白山――という山についての由無し事 ≫

白山・別山 山行記(1日目)

日 時

2012/07/29 07:45-17:37 (9時間52分)

天 候

朝のうち晴れ のち 曇 一時雨 (日照率20%)

コース

別当出合~甚之助避難小屋~黒ボコ岩~室堂~大汝峰~御前峰~室堂~アルプス展望台~南竜ヶ馬場テント場

白山俯瞰図

概 況

別当出合から室堂までは、最短となる砂防新道を使いました。7月下旬の日曜、ということもあって、登る人と下る人で混み合い、一部渋滞も発生していました。コースの整備状況はまったく問題なくて歩きやすく、途中途中のトイレもきれい。

室堂から大汝峰への道では一気に人の姿が減り、数人とすれ違ったのみでした。雪田横断が1ヶ所ありましたが、アイゼンは不要。大汝峰から御前峰、室堂の区間には雪は無し。ただし、落石注意。

室堂から尾根伝いに南竜ヶ馬場に下りる展望コースは、後半の樹林帯で道が細くなります。南竜山荘セントラルロッジでテントの受付を済ませてからテント場へ。

撮影機材

OLYMPUS E-5, ZD12-60F2.8-4, ZD50-200F2.8-3.5/Panasonic LUMIX DMC-LX3/SIGMA DP-2 Merrill

■JR金沢駅=(バス)=別当出合

バス停
モノリスのようなバス停留所…
金沢駅バスターミナル
金沢駅東口バスターミナル。北鉄バス・別当出合行きは1番から

早朝の金沢駅前で北鉄バスを待つ。

――ひょんなことから転がり込んできた7月下旬の三連休。今年は梅雨明けが早く、夏山シーズンも早くから始まっていて焦り気味であったので、この機会を逃すまじ!と2泊3日の白山テント泊縦走計画を組んだところまでは良かった。ところが仕事の都合で1日短縮、1泊2日に計画変更。

結果、まったく5年前と同じアプローチに。やってきたバスも見覚えのあるもの、添乗員のオネエちゃんも同じ人。¥2,000を渡して車内に乗り込むと、バスの座席はほぼ埋まっていた。

AM5:30、バスが発車。

道の駅・瀬女
道の駅・瀬女(せめ)の広い駐車場。通過のみ
田園部
バスの車窓。手取川流域の田園部

ひと気の無い金沢の街を走っていく。日の出はとっくに過ぎているけれど、空は曇天。

鶴来駅で乗客が1名追加。バスは手取川に絡みながら山間の狭隘な平野部を走り抜けていく。

AM6:27、道の駅・瀬女に到着。トイレ休憩かと思ったら、ぐるりと巡っただけで通過。

女原大橋
瀬女トンネルを抜け、女原大橋で手取川を渡る
白山本地堂
白山本地堂。白峰集落の寺社の1つ

手取湖畔のトンネルの多い道をバスは軽快に走る。時折、朝陽が照らして山の朝っぽくなってきた。前回は無理して眠っていたけれど、今回は車窓風景を堪能。徹夜明けなのは同じだけれど……。

AM6:46、白峰車庫に到着。ここでトイレ休憩――と、そのトイレが1つしかなく長蛇の列。

柳谷
柳谷が銀のリボンのように伸びていく――
市ノ瀬
市ノ瀬。登山基地になっている。マイカーはここまで

バスは山間部を淡々と走り、AM7:15、市ノ瀬到着。見ると、広い登山客用駐車場がほぼ満車だ。さすが白山のハイ・シーズン。

マイカー登山客は増発バスに積んでいるようで、そのまま市ノ瀬通過。ゲートを越え、細い林道をぐんぐん上っていく。

日差しは照りつける一方に。暑くなりそうだ。日焼け止めを塗る。

■別当出合→中飯場→別当覗→甚之助避難小屋→南竜分岐

別当出合
別当出合。夏季は市ノ瀬からここまで、バスのみ通行可
登山口
別当出合登山口。高度1,260m。「白山国立公園」の碑も

AM7:30、バスは別当出合が到着。降車する。

――すでに賑々しい。団体さんが行程の説明をしたり準備運動したりしているのは、登山口のいつもの光景。ただ、ファミリーも目立つ。

さすがに縦走装備の大きなザックを背負ったハイカーは少数で、ほとんどが山小屋1泊程度の小型ザックだ。自分は、テントを詰め込んだ45リットルザックを背負う。

アジサイ
7月下旬、道脇にはアジサイが目立つ
森の木道
樹林帯。木道が渡っているところも
吊橋
砂防新道入り口の吊橋。別当谷を渡る

AM7:45、鳥居を潜って出発。砂防新道の始まりは吊橋。結構な高度感。左手、見上げると山頂方面は真っ白。朝の光で眩しい。

吊橋を渡り切って、樹林帯に突入。自然林で、空気の清涼さが増すのが分かる。少しディレイを掛けて出発したので、周りにハイカーの姿も無い。

まだ勾配は緩やか。ゆっくりと足を運んでいく。今回は使い慣れたLEKIのステッキがあるので心強い。

石積みの登山道
石積みの登山道で最初の渋滞。かなり急
別当出合を見返す
別当出合を見返す。奥には駐車場も
ブナ
ブナの森。針路は基本的には北

なにしろ、テント装備で1,450mの高度差を上がらなくてはならない。前回は日帰りであったで急いだけれど、今日はバテないようゆっくり歩くことが肝心。

……同じバス便の団体ハイカーの最後尾に追いついてしまった。1人ずつ抜かしながら上がっていくことで、ペースがやや歪に。

周りにブナの木々が見られるようになった、と思ったら、すぐに雑木林に復帰。

不動滝
柳谷川の(たぶん)不動滝と、城砦のような堰
中飯場
中飯場(なかはんば)の公衆トイレ。ベンチもあり
シモツケソウ
シモツケソウ。満開になりかけている

AM8:21、中飯場に到着。高度は1,500mほどだ。ザックを放り出して、小休止。

――暑い。思ったより気温が高い。早くも汗がTシャツに滲んでいる。外気温は20℃を超えただろうか。今日は暑さとの闘いになりそう、と予感。

出発。ハイカーの列は、まんべんなく分布するようになっている。さらに、下ってくる人の姿が目に見えて増えてきた。そりゃそうだ、今日は日曜日。下山して、明日は日常復帰する人も多いことだろう。……ただ、それによって道の渋滞が至るところで発生。道幅は十分広いので、道脇に寄っての待ち合わせには不便ない。

もっとも、そろそろ疲れてきた。すれ違いの間にも杖を立てて息を整える。

紅葉
夏の紅葉――もちろん、部分異常
シシウド
シシウドの向こう、観光新道のある稜線
実
この実は時々見るけれど、何かは知らない

不動滝を見て、さらに別当覗に出る。

――木々の背が低くなって見通しが開けるようになってきたのに、周囲は白景色……雲の中に入ったのだ。隣の稜線が見えるのがやっと。眼下にはミヤマシシウドの草原。

日差しが遮られた分、体感気温が下がったかも知れない。それはそれでありがたい。風は、ほとんど無い。

甚之助避難小屋
甚之助避難小屋。高度1,970mほど。トイレあり
木道
木道を往く。向こう、柳谷の最上部が見えてきた

十人ほどのハイカーの休む広場を後にして、さらに先に進む。

……やっぱり、テント装備で登り一辺倒の道はしんどい。抜かすより、抜かされる方が多くなってきた。道角で座り込み、飲料補給する回数も増えてきた。一応、冷凍ペットボトルは2本調達していたけれど、すでに半分以上消費。

小池が散在する尾根道。ベンチのある広場が現れたので、さらに一休み。

行く手
行く手を見上げる。ハイカーの列が点々と連なる
ベンチ
ベンチの並んでいる階段。甚之助ヒュッテ跡とのこと
モミジカラマツ
モミジカラマツ。雨に濡れるとベッチョリとなる花

――休んでいると雲間から日差しが落ちてきた。日陰に逃げ込みたい暑さ。空気も淀んでいて、動かない。

さらにひと登りで甚之助避難小屋に到着した。AM9:51。

小屋前の広場は、登りの人、下りの人、入り混って混雑中。トイレには行列が無いけれど、この暑さゆえか水場に行列が出来ていた。

広場からの展望は良い。もっとも、ガスのせいで見通しはあまり利かない。でも、上方に緑の稜線にまとわりつくハイカーの行列が見えていた。この先の道も混みそうだ。

5分ほどの休憩の後、出発。甚之助ヒュッテ跡のベンチの脇を登っていく。しばらく勾配のあまり無い道。標高2,000mに達して、高山植物も目に見えて増えてきた。今は7月下旬という花の最盛期……

ヨツバシオガマ
道脇のヨツバシオガマ
南竜ヶ馬場
南竜ヶ馬場を透かし見る。今日はあそこまで行って泊まる予定

花の百名山の中でも一級の山であるからして、花の最盛期には、それはもう“百花繚乱”になることは疑い無い。前回も花は多かったけれど、日帰りで時間が無かった。なので、今日は山泊絡めての再チャレンジ。

もしかしたら、白山の花の物量の代償としてこのハイカーの多さがあるかも。登山道の混雑ぶりは真夏の富士山並みだ。もっとも、あっちには花など無いけれど……。

タカネニガナ
タカネニガナ。花弁が9枚なのでクモマではない
南竜分岐
南竜分岐の小広場。高度2,100m程度。道が左右に分離

再び、登山道がジグザグに道を切り始めた。しんどいものの、道脇の花々に元気付けられながら登っていく。

AM10:19、南竜道との分岐に到着。相変わらず、周囲はガス。何も見えない。

さて、南竜道は前回、下山に使った。今回は初めて十二曲がりのコースへと足を踏み入れる。

■南竜分岐→十二曲がり→延命水→黒ボコ岩

水場
水場。沢水のようだけれど、清涼
花の飾る道
ミヤマキンポウゲの飾る登山道
池に棲むもの
池にはオタマジャクシ。何かがいる…

尾根をトラバースしていく道。勾配も緩やかになり、足を止めずに歩いていけるようになる。

と、水場が現われた。水量は十分。ここで水の補給。ゴクゴクと飲んで、さらに空になったペットボトルに詰め込む。

高い木々が見られなくなった。――昨夏の南アルプスでは高度2,700mぐらいまで森であったので、それより500m以上低い森林限界線に緯度の高さを感じる。

ミヤマダイモンジソウ
大の字のミヤマダイモンジソウ
石階段
森林限界を脱して、さらに登っていく
コウゾリナ
たぶん、ミヤマコウゾリナ

そして、白山では高山植物の分布も、その分、低いところから始まっている。

そんな道脇の花を写し止めようと、ハイカー達の構えているカメラに“ミラーレス一眼”が多いことが時代を感じさせる。手を伸ばしてカメラを被写体に近づけ、画面の中で構図を決めてシャッターを押すスタイル。ファインダーを覗かずに撮る写真――

自分は基本的にファインダー派。

アキアカネ
アキアカネ。夏は高山で避暑し、秋には赤くなって人里へと下りる
シナノキンバイ
でかいのでシナノキンバイ

そんなわけで、道は歩きやすいのに路傍の花に引っかかってペースが滞りがちになる。もっとも、山頂部は砂礫地帯。花を撮るならむしろ、このあたり。

でも、あまりノロノロと登っていると、今度は天候悪化が心配になってくる。夏山なので、山頂にはあまり午後深い時間に到達したくないのも事実。

この時間帯、降りてくる人の数はだいぶ減っているけれど、登っていく人の数も、まだまだ多い。泊まりなら余裕はある。

オタカラコウ
斜面にはシシウドとオタカラコウが目立つ
トラバース道
十二曲がりへのトラバース道を行く

ハクサンフウロ、ハクサンコザクラなど白山の名がついた花も見掛けるようになる。……ただ、ハクサンイチゲを目にしない

ミソガワソウ
ミソガワソウ。あまり見掛けない
イブキトラノオ
イブキトラノオの斜面。風が無いので揺れない。直立不動

と、登山道が急激に高度を上げ始めた。ジグザグと道がタックを切り始める。

――たぶん、ここが十二曲がりだろう。花に埋もれる草つきの斜面をぐんぐんと登っていく。

再び足が止まりがちになる。ここが頑張りどころ、と分かっちゃいるけど足がついてこない。

LEKIにすがるようにして、一歩一歩、踏み上げていく。前後にはハイカーの姿が途切れていないけれど、その行列はだいぶ間延びしてきた。皆、辛そう。

十二曲がり
十二曲がり。高度を一気に100mほど上げる
延命水
霊峰白山の延命水。もちろん、その効用を期待したい…

相変わらずガスが晴れてくれない。高度を上げたことで雲の上に出て欲しかったのだけど、時間帯から言って、もうずっとこのままかも知れない。

その代わり気温がだいぶ落ちて、凌ぎやすくなってきた。稜線に近づいたからだろうか、少し空気がひんやりしてきたのも感じる。この上、弥陀ヶ原は高度2,300m、地上より14℃ほど気温が低いはず。――それでも、20℃を切るのがやっとかも知れない。

タカネナデシコ
列を成すタカネナデシコ。「撫でし子」は、なよやかな女性のイメージ
ハクサンフウロ
ハクサンフウロと……何の花?

道の脇にささやかに延命水。水がチョロチョロと流れ出ている。水は十分に確保しているので、そのまま通過。

長い、石積みの階段。道脇の花は尽きない。花に飾られた道。そして、ようやく上の方にポコっとした岩が見えてきた。あれが黒ボコ岩だろう。前回使った観光新道との合流点なので、見知ったところ。

その岩がだんだんと大きくなってくる。あと少し……。

■黒ボコ岩→弥陀ヶ原→エコーライン分岐→五葉坂→室平

黒ボコ岩
黒ボコ岩が見えてきた。高度2,320m付近
弥陀ヶ原
弥陀ヶ原の木道を往く。広大な湿地帯
ナナカマド
ナナカマド。ウラジロ、だと思う

AM11:19、黒ボコ岩に到着する。

――大きな岩が転がる小広場。数人のハイカーが身体を休めている。ガスの中で、何も見えない。弥陀ヶ原の“淵”なので、別当出合方面を見晴らしたいところだけれど。

岩に座り込んで昼飯。今朝は結構バタバタして、バス乗車前にコンビニお握りを食ったぐらい。

12分の滞留後、出発。

弥陀ヶ原の花畑
弥陀ヶ原の花畑。チングルマ、ハクサンコザクラ、コバイケイソウ、コイワカガミ、ミヤマキンポウゲ、クロユリ、等々

すぐに弥陀ヶ原。山上の、広大な平地。「白山奥宮境内地」の標示もある。

植生保護の木道の上を渡っていく。このあたりは尾瀬を思い出す。そして、湿地帯に様々な花が咲いているのが分かるのだけど、近寄れないのも一緒。木道脇にはクロユリが何輪か固まって咲いていた。

近寄れないけれど、目一杯咲いている白い花の群生はチングルマだろう。雪融けの後に一斉に咲く花。少し前まで、ここも雪で覆われていた筈。

そういえば、別当出合で「今年は例年に無く残雪が多いので注意」という標示があった。

水屋尻雪渓
水屋尻雪渓の最下部が見えている
エコーライン分岐
エコーライン分岐。南竜ヶ馬場へ抜ける道

……実際、進む先、五葉坂の隣に水屋尻雪渓が大きく見えている。以前来た時よりも明らかに大きい。この先、雪渓歩きがあるのだろうか?

AM11:42、エコーラインとの分岐に着いた。さあ、ここで弥陀ヶ原の平地はおしまいだ。もう一段登ったら室堂平だ。

五葉坂を登りだす。疲れているけれど、ここは粛々と登る。どのみち、室堂では大休止をとることになるだろう。

ハイマツ帯
室堂直下、ついにハイマツ帯となる
ゴゼンタチバナ
ゴゼンタチバナ。御前峰の名前を冠す
五葉坂
五葉坂では、一直線に高度を上げる

登っていくにつれ、背後の弥陀ヶ原が小さくなっていく。その平原、2本の木道が左右に分かれて行くのが印象的。左方には水屋尻雪渓。

そろそろ正午だけれど、ガスが重くなってきた。色を失って、周囲の風景も冴えない。高山植物も少なくなり、砂礫帯に移り変わっていく。

登山道に敷き詰められた石が大きくなり、左右はハイマツとなった。勾配が緩むと、ついに赤屋根が見えた。

タンポポ
タンポポ。タカネタンポポかどうかは不明
室堂
室堂。高度2,450m。巨大なビジターセンターが建つ。オンタデが目立ち、池塘もある

PM0:00、室堂に到着。

――室堂ビジターセンターが建っている。相変わらずの巨大っぷり。その建屋の前や階段でたむろっている登山客も大勢。まさに登山基地。

その背後、御前峰は下部だけ見えている。山肌のジグザグの登山道には、途切れることなくハイカーの列が連なっているのが見える。最盛期の室堂の光景。

■室堂→千蛇ヶ池→大汝峰

クロユリの花畑
クロユリのお花畑。全国的にも貴重な場所?
白山神社奥宮
全国の白山神社の総本山、白山神社奥宮。ベンチは満員

室堂ビジターセンターの建物の中に入る。――そのまま通過して、反対側から出る。今回は白山山頂郵便局は開いていた。

室堂の広場。テーブルは満席なので、広場の脇にザックを下ろす。「肩の荷が下りて」身軽になった。よし、少し周辺の探索だ。

ビジターセンターのまわりを一周。水道で水も汲む。

御前峰登山道
御前峰と御前峰登山道。ほとんどの人が軽装で登る
ハクサンコザクラの花畑
ハクサンコザクラのお花畑。室堂広場前の十字路付近

PM0:30、室堂を出発。御前峰登山道を1分ほど進んで……見事なお花畑に引っかかる。

ハクサンコザクラの群生も見事だけれど、圧巻なのはクロユリの花畑。これほど集まっているのは見たことが無い。

見ると、御前峰へ続く山道には、ひっきりなしに人が往来している。高度差250mほどなので、山頂往復は1時間強。そういえば、と時間を確認。PM0:50……やばい、あっという間に時間が経っている。ザックを担ぎ、やや慌てて再出発。

「山頂お池めぐりコース」の案内板がある御前峰登山道との十字路。ここを左折すると、ハイカーの姿が一気に無くなった。

ミヤマキンポウゲ
ミヤマキンバイ。ハート型でミヤマキンポウゲと区別
お池めぐりコース分岐
お池めぐりコース分岐の十字路。ここを左折

こちらのコース、御前峰からお池めぐりをして下りてくる人が多いかなと思っていたのだけれど、そうでもないようだ。道は御前峰の山腹をトラバース気味に登っていく。やや路傍の草が近くなって道幅が狭まったけれど、歩くのには問題無い。

この道は、歩いたことが無いので選択した。多くのコースが設営され、季節や時間帯で道が選択しやすいのが白山の良いところだ。

お池めぐりコース
お池めぐりコースの、たぶんショートカット道
スイカズラ
スイカズラ、だと思う。多足の昆虫のよう

さて、今日目指すのは大汝峰。白山の3つの峰で、まだ登ったことの無い峰。もちろん、剣ヶ峰は登山禁止なので除外。

――なのに、室堂で50分も滞留してしまったのは計算外。状況によっては、大汝峰を回避して御前峰へ向かうことも考えないといけない。別当出合から室堂まで4時間15分と、コースタイムを15分オーバーしたのだから、そもそもあまり時間的余裕は無かったのに。

クロユリ三輪
クロユリ三輪。やや色が薄くなっている
ハイマツの花
ハイマツの花。緑の中にあって、この赤色は目立つ

お池周り逆ルートで1時間50分のコースタイム。大汝峰往復を足すと2時間40分ほどだろう。3時までには室堂に戻ってきたかったのだけれど、無理。でもまあ、午後5時頃にテント場に着けそうかな、と計算。夏山なので本当は4時までには着きたいところだけれど……。

それなのに、道が捗らない。特にクロユリなどの群生を見つけるたびに、足が止まってしまう。

コイワカガミ
コイワカガミ。ヒメ~かどうかは不明
室堂センター
室堂センター。収容人員750名は、山の宿泊施設として日本第三位の規模を誇る

涸れ沢脇の道となって高度を上げ始めると、イワツメグサやイワキキョウなど岩稜帯の花に移ろっていく。

振り返ると、常にそこに室堂センターが見えている。時折、気まぐれに日差しが照らし出していく。――やっぱり大きい。広場で休む人々が米粒のよう。

岩稜帯
巻きながら登る道。山斜面には相変わらず花が多い
アオノツガザクラ
アオノツガザクラ。サクラ色で無いので「アオノ」が付く

淡々と登っていくだけになる。見晴らしが良い道だけれど、その見晴らしはガスのせいで近場限定。せいぜい、弥陀ヶ原までだ。本当は能登半島から日本海までを見晴らしたかったところなのだけれど、それは次回のお楽しみらしい。

――やっぱり、梅雨明け十日ぐらいでないと夏山の展望は厳しいのかも。そもそも、今年は7月上旬に早々に梅雨明けしてしまったので、今は既に夏山中盤。

青空
久しぶりに青空が覗く。積雲も見られる
シロツメグサ
シロツメグサが出てきたら植生限界も近い

足元にはイワツメグサが多くなった。花自体は随分減った。一方、歩くペースは一向に上がらない。山泊装備であることを理由に、足が頑張ってくれない。それに、思えば今朝は徹夜明けであった。幸い、眠気には襲われていないけれど、やっぱり身体的には辛い。夜行日帰りが出来たのは今は昔――。

と、青空が見えた。雲の一部が切れたのだ。振り向くと、背後には積雲。

イワギキョウ
イワギキョウは花弁に毛が無い
弥陀ヶ原を上から
弥陀ヶ原を上から見る。左、エコーラインの木道、右はメインロードとなる白山禅定道の木道

――このまま行けば大汝峰で見晴らしが得られるかも、と思う。これは是が非でも大汝峰に登らなければ。

ここにきて、すれ違う人たちの数が増えてきた。室堂から御前峰に上がった後、お池めぐりで時間が足りなくなった人たちだろうか。

大汝峰
大汝峰(2,684m)。白山の3つの峰のうちの1つ。御前峰に比べると登る人の数は圧倒的に少ない

行く手に、大きな雪田を宿した大汝峰が現われた。日も当たっていて、いかにも夏の高山的な雰囲気を醸し出している。テンションは上がるものの、身体はついてこない。

さらに右手を見上げると、御前峰のゴツゴツした岩稜が並んでいた。白山が火山であることを思い出させる。その上空にも青空。

そして、眼下には千蛇ヶ池の雪田が広がった。その中央に付いた一本の黒い筋……雪上歩きだ。

大汝峰分岐
お池めぐりコースと大汝峰登山道の分岐
チングルマ
チングルマ。雪融けの花
千蛇ヶ池
千蛇ヶ池の雪田を横断する

そこへ下りていく。近づくにつれ、登山道脇にチングルマが目立つようになる。白い花だけど、黄色いシベのために薄っすら黄色味を帯びているように見える花。

そして雪の上へと着地。締まっていて、歩くのに問題は無い。サクサクと歩いて対岸に到達。上がると、解説板があった。お花畑コースとの分岐だ。PM1:41――室堂からコースタイムから10分オーバー。

大汝峰登山道との分岐まで進んでザックを投げ出す。

大汝峰登山道
大汝峰登山道。最初に急斜面がある
御前峰
御前峰(2,702m)。白山最高峰の岩峰

ザックをデポして大汝峰を空身でピストンする作戦。時間も惜しいけれど、青空が覗いている今の天候も惜しい。大汝峰登山道に突入。

まずはハイマツ帯に付いた水平道を突き進んでいく。0.2kmで中宮道との十字路に到達。案内板は地面に落ちている。

さて、ここから山頂まで0.5kmの標示。タイムトライアルだ。

急斜面の登山道に取り付く。

カーブ
大汝峰山頂まで緩やかにカーブしていく尾根
イワヒバリ
イワヒバリ。ハイマツ帯では良く目にする

当たり前だけれど身体が軽い。どれだけザックの重さが枷になっていたかを実感。スタミナはまだまだ残っていて、ずんずんと斜面を登っていく。

急斜面が終わると、単純な尾根筋となった。――そこを登るにつれ、背後に素晴らしいパノラマが立ち上がっていく。最初は稜線の上に上部だけ突き出していた剣ヶ峰と御前峰、その裾が見えてくるようになると、白山山上部の全容が姿を現す。

白山山上部
大汝峰登山道の途中より見る白山山上部。箱庭のよう――
大汝峰山頂
大汝峰の山頂。大汝神社があるが、立ち入りは危険?

本当にラッキーだ。今日の天候ではこんな景色は見れないと思っていただけに、感慨もひとしお。

ケルンを回り込んで、大汝峰山頂に到着。PM2:05。

山頂で寛いでいる人の姿が6~7人。室堂に荷物を置いて足を伸ばしてきた人たちのようだ。岩室の中の大汝神社の入り口にはロープが渡され「通行注意」の札。

■大汝峰→御前峰→室堂

白山
大汝峰山頂から見る剣ヶ峰(2,677m)、御前峰(2,702m)。大汝峰と合わせて白山の中核を成す。手前の池は翠ヶ池で、白山最大の火口湖


ヒルバオ雪渓
北東の眺望。中宮道の尾根にヒルバオ雪渓
イワギキョウ群生
大汝峰山頂のイワギキョウの群生
大汝峰下山道
大汝峰から豪快に下っていく。再びガスが出てきた

なにはともあれ、今日の目的地に無事に着けた。午後2時過ぎという遅い時間帯だけれど、朝の出発が遅いので仕方ないところ。

大汝峰の山頂は平らで広い。真ん中から見回してもガスしか見えない。大汝神社の裏手に回り込んで山頂の淵に来ると、再び御前峰方向の景色が開けた。白山の“特等席”だ。

ただ、時間限定制らしい。再び天候が崩れかけていて、上空には再び厚い雲が到着している。晴天は本当に僅かな時間であった模様。

山頂を辞して、来た道を戻り始める。大パノラマが再び稜線下に沈んでいく。同時に、西方よりガスが流れ込んでくるのが見えた。

視界が奪われていくのと競いながら、慎重に下っていく。

血の池
血の池の側道を行く。別に、池の色は普通に見える…
クロユリ
お池めぐりコース道標。御前峰まで1.2km、室堂まで1km
リンドウ
リンドウ。ミヤマ~だと思う

中宮道との十字路を過ぎ、ハイマツ帯を渡っていく。

――雨がいつ落ちてきても不思議でない空模様に豹変。デポしたザックにレインカバーを被せることを省略したので、雨が落ちてこないか心配になる。

PM2:22、分岐に到着し、ザックを無事回収。大汝峰往復に掛けた時間は37分。もっと、ゆっくりしたかったところではあるけれど、こればかりは仕方ない。

お池巡りコース歩きを再開。登り勾配となり、血の池の脇を通過。やがて黒くゴツゴツとした巨石の転がる稜線に出ると、翠ヶ池が前方に見えてきた。道が、茶色い岩稜帯を遊歩道状に巡っていくのが見えている。

池に向かって下っていく。

翠ヶ池
翠ヶ池。高度2,570mにある火口湖
御前峰近景
御前峰の近景。山頂部に人の姿がポツポツと見える

池の手前で右に転回。覗き込むと、池の手前には大きな雪面。

斜面にはチングルマのお花畑が広がっている。8月半ばだと、チングルマの花を見るためにはここまで来なければいけなかったのだけど、今日は既にかなり下の方から目にしている。珍しくない。

翠ヶ池の雪田は長々と伸びて、登山道のすぐ近くにまで肉薄していた。雪田脇を過ぎ、巨岩の間をすり抜ける。

油ヶ池
油ヶ池。雪田との接辺の色味が綺麗
狭間
岩の狭間を抜ける。光景の転換が楽しみ
チングルマ
チングルマのお花畑。まだ蕾も多い

少し高いところに出た。再び前方が開ける。

……やばい、御前峰の上部が霞み始めている。いよいよ天候悪化が本格化し始めたようだ。夏山のこの時間帯、覚悟していなかったワケじゃないけれど。

道を急ぐ。右には雪に半分以上覆われた油ヶ池、左には、こちらも雪で半分覆われた紺屋ヶ池。

ここに来て、御前峰から下りて来たハイカーの姿が多い。もう最終組だろう……。

御前峰斜面
御前峰への裏登山道がジグザグに這い登っていく
御前峰の稜線
御前峰の稜線に出たところ。ホワイトアウトに近い…
鞍部
鞍部を見下ろす。3つの池がなんとか見えている

紺屋ヶ池手前で道は90度右に曲がる。紺屋ヶ池では大きな雪洞が開いていて、ハイカーが興味深げに近づいていた。崩落が怖い。

真っ直ぐで平らな道を進んでいくと、ついに雨が落ちてきた。御前峰の斜面に取り付いて登り始めた頃には本降りになる。避けるものが無い岩稜帯の上、とにかく平らのところに出るまで、と道を一所懸命登っていく。

結局、平らなところなどなく、御前峰の山上部に出る。ここで、ザックカバーを出して傘を広げる。雨具は着込むのに時間が掛かるので省略。幸い、風も無く雷も鳴っていない。このまま室堂までは傘で下りれるだろうという判断。

稜線を伝って山頂に向かう。お池コースへ向かう人は尽きている。周りには白いガスが立ち込めている。

雨脚
白山比咩神社奥宮。雨脚はかなり強い
御前峰山頂
御前峰山頂。日本三名山・白山の最高地点。一等三角点もある

PM3:07、御前峰山頂に到着。自身、二度目の登頂。

ただ、雨が降りしきっている。そのため感慨もイマイチ。さっさと下りよう、と思っていたけれど、結局、7分ばかり滞留してしまう。

御前峰登山道
室堂へと続く御前峰登山道。急勾配は無い
御前峰南斜面
御前峰の広大なハイマツ帯。登山道が伸びていく

雨脚がかなり強い。一向に衰える気配も無い。室堂から軽装で登ってきたハイカーたちが、雨具も無しで濡れるままなのが可哀想。

室堂へ向けて下り始める。雨は傘の布を強く叩いている。足元は石畳の歩きやすい道。風も無い。

ただ、濡れた石畳でスリップしないように注意深く足を差し出す。それでいて、足早。何人かを追い抜く。

室堂ふたたび
室堂ビジターセンターがガスの中に見えてきた
雨粒
道脇の木々の葉にも雨粒が付いている

それにしても、多くのハイカーが傘も雨具も持たずに御前峰に登っていることには驚かされる。そりゃ、往復1時間弱とは言え、山の天気の変わり方はそれ以上なのだし。

とは言え、彼らは室堂センターで濡れた衣服を乾かすことが出来る。こちらは、テントの中では濡れた衣服は乾かせない。それに、濡れて体温を奪われては、体力も落ちる。

石畳
御前峰登山道の最下部は、ほとんど平ら
ハクサンフウロ
雨に濡れたハクサンフウロ
クルマユリ
路の上に顔を出していたクルマユリ

ぼんやりと室堂のビジターセンターが見えきた。同時に、雨脚が急速に弱まっていった。すぐに、パラパラと降るだけになる。

傘を畳むと、雨は完全に止んだ。――いや、止んだというより、雨が降っていたのは御前峰の上の方だけであったようだ。室堂センター前の広場のベンチには、人が座って寛いでいるのが見えている。

室堂に近づくにつれ、花の量と種類が増える。山頂部の岩と砂礫の世界を目にした後だと、やっぱり安心感を覚える。

室堂センター入り口
午後深く、室堂ビジターセンターに戻ってきた
お花畑
ハクサンコザクラやクロユリの群生する十字路

お池コースとの分岐の十字路に到達。団体が花の観察に繰り出していた。もう一足で室堂センターに到着、PM3:40。

――1時間ぐらい予定より遅い時間だけれど、雨にやられたにしては悪くない。やっぱり、大汝岳を空身でピストンしたのが効いている。少し到着が遅くなるけれど、南竜までは展望道を使おう、と決断。

とまれ、小休止。トイレに行って、本日室堂で二回目の水補給。

■室堂→平瀬道分岐→アルプス展望台→南竜ヶ馬場

展望道入り口
左、展望道。南竜ヶ馬場まで3.1kmの距離が示される
日差し
振り仰ぐと、御前岳上部に日差しが当たっていた…

PM3:50、室堂ビジターセンターを出発。建屋の間を抜けて東へ進む。トンビ岩コースとの分かれ道を左、展望道へ。しばらくはフラットな草原の道の筈だ。

草原の歩道を進む。――平和な道だ。山の上には、日が当たってさえいる。先ほどの大雨が嘘のよう。

時間帯が遅いせいか、ハイカーの姿はほとんど見られない。随分と前方に数人のパーティを見掛けるのみ。

草間
草間を抜けて、次の草原地帯へ――
シダの若葉
シダの若葉。芽吹いて、躍動しながら葉を広げていく途中

南竜ヶ馬場への到着予定時刻は午後5時20分。自分の計画が甘いせいで、だいぶ遅れてしまいそうだ。もっとも、急いで下山して転倒などするのも怖いので、ここはじっくりと確実に進む方針。

とは言え、フラットな草原歩きが続いて、暇になってきた。花も見慣れたものばかり。左上方に御前峰が見える光景も変わらない。一方、右方は平原が続いていて、その“淵”の向こうは真っ白な世界。

淡々と足を運んでいく。

平原の道
のっぺりとした平原の道。高度は2,450m前後で一定
雪渓最下部
雪渓最下部。沢へと転じた地点を渡る

また雲間から日が漏れ始めた。御前峰の雪渓に当たって光り輝いている。高原の風景にも色気が出てくる。

と、先行する登山パーティーに追いついた。ここは、ちょうど雪渓の最下部になっていて沢水となって下方に流れていく。休むには良い場所。

「先に行って下さい」と言われたけれど、休むので良いですと言って先に行ってもらう。

平瀬道分岐
平瀬道との分岐。南竜ヶ馬場まで2.8km
御前峰を見納める
最後、御前峰を見納める――

その先、道標が立っていた。分岐だ。直進すると平瀬道――大倉山を経由して、白水湖へ下りる道。

件のパーティーはそちらに向かっていた。今日は大倉山避難小屋で泊まりなのだろう。

PM4:01、自分は右、南竜ヶ馬場へ下りる道を選択。ここから先は一人旅、こんな遅い時間に展望道を使う人はいない筈。

注意の看板
展望所か、と思ったら違った。「注意」の看板
ロープ
ハイマツ帯と道がロープで区切られている

南下を始めると、ほどなくガスに突入した。展望道なのに、展望の無い道。まあ、予想していたことだけれど……。

道は下り勾配ながらも、まだ平坦。ロープで境界の明示されたハイマツ帯をテンポ良く下っていく。いつもの縦走装備に比べると、食料や着替えが1泊分で済む分、だいぶ軽い。

ところが、良いことばかりでも無かった。またもや、雨が降ってきたのだ。

雪渓
谷側を覗き込むと、雪渓が幾重にも連なっている
潅木帯
ここから潅木帯。南竜ヶ馬場まで1.8km

雨を無視して突き進む。潅木帯に突入し、緑が一気に増える。

下りていく先が良く見える稜線道。と、その尾根の突端に、小さく、展望場のようなものが見えた。アルプス展望台って、あれだろうか?

左手には高度を落しながら続いていく大倉尾根。その先、遙か白水湖の水色の水面が見えていた。

雨足が強まる。再び、傘を差す。

アルプス展望台
アルプス展望台。高度2,300mほど。もちろん、アルプスへの大展望が得られる……筈
カライトソウ
カライトソウ。雨に濡れ、しんなりしている

PM4:34、アルプス展望台に到着。

見えているのは白水湖まで。本来ならば北アルプスの主要な峰々に、御嶽山、中央アルプスの南部の山々が見えている筈だった。そして、明日目指す別山も。

ただ、富士山は南アルプスに隠され、見えないはず。同じ日本3名山だけれど、白山から富士山は見えない。

稜線道
お花畑の稜線道。この先で稜線から外れ、馬場に下る
白水湖
岐阜県の白水湖を遠望。日本三名瀑の白水滝がある

先へ進む。

この稜線道も、白山の他の稜線道と同じくお花畑の道。ただ砂防新道と違うのは、こちらにはカライトソウが新しく加わっているところか。

雨はかなり激しく降り、傘からはみ出たザックカバーを打ち叩く。ズボンの先も濡れてきた。と、タイミングよく稜線道から道が右に逸れ、針葉樹帯に入った。

高度を急速に落として行く。

針葉樹帯
針葉樹帯に突入。道幅が狭くなる
雪渓上部
雪渓上部から南竜ヶ馬場を見る
沢
沢。雪解け水だろう

木々の葉が被さるようになり、これで雨をある程度凌げるかと思ったら、今度は濡れた草葉が衣服を濡らしていくようになった。登山道の幅が思いの外、狭い。しまった、横着せずに雨具を着けるべきだった!と思ったものの時既に遅し。結構、衣服が濡れてしまっている。

強引に樹林帯を突破し、雪渓の上部に出た。と、同時に雨は止んだ。この先は谷の右岸を伝って馬場まで緩やかに下りていく道のよう。

南竜ヶ馬場の木道
南竜ヶ馬場を渡る木道。ササが多い湿原
南竜ヶ馬場
南竜ヶ馬場。その向こうにはテント場が見えている。白山の山上にある唯一のテント場

今度は、濡れた土がやっかいな相手。何度かスリップし、一度は前のめりに倒れかけて手を付いた。足も疲弊しているけれど、精神的にも疲労が濃い。

やっとのことで馬場の突端到着。木道が始まった。

南竜山荘
南竜山荘。一番左の建屋にテントの受付所がある
木橋
テント場は少し離れたところにある。沢を渡る

PM5:16、木道が終わった。右に南竜小屋の建物が見えている。

木橋を渡ってテント場へ上り始める。……いや待て、テントの受付を行うのは山荘じゃなかったか?

引き返す。木橋を渡り返して、南竜山荘の建屋へ。受付所を見つけて、申告。テントとかマットとか持っているかと聞かれる……色々貸し出し可能らしい。

南竜ヶ馬場野営場
「南竜ヶ馬場野営場」ロッジ、炊事場、トイレがある
野営場への登り
テント場へ向けて雪渓脇を登っていく

もう一度、木橋を渡ってテント場へ。短い登りだけれど、疲労困憊の身体には辛い。

PM5:37、南竜ヶ馬場野営場に到着。月曜日とあって、テントは散在。奥の場所を確保。

テントを張り、濡れた衣服を着替える。温かい夕食を摂って、ようやく人心地が戻ってくる。

就寝は午後7時半頃。

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