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(山行年'05)

甲武信岳こぶしだけ

(2,475m)

三宝山・甲武信岳・木賊山
三つこぶ駱駝のような三宝山・甲武信岳・木賊山。握りこぶしのように見える? 10月中旬、金峰山より東北東に見る
甲武信岳
木賊(とくさ)山との鞍部。どこかしら気取った感のある甲武信岳

長野県・山梨県・埼玉県の県境に立つ山・甲武信岳。標高2,475m。秩父多摩国立公園の中にあります。

山名ですが、拳(こぶし)、から来ているのでは無いそうです。甲州、武州、信州の境にある山で、その頭の文字を取って甲武信。このような山は単純に“三国山”と名付けられてしまうことが多いように思うのですが、それを甲武信岳と名付けた人のセンスには敬服。なんたって語感が良いです。……もし「コウブシンダケ」と読ませるのだったらアレですが。

なお、この山の山頂直下には千曲川、荒川の源流もあって、つまりは太平洋と日本海の分水嶺にもなっています。山頂からの展望も素晴らしいので、この山に登るとちょっとした「日本の真ん中」感覚が味わえるかも知れません。

広瀬湖
木賊山へ登る途中、振り返ると広瀬湖
甲武信岳山頂
甲武信岳の山頂。見晴らしは270°ぐらい
荒川水源
甲武信山荘前の荒川水源の碑

私はこの山に一度だけ登ったことがあります。10月半ば、西沢渓谷からの日帰り往復。初めて奥秩父の山に登ったのですが、「奥秩父の山はひたすら森ばかり」という印象がこの時に付きました。2,500m級の高山でこそありますが、山頂まで森林限界線は突破せず、深い針葉樹林帯の中。秋なのに紅葉もほとんど見られず、濃い緑の匂いが鼻に付きました。

と言うわけで、変化をつけるためにも三宝山も往復しておくことをオススメします。じつは甲武信岳より少しだけ標高がある一等三角点の山です(そして、富士山と甲武信岳を一枚の構図に収めた写真を撮れる場所)。途中の三宝石に寄ると、ちょっとだけ岩稜世界も。

――じつは、甲武信岳は遠方から見ると周囲の山に埋もれてしまって、同定がけっこう難しいのです。雁坂峠から甲武信岳・三宝山の一塊で判別することが多いので、少し幅広く歩いておくとこの山の探し甲斐もあるというもの。





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甲武信岳から富士山を見よう!

富士
戸渡尾根最上部より富士山を見る。左奥に見える山影は大菩薩嶺、手前は広瀬湖。10月中旬

甲武信岳は、富士山がきれいに見える山です。

――あけっぴろげに見える、という意味ではありません。近景には大きく山稜線があって、富士山とは遠く隔たっていることを感じさせるような遠近感が得られる、という意味です。

一方、西沢渓谷から登っていくと、高度1,500mを突破すれば富士山の見られる高度を得ます。ただ、先に書いたように、登山道は深い森。それでも、上部にいくほど樹林の切れ目が出てきて富士山が覗けるようになってきます。

なお、計算上では、国師ヶ岳~甲武信岳~雁坂峠までの甲信・甲武国境の稜線上のどこからでも富士眺望は可能なのですが、これも実際のところは樹林の切れ目からの富士探しになると思います。

甲武信山頂からの見晴らし
甲武信岳山頂より。左端の富士山の右下に乾徳山。一番高く見えている北奥千丈岳・国師岳と、その右の朝日岳に挟まれて、遠景の白峰三山。さらに金峰山、中央アルプス、八ヶ岳、北アルプスと続き、少し手前の御座山を過ぎれば浅間山。最後に、でっかく三宝山
甲武信山頂から南/28mm
甲武信岳山頂より南。f=28mm相当

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甲武信岳を日帰りで歩こう!

日帰りコース所要時間(登り/下り)累積高度登降ピッチ
1. 毛木平駐車場~ナメ滝~千曲川源流碑~山頂
(1,455m)
6時間50分3時間40分+1,020m
-0m
+278m/h
3時間10分-322m/h
2. 西沢渓谷入口バス停・駐車場~村営西沢山荘~戸渡尾根~木賊山~甲武信小屋~山頂
(1,095m)
9時間50分5時間50分+1,517m
-148m
+260m/h
4時間-379m/h
3. 毛木平駐車場~十文字峠~大山~武信白岩岳~三宝山~山頂
(1,455m)
11時間30分6時間30分+1,324m
-304m
+203m/h
5時間-265m/h
4. 大弛峠駐車場~国師ヶ岳~国師ノタル~東梓~両門ノ頭~富士見~ミズシ~山頂
(2,365m)
12時間5分6時間10分+803m
-698m
+130m/h
5時間55分-136m/h
西沢渓谷駐車場
国道140号脇の西沢渓谷駐車場。渓谷観光客用
戸渡尾根登山口
西沢渓谷にある戸渡尾根登山口
針葉樹
山の中腹は深いコメツガ・シラビソ林

マイカー利用前提となりますが、基本的に日帰りに可能な山です。

最短は、長野県側の千曲川源流遊歩道入口の毛木平駐車場に車を止めて登っていくルートですが、歩いたことが無いので詳細は不明。毛木平起点では、3時間の追加で甲武信岳から三宝山・十文字峠経由の周回コースも選べるようになるのもポイントです。

一方、首都圏からだと、山梨県側の西沢渓谷駐車場に車を置いて登るのが一般的だと思います。国道140号・雁坂トンネルの山梨側出口の直ぐ先に西沢渓谷入口がありますので、首都圏からのアクセスは良好ですが、コースタイム・標高差とも一気に厳しくなります。登山道自体、歩きやすくリスクは少ないですが、日帰りする場合は、なるべく朝早くから歩き始めることが必要です。なお、JR中央線・山梨市駅から西沢渓谷入口へバスの便がありますが、行動可能時間は最大6時間ほどなので山頂往復の日帰りは無理。

さらに、遙か西の大弛峠駐車場から甲信国境稜線上をひたすら歩いて到達するルートもあります。山頂でその日帰りチャレンジをしている人に会いましたが、道中には「何も無い」そうです。距離も往復20km近くあるというロングコース。

ちなみに、埼玉県側からの日帰りコースは――ありません。残念。

甲武信山荘
甲武信岳の下(?)にある甲武信山荘
苔の道
稜線上には、苔むした道が多い
轍
西沢渓谷への下山路には朽ちた軌道が

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