
――近江の山、伊吹山。
山頂からは近江盆地と琵琶湖への大展望が楽しめます。名阪圏の住人にとっては貴重な近場の百名山です。
花の百名山としても有名で、イブキ~を冠した花の名は数多。





……関ヶ原付近、東海道線の電車に乗って揺られていると、北側の車窓に平野部から堂々と立ち上がる独立峰の姿が映ります。たとえ周囲が春の空気にまどろんでいても、その山はてっぺんに幾筋もの白い雪の輝きを纏って「オレは他の奴らとはちょっと違うんだぞ」感を醸し出しています……と、いうような伊吹山。
山裾から見上げると標高以上に大きく、登り甲斐がありそうな印象。で、南の登山口からトコトコ登っていくと山頂まで3時間余りの行程。2合目以上は登山道丸見えのゲレンデ登り、さらに5合目以上は急斜面に付いた単純なジグザグの急登――。あまりに開放的な登山道に文句を付けたい人は、裏手の笹又から登るコースをお勧めします。また違ったこの山の表情を見ることが出来ます。
で、その伊吹山。いつ登るか、なのですが。
せっかくの花の百名山、山肌一面が花で包まれる初夏を逃して何とする、と言いたいところですが。この標高にして初夏はさすがに蒸し暑いです。さらに打ち寄せる人の波、今にも雨粒が落ちてきそうな梅雨の空もしくは梅雨明けの灼熱の太陽、などネガティブ要因も少なくありません。カタクリの咲く残雪の4月、紅葉の10月なども候補に入れて良いかと思います。豪雪の山ですので冬に登れる人は限られますが。
残念なことに近年、この山もシカやイノシシの食害対策で登山道のあちこちに動物避けの柵や扉が設置されるようになりました。花の勢いも失われ、その花畑も柵の外側から眺めるというような状況になっています。人間の勝手な思いではあるのですが、再び花の楽園に戻って欲しいものです。


伊吹山を日帰りで歩こう!
日帰りコース | 所要時間 | (登り/下り) | 累積高度 | 登降ピッチ | |
---|---|---|---|---|---|
1. | 山頂駐車場・バス停~山頂 (1,250m) |
30分 | 20分 | +130m -3m | +390m/h |
10分 | -780m/h | ||||
2. | さざれ石公園~静馬ヶ原~山頂駐車場~山頂 (420m) |
4時間20分 | 2時間40分 | +1,024m -67m | +384m/h |
1時間40分 | -614m/h | ||||
3. | 伊吹登山口バス停~2合目~3合目~5合目~山頂 (215m) |
6時間20分 | 3時間50分 | +1,162m -0m | +303m/h |
2時間30分 | -465m/h |




日帰りで利用される山です。
――なんと言っても交通アクセスの良さは特筆物。夏場は山頂直下の9合目駐車場までJR大垣駅(JR関ヶ原駅経由)から路線バスが出る上に、大阪駅や名古屋駅からも名神ハイウェイバスが出ます。もちろん、全長17kmの伊吹山ドライブウェイを利用してのマイカー登山も盛ん。さらに、駐車場から山頂までも、勾配の異なる3本の登山道(うち、1本の下山専用)が用意されています。
山登りしたいのであれば、マイカー限定となりますが岐阜県側の笹又から上がっていくのが最短コース。笹又のさざれ石公園駐車場へのアプローチこそ大変ですが、登り始めたらとても静かに歩けます。緑多く、中腹では花が咲き乱れる斜面をトラバース。北方の山並みへの展望も開けていきます。もっとも、その先でドライブウェイに合流してしまうのがタマニキズですが。




伊吹山で最も利用されている登山口は、滋賀県側の上野にある伊吹登山口です。ただし、登山口から3合目まで伸びていたゴンドラは休業中ですので、登山口から高度差1,162mを登る必要があって日帰り登山としてはややハード。しかも南面に開けたスキー場を突き抜けて登っていくため、夏場は暑さとの闘いを覚悟しておかなければなりません。
なお、伊吹登山口バス停へ至るにはJR近江長岡駅/JR長浜駅から湖国バスを使います。このバスを使えば、名阪圏のみならず首都圏からでも新幹線を使っての日帰り登山が可能。
さらに「駅から登山」に拘るなら、JR関ヶ原駅から山頂まで歩いて登る、ということも可能。丸山烽火場へから瑞竜寺へ続く車道をまっすぐ上って明神の森ハイキングコースに入り、稜線上にある明神の森に至ります。車道を伝って北へ進み、「君が代街道」の岩手峠手前で左に折れ、山あいの県道257号を6km進むと笹又です。
