日 時 |
2008/05/01 06:10-08:53(2時間43分) |
天 候 |
くもり 朝方晴れ(日照率10%) |
俯瞰図 |
前鬼~前鬼不動七重の滝~前鬼口バス停 ![]() |
高低図 |
![]()
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概況 |
標高800mの前鬼から標高315mの池原貯水湖の国道沿いにある前鬼口まで、距離10kmほどの車道を下ります。 なお、前鬼から車止めゲートまで山道のショートカットがあります。山行当時は入り口が見付けられなかったのですが、なんのことは無い、前鬼宿坊前からまっすぐ東に伸びていく山道がそれです。入って直ぐに三重滝遊歩道と分かれ、ミツマタ地帯を抜けて黒谷の吊橋まで下っていきます。道の状態は良好。もちろん、前鬼から始まる車道をそのまま進んでも構いません。 車道は全線舗装され、落石注意である以外は状態は良いです。下る一方ですが緩く上るところもあり、また湖畔の道になると嫌になるほどカーブが続きます。10km車道下りだから2時間ちょいで、という計算で前鬼口のバスを捉えようとすると、終盤で焦ることになるかも知れません。早発ちの余裕が大事です。 |
撮影機材 |
OLYMPUS E-410、ZD14-54F2.8-3.5、ZD40-150F4.0-5.6、CASIO EX-P505 |
前鬼の夜明け
AM4:45に起床。縦走4日目の朝。
ただ、もう縦走は終えた後。下山の途中で日が暮れたのでテントを張って泊まりました、という感じ。おまけ、と言っていいかも知れない。
標高800mという高度は、別に都市周縁の山々でも簡単に得られる。実際、雪の残る山稜線で泊まった前日、前々日と比べると刺すような冷気は無い。
それでも――大峰の山に深く、町の喧騒は遥か遠くにしか無い。
前鬼三重滝線歩道の案内図
朝日に照らし出される宿坊
前鬼に朝日が昇る。
宿坊の建物にも日が当たる。ここは東向きに開けた空間なので、きっと、午前中は素晴らしい日当たりだろう。
テントから出てみる。辺りを見ると、向こうのテント場にテントが二つ張られている。昨夜のうちに到着したのだろうか。
ただ、まだ人の動いている気配は無い。そして、小仲坊の前には車が一台。
三重滝線歩道が東に向かって伸びていく(すぐに黒谷吊橋への道と分かれる)
宿坊の石階段を上がって、この地を眺める。
――前鬼はまさに新緑の季節。やっぱり、瑞々しい若葉には日射しが必要だと感じる。昨日の夕暮れはもう日が翳った後だったので、のっぺりとしか見えなかった新緑が、今ではキラキラと輝いている。
この新緑を縦走路上でも見たかったなあ、と思う。でも、それにはあと一ヶ月ぐらい後に来る必要がある……もちろん、その時期に4日なんていう長期休暇を取れる可能性はゼロ。チャンスがあるとしたら……老後だろう。
朝飯はマルタイラーメン。もう、トッピングも無いので、そのまま。
前鬼を後にする
テント場脇の水場。洗い物によい?
テントを畳む。やっぱり、一番の難関はシェラフの収納。かなりの無理やり感。最後なので芝生の上に全部の荷物を出し、順序良くザックに収納していく。
――食料が腹に収まった分、確実にモノは減った筈なのに、ザックに空きスペースがあまり無いのはどういうわけだろう?
AM6:10、出発。
車道の途中でショートカットを探すが…
森。道迷い中
車道を下る。左側に山道の入り口が無いかを探りながら……無い。
引き戻って、もう一度注意深く探す……どうも見当たらない。前鬼に立っていた三重滝線歩道のコース案内図には記されていた道が、無い。
きっと、寝ぼけているのだろう。適当なところから森の中へ突っ込む。東に進んでいけばそのうち道に当たるはず。
新緑の季節。橋で前鬼川を渡る
見上げると、山肌に点々とピンク
道脇には春の芽吹きがそこかしこに
――そんな甘い考えは直ぐに間違いと分かった。けっこう、藪が多い。これか? と思って辿った道も、すぐに藪に消えていき、ただの獣道と分かる。沢も現われ、行きたい方角にもなかなか行けなくなる。と、みるみるうちに下り勾配がきつくなってきた。
立ち止まる。失敗だ。バスの時刻もあるのだから、あまり遊んでもいられない。
ちょっと舐めていた。ようやくシルバのコンパスを取り出す。方角を真西――必ず車道に突き当たる方角に固定して突進。山道を使って足の負担を軽くするつもりが、とんだ逆成果。
車道に出る。時刻はAM6:35。1分ほど車道を進むと前鬼川を渡る橋に出た。
ド忘れ。何だっけ?
山側は落石注意
前鬼川
この橋は前鬼から0.6kmほどの地点にある――となると、無駄にした時間は15分ほど。うーん、ちょっと余裕が無くなってきたかな……。
気を取り直して、車道を進む。
前鬼川が左手に見下ろされる。緩い下り勾配なので、歩の進みは快調。朝日が射して、空気も爽やか。見上げると、奥駈道の山稜線が見えるところもあって、感慨深い。
ツツジがチラホラ目に付く
東進。道には常に日が当たる
前鬼川の渓谷
別に、車道だからと言って、そう距離が長くなるわけじゃない。山道を行きたかったのは、昨日夜の時点でかなり足裏が限界が来ていて、このままアスファルトの上を歩きたくないなあ、と思ったから。
今朝になって、多少復活したけれど、いかんせん、縦走初心者。ちょいと急いて歩いているうちに、また足裏が痛くなってきた。
朽ちた吊橋。もちろん、通行は出来ない
雪が降り積もったような樹木
3つ続く前鬼トンネル。出口に「落石注意」看板
穏やかな春景色の中の歩きは続く。平地ではちょっと前に過ぎ去った季節だけれど、もう一度追体験させてもらっているかのよう。標高500~600mほどの地点。
と、前方にトンネルが現われた。前鬼トンネルだ。
潜る。中で少し右にカーブしていて、灯かりが無いので足元が見えない。一瞬、ヘッドランプを出そうかと思ったけれど、そう長くは無いので光の出口に向かってそろそろと歩く。路面はどうやら濡れているようだ。
光の世界に出た。前方にはまたトンネルがある。そのトンネルの先には、もうひとつ見える。
左手には滝が見える。
日本の滝百選、前鬼不動七重の滝。落差は100m
不動七重の滝展望台
森林浴歩道入口。駐車スペースあり
三連トンネルを抜けると、広い車道スペース。
『前鬼山不動七重の滝』とある。ガードレール越しに覗くと、先ほど見えていた滝が、何段か連なって落ちる巨大な滝の1つでしかなかったことを知る。もっとも、ここからでも全容は見えない。
この先に入口のある遊歩道を歩いて、滝の近くまでいってみたいという気持ちが強くなる。川面まで下りないといけないけれど、ザックをデポすれば体力的には可能だ。
ただ、滝を後に進むにつれ意気込みは萎んでいった。なにしろ、バスを一本遅らすと6時間の遅れだ。寄るなら寄るで、三重滝にも寄っておくべきだった。
前鬼山不動の湯。冷泉らしい
廃屋。かつて何であったかは不明
ということで、滝遊歩道入口は横目に通り過ぎる。その駐車スペースには車が一台、停まっていた。
やがて、前鬼川の川幅が広く、流れが穏やかになってきた。そろそろ、池原貯水湖の区域かも知れない。
廃屋があった。その先の沢を橋で渡ると、山側に「前鬼山不動の湯」の立て札が立っていた。
光の透ける若葉
光を反射する若葉
ホースから水が出ているけれど、これは「冷泉施設」らしい。手を浸してみると、普通に水。飲めるかどうかも分からない。ましてや、浴びるなどとは……。
ちなみに、今日は人里に帰るので、Tシャツや靴下こそ新しいものを使っている。ただ、それ以外は普通に「山から下りてきたような格好」そのもの。
貯水湖に流れ込む幾つかの沢は橋で渡る
池原貯水湖。釣りボートが浮かぶ
池原貯水湖の湖面は標高315mの高さにあり、道はそこから少し上を通る。湖畔を巡る道なので細かいカーブがやたらと多い。微妙なアップダウンもあって、一時忘れていた足裏の痛みもまた感じるようになってきた。
ただ、ペースを落とすわけにはいかない。バスが前鬼口にやって来るまで残り1時間を切った。……距離はあと4kmほど残しているか。
ポツンと佇んでいた成瀬水没之碑
低空をホバリングするクマバチ
求められているのは、4.5km/hのごく普通の歩行スピード。でも、足が痛い状況で休みなしに歩けと言われたら顔をしかめる。やはり序盤での時間ロスが痛かった。油断大敵だ。
途中、クマンバチにまとわり付かれる。仕方が無く走って振り切ったけど、良く見ると周囲を何匹か飛んでいる。
もう、めんどくさいので無視して歩く。
これが最後の橋だろうか……
静謐な池原貯水湖の湖面
やがて羽音は後方に過ぎ去った。
LEKIに縋った歩きが続く――ここ数年、歩いたのは低山ばかりだったので、暫くストックは使っていなかった。でも今回のような歩きには、やっぱり必要だ。10年後には普通にダブルストックを手にしているだろう。自分のように体力に自信の無い人間には、頼れる道具。
貯水湖は、いつの間にか湖らしい広さになっていた。
池原貯水湖と前鬼橋。赤錆が目立つ
前鬼口付近から北北西。大峰の山々を見納め
前鬼口。国道169号、通称、東熊野街道が通る
すっかり曇ってしまった。でも、今回の山行は4日間、穏やかに晴れてくれたといって良い。もし山上で大雨にも遭おうものなら、初心者の自分は右往左往しただろう。
そして、湖面の向こうには前鬼橋。地図で良く確認したけれど、確かにそれは前鬼口のある前鬼橋だ。今日、そしてこの4日間の終着地。
……でも、バスが来るまで残り18分。あまり状況はよろしくない。ではラスト・スパートしますか、というわけで走り出す。
キツい。体に結構ガタが来ているのを無視して走る。さすがに5月の気温は高く、せっかくの新しいTシャツなのに汗が噴き出して来た。
奈良交通・前鬼口バス停。1日2便
国道上の前鬼登山口の案内板
その甲斐あって、前鬼口バス停にAM8:53に到着……辻褄合わせも大概にしたい。
バスが来るまでは6分。ここにはトイレ、自販機、休憩のベンチがある。「登山ニュース」なるものもあって、登山届用紙、登山届入れも。
――ここで、ちょうどカメラの電池が切れた。一度も電池を取り替えず、よく4日間持ったものだ。
湯盛温泉杉の湯行きバスと…ツチノコ大明神
和佐又口バス停。大普賢岳登山口がある
時間も時間なので、バス停の前でバスを待つ。
しかしバスは5分遅れてやってきた。乗り込む。ICOCAをタッチ。バスは動き出し、前鬼橋を渡り、北へ向かって突き進み始める。
乗客は二人ほど。ただし、大きなザックを抱えているのは自分だけ。一番後ろの座席に陣取って、バスの旅を満喫する体勢。
ループ橋
伯母谷トンネル
大迫ダム
湯盛温泉杉の湯。温泉、道の駅、土産物屋等
近鉄・大和上市駅
和佐又口で何人かハイカーが乗り込んできた。大普賢岳の東の地点。バスだと30分か……。
伯母谷ループ橋の途中では大台ヶ原ドライブウェイを分ける。懐かしい。
AM10:19、湯盛温泉に到着。ここで八木駅行きバスに乗り換え。
AM11:00、近鉄大和上市駅に到着。
――旅は終わった。街に戻ろう。