
会津地方、猪苗代湖の北に聳え立ちます。山の名前としては“磐梯山”で、その前に“会津”と冠せられることが多いのは会津の象徴という意味合いを込めてでしょう。
実際、磐越西線に初めて乗った人は、この山が車窓の右に左に現れたり、右に現れたりすることで強く印象付けられます。存在感は抜群。

高さは1,800m少々。しかも猪苗代湖で高度514m、北面・裏磐梯の桧原湖が高度822mと既に高地ですので、周辺から見ると、それほど高い山には見えません。ただ、その形の良さ、やや標高が落ちる赤埴山・櫛ヶ峰山との遠近効果によって、見るものに強いイメージを与えます。また、北面の荒々しい火口壁の光景も、この山のイメージを強めるのに役立っています。まるで爆発的噴火によって、山体の半分を持っていかれたかのような姿ですから。(実際は水蒸気爆発による山体崩落とのこと)
――そう、この山は活火山です。噴火活動は落ち着いており、警戒レベルも1(平常)を保ったままですが、沼ノ平・中ノ湯付近などでは火山ガス注意の立札があり、実際、中ノ湯付近では硫黄臭がしました。警戒に越したことはありません。




山頂には360°の大展望があり、言葉通りの絶景が得られます。特に表磐梯の巨大な猪苗代湖、裏磐梯の森に埋もれる多数の湖沼群への展望は良い対比です。遠方には百名山の吾妻山・安達太良山が横たわり、さらに空気が澄んでいれば月山、朝日連峰、飯豊連峰への眺望も得られます。この展望を目的に登られても良い山でしょう。
また、山頂部では灌木帯で高山植物も見られ、高山の雰囲気を持っています。さらに、北面の荒涼とした火山の風景、中腹での豊かなブナの森、と様々な表情があるのも、この山の特徴でしょう。もっとも、南斜面にあるスキー場の幾筋ものグリーンベルト帯は、この山の1風景としては余計かも知れませんが。(ちなみに、夏場に観光リフトのような運行はありません)
中ノ湯付近のブナの森は特筆ものです。純度が高く、まさしく“森”という漢字の通り。磐梯山ゴールドラインを越え、猫魔八方台付近まで広がっています。新緑、黄葉の時期には多くのハイカーの目を楽しませるでしょう。

磐梯山を日帰りで歩こう!
日帰りコース | 所要時間 | (登り/下り) | 累積高度 | 登降ピッチ | |
---|---|---|---|---|---|
1. | 赤埴林道駐車場~沼ノ平~弘法清水小屋~山頂 (1,290m) |
2時間50分 | 1時間35分 | +520m -16m | +328m/h |
1時間15分 | -416m/h | ||||
2. | 八方台駐車場~中ノ湯跡~弘法清水小屋~山頂 (1,194m) |
4時間10分 | 2時間15分 | +645m -44m | +287m/h |
1時間55分 | -337m/h | ||||
3. | 翁島登山口駐車場~大岩~山頂 (806m) |
5時間20分 | 3時間 | +989m 0m | +330m/h |
2時間20分 | -424m/h | ||||
4. | 猪苗代登山口駐車場~天の庭~沼ノ平~弘法清水小屋~山頂 (686m) |
6時間35分 | 3時間35分 | +1,135m -27m | +317m/h |
3時間 | -378m/h |
H21/3/31 噴火警戒レベル1、活火山であることに留意
■気象庁 火山登山者向け情報 ≫


日帰り前提の山です。最も利用されているコースは、磐梯山ゴールドラインの八方台駐車場からの往復。高度差は600mほど、しかも登り一辺倒では無く、序盤、中盤、終盤に比較的フラットな区間があるため登りやすいです。加えてブナの森、裏磐梯への展望、お花畑、水場、小屋などハイクを満喫するための要素が一通り揃います。登山道の整備状況も良く、ファミリー含む大勢のハイカーが歩きます。駐車場のキャパもあり、トイレもあります。マイカー登山限定になるのが残念。
一方、最短のコースは赤埴林道駐車場からの往復です。高度差こそ525mほどに減じますが、登山道の魅力はやや落ちます。利用状況は分かりませんが、分岐点で見た限り、しっかりとした道が付いていたので大丈夫と思います。さらに、赤埴林道の状況も分かりにくいです。通行止めになっていないかの事前確認は必須でしょう。
南側からの直登コースとなるのが、翁島登山コース。ただし、利用度・道の状況は不明。



巨大な駐車場のある猪苗代登山口からのコースは、もう少し距離が長くなります。もっとも、その行程の1/3がスキー場を上がっていく道で、背後には猪苗代湖が広がっているので、あまり山深さは感じないかも知れません。中盤に長いフラットな区間があるのも特徴です。
――さらに、本コースでは、マイカー登山だけでは無く「駅から登山」も可能。JR猪苗代駅から登山口まで4km、歩いても1時間15分ほど。東京から新幹線を使って郡山でJR磐越西線に乗り換え、猪苗代駅まで約2時間。コースタイムを加算しても、なんとか首都圏からの日帰り登山も狙えるものになっています。もちろん、朝一の新幹線を使うことが必須。
他にも、北側に裏磐梯登山口(高度820m)、東側に川上登山口(高度730m)、渋谷登山口(高度580m)があります。バス停があるものの、駅からの運行本数に乏しいので使うのは難しいでしょう。車なら、裏磐梯登山口から高度900m付近の駐車場まで上がれるようです。
