- 江戸へ続く道 -
【踏 行 日】2008年9月中旬
【撮影機材】OLYMPUS E-410, ZD14-54F2.8-3.5, ZD50-200F2.8-3.5, CASIO EX-P505
今年早々本線踏破を果たしてしまったので、その後、どうも腑抜けている。支線を中途半端に歩き残しているのに、なかなか「行こう」という気にならず、他のところに浮気などしてしまっている。
そこで、この秋から冬にかけて山辺・恵那支線の残コースを歩き切ろうと計画立てた。そうなると目玉は今日歩く区間、中山道コースになるだろう。なので出来れば紅葉シーズンにあてがいたかったものの、(1)距離が長く、晩秋に歩くと途中で日が暮れてしまう(2)夏後半が天候不順でまったく外に出れず、いい加減ストレスが溜まったので長歩きしたい――という2つの理由で赤い電車に揺られることになった。
犬山駅からは名鉄広見線。列車は濃尾平野を後にして丘陵地帯に入り込む。善師野付近で東海自然歩道の渡る踏切をチェックしてしまうのは、もはや習慣か。
多治見盆地に出た。一度夏に歩いて辟易した地域だ。列車は南へと向きを変え、新可児駅のホームへと滑り込んでいった。ここで枝線へ乗り換え。
列車はさらに東へと進み、多治見盆地も背後となった。そして終点の御嵩駅に到着。
――昨年の7月以来、二回目の御嵩駅。ここまで来ると濃尾平野からは随分と隔たりを感じる。
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御嵩駅前に立つ東海自然歩道の道標を確認する。ここから、いよいよ旧中山道。といっても最初は車道から。おもむろに歩き出す。AM9:44。
――長距離コースを歩くにしては遅めの出発時間。ペースを保つことが必須になるけれど、ここ1ヶ月間、天候不順が続いてろくに運動していなかったので、どうなることやら。
秋空に太陽が戻ってきたのは有難いこと。なんとか一日、曇らずこのまま……
と言いつつ願興寺に立ち寄り。前回も立ち寄ったけど、寺社は季節が変わると雰囲気もガラリと変わる。スルーするは勿体ない。
境内は――静かだった。誰もいない。そして、何も変わっていないように見える。そういえば前回訪れたのって昨年の7月だっけ? 季節、ほぼ同じだったか……。
それでも中山道をこれから歩くのでと参拝。江戸時代の旅人たちもここで道中の安全祈願をしてただろうし、なんて勝手に思いながら。
中山道に戻って再び歩き出す。柳の立つ唐沢橋を渡ると道幅が狭まり、建物の雰囲気が旧街道っぽくなった。御嵩宿だ。中山道49番目の宿場。
現れたのは中山道みたけ館。開館は9時なので未だ開いていない。まあ、いつか中山道をきちんと歩く時に立ち寄ればいいさ。
――とにかく今日は時間に余裕がないので寄り道は極力しないと決めている。
時間帯が早いからか観光客の姿もほとんど見当たらない。そんな静かな街道を足早に歩いていく。幾つか古い建物が続いて、そして現代の風景に戻った。
商店街を抜ける。T字路に出て中山道が左折――でも東海自然歩道は直進だ。中山道コースと言っても、中山道の道採りと完全一致するわけじゃない。
いきなり田園地帯に出た。
広々とした見晴らし。そういえば前回、御嵩駅に向かって歩いていく時もこんな風景だった。前方に見えていた緑の小山に辿り着くと手前に川が横切っていた。可児川だ。東海自然歩道とよく絡む川。
橋を渡らず左折。川沿いを歩いていくと二車線車道に当たった。また左折して車道脇の歩道歩きに。
このまま中山道に合流するのか、と思ったら右手に指導標を見付ける。右折して路地へ……あれ? 次の道標はどこ?
とにかく中山道は左にあるのだからと石仏のあるT字路を左折。集落の細い路地を歩いていく。最後、潜り抜けるようにして2車線車道に出た。ここが国道21号――中山道だ。対岸には指導標も立っていた。道の選択は合っていた。
右折。国道21号歩きとなる。旧中山道と国道の重なっている区間、車の往来が多いのは仕方がない。東海自然歩道本線では三重で旧東海道の一部も歩いたけれど、あっちでは国道歩きはほとんど無かったのになあ。
10分ほど歩いたところ、木立の下にいきなり「和泉式部の廟所」を示す道標、って言っても分岐があるのは少し先。訝しんだものの、少し進んでから左折。
……何もない。戻って、先ほどの道標の先を良く見る。木立を潜ってすぐ和泉式部廟所だった。こういうものだったとは。イメージが全く無かったので気付けなかった。AM9:34。
再び国道に戻って歩き出す。すぐに今度こそ左折を示す指導標。ようやく静かになる。
次の交差点では右折して、さらに左折。右に田園地帯を見ながら道なりに歩いていく。のんびりとした里風景に心が落ち着く。
2車線の車道に突き当たった。みたけエコラインだ。旧中山道は少し左にズレたところから再開しているようだ。
――その角には簡易トイレが設置され、ちょっとした休憩場所になっているようだった。でも、まだまだ序盤、と、そのまま通る過ぎる。
だいぶ空間が押し詰まってきた。両脇から緑が迫り、田園の幅も次第に狭くなっていく。山里の雰囲気に近くなってきたけれど、旧街道の多くの区間は山道か、またはこんな里道であったのだろう。
民家が少し高い位置にあるのは洪水に備えたもの?
その民家もポツ、ポツとしか見当たらなくなった。そして、右手に新旧2種類の道標。どうやら田園を横断して峠越えに入るようだ。……それにしても隣の宿場までの1/3も歩いていないのか。今日は宿場4つ歩く予定なのだけど。
L字型に田園地帯を渡ると、「牛の鼻欠け坂」と示された坂道。あまりの急坂に牛の鼻が地面に付く、なんていわれ。
――上る。今日初めてまともな上り。ところが斜面の手前で左にカーブ。
大きく迂回し、さらに右にヘアピンを切って、さらに上る。……いや、勾配キツくないのだけど。これはたぶん、現代人仕様の牛の鼻欠け坂。昔は斜面を直登していたと想像。
ほどなく勾配も消えて平坦に。そして緩く下り始め、舗装道に接続。山間の棚田地帯に下りていく。西洞集落だ。
別の車道に当たって左折。緩い上り坂となる。丘陵地帯に入ったことを実感。
さらに別の2車線車道に合流。集落を後にして再び林間へと入っていく。
と、左手、木々の葉に潜むように耳神社。珍しい名だと思って解説板を読むと耳の病気に御利益があるとか。なるほど、錐がぶら下がっているわけだ。
さらに進むと再び集落に出た。小広い山間に幾つか民家が立っている。
道標を見て右折、と、目の前に現れたのは石畳。謡坂だ。
石畳をゆるやかに上っていく。公園の遊歩道のような石畳だ。途中に立っていた解説板を読むと「上り坂がとても急なため、旅人たちが自ら歌を唄い苦しさを紛らわした」なんて書いてあった。
――鼻歌交じりで登れるような勾配だと思うけど。自分の場合、どうしても登山道基準になる。
ベンチを過ぎ、石畳から舗装道に変わって上り坂は続く。道が平坦になると少し上空が開けた。十本木茶屋跡だ。その先、別の車道に合流したところが十本木立場。今は何も無いけれど。
2車線の車道となったものの、なおも上り坂。左方に謡坂の棚田地帯が見え隠れしている。
大きく左にカーブしながら道が下り始める、と、そこに一呑清水。銘水の泉、とあるけど「生水での飲用はしないで」とも。
そこから2車線車道と分かれて細道に入る。木々が茂って薄暗くなり、路面は砂利に変わった。その先に現れたのが――
唄清水。小さな水溜まりだけど泉なのだろう。台状の解説板は、例によって文字は消えていて読めないけど。ここで小休止。
再び歩き出す。X字路を抜けると再び道は上り坂となった。気合を入れて上っていこうとすると直ぐに「御殿場」の標示。東海自然歩道のコース案内板も立っている。
階段の向こう、あずま屋の屋根が見えていた。上っていくと山頂のような広場。ただし草ぼうぼうだ。これは良い休憩所、と腰を下ろす。展望がそんなによくないのは残念。
5分ほど休んで、出発。再び薄暗い道を歩き出す。下り坂。やがて次の集落が現れた。
津橋の集落。山間だけれど、けっこう広い空間。棚田を見下ろしながらその集落に下りていく。
交差点に出た。……ええっと、旧中山道はどれだ? 正面の県道65号に道標を見付け、そちらへ進む。
津橋川を超えると道標は右の脇道へ。民家の合間を抜けていくと別の車道と交わった。その左に見える小屋って……公衆トイレ? コースから外れているから見逃しそうになった。
その交差点を越えると道は細くなり、そして上り坂に変わった。再び丘陵へ上がっていくようだ。アップダウンの繰り返しだけれど、疲れるのは未だ早い――。
道は再びダートに変わる。上り坂が終わって道が落ち着くと、少しペースアップ。流石にまだ1つ目の宿場にも着かないのは心配になる……と、現れたのが鬼岩公園分岐。「ようこそ瑞浪市へ」の案内板も立っている。
その先に鴨之巣一里塚。随分とハッキリした一里塚だ。
――そのまま通り過ぎる。起伏はあるものの木漏れ日の歩き易い道、ペースは落としたくない。
息を弾ませながら歩いていくと道は下り坂になった。途中、「鴨之巣道の馬頭文字碑」。小さい? その先、道脇に平らになった広場。ベンチが置かれ解説板が立っている。秋葉坂の三尊石窟だ。3体並んでいるのは、ちょっと珍しいか。
その「秋葉坂」をひと下りすると2車線の車道に出た。合流して、さらに下っていく。右手に見下ろせるのは広々とした棚田地帯――なんか、今日はこのパターンが多い。でも、いよいよ次の宿場だ。
下り切ったところの十字路が平岩の辻。旧中山道は直進――なのに東海自然歩道の道標は左折。0.9km先の開元院。ここで大回りさせるか……。
県道366号を辿っていく。昼までに細久手に着きたかったけど、既に正午を過ぎてしまった。色付いた稲穂を見ながら足早に歩いていく。空に入道雲が湧き出しているのも少し気になる。
門が見えてきた。開元院だ。大回りしてまでコースに組み込まれた寺社はどんなものだろう? と門を潜る。
――次の門が100mほど奥にあった。先を急こうかとも思ったけど、やっぱり立ち寄る。
開元院は思っていたより小ぶりのお寺だった。宗派は曹洞宗。
コースまで戻る。……さあ、次はようやく細久手だ。方向を東に変え、細い棚田地帯を上っていく。集落の中心部に向かうのかと思っていたけど、どうやらもう1つ丘を越えるようだ。
民家も見当たらなくなり、棚田も終わった。やがて薄暗い森の中へと入っていく。
道は右にカーブ。中山道を目指して木漏れ日の森の中をただただ歩いていく。周囲は蝉時雨で騒がしい。ツクツクボウシの鳴き声ばかりなのが夏の終わりを感じさせるけど……って、もう9月半ばなのだけど。
道は上り基調。細久手は意外にも高いところにあるらしい。足に負荷は掛かるけどペースは落とせない。
下り坂に変わった。左に鳥居。「日吉」と「愛宕」が併記された神社。
その先で車道に突き当たった。旧中山道を示す青色の道標も立っているので間違いない。左折。
なおも上り坂。家々が両道脇に立ち並んでいる。ここはもう細久手集落なのだろう。そう古い家並みというわけではないなあ、と思っていたら、左手に大黒屋旅館が現れた。その先には駐車場があって東海自然歩道のコース案内板が立っていた。ここが宿場の中心だろうか。PM0:41。
観光客は見当たらなかった。隣の御嵩、大湫と比べると地味であることは否めない。それでも、田も何もないような土地に家々が密集しているのは不自然な感じがする。かつての宿場と聞けば納得。
……で、小休止。5分ほど。
再び歩き出す。相変わらず上り坂は続いている。この先は高度をさらに上げていくようだ。途中、左手にあった庚申堂に立ち寄り。
集落の外れまで来ると道は左へとカーブ、右に工場を見て、そして分岐に当たる。ここに細久手バス停。道標は3方向で「深沢峡3.7km 60分」という標示もあるけれど、「中山道宿場めぐりのみち」は勿論、直進。「大湫宿 6.9KM」という標示もデカデカと掲げられていた。
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