
――標高2034mの山、というより高原。
――山道、ではなく牧場を歩く。
――観光客大勢で登山客は無勢。
そんな、美ヶ原。この麗しき名前をいったい誰が付けたのでしょう?

に、しても。
三城いこいの広場から始まる、ひと気の無い王ノ頭直登コースの急斜面を一生懸命登っていたら、真っ白なガスの中からいきなりヌッとでかい建物が姿を現したのにはびっくりしました。そう、美ヶ原の山頂は、大きなホテルが鎮座し通信用鉄塔が立ち並ぶおよそ "名山" らしくない居姿で出迎えてくれます。
逆に言えば、百名山の中で「キャラが立って」います。山歩きをしたい向きにはマッチしませんが、それでも高度2,000mのフラットな高原を巡り歩くというのは、奇異な経験になると思います。
なお、観光開発されている山ですので、車でもバスでもアクセスは容易。美術館などもあり、1日ゆっくりと過ごせます。八ヶ岳や日本アルプス、浅間山などへの展望も良いです。避暑目的にもマッチ。

ちなみに。
美ヶ原を構成するいくつかの2,000峰の中で茶臼山だけが登山者のテリトリーです。山頂は小狭く、牧場と逆側の南方のみの見晴らしと眼下のカラマツの林が、この高原のあまりにも開放的な雰囲気から一線を画してくれます。高原牧場からは、ちょっとした木立で隔てられているので、観光客もなかなかこちらまでは来ません。ある意味、ホッとさせてくれる場所です。
そして、この茶臼山から三城へ至る登山道は唯一、美ヶ原を「山」と認識させてくれる道かも知れません。三城は高度1,400mほどにあって、美ヶ原に上がるコースを6本も擁しています。周回コースで美ヶ原に「登る」ことも出来るというポイントです。



さらに、茶臼山から南には高度1,600-1,800mの稜線を伝って霧ヶ峰に至る道も伸びています。ロマンが感じられる道ですが……
八島湿原までのコースタイムは5時間40分、距離は12kmほど。
美ヶ原から富士山を見よう!


手前に大きく霧ヶ峰への稜線があるのが少し邪魔ですが、富士山はその先に飛び抜けて見えるようです。そして左には八ヶ岳の峰々、右には南アルプス――。
注意すべきは、美ヶ原が広い平原であるため、南側の山の“縁”ないしは幾つかある峰の上からでないと富士山が見えないということです。東に行くほど富士眺望は厳しくなり、牛伏山でギリギリ、東端に位置する物見石山まで進むと、もう無理です。北方は武石峰まで進めば富士が頭だけ出してくれるようです。
ベストの眺望ポイントは王ヶ頭、ないし茶臼岳だと思います。それと、鹿伏山からは美ヶ原の牧場風景を下部に配せるかも知れません。いずれにしても自身、撮影に成功していないので未だ予想。

美ヶ原を日帰りで歩こう!
日帰りコース | 所要時間 | (登り/下り) | 累積高度 | 登降ピッチ | |
---|---|---|---|---|---|
1. | 美ヶ原自然保護センター(美ヶ原駐車場)~王ヶ頭山頂 (1,905m) |
40分 | 25分 | +130m -1m | +312m/h |
15分 | -520m/h | ||||
2. | 山本小屋バス停・駐車場~美しの塔~塩くれ場~王ヶ頭山頂 (1,940m) |
2時間10分 | 1時間10分 | +95m -1m | +81m/h |
1時間 | -95m/h | ||||
3. | 三城バス停・駐車場~三城荘~ダテ河原~王ヶ頭山頂 (1,410m) |
3時間50分 | 2時間10分 | +650m -26m | +300m/h |
1時間40分 | -390m/h |







日帰りの山ですが、マイカー登山にほぼ限定されます。というのは、JR松本駅からのバスは1日2便で、東京駅で始発の新幹線に乗っても間に合わないからです。
最高点へは北側、県道62号を辿ってゲート直前にある美ヶ原自然保護センターの駐車場に車を停めての往復が最短になります。しかも、往復40分という短さは登山でもハイキングでもピクニックですらもなく散歩レベル――百名山に登ったと言うには少々おこがましいかも知れません。
メジャーなのが山本小屋を基点に高原を廻るコース。山本小屋へは夏期、松本駅から路線バスも出ています。こちらから最高点へ一直線に進むと1時間余りですが道はフラット――牧場歩きそのものです。
山登りしたいなら三城が起点となります。高度差は650m。森林地帯から始まるので、視覚変化の演出が得られます。
