
おそらく、百名山の中ではマイナーな山。アルプスには属さず、妙高山域にある戸隠連峰の最高峰となります。もっとも、戸隠連山のギザギザした特徴的な稜線に比べると素直な山体。戸隠富士の別名があるほどです。
「高妻山」は「乙妻山」と一緒に眺められることが多いです。山名にどのような印象を持つかは、人それぞれでしょう……。

戸隠富士、と言ったところで、この山を端正な円錐型に眺められる方角は南方からのみ。戸隠山山頂から見る戸隠富士は有名であるものの、後は遠望になります。従って、この山の印象は大抵、乙妻山と繋がったずんぐりむっくりした山。
また、この山域で目立つのは飯綱山、黒姫山、妙高山です。さらに間近にある戸隠連山の派手な見た目に比べると、高妻山は(標高こそ300m勝るものの)地味な部類に入ります。登山コースもほぼ一本切りで営業山小屋も無く、唯一ある避難小屋も原則泊まりは出来ず、また途中にトイレもありません。それでいてコースタイムは8時間を超えます。
――マニア好きする山、と言えるかも知れません。

森林限界線は2,000m付近にあるため、五地蔵山から高妻山へ至る稜線で好展望が得られます。戸隠山、飯綱山、黒姫山は大きく、頸城三山、四阿山、三国山脈、さらに長野盆地を越えて浅間山、奥秩父、富士山、八ヶ岳、南アルプスが遠望されます、さらに山頂からは北アルプス・後立山連峰の真正面――つまり、高妻山は高度的にもロケーション的にも一等級の展望の山と言えます。
なお、戸隠牧場から一不動へ至る区間はクサリや渡渉が連続して変化がある一方、厳しさもあります。迂回路として新たに弥勒尾根登山道が造られたため、山頂到達のハードルはやや下がりました。





高妻山から富士山を見よう!


富士山は良く見えます。170kmという遠望ですが、富士山の位置がちょうど奥秩父と八ヶ岳の合間に当たるからです。
計算上は高度1,500m以上で富士を眺められる高さを得ますが、そのあたりは森林帯ですので、実際のところ富士が眺められるのは、弥勒尾根の上部、四不動・三文殊の南斜面、八観音から高妻山山頂のところどころ、ということになると思います。また、富士山が見えると言っても中腹より上、それも小さくしか見えませんので、見逃さないよう注意。八ヶ岳連峰の右端、蓼科山を目印にすれば良いでしょう。
なお、高妻山~乙妻山の稜線ですが、富士の方角には高妻山が立ちはだかるため、残念ながら富士眺望はありません。

高妻山を日帰りで歩こう!
日帰りコース | 所要時間 | (登り/下り) | 累積高度 | 登降ピッチ | |
---|---|---|---|---|---|
1. | 戸隠キャンプ場バス停・駐車場~戸隠牧場~弥勒尾根新道~六弥勒~八薬師~山頂 (1,171m) |
8時間20分 | 4時間45分 | +1,268m -114m | +267m/h |
3時間35分 | -354m/h | ||||
2. | 戸隠キャンプ場バス停・駐車場~戸隠牧場~滑滝~一不動避難小屋~五地蔵山~山頂 (1,171m) |
8時間35分 | 4時間55分 | +1,270m -117m | +258m/h |
3時間40分 | -346m/h |








日帰り前提の山です。本サイトでは、最短コースタイム6~9時間の山は山中1泊を考えるべき、というスタンスなのですが、泊まれる場所が無い以上、仕方ありません。コース上に唯一存在する一不動避難小屋も基本的に宿泊設備ではありません。従って、コースタイム8時間20分、高低差1,200mを日帰り出来ることがこの山に挑むための条件になります。(ちなみにトイレもありませんので、携帯トイレは必携)
もっとも、尾根道の弥勒尾根登山道を使うなら難度は大したことはありません。旧来の大洞沢沿い登山道は沢沿いの道だけあってクサリも多く、スリルもありますが疲れます。そのためか、登りは一不動経由、下りは弥勒尾根を使うハイカーが多いように見受けられました。安全観点からも尾根道での下山は適切と思います。
……と、いうように高妻山には戸隠牧場から尾根沿い、沢沿いの2つのコースしかありません。両者は六弥勒で出合い、あとは山頂まで一本道です。コースの選び方にバリエーションはありません。
その一方で、アクセスには恵まれています。登山口のある戸隠キャンプ場は戸隠高原の一角にあり、長野盆地からのマイカーアクセスは容易です。さらに、長野駅から戸隠キャンプ場まで、バスの運行も多くあります。さすがに首都圏から新幹線を使っての当日日帰りは厳しいですが、高速夜行バスなどは使いやすいと思います。
