
この山には「天城越え」など純和風のイメージがあります。ただ、伊豆半島が大昔、太平洋に浮かぶ島であったことを知れば少し印象が変わるかも知れません。そう、この山はある意味、舶来の山。
どちらにしても富士山の南方にある唯一の百名山。貴重な存在であることは間違いありません。


伊豆半島は天城山脈の主峰、天城山。富士箱根伊豆国立公園内の百名山は、富士山とこの山のみです。
なお、天城山というのは一連の山塊を示していて、その主な峰に万三郎岳、万二郎岳、小岳などがあります。最高峰の万三郎岳は標高1,406mで山頂はそのまま伊豆半島の最高地点。小狭い広場ですが、一等三角点が設置されています。



天城山脈は太平洋に浮かんでいた島がフィリピン海プレートに乗っかって本州にぶつかった結果出来上がった「シワ」といいます。その力の掛かり具合によってU字型に歪んでおり、雨雲の掛かりやすい地形です。
――半面、他の伊豆の山々から抜きんでて高度があるので、晴れた時には伊豆半島の南側も北側も一望出来る絶好のビューポイントに……なると言いたいところですが、実際には稜線上には木々が密生していて切れ目を探すのに苦労します。ただ、そのブナの立ち並ぶ森は素晴らしく、新緑や紅葉の時季には大勢のハイカーが訪れます。春のシャクナゲも人気。

天城山から富士山を見よう!




なんと言っても南の方角から富士山を見ることが出来る唯一の百名山。しかも手前に高い山はありません。伊豆半島の“くびれ”そのままに、左に駿河湾・右に相模湾、と海を左右に置いた構図も可能と分かって黙っている富士眺望マニアはいないでしょう。
……とは言え、富士山を眺めるために登るべき山ではありません。登山道のほとんどが木々で阻まれ、北方を眺められる箇所はごく限られているからです。
まず万三郎岳山頂ですが、かつてあった北方の見晴らしは失われました。稜線を少し西に進み、木々の切れ目を探してなんとか、という感じです。
おそらく、もっとも見晴らしが良いのは万二郎岳の下のガレ場だろうと思いますが、こちらも木々に埋もれていないか心配。
富士眺望を求めて天城山縦走路を西へ向かうと、戸塚峠手前で木々の切れ目から眺望の得られる箇所がありました。樹木の生い茂る季節は厳しいかも知れません。
その次となると八丁池見晴台ということになりますが、全方位の展望ながら富士山はやや山の陰になって見切れています。
あとは上り御幸遊歩道で注意していれば見つかる、という程度でしょうか。見逃さないようにしましょう。

天城山を日帰りで歩こう!
日帰りコース | 所要時間 | (登り/下り) | 累積高度 | 登降ピッチ | |
---|---|---|---|---|---|
1. | 天城縦走登山口バス停/駐車場~四辻~万二郎岳~石楠立~万三郎岳往復 (1,045m) |
4時間40分 | 2時間30分 | +525m -168m | +210m/h |
2時間10分 | -243m/h | ||||
2. | 天城縦走登山口バス停/駐車場~四辻~涸沢分岐~万三郎岳往復 (1,045m) |
4時間50分 | 2時間35分 | +515m -156m | +199m/h |
2時間15分 | -229m/h | ||||
3. | 天城縦走登山口バス停~万二郎岳~万三郎岳~小岳~八丁池~氷室~水生地下バス停 (1,045m) |
6時間50分 | 2時間30分 | +891m -1,334m | +210m/h |
4時間20分 | -269m/h |







天城山は日帰りの山です。山小屋や避難小屋はありません。
――しかも、ハイカーの多くは天城高原からの周回コースを採っているようです。登りは万二郎岳を経由し、下りにはシャクナゲコースを使うという道採り。コースタイム・高低差とも手頃な上、天城高原の駐車場ないしJR伊東駅発のバスが使えるためアクセスも良好。首都圏からの日帰り圏内であることもあって、シーズン中には混雑します。なお、丸木階段では土が抉れて歩きにくいところもあるので注意。
一方、涸沢歩道は通行止めになったようです。同コース上にシャクナゲ群生地があると思うのですが、どうなんでしょう?
次に山頂に近い登山口は八丁池バス停ですが、'21現在、バス運行停止中。駐車場もあるので、ここから車を置いて山頂を往復してくることも可能だと思います。コースタイムは6時間ほど……静かに歩けるのが特徴でしょうか。



健脚向きには、天城縦走歩道を歩き抜けるという選択も可能です。天城高原から八丁池を経由し、伊豆半島中央を縦断する国道414号に到達するコース。天城山を山脈として実感でき、豊かな自然も堪能できます。逆コースは高低差があるのでさらに健脚向き。
なお、八丁池から国道まで複数のコースがあって選択に悩みます。一番短いのは大見分岐から谷筋に下りて水生地下に至るコース。天城峠に至るコースはやや時間が掛かります。