハイカーが多いためでないかと思っています。




「オベリスク」とは記念碑という意味ですが、なぜ地蔵ヶ岳の石塔をそう呼ぶようになったかは分かりません。
――ただ、少なくとも何かを記念して作られたわけでは無いでしょう。れっきとした自然造形物なのですから。雄大で大らかな山容が多い南アルプスの中で、このような岩の造形物を持つ鳳凰山はキャラが立っています。
一方、高山植物の豊富さでは他のアルプスの山々に一歩劣るような気もしています。そんな中、タカネビランジが岩陰に供えるように咲いているのを見ると心が安らぎます。
鳳凰山から富士山を見よう!

なにしろ南アルプスの外殻の山ですから、富士山の間には甲府盆地が広がっており、富士山は裾野からキレイに見えます。御所山、千頭星山と前山がありますが、標高差があるため問題になりません。
具体的には、薬師岳からは遮るものなく、観音岳からは薬師岳の上に、地蔵ヶ岳からは観音岳の左に、高嶺からは観音岳・薬師岳の右にとそれぞれ特徴のある見え方になります。撮り比べてみるのも面白いでしょう。
なお、山頂部を外すと森に埋もれるので、木々の切れ目があれば、ということになります。富士可視範囲で言えば地蔵ヶ岳~燕頭山の稜線、辻山~夜叉神峠までの稜線も入るのですが……。
ちなみに、私は1度富士撮影にチャレンジしましたが、玉砕。

鳳凰山を日帰りで歩こう!
日帰りコース | 所要時間 | (登り/下り) | 累積高度 | 登降ピッチ | |
---|---|---|---|---|---|
1. | 青木鉱泉バス停/駐車場~中道~薬師岳~観音岳 (1,090m) |
10時間30分 | 6時間5分 | +1,816m -82m | +299m/h |
4時間25分 | -411m/h | ||||
2. | 広河原バス停~鳳凰峠~高嶺~観音岳 (1,520m) |
11時間 | 6時間25分 | +1,509m -183m | +235m/h |
4時間35分 | -329m/h | ||||
3. | 御座石温泉バス停/駐車場~西ノ平~燕頭山~鳳凰小屋~観音岳 (1,080m) |
13時間5分 | 7時間40分 | +1,814m -49m | +237m/h |
5時間25分 | -335m/h |






往復10時間以上かかるコースしかなく、基本的に日帰りの山ではありません。
ただし、高度差1,500m以上の登りをこなせる体力があれば、日帰り可能となるコースも用意されています。時季や天候は十分選んだ上でのチャレンジとなりますが……。
やはり、青木鉱泉から中道を伝って薬師岳経由で観音岳に登るコースがもっとも狙いやすいでしょう。累積標高1,800mとはいえ、中道は下山に多用されるバカ尾根で、歩きやすい道です。最短を目指すにはこのコースしかないでしょう。一方、青木温泉からドンドコ沢を伝う人気コースは1時間半ほどコースタイムが加算されます。短期決戦には厳しいでしょう。
同じように御座石温泉から燕頭山経由で尾根伝いに進むコースもありますが、長くダラダラした尾根を歩く分、時間が掛かってしまいます。



ちなみに私は、登りは青木鉱泉からの中道経由、下りは燕頭山経由で御座石温泉に下りるコースを使いました。軽量装備で挑んで時間短縮を図ったものの、帰りのバス時刻にはギリギリでした……。



じつは、一番楽に日帰りしたいなら、広河原からのコースが一番と思っています。最短コースではありませんが、それは高嶺・地蔵ヶ岳を通過するためで、累積標高で言っても青木鉱泉からのコースより300m少ないです。
――ただ、広河原へのアクセスの制約が大きいのが難です。広河原に始発のバスに乗って到着し、最終便で帰るとしても行動時間は10時間半しかなく、収まりません。ハイシーズンであれば広河原の混み様は尋常では無く、行動可能時間はさらに短くなるでしょう。なんとかバスに間に合わそうと急いで怪我するリスクを考えますと、お勧めは出来ません。